名無し人の観察日記
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原子力基本法改正案……正確には、原子力規制委員会設置法案の中に含まれる、原子力基本法の一部改正案に「安全保障に資する」という文句が入ったのを見て「日本は核武装をするつもりだ!」 と吹き上がっちゃった人々がいます。大は中国から小は個人ブロガーまで。まぁ、国家レベルだと日本を責めることで何らかの利益・外交上の優位を得ようという意図があると思うので、いつもの国々(中国とか韓国とか)が騒ぐのは当然だと思いますが、日本国内でも同様の主張をする連中がいるのは始末に負えません。 社説:原子力基本法 「安全保障目的」は不要>原子力行政の憲法とも言うべき原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」との目的が追加された。>真意はどこにあるのか。将来、核兵器開発に道を開く拡大解釈を招かないか、原発をはじめとする原子力の開発・利用の有効性を強調する意図なのか??などなど、さまざまな臆測を呼んでいる。 お前が憶測を広めてるんだろ、とツッコミを入れたくてたまらない内容です。 個人ブロガーならともかく、大手マスコミまで同じように騒ぐのですから、本当に日本のマスコミはどうしようもねぇ馬鹿ばかりが揃っていると言わざるを得ません。 ということで、久々の日記は「安全保障に資する=核武装」という発想がどれだけ馬鹿げているかの検証をしたいと思います。 まず基本的な事実から。今回提出された原子力規制委員会設置法案(原子力基本法改正案)には、確かに「安全保障に資する」という一文が含まれています。 原子力規制委員会設置法案(PDFファイル) 9ページより抜粋 >第十一条 原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の一部を次のように改正する。>第一条中「利用」の下に「(以下「原子力利用」という。)」を加える。>第二条中「原子力の研究、開発及び利用」を「原子力利用」に改め、同条に次の一項を加える。>2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。 これを現行の原子力基本法と比較するとこうなります。 現行第二条原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。改正案第二条1 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。 見ての通り、今回追記される部分は改正以前から「平和の目的に限り、安全の確保を旨として」原子力開発を行うことを目的とする、と明言している第二条の補則であり、第二条の大目的である「原子力の平和利用」についてはなんら方針を変えていません。 実際、国会で共産党の吉井英勝議員が安全保障の意味について質問したときは、政府側は「原子力施設及び輸送時における核物質の防護」「核物質の軍事転用を防止するための保障措置」 という観点から、国民の安全を保障する事を目的としてこの一文を挿入した旨の回答が行われています。 これらは原子炉等規正法において扱われるテーマで、以下のような規定があります。 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 >第五十三条 文部科学大臣は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。 >一 核燃料物質が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。 この原子炉等規正法の項目も、今回の原子炉関連の法改正案ではなんら変更されません。 また、第二条の追記部に「確立された国際的な基準を踏まえ」という文がある事も注目すべきです。 日本の軍事面における安全保障上の原子力に関する国際基準で最も強い拘束力を持つのは、核拡散防止条約(NPT)です。NPTでは第三条において核兵器、またはそれに転用可能な核物質の拡散を防止する義務を加盟国が負うことを明記しています。 核拡散防止条約 第三条1 締約国である各非核兵器国は、原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するため、この条約に基づいて負う義務の履行を確認することのみを目的として国際原子力機関憲章及び国際原子力機関の保障措置制度に従い国際原子力機関との間で交渉しかつ締結する協定に定められる保障措置を受諾することを約束する。この条の規定によつて必要とされる保障措置の手続は、原料物質又は特殊核分裂性物質につき、それが主要な原子力施設において生産され、処理され若しくは使用されているか又は主要な原子力施設の外にあるかを問わず、遵守しなければならない。この条の規定によつて必要とされる保障措置は、当該非核兵器国の領域内若しくはその管轄下で又は場所のいかんを問わずその管理の下で行われるすべての平和的な原子力活動に係るすべての原料物質及び特殊核分裂性物質につき、適用される。 第二条追記部は日本がNPTを遵守することを求める内容でもあることになります。 つまり、原子力を軍事利用する事への歯止めはそのまま残されていることになります。 また、核武装危惧派は安全保障という言葉を捉えて、直ちに軍事的な意味だと解釈しているようですが、安全保障とは軍事面だけを意味する言葉ではありません。例えばこれ。 食料安全保障について(農林水産省) 【エネルギー安全保障】(外務省) 食料とエネルギー資源の差はありますが、どちらも「国民のために必要なものを確保する」という観点で「安全保障」の言葉を扱っており、日本政府として安全保障=軍事オプションという定義ではない事がわかります。「安全保障に資する」という一文だけで核武装を推進すると解釈する人は、日本語読めないと思われても仕方がないバカか、もしくは日本政府を叩くためなら平気で文章や単語の解釈を歪めることを躊躇わない確信犯でしょう。
2012.07.17
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