全5件 (5件中 1-5件目)
1
食卓では、母親が「お肉ばっかり食べないの!」遠足では先生が「おやつは500円まで!」ホラー映画では登場人物が「あの祠には決して近寄ってはならない!!」というように、決して守られることのない注意事項として、お祭りの出店に行く子供に対して母親が言うことで「ひよこは絶対買って来ちゃ駄目!」というのがある。私も子供の時分、お祭りに行くときには必ず言われたものだったが、守られたためしがなかった。だって、あの「ひよこ」という生き物あれ、最高にかわいいんだもん。小さくて、丸くて、黄色くて、黒目がちでピィピィって鳴いて、かわいい要素のみで出来てるよ、出来上がっているよ、ひいの字ってやつは。もう、あ~んって口の中に含みたくなるくらいかわいい。食べたいのではなく、あくまで口に含んで守っていたくなる。それは、お菓子の「ひよこ」を連想してそうしたくなるのか、それともひよこを見ると、もともとそういう風な感情が起こるところからお菓子の「ひよこ」が出来たのか、「卵が先か鶏が先か」くらいの難しい問題だ。もう、ひよこと目があった途端に、秒殺で悩殺ですよ。この時ばかりは、もし今死ぬとしたら流れる走馬灯のファイナルを飾るのは家族や恋人ではなく「ひよこ」だね絶対、というくらい、ぞっこんです。そんな訳で、母親の言うこともなんのそのひよこを買い求めてしまうのですが、悲しいことに翌朝にはひよこは冷たくなっているのだった。噂では出店で売られているひよこは、すぐ死んでしまうような弱いものばかりだというのでそれが原因なのか、それとも仲間から引き離された挙げ句、じろじろ見られたり、体をまさぐられるストレスでなのかは分からない。しかしひよこは死んじゃうので、自分が原因だったとしたらかわいそうなことをしたな。すぐ死んでしまってかわいそうなのでというのが、ひよこを買って来ちゃ駄目な理由だったのだが。しかし、何回か失敗をふまえてあるときひよこに対するスキンシップを控えた時があった。その時ばかりは、ひよこは翌日にも元気だったのだ。それを教訓にスキンシップ禁止を守り続けるとひよこは生き続けた。丸い体もたくましくなってきてトサカらしきものがちらほら見え始めそれとともに「ひよこ」の最高なかわいさにも陰り見えて来たがある日、もういいだろう、もう十分我慢した、自分で自分をほめるよ、もうスキンシップ禁止を解禁!とばかりに草原でひよこと戯れた翌日に、おひよ様はお星様になった。そんなにスキンシップは嫌なの?優しくなでなででも駄目?少しでもスキンシップしたら死んじゃうの?でも、あんたかわいいんだもん。かわい過ぎるんだもん。愛さずにはいられないんだもん。でも、抱きしめられないなんて辛すぎるよ。好きだけど抱きしめたら死んじゃうの?それじゃあ、まるで愛情アレルギーだよ。世にも奇妙な物語じゃん!とばかりにつらく悲しかった。しかし、世の中には例外もあるもんだ。友達のお祭りで買ったというひよこは成人してりっぱな鶏になったというのだ。しかも、スキンシップもOKだったらしい。友達の家に行くとその鶏がいて随分うらやましい思いをしたもんだった。ある時、その友達に成人した鶏と写真を取ってと頼まれ、私はカメラを構えた。友達は鶏を肩に乗せて写真を取ろうとしていた。なんとか鶏を肩に乗せた友達はピースサインをしてポーズを取ったのだが、そのとき悲劇は起こった。友達いわく、「鶏は黒いものを見ると突く習性がある」らしい。肩に乗った鶏はあろうことか、友達の黒い目に突きかかってきたのだ。間一髪で鶏の攻撃をかわした友達は失明を免れたが、この時ばかりは、少しうらやましい気持ちも消えた。しかし、今でもお祭りでひよこって売っているんだろうか。 「夜市」大学生のいずみは、友人の裕司に連れられて、何でも売っている市「夜市」へ足を踏み入れる。裕司は昔ここであるものとひきかえに「野球選手の才能」を買ったのだった。日本ホラー大賞受賞作です。ちなみに直木賞にもノミネートされていました。評判も良いので読んでみることに。うん、良かったです。設定、展開はそんなに意表をついたものではなかったと思うのですが、うまいのです。この作品はうまくまとまっているのが最大の魅力ではないでしょうか。展開に無駄がないし、登場人物も必要最小限なので、うまくまとまってます。約80ページほどにこんな世界を作りあげられる作者はすごいです。そして、次に納められている「風の古道」。これで作者の力量が見えました。これがまた絶賛の「夜市」に引けを取らないくらい良い話でした。この作者の次回作が待ち遠しいです。出来れば、中編くらいで。大長編ではないのに、大長編に匹敵するくらいの話がこの作者の魅力だと思うので。ホラーでファンタジーでノスタルジーな感じなので朱川湊人さんの「花まんま」とかが良かった人には是非おすすめです。もちろんそうでない人も是非。
2006.02.22
コメント(4)
それは、中等学校の身体測定の時のことでした。身体測定を終えたわたくしは、教室へ向かう廊下を一人歩いておりました。身体測定は男子女子別の時間に行われます。女子が身体測定の今は男子は校庭で体育を行っており、男子が身体測定の時には女子が体育を行うことになっておりました。身体測定を終えた者から教室へ戻り、自習することになっていたのです。身体測定を行っていない他のクラスの方々は授業中なので、廊下には私しかおりません。人気のない廊下にはわたくしのうわばきのたてる音が、やたらと響きます。教師の声が教室の扉ごしに小さく聞こえ、音楽室から遠くオルガンの音が響きます。階段を登りきり、角を曲がったお手洗いの前でクラスメイトの美花さんが立っておりました。美花さんは、クラスの女子の誰よりも背が高くて、誰よりも運動の出来る方でした。子鹿のようにすらりと伸びた脚に、すっと切れ長の美しい瞳を持っていたので、男子だけではなく女子でも美花さんに憧れている方がいるくらいでした。美花さんはわたくしの前に身体測定を終えておりましたので、まだ教室に戻っていないということは、お手洗いにでも寄っていかれたのでしょうか。美花さんはお手洗いの前でわたくしと目が合うと、ふっと微笑んでわたくしを手招きいたしました。わたくしは美花さんと普段特別仲が良いわけではないので、人気の無い場所で美花さんに手招きされ、少し戸惑いながら美花さんに近付きました。美花さんはわたくしの手を取り、お手洗いの入り口の前まで引っ張って行き、その美しい切れ長の瞳を持つお顔に悪戯っぽい笑みを浮かべ「少し中を覗いてみなくて?」と聞いてきました。わたくしは増々戸惑ってしまいました。何故かと申しますと、そこはお手洗いでも普段わたくし達が使用しているお手洗いではなくて、男子のお手洗いだったからです。男子のお手洗いは、女子のお手洗いと隣り合っておりますけれど、大抵の女子がそうであると思いますが、一度も足を踏み入れたことなどありませんでした。躊躇していると美花さんはすたすたと男子のお手洗いへ入って行ってしまわれました。わたくしも、慌てて美花さんの後ろ姿を追いながら、今は授業中で男子が用を足しているわけでもなし、それに今なら他の人に見られることもないと、言い訳を作りながら男子のお手洗いへと入って行きました。そこは、思ったより清潔で奇麗でした。普段の男子のがさつで野蛮な生活態度を見ていて、そんな男子のお手洗いなら、女子のお手洗いよりも不潔なのだろうと勝手に思い込んでおりましたが、ピンクのタイルで統一された女子のお手洗いとは違って、男子のそれはグリーンで統一されていて爽やかささえ感じられました。洗面台が三つあるのは女子のお手洗いと同じでしたが、個室は二つあり、その他には女子のお手洗いには無い男子特有の便器。壁に取り付けてあって個別に仕切られていない縦長それは、5つほどずらりと並び女子のわたくしにはとても奇妙に感じられました。すると、美花さんはその奇妙な便器の前へすくっと立ち、「ねえ、御覧になって。」と言ってから、便器の前からすいっと体を離しました。すると、突然その便器からはひとりでに水が流れだしたのです。「まあ、まさか自動ですの?」私は驚き、その奇妙な便器へ近付き美花さんと同じように体を離し、自動で水を流してみました。「そうですの。わたくしも男子のお手洗いが自動だとは、思いませんでした。わたくし達のお手洗いは自動ではないのに、生意気ですわね。」と美花さんは言い、今度は個室の方を覗かれました。個室の方は、わたくし達女子と同じ手動の便器でしたが、美花さんがレバアを足で踏むと水が勢い良く流れました。「まあ、なんて勢いで水が流れるのでしょう。わたくし達女子の方では、水の流れが悪くて、日々不便しているというのに。個室の使用頻度が少ない男子のお手洗いに二つも個室があるだけでも分相応だというのに、その上、水の流れでも不便しないなんて。」「まあ、こちらも御覧になって。わたくし達のお手洗いは鏡が二つとも壊れて外されてしまって居るのに、こちらには三つも鏡がございますわよ。男子には三つもは不必要ではなくって。」美花さんとわたくしは男子のお手洗いを隅から隅まで覗き、女子のお手洗いと比べてその優遇された環境にあれこれと不満を並べ立てました。壁一枚隔てられた空間がこんなにも違っていたなんて。まるで独逸にあった壁のようではありませんか。「全く、男子のお手洗いが女子と比べてこんなにも優遇されていたなんて、もしかして校長はそっちの気があるという噂は本当なのかもしれませんわね。悔しいので少し悪戯してやりましょう。」そう言って美花さんは、個室に設置されているトイレットペイパアを逆向きに設置しはじめました。女子のお手洗いでもたまに有るのですが、トイレットペイパアが正しくなく逆向きに設置されていると、使用するとき、巻き取りづらくイライラしてしまうのです。わたくしは、普段はみんなの憧れの美花さんの小悪魔的な部分になんだか少し胸が熱くなるのを感じました。美花さんったらこんな部分を持っていらしたなんて。すると、廊下から足音が聞こえてきました。その足音はわたくしの次に身体測定を終えた泰子さんでした。わたくし達はすかさず声をかけます。「泰子さん、ちょっとこちらを御覧になりません?」その日、クラスメイトの女子の半数が男子のお手洗いという未知の空間に足を踏み入れることとなったのでした。きっとその日男子の方々はトイレットペイパアが使いづらかったのではないでしょうか。「Teen Age」角田光代 瀬尾まいこ 藤野千夜 椰月美智子 中野ともそ 島本理生 川上弘美らによる十代をテーマにした7人の女性作家によるアンソロジー。ひさしぶりのアンソロジー。ラインナップは有名な作家さん達です。しかし期待が大き過ぎたのでしょうか。思ったより・・・という感じでした。短編がとてつもなくうまいと思う角田光代さんや、大御所の川上弘美さんの作品は普段の彼女らの作品に比べて、もう少しという感じで残念な感じがしました。個人的に好きな藤野千夜さんは相変わらずよく分からないようで深いところを付いている作品でした。一番良かったのは、椰月美智子さん。はじめて知った作家さんでしたが、この中では一番テーマをうまく表現していたのではないでしょうか。他の作品も読んでみたいです。この作品はオール・オリジナル作らしいので、お特な感じはします。
2006.02.20
コメント(0)
明日はバレンタインデーですね。女の人が好きな男の人にチョコレートを贈るというなんとも甘ーい行事ですが、好きな人がいない者やチョコレートを貰う予定のない者には逆に辛ーい行事。バレンタインにチョコレートを贈るなんて日本だけなので、チョコレート会社の陰謀としか思えない行事なのですが、考えてみると妙な行事です。甘いものはどちらかというと女性の方が好きだったりするのに、甘いものの代表とも言えるチョコレートを男の人に贈るなんて変わっている気がします。私はもちろん甘いものは好きで、作るのもわりと好きです。いや、作るのもわりと好きだった、かな・・・。最近はあまり作っていないのですが、前は結構お菓子を作っていました。甘いものって、魔力的なものがあるみたいでハマってしまうと際限ないんですね。クッキー作りから始まって、ケーキ、シュークリームといろいろ作ってきました。クリスマスにはブッシュドノエル。バレンタインには、ガトーショコラ、ザッハトルテ、オペラケーキ。今、考えるとよく作ったなぁ~という感じなのですが、その当時は何かに憑かれたかのように作ってました。今までで、なぜ作ったのかと一番疑問だったのは、クロカンブッシュです。クロカンブッシュとは、小さいシュークリームを飴で固めて積み重ねていってタワーのようにしたお菓子です。よく、結婚式で登場するめでたいお菓子らしいのですが、これが実に手間がかかった。シュー種を作り、小さいシュークリームを焼いてそれに一つ一つクリームを入れて、そのシューを焦さないように作った飴で固めて積み重ね、その隙間に彩りのきれいなドライフルーツを飾るといった感じなのです。誰の結婚式でも無かったのに、何時間もかけて必死で作ったのを覚えています。何故にそんなに必死にクロカンブッシュを作ったのか不明ですが、きっと理由は「そこに山があったから」という感じなのでしょう。片づけが面倒くさいや手作りでも結構材料費がかかり既製品を買うのとあまり変わらないと世知辛い現実に気付いてからは、あまり作らなくなって現在に至るといった感じです。大人になるって、寂しいね・・・。こんな考えを持ってしまうなんて今考えると私はあんまりお菓子づくりに向いていないのかも。料理系は男の人の方が結構得意だったりするし。そう言えば、思い起こしてみる中学時代。その当時お菓子作りが好きだった私は、学校にお菓子の本を持って来ていて友達に貸したりしていた。そんな時、クラスであまり目立たない男子が、お菓子の本を貸して欲しいと言って来た。その男子が今やフランス料理のシェフに。本当にお菓子や料理が好きだったんだろうなぁ、私と違って。やっぱりシェフは圧倒的に男の人が多いので、料理は男の人の方が向いてる。女の人は甘いものが好き。男の人は結構料理が得意。などの理由から男の人が女の人にチョコレートをプレゼントしてくれる行事だったらいいのでは。 「AMEBIC」金原ひとみ作家である主人公の前にある錯文。食することを徹底的に排除しようとする主人公。愛を求め、孤独な主人公。分裂していく主人公の日常。好きか嫌いか、感銘を受けるか嫌悪するだけか。とても評価の分かれる作品だったと思いました。私は割と中間な感想で、☆5つでが最高だとしたなら☆3つというところでしょうか。とってもあらすじが書き辛い作品で、これといったストーリー展開はありません。しかし、文章は一般的ではありませんでした。普通にすらすらと頭に入ってくる文章ではないのです。それが作者が未熟な為なのか、巧み過ぎる為なのか私は判断出来なかったので、☆3つです。つまりは、全体的に紙一重で両極端な作品なのだと思いました。なので、ある人は絶賛で、ある人は酷評なのではないでしょうか。しかし、この作品もそうでしたが金原さんの作品を読むといつも感じる、必死なまでに愛を求める主人公の姿に心が痛みました。きっと作者は一般の人以上に愛に対して真摯なのでしょう。案外?誰よりも無垢な心を持っているのかもしれません。「少女と娼婦は似ている。彼女らは子供を生まないので」と昔、川端康成作品の授業で習ったようなものを、作者に感じました。評価の分かれる作品なので、図書館などで借りて読んでみてからの方が良い作品かもしれません。
2006.02.13
コメント(2)
その彼女は私が今まで出会ったすごい人の中で、かなりの上位にランクされている。彼女は、ものすごく運動神経が良いとか、とてつもなく頭が良いとか、ずば抜けて奇麗だとかではない。見た目や性格、日常生活も回りに居る人たちと特に変わったこともなく、至って普通なのだ。じゃあ何がすごいのかと言うとそう彼女は何がすごいって、「普通」であることがすごいのだ。高校時代に彼女と親しくなり、ある昼休み。私はそのすごさを知ることになった。彼女は一人っ子で、父親と母親の三人家族である。一人っ子だと甘やかされて育てられたのではと思ってしまうものだが、彼女はわりとしっかりした性格だ。そんな彼女がお昼休みに淡々と語った母親とのこと。小さい頃はテレビは、NHKと水戸黄門以外は見せてもらえなかったこと。まあ、これは、少し厳しい家庭ならあるかもしれない。勉強に必要なものは買って貰えたが、お小遣いは貰えなかったので、自由に使えるお金がなかったこと。それは、アルバイトも出来ない子供には辛いかもしれない。母親と一緒にお風呂に入ると、父親が見ていないのを良いことに母親に怒られるので、入浴が嫌いだったこと。父親が見ていないところで怒るのは、少々問題有りなのかもしれない。それでお風呂で怒られて一度反論したら、裸のまま外に放り出されたこと。は、裸で!?外!?それはさすがに虐待に近いのでは・・・。アザになってもばれないように、顔ではなくたたかれるのはいつも体だったこと。それは、いじめとかでよく有る方法じゃあ・・・。そのうち、母親がたたくと手が痛いからと布団叩きでたたかれるようになったこと。暴力でも一応愛のムチっていう言葉もあるようにわが子を自分の手で叩くことによって叱るということもあるけど、布団叩きでたたかれた日にはもう愛情もかけらも感じられないよ・・・。そんなにひどい目にあってもしかして、継母なのでは?と思ったがそんなことはなく実の母親だそうだ。まだまだ語られる涙なくしては聞けない彼女と母親のエピソード。なんで?なんで?彼女は普通に育ったの?幼少の頃にこんな虐待と言っても過言ではない経験をしていたら、多重人格になったり、動物を殺したりなど人格に支障をきたしそうなのに。「永遠の仔」のように波瀾万丈でドラマチックな人生をおくりそうだけど、彼女は至って普通なのだ。すごい!すごすぎる。至って普通な彼女。普通に育った彼女すごいよ!以来私の心のヒーロー列伝には彼女の名が刻み込まれている。「キララのキ」主人公の十秋は継母に馴染めずに窮屈に暮らしていた。そんな十秋は忘れられない思い出が有る。それは、小学校時代のキララという友達のこと。森の中にあるキララの家。おやつの話し合いをする3体の人形。十秋の実の母によく似た人形。私のせいで木から落ちて以来行方不明になったキララ。大きくなった十秋の前にキララに似た子が現れ、物語は始まる。今まで読んだ漫画本で最も好きな作品かもしれないです。岩館真理子さんは少女漫画家で「うちのママが言うことには」や「アマリリス」に代表されるように非常に上質なユーモアのセンスの持ち主ですが、この作品はそれがほぼ皆無です。もったいなくもユーモアがほとんどな作品なのですが、それでもすごいです。深いです。私はこれは女の物語だと思っています。個人的な考えですが女である所以は、女の人を意識していることだと思います。男性を意識しない女性、女性を意識しない男性、男性を意識しない男性は存在するかもしれませんが、女性を意識しない女性はまずいないと思います。女であるということは、他の女の人を常に気にしているということ。女性が誰の目を意識しておしゃれをするかというと、1番は女友達、2番は街にいる女性であり、男性という人はほとんどいないというアンケートがありました。それからも分かるように女性は常に一番に他の女性を意識して生きているのです。それは昔からずうーと、平安時代でも変わらずそうだったのではと思います。なので女の人を語るには、他の女の人も語らずには成立しません。この作品には姉妹、母と娘などの女の人が登場します。物語には男性も欠かせないのですが、彼女らがお互いに抱く感情の激しさ深さ濃さは、男性に対してと比較してとても強いです。この作品を読むと女性が同性同士で抱く感情の強さに男性は入り込めないのではと思ってしまいます。最初の方は謎がこれでもかと提示されるので、ミステリーとしても面白く読めると思います。「毒入りならどっちでも」の芸術的な台詞や、継母、人形師と美しい娘たちなどと物語の世界も素晴らしく、入り込めます。素晴らしい作品なのですが、唯一気になるのはタイトルです。内容と比較して少し軽い気がします。私はこの作品は勝手に「三人姉妹と深い森」と名付けてしまってます。女性の方、女性のどろどろした部分を知りたい、知っても良い男性も(少女漫画ですが)、是非読んでもらいたいです。全4巻の作品です。
2006.02.09
コメント(2)
性転換。居るところには居るのだろうけれど、普段はあまりお目にかかれないものだが、猫の場合はこの限りではない(猫の場合は性転換ではなく去勢か)。うさぎの場合も猫と同様かもしれない。うさぎのシロ様に一目惚れをして、飼うことを決めたとき、ペットショップでまだ手の平の大きさのシロ様をはじめて抱っこをさせてもらってひょいっとシロ様の足の間を覗いた。子うさぎは雄雌の判断が難しいと言われていたとおり、シロ様の陰部には尿道と肛門と思われる穴が二つ並んでいるだけで、雄雌判断材料には乏しかった。しかし、その僅かな判断材料2割、シロ様の萌え系美少女とした外見から8割のほとんど見た目重視でシロ様は女の子だろうと勝手に判断してから、およそ4、5か月後。ことは起こった。夏も真っ盛りの朝、私の部屋で同棲しているシロ様がケージの中で暴れ出す。ケージの外に出たくてたまらないのだ。まだ、ベッドで熟睡中だった私はとりあえずシロ様をケージの外に出してから再びベッドへ。残像が見えるくらいの速さで部屋を走り回るシロ様を横目に夢の世界へ戻るのがそのときの私の日課だった。しかしそんな時、夢うつつにも何故かベース音のような低くて短い音がよく聞こえるのだった。ブゥン、ブゥン、ブゥン、ブッ・・・。ブゥン、ブゥン、ブゥン、ブッ・・・。そして不思議なことに足の辺りにくすぐったくも気持ちいい感触が起こるのだった。そんな不思議なことが数回有りある時、私はふと目を覚まし、その不思議な音と感触の正体を突き止めたのだった。その不思議な音と感触の犯人はやっぱりシロ様だった。ベースのような低い音は可愛らしい姿のシロ様から発せられていて、胸の白いふさふさした毛や体を私の足にこすり付るようにまとわりついているのだった。なんだか尋常ではないシロ様の行動に少し心配になったのだが、気が付くといつもの残像ダッシュをしているシロ様に戻るのでそんなに気にはとめていなかった。そんなある時シロ様の足の間に赤い出来物があるのを発見して慌てた。嫌がるシロ様を無理矢理押さえ付けて、その赤い出来物を観察する。どうやら二つも出来ているようだった。恐る恐る指で突いたり引っ張ったりしてみる。刺激を与えると、出来物は縮んだり膨らんだりするようだった。心配になり明日にでも病院に連れて行こうと思い、念のため出来物のことをうさぎの本で調べてみた。しかし、該当しそうな病気も見つからず心配もますます募ったとき、ある記事を見つけた。「うさぎは子供の頃は中性的なので雄雌の判断が難しく、成人すると雄は睾丸が出来ます」睾丸・・・。まさか、シロ様の足の間の二つの出来物は、それなのでは・・・?計算してみるとそろそろシロ様も成人するくらいだった。やっぱりあの出来物はシロ様の睾丸・・・。縮んだり、膨らんだりってね・・・。ということは、シロ様は、シロ様は萌え系美少女の女の子ではなくお、漢(おとこ)だったのか!!そうとは知らずに私はシロ様の男のシンボルを指で突いたりいじったりして、ごめん、シロ様セクハラで。そして、シロ様の朝の謎の行動。あれはどうやら足に発情しての行動らしい。私の足にムラムラしたシロ様はティーンネイジャー男子の青春のどうにもならないほとばしりを表現してのものだったらしい。それ以来、いままで「ご飯頂戴よ」や「遊んで、遊んでよ」というような私が感じていたシロ様の心の声も「餌を早くよこしな!」「おらー、遊びやがれ!」というような男気溢れる?台詞にシフトしたことは言うまでもない。 「BG、あるいは死せるカイニス」石持浅海同じ高校に通う全生徒のあこがれだった異母姉妹の姉がレイプされかけて殺された。姉は何故そんな状態で殺されたのか。主人公の遥は事件の真相を探る。生まれた時は全員女性で優秀な者だけが男性に変異する少し変わった世界で起こるミステリー。はじめて読んだ作者でした。あらすじの最初の方だけを読むとそんなに奇異なミステリーの感じはしませんが、この話のすごいところは、一見普通の世界のように見えて一点だけ大きく違うところ、生まれた時はみんな女性というところでしょう。じゃあ女だけなら子孫はどうやって残すのかと言うと、その中の大体4人に一人くらいが男性に変異していくのです。なので圧倒的に少ない男性は子孫を残す為に非常に優遇されるます。こう書くと男尊女卑な世界の感じがしてしまいますが、その実、数が少ない男性は優遇されはするものの、実権は圧倒的に大多数の女性が握っているという訳なのです。なので、レイプの犯罪もこの世界では、女が多数で男を襲うのが常識だそう。ううーん、なんて設定だ・・・。という訳で、女である姉がレイプされかかったということは非常に珍しいことらしく、そのことも手がかりにして事件解決は進んでいきます。のんびりしていそうな主人公が推理にはやけに有能だったり、姉を殺されたのに立ち直りが早かったりと人物の描写に若干疑問は残りましたが、あちこちに伏線が張られていたりするのでミステリーとしてもよく練られていて、この世界にさえ慣れてしまえば最後まで楽しめる作品だと思います。微SFチックなので、SF初心者にもおすすめかもしれません。あと「女だらけの水泳大会」なんかが好きな方にもおすすめかも。
2006.02.05
コメント(6)
全5件 (5件中 1-5件目)
1