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2015.09.05
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( Jean-Claude Schmitt, Le corps des image , Editions Gallimard, 2002 )
~刀水書房、2015年~


 アナール学派第四世代で、中世歴史人類学を牽引する歴史家ジャン=クロード・シュミットの、最新の邦訳書です。
 既に刊行されている訳書は次のとおりです。

・ジャン=クロード・シュミット(松村剛訳) 『中世の身ぶり』 みすず書房、1996年
・ジャン=クロード・シュミット(松村剛訳) 『中世の迷信』 白水社、1998年
・ジャン・クロード・シュミット(渡邊昌美訳) 『中世歴史人類学試論―身体・祭儀・夢幻・時間―』 刀水書房、2008年
・ジャン=クロード・シュミット(小林宜子訳) 『中世の幽霊―西欧社会における生者と死者―』
 また、このブログでは次の論文も紹介しています。

・ジャン=クロード・シュミット 「中世の自殺」 (
Annales. Economies, Societes, Civilisations , 31-1, 1976, pp. 3-28
)

 本書は、シュミットが近年すすめている図像に関する諸論考をまとめた成果となっています。構成は次のとおりです。

―――


第I部 長い歴史
1 歴史家とイメージ
2 第二ニカイア公会議からトマス・アクィナスまで―西欧における宗教図像の解放
3 テクストとイメージ

第II部 イメージの信仰
5 紀元1000年前後における新しいイメージの正当化
6 画像の奉遷と力の移動/ウォルサムの石造磔刑像―イングランド、11-13世紀
7 磔にされたシンデレラ/ルッカのヴォルト・サントについて―13-15世紀
8 聖遺物と画像

9 夢の図像学
10 ビンゲンのヒルデガルト、あるいは夢の拒絶
11 想像力の有効性

訳者あとがき
原注
図版出典一覧
索引
―――

 シュミットの著作ということで目を通してみましたが、なじみのない分野ということもあり、大したことは書けそうにありませんので、簡単に興味深かった点についてメモしておきます。

 本論の中で一番面白かったのは、分量も厚い第7章です。ルッカにあるキリストの磔刑像について論じているのですが、この像の伝説のひとつとして次のような話があります。旅芸人が像の前で歌うと、像は右足の履き物を旅芸人に投げます。それを旅芸人が持って行くのですが、司教はそれを取り返そうとする。しかし像は、高額で買い取るよう命じます。お金を得た旅芸人は、貧者に金銭を分け与えた、というのですね。この伝説から、「右」がもつ意味、履き物が持つ意味などが、標題にもある「シンデレラ」などの物語もふまえながら論じられていきます。

「右」の重要性として、腕をかたどったケルンの聖ゲレオンの2つの聖遺物容器は、どちらも右腕だというのも興味深かったです(第8章)。

 第2章から第4章は、画像をめぐる中世の人々の態度を、通史的に論じています。訳者あとがきは、その的確な要約となっていて便利です。





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Last updated  2015.09.05 14:49:41
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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