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2005.08.07
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国府田武『ベギン運動とブラバントの霊性』


本書の中で考察される時代は、12-14世紀。舞台は、ブラバント(現在のベルギー)地方です。
本書の構成は、以下の通りです(細かい章立て・節立ては省略します)。

第1部 サン=ティエリのギョームの霊性
第2部 ベギン運動とその霊性
第3部 ルースブルークの霊性

第1部では、サン=ティエリのギョーム(1075/80頃-1148頃)と、当時の有名な神学者であるクレルヴォーのベルナールが考察の対象となっていて、二人の霊性の類似点、相違点が指摘されます。
第2部では、卒業論文の頃から私が考察の対象としているジャック・ド・ヴィトリの著作が史料として使用されているので、ノートもけっこうとりました。

そもそもベギンとは、敬虔な女性たち、です。彼女たちは正式な修道誓願をたてていませんので、修道女ではありません。財産を放棄する義務もなければ、ベギンであることをやめて結婚することもできます。
彼女たちが共同生活を行った場所はベギナージュと呼ばれます。これは、教会、施療院、住居などからなる施設の総合体です。
ベギンは、ベギナージュにいる間、貞潔をまもり、指導者に従い、質素な生活を行います。手仕事を行い(繊維産業が中心のようです)、病人を看護し、葬送の手伝いをし、子どもの初歩的な教育に携わり…。
いま、ベギナージュでの共同生活について紹介しましたが、彼女たちの生活形態、社会的な役割などは、地域・時代によって異なるので、簡単に一般化するわけにはいかないことを付け加えておきます。なお、彼女たちの同様の生活形態を送る男性たちはベガルドと呼ばれました。しかし、彼らは少数だったため、本書ではほとんど言及されていません。
ベルギーの歴史家フィリペンによれば、ベギン運動には4つの段階があります。(1)個人のイニシアチブによる自然発生的運動。(2)司祭とベギンの指導者のもとでの小さな共同体の形成。(3)ベギナージュで俗世から隔離されて住み、独立された身分が承認される段階。(4)世俗的・宗教的法人格を与えられ、ベルギーに特徴的な独立した「ベギン小教区」をつくることが認められる段階、です。
ベギンは、その宗教的な性格から、一般の(男性)聖職者から、異端視されることもありました。その中で、先に名前を挙げたジャック・ド・ヴィトリ(1160/70-1240)は、ベギン運動を擁護した聖職者の一人です。
彼の『ワニーのマリ伝』(卒業論文では、『ワニーの聖マリア伝』と表記したのですが、ここでは本書に倣います)は、初期ベギン運動の中心的人物であった、ワニーのマリについての伝記です。これは、ベギン運動を擁護するために書かれた聖人伝であるため、批判的に読み解かれなければならない、と本書で指摘されています。ジャックは、マリの聖性を尊敬し、彼女の方が先に亡くなるのですが、ジャックは死後彼女のそばに埋葬されることを希望します。実際、彼の願いはかなえられたそうです。ジャックは、マリが病気でふせっている時、彼女のそばにいたということです。
さて、長くなってしまいました。第2部第3章では、ベギンの一人であるハデウェイヒという人物の霊性が考察されています。
以上第2部が、13世紀についてです。
第3部では、14世紀のルースブルーク(1293-1381)の霊性が考察されます。第2章では、ルースブルークと第1部で検討されたサン=ティエリのギョーム、ルースブルークとベギンの関係が論じられ、ルースブルークが先人から受けた影響が指摘されています。簡単な紹介になりましたが…。

次は、同じくベギン運動について扱っている上條敏子さんの著書を読んでいこうと思います。ジャック・ル・ゴフ『聖王ルイ』も、修士論文で使えそうな箇所がいろいろあるようなので(純粋に興味深い点も多いです)、どちらを先に読もうかと考えるところですが…。後者は1200頁以上ある大著なので、ノートはとらずにメモ程度にとどめるつもりですが…。





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Last updated  2008.07.12 21:13:47
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