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2010.05.06
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皆川達夫『中世・ルネサンスの音楽』


 初期中世から宗教改革の時代までの、ヨーロッパ音楽の歴史をたどる一冊です。私は音楽史に疎いですが、簡単な言葉で書かれた概説である本書は分かりやすく(流し読みをしてしまったところもありますが)、ヨーロッパ音楽の流れをおさえるには便利な一冊だろうと思います。
 本書の構成は以下のとおりです。

ーーー
中世・ルネサンス音楽のたのしみ
第一章 キリスト教と音楽
 1 古代音楽との断絶
 2 神への賛歌―東方教会聖歌

第二章 中世世俗音楽の隆盛
 1 自由な創作、新しい旋律
 2 典礼劇の発生
 3 吟遊詩人の歌
第三章 多声音楽の展開
 1 多声音楽の起源
 2 グレゴリオ聖歌の装飾
 3 ノートルダム楽派の音楽
第四章 新しい芸術(アルス・ノヴァ)の誕生
 1 都市と合理主義が生んだ音楽
 2 アルス・ノヴァの音楽家

 4 キャロルを生んだイギリス音楽
第五章 ルネサンス音楽をつくった作曲家たち
 1 ダンスタブルの貢献
 2 ブルゴーニュ楽派の音楽
 3 フランドル楽派の音楽

第六章 ルネサンス音楽の広がり―イタリア・フランス―
 1 マドリガーレの国―イタリア
 2 シャンソンの繁栄―フランス
第七章 宗教改革のはざまで―スペイン・ドイツ・イギリス―
 1 器楽音楽の繁栄―スペイン
 2 音楽を変えた宗教改革―ドイツ
 3 <涙のパバーヌ>を生み出した国―イギリス
日本と中世・ルネサンス音楽

あとがき
付録―ミサ通常文とその訳
中世・ルネサンス音楽史年表
索引
ーーー

 学生の頃に買うだけ買っていたのですが、ずっと読まずにいました…。が、今回読めて良かったです。
 昨年の西洋中世学会でも、また同学会の機関誌『西洋中世研究』創刊号でも、中世の音楽がかなりクローズアップされています。なじみがないとなかなか難しい分野ですが、学会では実際に音楽を聴けたので良い経験になりました。
 …それはともあれ。
 本書でいちばん嬉しかったのは、ミサの流れが簡潔に整理されていることと、付録ですね。西洋中世を勉強しながら、一度もミサや説教を聞いたことがないのがあまりに損だと思っているのですが、本書付録でミサ通常文がかかげられているのはとても便利です。
 ネタとして面白かったのは、市民に大人気の演劇についての一節。劇場の周囲の家々の窓や屋根から劇を見物する人々も少なくなかったようで、中には屋根から転げ落ちて亡くなってしまった方もいるとか(これは笑い事ではありませんが…)。天使の役や口上役のせりふに、「静かにお願いします」なんていう言葉もあるそうで、どれだけ人々が熱中していたかがうかがえますね。
 その他、内容とはずれますが、本書では皆川先生の個人的な体験も語られているのが楽しいです。たとえば、1970年頃、東京で「ダニエル劇」という宗教劇が上演されたそうで、そこに先生もライオン役で登場されたとか。そんなエピソードもまじえながら、やさしい言葉で語られていくのを読んでいくと、皆川先生は大学での講義もものすごく面白いのだろうなぁと想像します。
 なじみの薄い分野ということもあり、どれだけ頭に入ったかというと疑問ではありますが、楽しく読めた一冊です。

(2010/04/23読了)


※私は講談社現代新書版で読みましたが、2009年に、講談社学術文庫になったようですね。
学術文庫版の画像はこちらです。





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Last updated  2010.05.06 07:19:38
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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