トヨタアクア ひとすじ
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論文2025/5/27HV車の燃費について目次1.背景2.燃費とは3.燃料消費率を計測する基準 ①10・15モード燃費 1991年制定 ②JC08 モード燃費 2011年制定 ③WLTCモード燃費 2017年制定 (1)WLTCモード燃費が導入された背景 (2)WLTC:世界標準、JC08:日本標準、EPA:アメリカ標準 比較換算表4.燃費の比較評価の仕方 ①満タン法による燃料消費率の比較 ②1km走行単価比較 ③燃費計表示値比較5.燃費計表示値と満タン法による実燃費との乖離6.燃費に影響する項目 ①気象 (1)気温 (2)雨・風 (3)夏季冷房時の燃費悪化原因 (4)冬季暖房時の燃費悪化原因 ②道路環境 (1)渋滞による発電&充電 (2)路面状態 (3)道路の平坦度 ③車両自体 (1)車重 (2)ころがり抵抗・タイヤ空気圧・動力伝達抵抗 (3)空気抵抗・Cd値 (4)電装品 ④運転態様 (1)速度変化 (2)ブレーキの使い方 (3)1回あたりの走行距離 (4)EV走行比率 (5)前方からの風圧を少なくする方法7.燃費を維持向上させるための手立て (1)タイヤ空気圧 (2)省エネタイヤ・エコタイヤの装着 (3)冬季のグリル塞ぎ (4)吸気加熱 (5)冬季に手動でエンジン起動させる方法(条件あり)8.ハイブリッド車で元が取れるか?9.おわりに10.参考データ (1)車歴・生涯燃費1.背景 私の子供が就職するなどして家庭内のライフスタイルが変わり、2012年にトヨタエスティマのガソリン車(生涯燃費8km/L)からHV専用車の初代アクア、2021年には新型アクアに乗り継いで12年が経過した。トヨタHVシステム(THS)は他メーカーのHVシステムと比較して燃費面では抜きん出ている。そこで今回はTHSの燃費に影響する要因、燃費を維持向上させるための手立てについて論じてみた。 ただし、車全般に該当する項目も多いことは最初にお断りさせていただく。2.燃費とは 自動車の燃費とは、自動車が一定の距離を走行する時の燃料消費量を数値化したものであり、燃料消費率とも言われる。一般的にはガソリン1ℓで走行できる距離数であり、単位はkm/Lで表示される。3.燃料消費率を計測する基準 ①10・15モード燃費 1991年制定 かつて、燃費は一定の速度、日本では普通自動車の制限速度の上限である60 km/hで試験走行を行った結果を燃費として表示していた。しかし加速回数が多くなる市街地の走行では燃料の消費量が大きくなること、また、60 km/hにおける定地燃費を意識するあまり、極端なギア比と出力特性のエンジンを組み合わせた自動車が登場するなど、表記上の燃費と実際の燃費が乖離し、実態とそぐわない状況が生じてしまった。 そこで1973年(昭和48年)から運輸省で新たに採用されたのが、市街地を想定した10項目の走行パターンを想定した10モード燃費である。その後1991年(平成3年)に、運輸省は郊外を想定した15項目の走行パターンを加え、10・15モード燃費となった。なお、このテストは実走ではなくシャシダイナモ上で行うが、その際に駆動輪に与える荷重は車両重量ごとに区分が分けられている。そのため、同じエンジンや駆動系を備える同一車種の中でも、グレードによってはわずかな重量差から負荷の区分が異なってしまい、燃費の差が生じている。例として、2代目フィットでは同じ排気量1.3 Lの前輪駆動車で、1,010 kgの車体が24.0 km/Lであるのに対して、1,030 kgの車体は21.5 km/Lとなる。また、前者にサイドエアバッグなどのオプションを装着すると、燃費表記は後者と同じ21.5 km/Lの扱いとなる。なお、定地燃費よりは乖離は小さいものの、依然として実際の燃費とは差が生じている。また、アイドリング状態の燃料消費も測定対象に入るため、停車中に自動的にアイドリングストップを行う一部の車種については極端に良い値が出ることもある。 ②JC08モード燃費 2011年制定 従来、日本における普通自動車の燃費は、運輸省が1991年(平成3年)制定した「10・15モード燃費」により測定されていたが、加速にかける時間が極めて長かったり、測定するスピードが一般的な公道よりも低いなど、実際の使用条件とかけ離れており、カタログ燃費での数値と実際の燃費との数値の差が大き過ぎることが指摘されていた。これに対しJC08モードでは、より実際の走行パターンに近い測定法を実施。測定時間も倍近く長くなるほか、平均時速も高められ、最高速度も70km/hから80km/hに引き上げられる。重量区分に関しても10・15モードよりも細分化されたため、実際の重量により則した計測となる。2011年(平成23年)4月1日以降に型式認定を受ける自動車については、このJC08モード燃費値の表示が義務付けられている。また、それ以前より販売されている自動車についても、2013年(平成25年)2月28日までに、JC08モード燃費値を表示することが義務付けられた。 10・15モードはエンジンが温まった状態、すなわちホットスタートによる測定のみであったが、JC08では排気ガスが濃く、燃料も多く使用される暖気前のコールドスタート時の測定も、全体の25%程度加えられる分、以前の基準より厳しいものとなり、同時に測定される排ガスの測定でも厳しいものとなっている。このため、従来の車種をJC08モードに対応させるに当たって、相応の改修が必要なものも存在した。 これらの変更により、JC08モードの自動車カタログ上の燃費数値は、これまでの10・15モード燃費よりも一般的に1割程度低くなるとされる。一部輸入車などには燃費が変わらないもの、僅かながら燃費が向上するものがあり、走行パターンの変化が燃費低下に繋がるとは限らない。表示される燃費の低下は測定法の変更によるものであり、自動車そのものの燃費性能が低下するわけではない。 ③WLTCモード燃費 2017年制定 WLTCとは「Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle=世界的に調整された自動車の試験方法」を指す。WLTCモード燃費とは、その試験法に基づいて算出した燃費数値であり、日本においてはJC08モードに代わる新たな燃費基準となった。2017年夏から、WLTCモード燃費を算定した自動車から順次切り替えが行われている。2018年10月以降に日本国内で発売される車からは義務付けされる予定であり、2020年9月以降はWLTCモード燃費のみ表示される予定である。それまではJC08モード燃費を併記する予定。 (1)WLTCモード燃費が導入された背景 日本は国連における乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法の策定に向けた議論を主導し、2014年において「WLTP」が世界統一技術規則として成立した。その後の2016年には、燃費に関する大きな事件が発生した。大手自動車メーカーの「三菱自動車」や「スズキ」などにおいて、燃費に関する不正が発覚した。また、以前から「カタログ表記の燃費と実際の燃費性能に乖離があるように感じる」という意見が多かったこともあり、燃費基準は見直されるべきであるという考えが強くなった。 WLTCモードは、「市街地モード」「郊外モード」「高速道路モード」という3つの異なるモードで構成されている。これに3つのモードの平均値となる数値を加え、合計4つの数値を示したものがWLTCモード燃費数値となる。燃費数値の表記が1つしかないJC08モード燃費よりも、様々な走行シーンを想定して計測されたWLTCモード燃費は、実燃費にさらに近づく。 (2)WLTC:世界標準、JC08:日本標準、EPA:アメリカ標準 比較換算表 WLTC JC08 EPA WLTC 1 1.19 0.89 JC08 0.84 1 0.75 EPA 1.12 1.33 14.燃費の比較評価の仕方 ①満タン法による燃料消費率の比較 走行距離は車に備わっている距離計の数字を用いるのが一般的。場合によってはGPSを利用して走行距離を計測する手段もあるが、距離計トリップメーターを用いるのが手っ取り早い。一方、燃料消費量はガソリンスタンドで給油した時の体積値リットルを用いて満タンにした時の数量を用いる。1度満タンにした時の距離計をゼロリセットしておき、次回の満タンまでの走行距離を給油量で除した値は「満タン法による実燃費」と言われ、最も広く使われている。 ②1km走行単価比較 これは金銭的な経済性を比較する場合に用いることが多い。1kmの走行に消費されたガソリン量を計算し、それに単価:円/ℓを乗じれば1kmを何円で走行できたか求めることができる。この数字はガソリン単価に左右されるため、2車種の走行単価を比較する場合は同じ単価を用いて比較することが好ましい。 ③燃費計表示値比較 燃費計に表示された値での比較では、特にメーカー間における燃費計の仕組みやロジックなどの違いによって癖が発現するため、厳密な比較で用いられる事は少ない。5.燃費計表示値と満タン法による実燃費との乖離 走行距離は車が計測している値であり、「車の内部演算による燃費計算時」も「満タン法で実燃費を計算する時」にも、この同じ走行距離の数値が用いられる。しかし燃費計表示値に用いられる燃料消費量は車の燃料噴射量カウンターによるものであり、満タン法による実燃費計算ではガソリンスタンドで給油した時の給油量が用いられる。従って燃料噴射量カウンターとガソリンスタンドで給油量との差が乖離の原因であると考えられ、どちらが真値に近いのかと言った議論も多い。6.燃費に影響する項目 ①気象 (1)気温 吸気温度と燃料噴射量に関係することだが、空気温度が下がると空気密度が大きくなり溶存酸素量が多くなる。一定体積あたりの酸素量が増えることから、エンジン内ではガソリンを完全燃焼させるためにガソリンを多く噴射させることになる。また、空気密度が大きくなると車に空気がぶつかる時の抵抗が大きくなって車を前進させる時のエネルギーが大きくなる。したがって気温の低下は燃費悪化につながる。 特にHV車では1日の中で初めてエンジンを起動させる時、つまりコールドスタード時、エンジン冷却水の温度を一定温度にまで高めようとするプログラムが組み組まれている。気温が低いとその温度にまで上昇させるための時間が長くなりガソリン使用量が増加する。 吸気温度低下による燃費悪化を抑制する手立ては少ないが、一部の燃費マニアは吸気温度を高めるために吸気系にヒーターを自前で取り付ける者もいる。一度燃焼した高温の排ガスをもう一度燃焼用の空気として使う後述のEGRという機能も付いているが、僅かな燃費改善にしかならないのが実情である。 また、気温は電池性能へも影響する。充電と放電を繰り返す二次電池の内部では化学反応が起こっている。反応場の温度が高くなると分子運動が盛んになって電池としての充電と放電の効率が良くなる。反対に気温が低下すると、充電に時間がかかるなどの影響が出る。電池温度もモニターされており、高温になると充電ができなくなるなどの機能もある。 (2)雨・風 雨は路面を湿潤状態にするので下の「路面状態」に記したように走行時の抵抗が増加する。車が受ける風は風向きによって影響の受け方が異なる。向かい風なら空気抵抗が増加し、追い風だと空気抵抗は減少する方向に作用する。 (3)夏季冷房時の燃費悪化原因 車内冷房をおこなうためには、空気圧縮機=エアーコプレッサーが必要である。現在のガソリン車では、エンジンの回転軸から動力を得ることによってコンプレッサーを駆動させているが、HV車ではエンジンが停止している事もあって電動モーターが動力源となっている。 冷房と燃費との関係は、「一律に何%悪化する」と言うことはできない。これは当然のことだが外気温度と車内設定温度との関係が影響するからだ。以下に一例を示す。 片道12km走行での例だが、朝の気温は28℃。冷房でエアコンを26℃の"AUTO"設定して会社に着いた時、いずれも30km/Lを表示していた。エアコン不使用時なら33km/L程度を示す。外気温度と設定温度との差が2℃で約10%の悪化ということになる。 ところが、別の日の帰宅時の気温は36℃と表示されており、エアコンは朝と同じく26℃の"AUTO"設定で15km走った。エアコン不使用なら35km/l程度の表示となるルート。途中5分程度の渋滞につかまると電池の消耗によって目盛が2つとなり、無駄な「停車中の充電」が1回発生。この渋滞の影響も加わり、エアコンを使った事によって表示はなんと22km/Lを示しており、37%の悪化となった。外気温と設定温度の差が10℃もあったせいか、車内温度が設定温度に近づくまでは、電動コンプレッサーが盛んに作動していた。これに渋滞が加わって充電不足が発生したため、大幅な燃費悪化につながったと考えている。 基本的に冷房時は外気温と設定温度の差が大きいほど多量の電気エネルギーを必要とし、電池の消耗が早まって充電のためにエンジンを起動させて発電をするのが燃費悪化の主原因である。 (4)冬季暖房時の燃費悪化原因 一方、暖房時もエンジン起動回数が増加して燃費が悪化する。暖房ではエンジンからの熱を冷却水に移動させ、冷却水の熱が空気との間接熱交換器を通して車内に送られる。ガソリン車であればエンジンが常時起動しているので熱がふんだんにあるが、HV車の場合は極力エンジンを起動させないようにプログラミングされているので、持っている熱量自体がガソリン車と比較して格段に少ない。HV車の場合、暖房時の熱はエンジンを回すことによって得るしかないのである。 暖房を使うと冷却水温度が低下するのでその熱を補うためにエンジンが起動する、という状態を繰り返すのが暖房時の燃費悪化原因である。 また、暖房時にはエアコンスイッチを切っておくのが常套手段である。エアコンは除湿・冷房する時に使うのが目的であり、冬季はフロントガラスの曇りを取り除く時以外は使用しないのが低燃費を維持する時の常識である。 ②道路環境 (1)渋滞による発電&充電 渋滞で車の停車時間あるいはEV走行が長くなって電池充電量が低下し、自動的にエンジンが起動して発電&充電を始める場合がある。停車中の発電&充電自体の効率は良いが、THSでは電池が40%→45or50%になるまで充電を行うため、走行距離が増加しない中でガソリン消費量が増加して燃費は悪化傾向となる。燃費マニアの間ではこの渋滞停車中の発電&充電のことを「充電地獄」と称している。 (2)路面状態 路面がドライすなわち乾燥している状況ではタイヤが路面と離れる時の抵抗は小さいが、ウエットすなわち湿潤状態ではタイヤが路面から離れる時の抵抗が増大するので燃費低下を招く。悪化の程度はマイナス10%程度と推定する。 (3)道路の平坦度 下りの道路では走行時の所要エネルギーが少なくて済むので燃費には好影響であるが、下りがあれば上りもあり、トータルで評価する必要がある。総じて平坦な道路を一定の速度で走行するのが好ましいが、こればかりは走行する地域の地形であるためドライバーが道路を選択する余地は少ない。 ③車両自体 (1)車重 重量の増加は燃費に悪影響を与える。ではどの程度影響するのかについて調べてみたが、次の二つの文言を見つけた。 (1)重量10%増加で燃費悪化5% (2)重量1kg増加で燃費悪化0.05% 二つの表現の仕方は異なるが、(1)の場合、車重1,000kgに対して100kg、すなわち10%の増加で燃費悪化5%、と読み換えれば、(2)の比例換算と同じことになる。 ではここからは金額換算を行ってみる。私の車の燃費24km/Lで年間10,000km走った場合、416.7リットル必要、単価135円で56,250円。極端だが、わずか1kgの不必要な荷物を1年間車内に放置した場合、悪化分の0.05%に相当する金額は28円となる。従って10kgのゴルフバッグを車に積んだままにすると、年間280円ほど損をしている。体重を10kg減量すれば、同額の280円ぐらい得することになる。もちろん燃費が12km/Lの車であれは、得するのは2倍の560円となる。年間計算でその程度の話。 また給油時は満タンにせず少量小分けにして軽量化しようと考える人もいるが、その燃費への影響度は1%程度と非常に小さい。給油を小分けにする分、給油所へ通う頻度も高まるので経済的にもあまり影響しないと言ってよい。 (2)ころがり抵抗・タイヤ空気圧・動力伝達抵抗転がり抵抗とは、タイヤが路面を転がるときに生じる抵抗を意味する。この抵抗は、走行時のタイヤの変形によるエネルギーロス、トレッドゴムの路面との接地摩擦によるエネルギーロス、タイヤの回転に伴う空気抵抗によるエネルギーロスがある。 転がり抵抗係数が低くければ低いほど、それに対抗するエネルギーが少なくなる。このためタイヤの転がり抵抗は無視できない。一般的に転がり抵抗による燃費の寄与率は市街地走行で10%程度。転がり抵抗を20%減らすと燃費は2%向上する。転がり抵抗 を左右する要素として、タイヤの空気圧、トレッド、直径、幅、タイヤの材料、構造などが挙げられる。タイヤの空気圧の例を見てみよう。フランスの道路で行われた調査によれば、50%以上の車が、適正空気圧を30kPa以上下回る状態で走行していた。その結果、転がり抵抗係数にも大きな増加が見られ、30kPaの空気圧不足では6%、100kPaの空気圧不足では30%高くなった。ちなみに空気圧が50kPa(=0.5kg/cm2)減少すると、燃費が2~4%低下すると言われている。 またエンジンの回転をタイヤの回転に変換するまでの過程では、ピストンとシリンダー壁との摺動抵抗、ベアリング軸受けなどの回転抵抗が発生する。これらは動力伝達時の抵抗と言える。エンジンブレーキとは、エンジンのピストンが空気を吸排気する時の抵抗によって減速する仕組みの事を言い、この抵抗のことをポンピングロスと呼んでいる。HV車の場合はこのポンピングロスをなくすために空走時やアクセルを踏んでいない時はエンジンを回転させないようにしている。 (3)空気抵抗・Cd値 空気抵抗は、燃費に最も悪影響を与える要素と言っても過言ではない。空気抵抗は、進行方向に対する投影面に掛るので、投影面積が大きな車ほど走行時の空気抵抗が大きい。空気抵抗は速度の2乗に正比例して増大するので、特に高速走行時には空気抵抗による燃費悪化が著しい。 また、気温が一定だとすると、抵抗の大きさは、向風 > 斜風 > 無風 > 追風 の順。ちなみに風の吹く向きと同方向同速度で移動すると、抵抗はゼロ。また追風の状態でも、それを追い抜く速度で走れば抵抗となる。 また気温の違いでは、冬場・・・気温が低いと空気密度が大きくなって抵抗は大きくなる。夏場・・・気温が高いと空気密度が小さくなって抵抗は小さくなる。 また、車の窓を全開にすると車内に空気が入り込んで抵抗大となる。このようなことから低燃費に最も好ましい状態は、夏場の追風で窓を開けない状態が最も良いということになる。この時、エアコンを使用しなければベストなのだが、窓を締め切った真夏の車内で過ごすのは過酷であり、どうしてもエアコンを使って燃費を落としてしまうことになる。 空気抵抗が燃費にどの程度影響するかだが、時速 40km/h 7%時速100km/h 20%というミニバン所有者の報告があり、60km/hでは10%程度の悪化と推定する。背の低い普通車なら、もう少し低い数字になると思う。 「Cd値」は「Constant Drag」の略で、日本語では「空気抵抗係数」、または「抗力係数」などと訳され、この数値が小さいほど空気抵抗が小さいとされる。もちろん、空気が車に及ぼす力はCdだけではなく、車体を路面に押し付けるダウンフォースや、その反対の揚力などがあるが、一般的に空力性能の高い車はCd値も小さいことが多い。 Cd値が小さいとどんな効果があるのか?それはズバリ燃費性能の向上だ。空気抵抗が小さければ、クルマが前に進む力への抵抗も小さくなり、少ない燃料消費量で同じスピードを得ることができる。 一般的な乗用車のCd値は0.25~0.4程度と言われていて、0.3を切ればかなり空気抵抗は少ない。ちなみに、いかにも空気抵抗の少なそうなスーパーカーのランボルギーニ カウンタックはCd値が0.4以上と意外に大きく、見た目とCd値が必ずしも一致するわけではない。また、Cd値はあくまで係数であり、実際の空気抵抗を考えるにはこの値にボディを前から見た際の面積(=投影面積)を乗じる必要がある。つまり、同じCd値であっても、投影面積の大きなクルマのほうが空気抵抗が大きくなるということになる。 (4)電装品 車内で使用している電装品が多いと消費電力が大きくなり、その電力を走行に回すことができなくなるので燃費はそのぶん悪化傾向となるが、その消費電力は走行用の電力と比べて著しく小さいので燃費を大きく悪化させることはない。 ④運転態様 (1)速度変化 特に急加速では燃料が急速にエンジンに送られて消費量が高まる。できれば一定速度で走り続けるほうが良いとされている。 (2)ブレーキの使い方 フットブレーキとエンジンブレーキ HV車の場合、フットブレーキを踏むと回生発電によって充電されるが、エンジンブレーキの場合、走行エネルギーがエンジンを回転させるエネルギーに振り分けられるので、回生充電量がそのポンピングロス分減少する。 エンジンブレーキは、電池容量が満杯に近い場合や長い下り坂で使用するケースが多い。エンジンブレーキ使用中はフューエルカット機能が働いて燃料の消費を抑えられるものの、上述のように充電量は減少する。 ちなみに電池容量がシステム上の満杯状態になると、電池保護のために回生ブレーキが機能しなくなるため、強いブレーキ力が必要な場合は、力強くフットブレーキを踏んで油圧ブレーキを機能させたり、エンジンブレーキを併用しなければならない。 (3)1回あたりの走行距離 結論から言うと、1回当たりの走行距離が長いほど低燃費となりやすい。その理由は、コールドスタート回数を減らせる事にある。コールドスタートとはエンジンの冷間始動の事を言い、エンジンが冷え切った状態でエンジンを始動させることである。エンジンが冷え切った状態で始動させると、エンジンが温まるまでの間はガソリンを噴射させるというHVシステム動作が入る。 例えば、同じルートで100km走る場合、1回で100km走るのと2~3回に分けてトータル100km走るのとでは、1回で100km走るほうが低燃費となる。特に一度エンジンを停止させてエンジンが冷え切ってしまうと、エンジンが温まるまでの間はガソリン噴射量が増加する。HV車はエンジンを冷まさずに一気に走り込むほうが低燃費につながる。 (4)EV走行比率 一定の距離を走る時、一般的にはEV走行比率の大きいほうが燃費が良い。ガソリンを噴射せずに電気モーターで走行した比率が大きいという事である。ただしエンジン走行時に多大なガソリンを使用した場合は、一概にそうとは言えないケースも出てくる。 (5)前方からの風圧を受けない方法 危険を伴うので推奨はしないが、大型トラックの真後ろを走行する「コバンザメ走法」というものがある。大型自動車の真後ろは、一種の真空状態となり前方から受ける風圧が小さくなって走行時の空気抵抗が減少する。先行する大型車との車間距離を短くすれば効果が高いが、追突の危険があるので避けたほうがよいのは言うまでもない。7.燃費を維持向上させるための手立て (1)タイヤ空気圧 ガソリン車も同様であるが、タイヤの空気圧はメーカーが適正値を示しており、一般乗用車ではゲージ圧力で2~3kg/cm2程度となっているが、1割程度高めにしておくのがよいだろう。タイヤの空気圧が高いとクッション性が悪くなって乗り心地が悪化するが、路面との接地面積が小さくなってころがり抵抗が小さくなり燃費向上につながる。1~2カ月に1回は空気圧チェックを行いたい。 (2)省エネタイヤ・エコタイヤの装着 車を走行している間、タイヤには「転がり抵抗」が、車体には「空気抵抗」や「加速抵抗」などの走行抵抗がかかるが、エコタイヤは一般的なタイヤよりも「転がり抵抗」が小さいことが特徴。 転がり抵抗とはタイヤが転がる時に進行方向と逆向きに生じる抵抗のことで、走行するために必要な運動エネルギーが失われる。転がり抵抗が起こる主な要因には、以下の3つがあげられる。 ①接地摩擦:タイヤと路面が接したり離れたりすることで起こる摩擦 ②空気抵抗:車体と空気が摩擦することで起こる抵抗 ③タイヤの変形:走行時にタイヤがたわんでは元の形に戻ることで起こる変形特に③の転がり抵抗に影響があるとされているのが「タイヤの変形」。 タイヤの空気圧が低い場合や、車の総重量が大きい場合などはタイヤがたわみやすく、より転がり抵抗がかかってしまう。転がり抵抗がかかればかかるほど多くの燃料が消費され、いわゆる「燃費が悪い」状態になってしまう。 しかし、転がり抵抗が小さければ優れたタイヤというわけではない。転がり抵抗が小さい=摩擦力が低いことになり、ブレーキの効きが悪くなる。このような難点を解消するため、摩擦力の高いシリカ(二酸化ケイ素)という物質を配合したゴムを使用してエコタイヤは製造されている。一般的なタイヤに使用されているゴムよりも柔らかいが、その分タイヤの溝を深くし、ハンドル操作に影響が出ないように工夫されている。また、エコタイヤにはグレーディングシステム(等級制度)があるため、販売されているすべてのエコタイヤが同じ性能とは限らない。耐久性に優れているもの、静粛性に優れているものなど、さまざまな性能のエコタイヤが販売されているため、乗り心地もそれぞれ違う。 (3)冬季のグリル塞ぎ そもそもHV車は、エンジンを起動させないように工夫されており、ガソリン車と比較して発生する熱量が断然少ない。ガソリン車ではアイドリング時も含めて常時発熱しているのでラジエターでの徐熱効率を低下させる訳にはいかない。しかしHV車では発熱量が少ない事から冷却水温度が高まりにくい性質がある。HV車ではガソリン噴射量は冷却水温度も制御因子に含まれており、冷却水温度を高めに保っておくと噴射量は少なめとなる。 そこでHV車においては、ラジエター前面にある空気取り入れ用開口部のグリルにテープを貼ったりスポンジを挿入するなどして塞ぎ、ラジエター部での空気の流動を抑制して冷却効果を低下させる。グリルを塞ぐことから燃費マニアの間では「グリル塞ぎ」と称されている。 通常、ラジエターとは、エンジンで発生する熱を一度冷却水に移動させ、フィン付きの熱交換器でその熱を放散して徐熱するのが役目であるが、グリル塞ぎの狙いは徐熱を抑制することである。冷却水温度を高めに保って過冷却を防止するのがグリル塞ぎの目的であり、気温が極めて低下する冬季には走行中の保温性が良くなり、燃費に加えて暖房効果を高めるためにも有効である。 (4)吸気加熱 現在のHV車にも標準装備されているが、吸気温度を上昇させるEGRというものがある。EGRとは、「Exhaust Gas Recirculation」の頭文字を取った略称で、直訳すると「排気ガスの再循環」という意味になる。いったん排出された排気ガスを再度吸気ポートに戻し、燃焼室に送る仕組みがEGR。排気ガスをできるだけ直接排出しないことで、ガソリンエンジン車の場合は特に燃費の向上に役立つ。またディーゼルエンジン車の場合は、排気ガス内に含まれる有害物質NOx(窒素酸化物)の排出を減らすことができる。 EGRによって排気を循環させるメリットは、有害物質の削減だけではない。自家用車を利用する人にとっては非常に身近な問題である、燃費の向上も果たすことができる。先に述べたとおり、EGRを用いることで燃焼温度の低下が実現できる。燃焼温度が下がることで冷却による損失を軽減でき、吸気中の酸素濃度も下がることでスロットル開度が大きくなるためスロットル損失も抑えられる。これらのはたらきによって、燃費効率の向上を果たすことができる。また燃料消費量が少なくなることは、有害物質の排出をさらに減らすことにもつながる。 燃費マニアの中には、吸気系ダクトに空気加熱用ヒーターを付けるなどして吸気温度を高め、ガソリン噴射量を抑えようとする者もいる。 EGR解説 EGRシステムが導入されると、エンジンが排気ガスを再循環させて吸気管に戻すことで、吸気管内の圧力に影響を与えることができる。具体的には、次のようなプロセスがある。1.排気ガス再循環:EGRバルブが開くと、排気ガスの一部が吸気管に戻される。2.混合気の密度低下:排気ガスが混ざることで、吸気管内の空気の密度が低くなる。3.吸気管内の圧力変化:排気ガスが再循環されると、吸気管内の圧力が上昇し、その結果、吸気管内の負圧が小さくなる。これらのプロセスにより、吸気管内の圧力が安定し、エンジンの燃焼効率が向上しやすくなる。 (5)冬季に手動でエンジンを起動させて充電する方法(必要条件あり) THSでは電池残量40%を切ると初代アクアでは45%、新型アクアでは50%になるまでエンジンを起動させて充電を行う操作に入る。あと少しで目的地に着くので、電池残量を45%あるいは50%にする必要のない場合がある。 冬季に限るが少しだけ充電したい場合、エンジンが起動するまでヒーターの設定温度を高くするという方法がある。ただしエンジン冷却水温度が低めの時であり、車自体が持つ熱量が不足している状態の時にのみ行える。エンジンを止めて充電を止めたい時は、ヒーター設定温度を下げればよい。8.ハイブリッド車で元が取れるか? 比較基準としては「同一車種でグレードの異なるガソリン車との価格差」とするのが一般的。ガソリン車とHV車の価格差は概ね30~40万円。ガソリン車とHV車での実燃費の差で、消費するガソリンの量がどれだけ変わるかを計算して経済的効果金額に換算する。 私の場合、生涯燃費が8.0km/Lであった2,400CCのガソリン車エスティマから、1,500CCエンジンを載せたHV専用車アクアに乗り換えたケースで計算した。アクア購入費200万円、乗車年数9年間の実燃費の差は8→25.9km/L、走行距離99,000キロにおけるガソリン節約代が117万円、投資200万円を回収するための年数は計算上15年となっている。 しかし、年間1万キロ走り、実燃費が8→25.9km/Lとなった場合、同車種での価格差40万円を回収するのには5年あればよいことになる。9.おわりに HV車の燃費は、同じ排気量クラスのガソリン車と比較する場合にあっては良いと言える。しかし、HV車を購入したのに思ったほど燃費が伸びないとクレームを付ける者も多い。燃費は前述したように気象や運転環境に大きく影響を受けるため、低燃費を維持させるためには、燃費がどのような要因と絡んでいるかを把握しておく必要があるだろう。 またガソリン車との差額を回収するには、一定の距離を走らなければならないので、各個人の年間走行距離によって回収期間は変わってくる。チョイ乗りが多いとHVの特徴が生かせないので、さほど燃費も伸びない。 末筆となるが、HV車では充電と放電を無駄なく効率よく行わせることに気象の好条件が加われば、燃費が驚くほどに良くなる。燃費に影響を与える要因、燃費を維持向上させ得る手段を述べてきたが、少しでも燃費を改善したいと思うのなら、これらを少しでも理解することから始められたい。ガソリンエンジンと電気モーターが組み合わされており、その作動メカニズムも複雑ではあるが良く考えられたシステムであると思う。 電気自動車EVへの移行が叫ばれる中、HV車はその中継ぎ役であると思う。充電ポイントの増加に加え、全個体電池の完成により、充電時間短縮、充電量大容量化、走行距離の増加などが実現するまでは、EVの時代はやって来ないであろうと思う。走行時にCO2を排出しない車の実現とその広がりに期待しつつ筆を置きたい。10.参考データ 私用車の車歴・生涯燃費No. メーカー・車名 排気量 燃費km/L 西暦1 トヨタ カリーナSR 1600 - 19802 日産 スカイラインGT 2000 - 19833 トヨタ カリーナED 1800 - 19864 トヨタ クレスタ スーパールーセント 2000 10.1 19915 トヨタ エスティマG 2400 8.0 20026 トヨタ アクアS HV 1500 25.9 20127 トヨタ アクアZ HV 1500 30.0 2021以上
2025.05.27
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