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この「自衛隊と災害救助」も4回目です。Kimdongsungさんが日記の後編をアップしてから載せようと思っていましたが、どうやら他の方へのレスに忙しいようですので、先にこちらも前編にお答えしましょう。>ですから「要救助者の捜索・救助」については、自衛隊とは別の救援組織が必要だ、ということではないのでしょうか。>生存者の生活支援も重要ですが、まず救助が先であり、そのために自衛隊が役に立たないというのであれば、別の組織が必要でしょう。 ご自分でハイパーレスキューを紹介して置いて忘れましたか? あと、国際緊急援助隊もそうですよ。「要救助者の捜索・救助」=HR、国際緊急援助隊「生存者の生活支援」=自衛隊(軍隊) という分業体制になっているのだと、何度説明すればわかっていただけますか?>本当に人命が大切ならば、そういう資金や時間をかけるべきではないのでしょうか。もちろんそういう組織がすぐにできるとは考えません。しかし世界中の軍隊にかけるお金の半分でもそちらに回せば、数万人の精鋭を世界規模で育成するのは難しい作業ではないでしょう。軍隊の装備というのはそれこそ「とてつもない資金」を食っています。現状は、軍隊は必要だが人命救助は必要ない、という状況に見えます。 貴女は「軍隊の装備」と言うと武器弾薬の類しか思い浮かんでいないようですが、その中には災害時の人命救助にも使えるものが豊富に含まれています。大は空母から、小はロープ・ザイル類まで。 災害時には「軍隊を救援に使う」が基本的な考えになっている以上、軍隊を減らせば災害救助部隊が増えると言う考え自体が無意味です。>ですから彼らと日頃から「共同訓練」をするべきだと思います。>学校の避難訓練ではありませんが、世界規模で「災害対策訓練」のようなものを行い、現地防災組織との調整の訓練、避難場所や救助方法の確認、等を行えるようにならないでしょうか。>方向性として、現地組織でできることと専門救助隊のできることをあらかじめ分業しておき、調整の方法まで決めておくべきです。>大勢を送り込めないのではなく、大勢を送り込めるような体制をつくっていないだけです。 前半までは同意。私も、もう少し災害救助を国際共同でやる事を想定した訓練があってもいいと思います。後半に関しては、後でまとめて論じましょう。>これは現状ができないということで、絶対に不可能ということではありません。>国にもよるでしょうが、たとえば日本ならば学校や大きい公園などのような、避難場所に指定されている場所があります。それと同じように「救助ヘリ指定場所」をつくり、細かい単位でヘリが降りられる場所を決めておく手もあります。>すべての場所に降りることはできなくても、そのような場所をたくさん決めておけば、かなりの数のヘリを送ることはできます。>被災国の近くの国に「救助ステーション」的な場所を設けて、そこからヘリを飛ばす手もあるでしょう。>救出した人を運ぶ場所を決めておいて、ヘリでピストン輸送する手もあるでしょう。>私のような素人ではなくプロが考えれば、もっと色々な手段は考えられるはずです。>要するに現状は、国際レベルでの災害救助の体制ができていないということで、「大人数を送れない」ということは、これから解決されるべき課題でしかありません。>本気で各国が取り組めば、少なくとも現状よりははるかに大規模な救助組織の活動が可能になるはずです。 ええ、既に素人である貴女が考える程度の事は、規模の大小はありますが、何処の国でもやっています。災害が全く起きない国など存在しないのですから。やった上で現状がこれです。スマトラ地震被災地では災害の規模の大きさと、津波に対する想定の甘さが、こうした事前の準備だけでは対応しきれない状況を生みました。もしこれが大規模なサイクロン程度のものであれば、十分被災国の防災組織と事前準備だけで対応できたでしょう。 >軍隊のバックアップと被災者のバックアップは、量的にも質的にも異なる面がたくさんあるはずです。>実際問題として、被災者のための輸送や防疫のための訓練を十分している軍隊が、どのくらい存在するのでしょうか。>自らの部隊のためではなく、一般の被災者のための輸送のために十分な装備を持った軍隊が、どのくらいあるのでしょうか。>同じ輸送や防疫でも、軍隊用のそれと一般用のそれでは様々な点で違いがあるはずです。そのような両方に対応することは、軍隊としての「性能」にはマイナスになります。>軍隊として不必要な性能を持った装備や部隊が、どのくらい存在しうるのでしょうか。>私にはどうも、災害対策の費用をけちっているようにしか思えません。 これらはほとんど全て貴女の間違った思い込みです。軍隊も被災者も同じ人間である事には変わりません。ですから、バックアップの質については同等のものです。 軍隊が持つ輸送手段、防疫設備が一般用と違うのは確かですが、それは「危険な戦場でも使えるように丈夫にしてある」と言う事です。そして、丈夫であるために「被災地に持っていっても安全に使う」事が出来ます。軍隊としての性能にプラスなら、被災地での使用にもプラスです。 今回の地震では海岸沿いの道路が津波で崩壊するなどして、民間車両ではとても通行できないような状態になっていますが、軍用輸送車両はそうした危険な場所を突破して、被災地に到達できる性能を持っています。 良いですか? 災害の被災地と言うのは「戦場並みに危険な場所」なのです。軍隊と言う一番危険に対応できる組織が災害でも活躍できるのはその点にあります。 >私が「実際に行われるかどうかに関係なく」と書いたのは、戦闘が行われていない「抑止」の状況でも、軍隊の本質は変わらないという意味です。>軍隊が脅威を抑止するというのは、要するに他国の脅威を抑止するための脅威を持つということに他なりません。仮に戦闘が実現しないにしても、軍隊が抑止力を持つこと自体が「暴力を見せることによる問題の解決」なのです。>ヤクザが、実際に使わないからといって、拳銃を持っていいということにはならないでしょう。もし本当に暴力が行われないということになれば、軍隊の抑止効果はなくなってしまいます。>つまり抑止効果も「場合によっては殺すぞ」という脅しであり、そういう脅しの相手と民主的に共存することはできません。 いい加減に「暴力と民主主義は相容れないもの」と言う誤った考え方を捨ててください。民主主義をとる国が、まさにその民主的な決断として軍隊を保有し、あるいはその実力を行使しているのが世界の実情です。貴女は、世界中の軍隊は全て国民の意思に反して政府や政治家が勝手に設立したものだ、とでも思っているのですか? 前にも申し上げましたが、軍隊と言うのは目的達成のための「手段」です。言い換えれば「道具」です。道具を正しく使うか否かは、政府、民主主義政体下ではそれを選んだ国民の心がけによるものであり、道具自体がそれを左右するものではありません。左右すると貴女が考えているのであれば、それは「武道家は必ず人を殴る」「包丁は必ず人を刺すのに使われる」と言うのと同じレベルの妄言です。
2005.01.28
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なんだか、Kimdongsungさんのブログはえらいことになっているようですが、昨日の続きを載せようと思います。>私はここで、自衛隊を排除しようと言いたいわけではありません。軍隊がそもそも災害救助のための組織でない以上、災害救助のための専門部隊をむしろ「排除」し、自衛隊で代用しようとするのは災害救助のために有害である、と言っているのです。 私には排除しようとしているようにしか見えません。 「自衛隊を災害救助隊にしてみては」「自衛隊をどうするか」 といった日記で「自衛隊を災害救助部隊に変えよう」と言うのは何度も主張されている事ではないのですか? その度に私や他の人もみんな「自衛隊と災害救助を分けることは効率的ではない」と言い、その裏づけとなる考え方も主張してきたはずです。「自衛隊で災害救助を代用する」のではなく、貴女が「災害救助にも使える自衛隊を他で代用しようとしている」のです。>軍隊の目的と行動原理と言われていますが、今までのどこの国の軍隊でも人を殺すための訓練を行ってきていないことはないでしょうし、そのための装備を持っていないこともないでしょう。ほとんどの軍隊は、敵対する相手を人間として見ない習慣をつけようとしている(そうでないと殺せない)ことも歴史が証明しています。>軍隊や政府が言っている建前上の話ではなく、実際に軍隊が行ってきたことを考える時、軍隊は相手からすれば「人殺し集団」でしかありません。それはイラクやアフガンでのアメリカ軍、また先の戦争での日本軍などだけではなく、ほとんどすべての軍隊について当てはまる要素だと思います。>私は軍人を差別する気はありませんが、軍隊という組織の本質は「きれいな仕事」に適応できないものだと考えます。 おそらく、貴女が自覚して軍隊への差別を行っているとは、私も思いません。ただ、無意識のうちに差別していると思います。「人殺し集団」という言い方にそれが現れているように見えます。 何度もいいますが、軍隊は「人殺し」「破壊」を「目的にしている」のではありません。政府が(そして、それを支持する国民が)物理的力による問題解決を求めた時に、その「手段」となる存在です。 政府が「災害救助」の手段として物理的な力の行使を決定し、軍隊がそのニーズに応える能力を持つならば、災害救助にも出動します。それだけの事です。 >イラクでアメリカ軍は尊敬されているのでしょうか。日本で北朝鮮軍は尊敬されているでしょうか。日本人を拉致したのはおそらく北朝鮮の軍関係者でしょうが、その人たちをナナシイさんは尊敬されますか。もしその当事者が軍隊を引き連れて日本に来たらどうなるのでしょうか。前にも日記で書いたと思いますが、もし北朝鮮軍が新潟に救援に来たら、新潟の人はその軍隊を尊敬できるでしょうか。「軍隊の派遣」とはそういう意味です。 現時点で交戦中あるいは準交戦中の勢力を持ち出してくるのは多少フェアではない気もします。それはもちろん、概ね尊敬されていないでしょうね。北朝鮮軍に関しては……彼らが祖国に忠誠を捧げている姿勢に関しては尊敬できますが、その結果として行った行為に関しては、当然批判の対象とします。 では、交戦中で無い国、あるいは友好国の軍隊が救援に出動したらどうでしょう? 例えば、インド西部地震(2001年1月26日)や、トルコ大地震(1999年8月17日)救援のために援助物資を運んだ海上自衛隊の護衛艦については、ちゃんと感謝の声が出ていますよ。 また、北朝鮮軍が新潟に救援に来たら……と言う仮定の話をするのであれば、もし東京で大地震が起きた時に、インドネシア軍やベトナム軍、トルコ軍などが救援に来たら、貴女は尊敬しますか?>むしろナナシイさんたちの方が北朝鮮などに対して「あれは殺人集団で、いつ一般人を殺戮するかわからない」という差別観を持っているように見えます。 それは仕方ないです。前科がありすぎですから。拉致事件もそうですが、ラングーン事件、大韓航空機爆破事件など、彼らが建国後に起こした無法については良く知られた事実です。>そこまで書かれるのであれば、それが「普通」である証拠を出してください。ナナシイさんのお考えの方が「日本人的お人好し」に見えます。 では、上記のインド西部地震において、自衛隊輸送の援助物資に対し、現地行政長官から感謝の言葉「一番必要な物をいただいた」。 次に、ホンジュラスのハリケーン災害に国際緊急援助隊として出動した自衛隊の医療部隊の活動に対し、スターク国際協力庁長官は次のように述べています。「今回、日本政府から派遣された国際緊急援助隊の皆様を心より歓迎する。日本チームには被害の大きかった地域を重点に医療活動及び防疫活動を行っていただくことを期待している。ホンデュラス政府及び国民の名において、日本政府、日本国民に感謝を申し上げる。」 まだ、必要ですか?>日本は東南アジア諸国に対して、未だに経済的な「侵略」をしているという見方があります。>どういうことかというと、開発途上国の開発について当事国のためでなく日本企業のための開発が行われ、その「護衛」として自衛隊が使われているわけです。そのような国の人々が、自衛隊が救助に来た時にどこまで本気で感謝してくれるのか、私にはわかりません。たとえばインドネシアの国防省は「自衛隊の当面の活動期間は3ヶ月(でよい)」マレーシアの国防省は「沿岸国の主権と矛盾しない範囲で協力を」などと、普通なら救助組織に言うはずがないようなことを述べています。 誰の見方か知りませんが、それを「侵略」と言うのは不適当かつ不親切です。確かに、ODAなどで日本企業が開発事業を受注する事はありますが、それはダム建設などの、当事国に建設技術がない場合に限られます。また、そうしたものの護衛に自衛隊が派遣された事などありません。あると言うなら証拠をお見せください。 そして、主権のある国が他国の援助部隊受け入れに期限をつけるのは当たり前です。いつまでも援助を受けるのは国の面子にも関わりますし、イラクのように行政組織が完全に壊滅しているのでなければ、三ヶ月も経てば大抵の国は自力復興への体制作りを整備できます。そこまでの手助けをするのが国際援助です。>私から見ると、自衛隊を見て東南アジアの人々が不安にならないと思う方が日本(軍)と東南アジアとの今までの関わりがわかっていないとしか思えません。日本側の一方的な「洗脳」に会っているのでしょうが、それも非常におめでたい考え方だと思います。 では、こちらのアンケートを見て感想を聞かせてください。 こちらのページを見た感想でも結構ですよ。特に今回受け入れ当事国であるインドネシアの項は参考になるでしょう。>失礼な言い方になるかもしれませんが、この位の知識だから軍隊が破壊と殺戮のための機関ではないと考えられているように見えます。>もっと軍隊の歴史について「殺されている側」の視点からみてみることを、強くお勧めします。 早乙女勝元氏の「東京大空襲」や、有名な「アンネの日記」、原爆関係では「ガラスのうさぎ」「ふたりのイーダ」など、有名な反戦文学作品はいっぱい読んでますし、戦争について調べる過程で沖縄戦の悲惨さや、連合国軍の戦略爆撃を受けた日独諸都市の惨状、第一次大戦の塹壕戦の凄惨さについても知っていますよ。その上で私は今のように考えています。>水島教授の書いたことのどこに「差別」があるのか、具体的にご指摘ください。ナナシイさんの論理で言えば、ナナシイさんは一貫して明確にテロリストを差別してきており、そのことに気付いていないのは、ナナシイさん自身の大問題ともいわれてしまうんじゃないでしょうか。 水島氏にしても貴女にしても、「自衛隊(軍隊)は殺人『しかしない』集団である」と言う思い込みが強すぎます。貴女が過去の日記で紹介した水島氏の「大津波災害支援になぜ自衛隊なのか」でも、 「この救助ヘリは軍用ヘリとは異なり、人の命を救うという観点から作られている。同じヘリでも作られた目的と運用思想の違いに注目すべきだろう」「自衛隊の統合運用を経験することは、仮に災害救援という名目と内容で行われたとしても、米軍とともにこの地域における軍事活動を展開する足掛かりとなることは明らかだろう」 といった発言に、軍隊を忌まわしいもの、暴走するものとして遠ざけたいと言う意識が見えるのです。 また、水島氏の著作「君はサンダーバードを知っているか」では、サンダーバードが武装している事について「冷戦期の時代的限界」と言う趣旨の発言をしています。サンダーバードが悪人に狙われている、と言う設定を無視したものであり、武装に対する闇雲な忌避感の表れであると思います。 そして、テロリストに関しては、そんな犯罪者を一般人とは「区別」して考えるのは当たり前だと考えています。それを差別とは言わないと思います。 最後にもう一度いいますが、私はkimdongsungさんが「自覚を持って自衛隊を差別している」とは思いません。ですが、貴女の発言には、無意識の内にそうした差別が表れているとしか思えないのです。 貴女にも是非「殺されている側の論理」だけでなく、「殺すかもしれない側の論理」についても学んで頂きたいと言うのが、私の願いです。一つお勧めの書籍を紹介しましょう。 「軍事のイロハ―バカな戦争をさせない88の原則」です。少し難しい本ですが、一般の書店でも見つけやすいですし、分厚くもありません。是非参考になさってください。
2005.01.17
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kimdongsungさんの「国際救助隊について」で、以前の日記に対する反論を受けました。力の入った長文をありがとうございました。さっそく、こちらも可能な限りお答えしたいと思います。○消防研究所の件について>「消防研究所」が潰されることには変わりありません。消防庁に業務が引き継がれることによって、その業務が発展拡大するのならいいと思いますが、その保証はあるのでしょうか。 結論から言えば、保証はありません。しかし、もともと消防庁も消防研究所も消防と防災に関する機関なのですから、敢えて分けておくのは非効率と言う考え方もあります。 kimdongsunさんの言い方が「消防研究所がなくなることで、防災関係全般が軽視される」と言う危惧に見えたので、そんな事はありませんよ、と言うつもりで統合の事を書きました。○ヘリコプターについて>使われていることと作られていることは違いますね。 その通りです。ですから、水島教授の「ビジネスや防災に『しか』」使われていないような書きかたはちょっと問題かなと思ったわけです。 ○効率の問題>ということは、災害での被害者救助そのものについては、>自衛隊は効率が悪いのではなく「無力」であるということになります。そうだとすれば、災害被害者救>助について自衛隊と別の組織が必要であることははっきりしているわけですから、なおさら「国際救助隊」が必要だと思います。 全く違います。 自衛隊が派遣されるのは、災害が発生してから時間が経ち、「要救助者の捜索・救助」よりも「生存者の生活支援」が重視される時期であり、それに適応した訓練と装備を持っているのが日本では自衛隊だけである、と言うことです。 kimdongsungさんは災害救助と言う仕事を一括に捉えているようですが、その中にも幾つかの段階があって、それぞれの段階において必要とされる技能と人数は全く違います。○国際緊急援助隊について>精鋭だから人数が少ないというのはどういう理屈なのでしょうか。なぜ災害救助隊を(世界組織として)数万人、数十万人用意することが今回のような災害の被害者を減らすために必要だと思います。軍隊や自衛隊に予算を割くよりも、このような組織のためにお金を使った方が、多くの人を救えるとは考えられないでしょうか。 どういう理屈も何も、精鋭と言うのは育成に時間もお金もかかり、元々多人数を揃えられない存在です。国際緊急援助隊として派遣されるような消防士や警察官は経験を積んで高い技能を持ったベテランばかりです。わかりやすく言えば、プロ野球のオールスターに出場するような優れた選手ばかりのチームに例えると良いでしょうか。 そういうベテランを数万人、数十万人と育成し、維持していくのはとてつもない資金と時間が必要です。 さらに言えば、現地での救助作業の主役となるのは、現地の防災組織や警察、軍隊などです。日頃から彼らと共同訓練をしているならともかく、実際には言葉も通じないような場所へ、現地防災組織とは指揮系統が違う部隊を送るわけですから、あまり大勢を送り込んでしまうと、逆に現地との調整に時間がかかり、効率的な救助を妨害します。>ですからこのような組織が至急に大規模に派遣されれば、かなりの人数の命が救われたと考えられます。なぜ「初期救助・医療を目的として派遣されるから」人数が少ない、ということになるのでしょうか。人助けのためにお金をかけるよりも、人殺しの組織で(も)ある軍隊にお金をかけることを優先するのが私にはどうにも理解できません。「初期救助・医療を目的として派遣される」という事は、救助部隊が迅速に現地へ移動しなければならない事を意味します。そんな時、人数が多い事はそれだけで移動の阻害となります。 多くても百人程度なら飛行機やヘリコプターを使用する事で、24時間以内に現地へ移動できますが、これが千人、二千人、あるいは万単位になると、飛行機では送りきれません。船を使う事になります。 そうすれば、現地への到着は遅れます。大勢を派遣する事と、迅速な移動は両立しないのです。「高い技能を要する任務である事」「大人数を派遣するのは難しい事」「隊員の育成が難しい事」「現地との調整」などの諸問題から、初期救助・治療チームの人数は少数にならざるを得ない、と言うことです。>ですから物資の輸送なり防疫なりに特化した組織があれば、その作業ももっと能率がいいのではないか、と言いたいのです。ノウハウを活かせることと、そのために訓練をしていることは意味が違います。 違いません。「ノウハウを活かせる」という事は、まさに「そのために訓練をしていること」です。 自衛隊は戦闘ばかりが任務な訳ではありません。物資の輸送・防疫を担当する部署がちゃんとあります。というより、そうした部隊のバックアップがなければ軍隊は戦えません。軍隊と言えども、食事をして服を着て、治療も受けなければならないのですから。 今回行く自衛隊の部隊はまさにそういう部隊です。食事や服や治療と言ったサービスをする相手が、同じ自衛隊から被災者に変わっているだけです。>ものを壊し人を殺す以外の方法で「除去」ができないのが軍隊の本質ですから、発生する可能性があるのではなく発生せざるを得ないということだと思います。もしネゴシエーターのよる交渉で対立の解決ができるのであれば、ほとんどの軍隊は不要になると思います。現状がそうでないのは、要するに軍隊の本質は暴力による問題の解決であって、その暴力(破壊と殺戮)が実際に行われるかどうかに関係なく、民主主義の思想と相容れないものです。 これは私の意見に対する貴方の完全な誤読です。私はこう書きました。「軍隊の目的は第一に、軍事的な自国への脅威を抑止、あるいは除去する事です。戦闘とそれに付随する敵兵の殺害は、前記の目的を達成する上で発生する可能性のある事象の一つに過ぎません」と。 なぜ「抑止」の方には目を向けないのですか? ネゴシエーターと言えども何の交渉材料も無しに交渉は出来ません。軍隊の武力と言うのは、その交渉材料の一つになりうるのですよ。 後編は日付が変わったらアップします。
2005.01.16
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自衛隊を国際救助隊に改組すべし、と言い続けている方がいます。それは間違った考え方だと何度言ってもわからないようです。それなら「わからないのか! わからないならそれで良い(byキャプテン・ハーロック)」と言って放置して置いてもいいのですが、それは態度として無責任ですので、最後まで付き合ってみたいと思います。 まず最初に、彼女や彼女が参考にしている水島朝穂早大教授の主張を見てみると、彼らはいくつかの勘違いをしている事に気付きます。 その1「軍隊よりも災害救助専門部隊のほうが効率が良い」 大間違いです。効率云々の問題ではありません。そもそも災害救助部隊と自衛隊では任務の質が全く異なります。 高度な救命及び救助のプロ集団でもある国際緊急援助隊は、今回のスマトラ地震被災地に約70名しか派遣されていません。消防・警察の精鋭でもあるため、人数が元々非常に少ないからです。国際消防救助隊も隊員数は約600名と少なく、被災地に一度に派遣できる人数は数十人に限られています。彼らには自衛隊のように数百~千人単位の部隊を送り込む事は出来ません。 と言うより、最初からそのような大人数での活動を想定していない、と言っても良いでしょう。国際緊急援助隊、国際消防救助隊ともに、災害発生から72~96時間(これを過ぎると要救助者の生存確率が一気に低下する)までの初期救助・医療を目的として派遣されるからです。これは今回の自衛隊の派遣の目的である物資の輸送や、災害後の衛生状況・治安の悪化している状況での防疫・給水とは全く異なる分野の救援活動であり、一括して扱う事は出来ません。 その2「軍隊は救助の役に立たない」 kimdongsungさんは「人殺しの訓練を主体にしている組織が人助けに駆り出されるのは、能率の悪い作業の極致ではないかと思います」と述べていますが、これは大きな間違いです。確かに災害救援と戦闘はまるで別物に見えます。 しかし、上記のように、自衛隊が行う救援活動は「物資の輸送」「被災地での防疫」などであり、これは自衛隊が持っているノウハウを十全に活かせる任務です。 自衛隊は戦火によって物流のシステム自体が破壊・麻痺してしまった状況でそれを再構築し、物資をおくりこむための訓練を受け、その能力を持っています。そして、物流が破壊されていると言う点は災害の被災地も同じです。また、不衛生な場所での医療行為にも熟達しています。イラクでも使われている自衛隊の給水装置は、雑菌が繁殖している濁り水から、手術の際に傷口を洗浄するのに使えるほど清潔な水を作る事が出来ます。 その3「軍隊は人殺しの訓練ばかりしている」 上で引用したkimdongsungさんの発言中に含まれていますが、これも大きな間違いです。軍隊は他者を殺害する能力を持っていますが、それが目的で存在しているのではありません。 軍隊の目的は第一に、軍事的な自国への脅威を抑止、あるいは除去する事です。戦闘とそれに付随する敵兵の殺害は、前記の目的を達成する上で発生する可能性のある事象の一つに過ぎません(ちょっと不謹慎な言い方ですが)。 軍隊(自衛隊)が何故存在するのか、どういった目的と行動原理を持つのか、と言う考察無しに彼らを殺人者扱いし、災害救助と言う「綺麗な仕事」から排除しようとするのは、職業差別以外の何者でもありません。それこそ、かつて反戦教師が自衛隊員子弟へ行った陰湿な嫌がらせのような、恥ずべき行為を未だに続けている事になります。 その4「軍隊の派遣は相手国への脅威である」 これも大きな間違いです。 率直に言えば、世界の中で強固な「軍隊アレルギー」が存在する国は、日本だけと言っても過言ではないでしょう。世界中どこに行っても、軍隊および軍人は尊敬される職業とされています。 軍隊を見て「あれは殺人集団で、いつ一般人を殺戮するかわからない」という差別と言うほかない偏見を持っているのは、一部の反戦平和原理主義者だけだと考えて差し支えないと思います。 彼らの常識から見れば、自衛隊が派遣されれば、即座に被災地の住民は「いつ殺されるか」と不安にならなければならないのでしょうが、被災者側にはそんな意識はありません。「助けに来てくれた!」 と安心するのが普通です。反戦平和原理主義者が自衛隊を見て不安になるのは別に彼らの自由ですが、被災者を含む他者が同じように考えると思うのは「人はみんな侵略軍と救援部隊の区別がつかないバカである」 と言っているのと同じです。これほど他者の知性を軽んじた考え方も珍しいと言えるでしょう。 ここまで書いてみて改めて思う事ですが、kimdongsungさんにしても水島氏にしても、自衛隊や軍隊に対して、私程度でも良いから知識を持っているかどうか、非情に疑問です。 ただ単純に、「軍隊は破壊と殺戮のための機関である」と言う誤ったイメージを持ち、それによって軍人を差別し、彼らを遠ざけておけばそれで平和が来る、と言うごく単純な考え方しか持っていないように思えます。 そして、それが全くの差別でしかないと言う点に気付いていないのが大問題です。そのことに早く気付いて頂きたいものです。
2005.01.11
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スマトラ沖地震の津波災害による被害が拡大の一途をたどっているようです。既に死者は十五万人に達し、非公式ではありますが、三十万~五十万人に達する恐れもあるとか。地震による死者が史上最も多かったのは中国唐山地震(約二十四万人)ですが、それを超える人類史上空前の大災害になる可能性もあります。 そうした中で、政府は五億ドルの無償支援とともに、約八百人規模の自衛隊の派遣を決定し、既に先遣隊は現地へ向けて出発しました。タイ・プーケット島沖合いで漂流者の捜索に当たったインド洋派遣部隊に続く自衛隊の人的貢献です。大災害に打ちのめされた現地の復興の一助になる事を願い、派遣される自衛官の皆さんの無事と健闘を祈りたいと思います。 このスマトラ地震被災地への自衛隊派遣に対しては、海外派遣とは言え、国内からそれほど大きな反対の声は出ていないようです。災害派遣が自衛隊の主要任務として認知されており、また現地の悲惨な様子が連日報道され、お金だけでない何かで貢献しなければ、という気持ちが多くの人々の中にあるからでしょう。 ところが、Googleなどで調べてみると、ちょっと気になる論調が目立つのがわかります。「イラクにいる自衛隊を引き揚げて、スマトラ地震被災地に投入すべき」 というものです。 こうした論調は新潟中越地震の時も見られましたが、相変わらず出てくる事にちょっと落胆を覚えます。おそらく、こうした意見を唱える人々が中越地震、スマトラ地震の被災者に対して同情を感じ、助けなければ、と思っていることは間違いないでしょう。それを否定したくはありません。 ですが、それを自衛隊のイラク撤退に繋げるのはどうかと思います。被災地派遣もイラク派遣も重要性に変わりはなく、トレードできる性質のものではないはずです。イラクから撤退して被災地へ! と言っている人々は、意図しているかどうかに関わらず「災害をダシにして自分の政治的要求(=イラク撤退)を主張している」「被災者は助けなければならないが、イラク国民は見捨てても良いと主張している」 と言う恥ずかしい行動を取っているのだ、と自覚して欲しいものです。 さて、国内での反対の声は低いスマトラ地震被災地派遣ですが、隣国ではこんな声が出ていたようです。(12月29日付 東亜日報オピニオン欄)「蔵から人情」「南アジアを襲った地震と津波の被害が大きくなるや、日本政府は被害国に3000万ドルを無償援助し、米2400tを提供することにした。・・・町村信孝外相は、「アジアで大きな災害が起きただけに、あちらの要請を待つことなく我々が積極的に対応しなければならない」とし、今回の援助が「隣人の道理」であることを強調した。 インド洋で米軍への給油任務を行なっていた海上自衛隊の艦艇3隻もタイのプーケット海域に投入された。自衛隊が海外の災害救護活動に乗り出すのは今回が初めてだ。・・・南アジアの強震に乗じてこっそりと自衛隊の活動領域を広げようとする日本右翼の内心が窺えるようで苦々しい思いだ。 ・・・援助の規模を見ると、「蔵から人情」という諺が実感される。当初1500万ドルの援助を発表した米国は後に2000万ドルを増額して3500万ドルを援助した。・・・東京のある外交筋は、「日本の大規模援助は、国連安全保障理事会への進出のために支持勢力を増やすうえで役に立つという計算も作用しただろう」と話した。 韓国は、援助発表が遅れただけでなく金額も60万ドルに過ぎず、体面も取り繕うことができなかった。遅れて200万ドルに増やしたが、東南アジアとの関係を考えると相応の水準だとは言い難い。援助金額の決定にも国際政治と国家利益の論理が作用するのが現実だ。無論、豊かでもない境遇で無理に多くの金を出せば、国際社会の物笑いになるだけだろう。直ちに力がないなら、空いている蔵の隙間を埋める努力からすることだ。」(以上引用終わり 強調部分は私の編集によります) こういうのを「下司の勘繰り」と言うのでしょうね。援助額を自分の懐具合と現地のニーズで判断せず、体面を保つためだけに決定している国のことだけはあります。反戦・反自衛隊団体には韓国に妙に甘い人たちがいますが、こういう下卑た論調にだけは同調して欲しくないものです。
2005.01.06
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皆様、明けましておめでとうございます。昨年は「災」の年でしたが、今年は少しでも明るいニュースの多い一年になって欲しいものだと思います。 さて、年末年始休みの暇つぶしに、図書館で借りてきたジョエル・アンドレアス著「戦争中毒 アメリカが軍国主義を抜け出せない本当の理由」を読んでみました。本当は「テロリストは誰?」を読みたかったんですけど、何処にもなかったので。まぁ、これも同じ「グローバルピースネットワーク」が訳したものですから、平和運動団体に所属する人たちはどんな考えを持っているのか? と言う参考にはなるでしょう。 さて、感想ですが……クラクラしました。と言っても、「アメリカがいかに悪い国か」と言うことではなく、「プロパガンダを行う人間はどんな風に人を騙しにかかるか」と言う事に、ですが。 この本ではアメリカが歴史上介入してきた紛争や戦争についての解説がされているのですが、非常に見方が一面的です。「とにかく悪いのはアメリカ」と言うスタンスです。特に酷いのは朝鮮戦争に関する記述です。 「最大の軍事衝突は朝鮮半島で起きた。政府は直接介入する事を決め、西洋の軍事技術を持ってすれば、アジアの軍隊など敵では無いと思い知らせてやる事にした」「アメリカの軍艦、爆撃機、大砲は、朝鮮半島の大半を廃墟にした。450万人の朝鮮人が死に、そのうちの4人に3人は一般市民だった」 ……なんだか、これだけ見ていると、血に飢えた米軍がいきなり何の罪もない朝鮮半島の人々を殺戮して回ったようにしか見えないのですが。作者・訳者の脳内では、北朝鮮が韓国に侵攻した事や、その背後に中国やソ連がいて援助を行った事などは存在していないらしいです。 この他にも、アメリカの一次大戦参戦のきっかけとなった「ルシタニア号事件(ドイツ潜水艦が撃沈した客船ルシタニア号に乗っていたアメリカ人120人以上が死亡した事件)」の事については全く触れていませんし、二次大戦でも、日本が何もしていないのに、いきなり原爆を投下したかのような書かれ方です。 確かに、個々の事件や戦争に関して、そう言う事が歴史上存在した事は事実なのですが、この本では「なぜそんな事が起きたか」については全く触れていません。 正確に言うと、「なぜ?」については触れてはいますが、それは手垢のついた「戦争によって資本家が儲かるからだ!」と言う軍産複合体陰謀説だけです。これがいかに間違っているかは、イラク戦争によって多額の軍事支出をした米政府が予算の引き締めをした結果、新兵器の開発計画が中止される等の事態が起きている事を見れば明らかです。 それ以前に、アメリカと言えど軍需産業でない産業のほうが遥かに多く、そうした産業は戦争が起きると景気が冷え込んで打撃を受けるので、戦争には反対するものなんですが。それとも、そうした産業は軍需産業とは違って、政治家と癒着しないきれいな産業なんでしょうか? そんなわけないと思いますが。 また、過去のアメリカの侵略や戦争についても、何処でどれだけの人間を虐殺したとか、これだけの人数を殺戮したと言う点を上げて非難していますが、そうした侵略行為は当時としては合法であったものがほとんどであり、それを現在の価値観で断罪するのは無意味と言えます。現代のパナマ侵攻やコロンビア政府軍援助もアメリカの侵略行為として非難していますが、その背景にアメリカがかかえる深刻な麻薬問題があることについては、やはり触れていません(コロンビアは麻薬の一大産地で、パナマは中継地だった)。 そして、「戦争中毒」はマンガ形式をとっており、それがこの本の「わかりやすさ」でもあるのですが、同時にそれが最大の問題点にもなっています。 作中に登場するアメリカの政財界の要人は、そのほとんどが実際の人物像に関わらず、欲望に血走った目をしてでっぷりと肥え太り、葉巻をくわえたいかにも人品卑しげな姿で描かれています。そして、その口からは粗野で下品な言葉が吐き出されています。あまりに露骨な印象操作で、失笑がこぼれてきます。 こうしたやり方、どこかで見た事があると思ったら、「ゴーマニズム宣言」ですね。平和運動をしている人たちはあのマンガを蛇蠍の如く嫌っているはずですが、自分たちが同じ事をしているのはどうしてなんでしょうか? こんなツッコミどころ満載の「戦争中毒」ですが、レビューを見ると評判は良いです。レビュアーはだいたいにおいて本の内容を信頼に値するものと思っているようですね。「わかりやすい」「アメリカが戦争大好きな理由がわかった」「アメリカを知る良いテキスト」 等と書かれていますが、このレビューを見て気付くのは、どうもレビュアーの皆さんはこの本に書かれたアメリカの歴史を、それまで知らなかったのではないか、と思われる事です。 知らなかった人に、こうした形で一面的な情報を、漫画と言うわかりやすい形で伝えれば、それは大きなインパクトがあるでしょう。ですが、ちゃんと戦争に至った事情を語らないのは悪質でアンフェアなやり方です。 目的のためなら手段を選ばないというのなら、この著者にアメリカを批判する資格は無いと私は考えます。 一応言っておきますが、私はアメリカのやる事に必ずしも賛成するものではありません。かの国の政策や行動に対して批判やツッコミどころはいくらでも持っています。とは言え、この本みたいに一方的かつ誤った批判の仕方はしたくないですし、すべきでは無いと思っています。
2005.01.01
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