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難解難入所不能知所以者何佛曾親近…………祖父の37回忌だった。お寺でお経を聞き帰りに頭をよぎった。怨恨殺人遺体遺棄証拠隠滅指名手配整形手術逃亡生活油断大敵任意同行事情聴取天丼要求容疑否認不眠不休完全黙秘時効成立なんてふとどきな私であろう。ご先祖様、どうか怒らんといてなー。
2007.02.25
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女性は、苗子という。競馬新聞以外の活字など読むところを見たことの無い彼女の父親が、唯一読んだ小説から付けた名前だといつか苗子に言ったことがある。左官職人としての腕はよかったし、職人仲間からは慕われているようだったが、家庭ではギャンブル好きの酒飲み親父としか言いようがなく、苗子には父親としての思い出はまったくなかった。そんな父親を不平不満ひとつ口にせず献身的に尽くしてきた母親は、苗子が十五歳になったある日黙って家を出て行った。いつもと変わらぬ挨拶をして学校に出かけた苗子が、帰って目にしたのは母親ではなく、下駄箱の上に綺麗に積まれたネーブルだった。「なんで?」当時苗子は毎日のようにそう思い母親を憎んだが、今になれば至極当然のこととして母の行為を受け止めている。自分を捨てた母ではあるが、そうでなくとも不幸せだったのだと理解できるようになっていた。苗子と同じように捨てられた父親の生活は、それでも一見何も変わらないように見えたが、後に振り返れば、酒量は増え益々無口になっていた。外で飲んで毎晩遅く帰ってきては、また畳に座り、蹲るようにして酒を飲む。それでも、苗子が起き出す頃には黙って仕事に出かけて行くのが日常だった。当然親子の会話などない。どちらかが必要最低限の言葉を一方的に伝えるだけだが、九割は苗子からで、父親が苗子に対して口を利くことは滅多になかった。苗子は、そんな父親が泣いているのを一度だけ目撃した。声が聞こえたので、呼ばれているのかと思い襖を開けると、酔って畳に寝てしまった父親の姿があった。電気を消そうと照明に手を伸ばした時、父親は出て行った母親の名前を寝言で繰り返し呼んだのだ。振り返った苗子は、父親の頬を伝っていく青白い涙を見たのだ。苗子は、目を背けた。見たくないもの、見てはいけないものを見てしまったように思い、夢中で灯りを消した。父親の青白い涙は闇に飲み込まれていったが、苗子の瞼の裏には今でも青白い涙が残っている。苗子が十八になったとき、父親は死んだ。あっけない死に方だった。作業場の足場から転落したのだ。たいした高さではなかったが打ち所が悪く、担ぎ込まれた病院に苗子が駆けつけたときには、親方に看取られて死んでいた。「苗子ちゃんごめんな。」顔中くしゃくしゃの親方が声を詰まらせながら言った。アルコール漬の体で仕事をする父親が悪いのだと苗子は思ったが、言葉には出来ず首を横に振った。「苗子ちゃん、お父さん最後に苗子ちゃんの名前呼んでたよ。一目会いたかったんだろうな。ほんとにごめんな。」作業着のままベッドに横たわった父親の顔には、すでに白い布がかけられていた。その布を見つめたまま苗子は親方に聞いてみた。「父が名前を呼んだとき、泣いていませんでしたか?」なんでこの子は知っているのかと、親方の顔は一瞬戸惑うように険しくなった。父親が最後に口にしたのは自分の名前ではなく、おそらく逃げていった母親の名前だったのだろうと苗子は察していた。血の繋がった我が子以上に、十七年連れ添ってくれた女性への愛情を持ち続けた父親を、苗子はいとおしく感じた。白い布をそっと持ち上げ、覗き込むとあの晩と同じ青白い涙が父親の顔にあった。苗子の目から溢れ出た涙だった。
2007.02.24
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「卵二つ 真剣勝負で茹でているネーブルかおる 日曜の朝」(俵万智)例年になく忙しく、またシンドイ年度末。心身ともに休まらない。晩飯直後、貧血で気分が悪く、冷や汗をかきながら座り込むトイレ。その壁にぶら下がっているカレンダーに書かれていた。「卵二つ、ってことは二人で食べるんだよなー」「真剣勝負、って言うんだから自分の為だけじゃーないものねー」「日曜日の朝でしょー・・・食堂のテーブルにはネーブルが置かれているわけだ」「ネーブルが香ってくる、ってことからキッチンは近い距離だろうし、もしくはダイニングキッチンだろうね・・・アパートかな?」妻子ある男性を好きになった一人住まいの女性の部屋。思うように会えない二人。土曜の晩、久しぶりに男が尋ねてくる。「仕事で遅くなるから、夕飯は先に済ませておいて・・・」とかなんとか。予告どおり遅い時間にやってきて、二人はお酒を酌み交わす。話したいことはたくさんあるのに、見詰め合って静かに酒を飲む。「寂しい思いをさせてごめんね・・・」女性はわずかにうつむくが、「いいの」の言葉の代わりに笑顔で首を横に振る。翌朝早く帰っていく男の為に、卵を茹でる女性。普段男は朝食をとらないことを知っているが、何がしかでも口にしてくれるものを出してあげたい女心。従って真剣勝負で茹でている。ネーブルは男が起きてきてから、剥いて食べさせるつもり。コーヒーメーカーには、既に豆がセットされていて、これもかすかに匂っている。「もう少しだけ待ってから・・・」揺り起こすのではなく、コーヒーの香りで男が目覚められるように、彼女はスイッチを入れるタイミングを待っている。男が帰るとき、女性はけっして見送らない。見送ってしまうと、もう会えない気がするから。だから黙って玄関のドアを閉める。・・・・・・・・・・・・・・・・流れ出る冷や汗をトイレットペーパーでぬぐいながら、沸き起こる吐き気を必死に抑えながら、トイレで思い描いていた。
2007.02.18
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少ーしは、日が延びた気がするが既に暗くなり始めている。どんよりした空の下で、東京タワーの明かりが寒そう。「そんなの眺めてないで、早く帰りなー」「そやなー、どこぞで暖まって帰ろかなー。連れ合いも、寄ってきよし言うとったしなー」ここの所、社員に不幸が続いている。課長は、追突されて前に停車中のトラックとサンドイッチ。(後ろから前からどうぞ・・・ってのがあったわなー。)可愛そうに、首にむち打ち症の輪っかをはめている。(私も、10年前にはしてましたなー。)副部長は、特大の胃潰瘍から出血。「入院しますか?」と聞かれて、「忙しいから駄目です」と即答したらしい。(看護師さんが好みではなかったのかもしれない。)「体が一番だから、休んで早く治しな」そう言ったが聞くような相手ではない。「自分が居なければ・・・」そう思っている古いタイプ。仕事はマメにこなすが、彼が居なくてもまわっては行く。私とて同じことで、居なくても会社は平気。ほんの少々しわ寄せが発生するだけだ。今期の部署予算は、1月末日で99%確保できた。2月3月の売上はオマケであり、大幅増。1年間、皆がワイワイがやがや、ドキドキひやひやしながらやってきた結果だ。(本当に皆さんご苦労様)隣接県の支店が足を引っ張らなければ、とんでもない数字が叩けたのに。(欲張ってもあかんなー。)人員整理もせなあかん。昇格人事も考えなあかん。一番の頭痛の種は、2007年度の予算出し。「どうしようかなー」と試行錯誤と言うところだが、いくら考えたって形は出来上がっている。文字にするかどうかを迷っているのが本当のところ。期限になったら、「えいやっ」と書くしかない。部屋も寒くなって来たから、帰るとしましょう。関所は気分次第やなー。
2007.02.10
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たまたまチャンネルを回していたら、私の住む町の焼きそば屋が紹介されていた。先週の木曜日、1日の夜。芸能人にはうといから、名前など知らないが若ーいオネ-チャンが推薦者。昨年12月にオープンした、3坪でテイクアウトだけの焼きそば屋。暮れに横の床屋に行った際、見て知っていた。店主は65歳であり、富士宮でトンカツ屋をやっていたのだとか・・・床屋の従業員が教えてくれた。さてさて、その焼きそば屋は、放送翌日開店時から長蛇の列ができたそうだ。「金曜日は花屋さんの方に列が出来てたからよかたんでよ・・・昨日はこっち側に出来ちゃって・・・一日中お客さんが絶えないんですよ・・・夕方には麺がなくなっちゃったらしくて・・・」昨日床屋に行ったらマスターが小声でぼやいていた。「今日はどうなんですかねー」「どうですかねー、見てたら地元の人はほとんどいなくて、電車でやってくるお客さんが多かったみたいですよ・・・日曜日だし今日も並ぶかもしれませんねー」世の中景気のいい話もあるものだ。テレビで取り上げられる効果は絶大。私が頭を刈ってもらったのは、焼きそば屋の開店前。勿論まだ誰も並んではいなかった。近隣に迷惑をかけるほど大繁盛を目論んでの出店ではないらしい。「年寄りですから・・・」店主夫婦は、そう言っていたという。ところがふってわいたようなテレビコマーシャル。紹介した若いタレントさんの彼氏ってのが、店主の息子だと噂で聞いた。「息子って何やってるの?」「スタイリストらしいですよ」「なーるほど」彼氏の親のために頑張っちゃたんだろう。それにしても、12時間近く焼きそばを作りっぱなしの作業はシンドイやろなー。天気が良いとは言え、待ってるお客さんも寒い中ご苦労様やなー。親父さんは、体壊さんようになー。お客さんは、風邪ひかんようになー。一段落したら、私も1回食べてみようと思っている。物好きやなー。
2007.02.05
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歯周ポケットの深い個所がある。左右の上奥歯。歯茎を少々切開して、歯石を除去する手術を受けた。手術とは言えないほど軽いものなんだろうが、一応メスも使えば縫合もするわけで、オペには変わりない。とりあえず左奥2本を治療してもらった。オペ中は、充分麻酔が効いていたので大丈夫。会社に戻って作業をしていると、だんだん痛みが出てきた。嫌だ嫌だと思っても、ジョーズのように迫ってくる。鮫からは逃げられても、歯と言うか歯茎の痛みにはかなわない。抗生物質を飲まなあかんから、何か食べないといけない。食欲は無い。帰りに貰った緊急連絡先の書かれた紙には、「アルコール類は控えめに」と書かれてあった。そうではあっても、麻酔代わりに飲んで帰ろう。今日もとにかく疲れたもんね。皆さん、歯磨きはキチンとまめにいたしましょう。転ばぬ先の杖でっせー。
2007.02.02
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Windowsが95であった頃、「インターネットカフェ」なるものが登場したと記憶してる。家庭への普及率がほとんど無い時代のこと。会社の近くに小奇麗な店が出来た事をチラシで知ったが、勇気が無いし、必要も無かったから行った事は無い。そんなパソコンだが、今では小学生でも自在に操る世の中。一家に複数台を所有する家庭だって珍しくない。通信費だって使い放題であり、「なんで外で使うわけ・・・???」そう思っていたのだが、意外と目に付くのが「インターネット喫茶」の看板。どんな人が利用するのか不思議でならなかったが、寝泊りの場所らしい。ホームレスではありながらも、働く人たちが家代わりにしてるって。住民登録のできる住まいが無いから、定職には就けない。資金も無いから日雇い日払いの仕事をしたい。探すには、インターネットを使えて便利なんだって。「なーんや正にそういう人たちの施設か」そう考えると納得。シャワー付きの店もあると知ってビックリ。用途・懐具合に応じて店を選ぶんだって。コインロッカーも彼らの必需品。タンス代わりといったところ。しかし、よく考えたもんだ。時代にマッチた商売だが、利用せざるを得ない彼らにとっては住みにくい日本だ。政府の悪代官たちは、お互いの失態を突っつきあう事ばかりに夢中で、肝心の政治はほったらかし。のり弁当1個を、夜と朝の2度に分けて食べなくちゃならない人が仰山いる現実をチーットモわかっとらん。そんな悪代官を選んでいるのは私らなんだから文句も言えないが・・・・・・それでも腹が立つのは私だけか?まぁ、よくよく考えれば当社の社員連中も同じようで、給料泥棒ばかり。前進・改善はないが、不正な事をやらないだけましなのかもしれない。さてさて、帰省した連れ合いは、そろそろ戻ってくる予定であったが、父親が入院をしたようで帰りが延びた。普段彼女が居る時は、キチンと守っている休肝日がこのところ少々ルーズ。仕事でストレス溜めて、世の中に腹を立てて、これが飲まずにいられましょうか。おまけに、普段はお袋の話し相手がいるものの、連れ合い不在中は晩御飯を食べながら少々の会話はしてやらなあかん。ご飯だけ食べるには10分で充分。それじゃー間が持たない、と言うわけで毎晩飲んでいる。しょうがないよねー。みんなの幸せのためだものねー。しっかり看病して、早く良くなってもらって、帰ってきてなー。そしたら休肝日復活するでー。親父が良くなるまで、ゆっくりしてきてええでー。
2007.02.01
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