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2011.12.29
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~講談社現代新書、1965年~

 フランス文学者、村松剛先生(1929-1994)の『教養としてのキリスト教』を紹介します。
 一般的なタイトルですが、「はじめに」でも書かれているように、本書の対象は、時代的には聖書がまとめられた時代に焦点を当てていて、テーマも、イエス・キリストの周辺(背景としてのユダヤ教・旧約聖書、処女懐胎、彼は何を説いたか、弟子たちの活動など…)に限られています。
 このように論点がはっきりしているのが良いですね。文体も読みやすかったです。
 まずは、本書の構成は次のとおりです。

ーーー
まえがき
はじめに


2 当時の資料はなにを語るか
3 『新約聖書』の成り立ち
4 『旧約聖書』はどんな意味をもつか
5 イエスはだれの子か
6 洗礼とは何か
7 キリスト教は愛の教えか
8 人間キリストの苦悩
9 復活の意味するもの
10 ローマへの道

索引
ーーー


 現代のエルサレムにある聖墳墓教会(イエスの墓の上に建てられた教会)、ゴルゴダの丘(ゴルゴダはアラム語で髑髏を意味するそうです)に触れた後、本書はそう問題提起します。

 著者は、この問題に解答するため、同時代の史料を5つ挙げます。それらの史料からは、イエスの実在を語る史料は、(聖書以外には)存在しないといえるそうです。また、イエスがベツヘレムで生まれたということも、否定できる材料があることも指摘され、興味深かったです。

 第二章では、特に『死海文書』をめぐる話が面白かったです。話には聞きますが、詳しくは勉強していないので…。イエスが生まれたとされる時代、ユダヤ教の中にもいくつかの宗派がありましたが、『死海文書』を残したグループはクムラン教団といわれるそうです。イエスに洗礼を施した洗礼者ヨハネに関する伝説が死海周辺に残っているそうで、彼とこの教団との間につながりがあったのではないかと指摘されているということも、興味深く読みました。

 さて、第三章で『新約聖書』の話をする中で、これが『旧約聖書』と対応するように作られていることが指摘され、第四章では『旧約聖書』の話になります。とても分かりやすいように構成が練られていると感じました。

 その後の流れで興味深かった点を挙げると、イエスは「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」と言っている一方で、怒りや呪いの言葉も言っている、ということです。


 数年ぶりに再読しましたが、上にも書いたようにポイントがしっかりしていて、構成もスムーズで、聖書やイエスに関する概要を理解するには良い1冊だと思います。





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Last updated  2011.12.29 21:46:45
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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