名無し人の観察日記
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震災がれきの広域処理に関して、徳島県が出した見解が広域処理反対派によって「神見解」と宣伝されているようです。実際「徳島県の見解」で検索すると「核心を突いている」「受け入れ派を完全に論破した」「徳島県の態度は素晴らしい」 と言った具合に徳島県を賞賛する意見が多く見られます。しかし、この徳島県の広域処理に関する見解は本当に素晴らしいものなのでしょうか? 実際に検証してみると、必ずしもそうとは言えない……というか明らかにおかしい主張が多々見られますので、ここにツッコミを入れようと思います。 まず、実際に件の見解に関するリンクを貼ります。 徳島県公式HP とくしま目安箱(2012年3月15日) この中で明らかにおかしい部分をピックアップして解説します。 >放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)>ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。(強調部分:引用者) 放射性廃棄物に関するクリアランス制度と言うのは、「これ未満の廃棄物に関しては、放射性廃棄物と看做さず一般廃棄物として処理しても良い」と言う基準です。つまり、放射性物質の量が100bq/kgに満たないものに関しては、一般のゴミとして焼却したり、リサイクルしても差し支えないと言う意味です。 クリアランス制度 >「クリアランス制度」とは、原子力発電所の解体などで発生する資材等のうち、放射能濃度が極めて低いものは、法定された国の認可・確認を経て、普通の産業廃棄物として再利用、または処分することができるようにするための制度です。(原子力安全・保安委員会HP) 上記HPでも、クリアランス基準を満たした廃棄鋼材がベンチにリサイクルされている例が紹介されていますが、これを見てもわかるようにクリアランス制度は原子力関連施設から出る廃棄物を「一般」と「放射性」に分別するための基準であり、放射性廃棄物を封じ込めるための制度ではありません。 重要なのはこの100bq/kgと言うクリアランス制度の基準は、今も変更されていないと言うことです。そもそも国際基準に基づいて決められたものなので、日本が勝手に変える事はできません。 徳島県の見解では、基準自体が従来の80倍に引き上げられたような書き方をしていますが、この8000bq/kgと言う基準は今回の広域処理のために決められたものであって、これ以下の廃棄物がリサイクルされ、身近なところに拡散するとか言うような話ではありません。そもそも目的がまったく違う二つの基準を同列に並べて、80倍になった! などと主張すること自体が完全な誤りです。 また、徳島県はこの8000bq/kgと言う基準を設定するに当たって、十分な説明も根拠の明示もないと主張していますが、これも明らかに間違っています。この基準が決定された根拠、経過に関しては環境省の広域処理に関するHPでしっかり公開されています。 よくあるご質問(環境省:広域処理情報サイト) >8,000ベクレル/kgという基準は審議会等により認められているのですか?>指定基準8,000ベクレル/kgは、原子力安全委員会及び放射線審議会の諮問・答申を経て策定されたものです。 この決定に関する答申は文部科学省のHPから参照できます。 放射線審議会(第116回) 議事録>8,000ベクレル/kgという基準の根拠を教えて下さい。>処理に伴って周辺住民の受ける追加的な線量が1mSv/年を超えないようにする。>処理を行う作業者が受ける追加的な線量が可能な限り1mSv/年を超えないことが望ましい。比較的高い放射能濃度の物を取り扱う工程では、電離放射線障害防止規則を遵守する等により、適切に作業者の受ける放射線の量の管理を行う。>埋立処分場の管理期間終了後に周辺住民が受ける追加的な線量が0.01mSv/年を超えないようにする。 この基準に関しては、「自然被曝以外の追加被曝が年間1ミリシーベルト以内に収まること」と言う前提で計算されており、詳しい議論は上記議事録にて見ることが可能です。 具体的には、廃棄物の処理に従事する作業者は「1日8時間・年間250日の労働時間のうち半分の時間を廃棄物のそばで作業する」と言う想定で計算されており、8000bq/kgの廃棄物を処理した場合、年間0.78ミリシーベルトの被曝を受けるとされています。 そして、周辺住民に関しては、処分場から8メートルの距離をとった場合に、追加被爆が年間1msvになると言う想定ですが、そんな至近距離に住んでいる人がいるとは思われません。また、「追加的な線量が0.01mSv/年を超えないようにする」とありますが、これはクリアランスレベルと同じ基準です。上記クリアランス制度のHPにはこうあります。 >年間0.01ミリシーベルト(10マイクロシーベルト)は、人の健康への影響を無視することができると国際的にも認められています。>これを踏まえ、「放射性廃棄物として扱う物」と「放射性廃棄物として扱う必要のない物」を区分する放射能レベルをクリアランスレベルとし、人の健康への影響が1年間あたり0.01ミリシーベルトを超えないよう定められています。 つまり、8000bq/kgの基準であっても、一般市民に与える影響はクリアランス制度を満たした廃棄物が与えるのと同じに納まる様に、基準設計されているわけです。実際、IAEA(国際原子力機関)はこの基準に関して 「既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれている」 と言う評価を下しています。国の捏造だとか言われないために、リンクを貼ります。 福島第一原子力発電所外の広範囲に汚染された地域の除染に関するIAEAミッション(2011年10月7日~15日)の最終報告書 >For example, incinerator ash having activity levels of 8000 Bq/kg or less is to be disposed of at conventional controlled type landfills without any further conditioning. The Team finds this approach to be fully aligned with established international practices.(8000bq/kg以下の焼却灰に関しては、それ以上の調整を行う事無く従来型の埋立地で処分されるべきである。本チームはこのアプローチを既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれているものと評価する) 徳島県は「IAEAの国際的な基準に基づき」広域処理に反対すると言っているようですが、肝心のIAEAの意見がご覧の通りなので、この点から見ても徳島県の見解は明らかに誤っています。 と言うより、徳島県は広域処理受け入れ拒否のために、国が法制度を蔑ろにしているという印象操作を図っているとしか思えないのですが。素人の私でも、検索を駆使すればこの程度の情報は集まるのですから、法や環境問題の専門家である県環境課の人間がこれらの情報を知らないとは到底思われません。もし本当に知らないのだとすれば、それはそれで大問題です。 徳島名物と言えば「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々」の阿波踊りですが、この見解に関しては徳島県が躍らせる阿呆、見解に賛同して広域処理に反対する連中が踊る阿呆、どっちも同じ阿呆であると言う以外に言うべき事はありません。
2012.05.02
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