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2025.11.15
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フィリップ・フォール(片木智年訳)『天使とは何か』
~せりか書房、 1995 年~
Philippe Faure, Les anges , Les Editions du Cerf, 1988
 著者のフィリップ・フォールは 1958 年生まれ、中世史、天使学を専門とする研究者で、オルレアン大学中世史講座の准教授でいらっしゃるようです( Wikipedia など参照)。
 本書は著者の最初期の単著のようです。
 まず、本書の構成は次のとおりです。

―――
はじめに
第1部 天使とは誰か
 第1章 多神教世界の天使
 第2章 聖書とヘブライ的伝統の中での天使
 第3章 キリスト教黎明期の天使
第2部 歴史の中の天使
 第4章 中世の天使の隆盛と変遷
 第5章 天使の消滅に向かって
 第6章 イスラムの天使
第3部 天使額のテーマと問題
 第7章 天使と神性
 第8章 天使とコスモス

 第9章 天使と人間
結論

原・訳注
訳者あとがき
主要参考文献
―――

 全 176 頁、本文まわりの余白もゆったりしていて、読みやすい1冊。…でありながら、これまで何度となく記事が書けていなかったので読み返していながらそれでも記事が書けなかった1冊でもあります。
 ごく簡単になりますが、今度こそメモしておきます。
 第1部は、ヨーロッパ世界での天使の通史に先立ち、黎明期の天使の位置づけをみます。
 第1章は、聖書に先立つ神話や非ヨーロッパ世界の多神教における天使の位置づけを概観します。
 第2章は、旧約聖書などにおける天使の位置づけについて。ここでは、ガブリエル、ミカエルなどの天使の名前が、「接尾辞エル(神性)と天使の役割や資格を表す語幹に結び付ける方法」で作り出されたとの指摘が興味深いです( 36 頁)。
 第3章は、キリスト教、そして新約聖書における天使の位置づけ。ここでは、天使の分類に関する議論が興味深く、とりわけ 54 頁で「天使のヒエラルキー」として提示されている図が便利です。
 第2部は天使をめぐる議論や天使崇敬に関する通史。第4章は中世初期から中世末期までを論じ、中世末期には天使学の重要性が低下していく一方、世俗的・個人的な崇敬へ、いわば「より人間的な近づきやすい現実へと」 (76 ) 天使の立場が変わっていくことなどを指摘します。
 第5章は近世から 20 世紀までを概観します。もはや天使は「個人的なファンタジーのおもむくままに想像的な存在」 (89 ) へと変貌して行くといいます。
 第6章はキリスト教世界における天使を相対的に見る視点として、イスラームにおける天使の位置づけを通史的に概観します。
 第3部はやや形而上学的・神学的な議論も含み、私にはわかりづらい部分も多いです。それぞれ、章題のとおりですが、第7章は天使と神との関係、第8章は宇宙との関係、第9章は人間との関係を論じます。第8章で面白いのは、未確認飛行物体との関係で、たとえばケルビムは「高度に進化した宇宙船の乗組員であり、そしてその羽が自動推進装置を素朴な形で表象したものだ」 (136 ) なんていう議論もなされていたことの指摘です。

 参考文献を示す注はなく、原注・訳注では語句の説明がなされるという、一般向けの書物でありながら、内容としてはやや硬め、といった印象の1冊です。

(2025.08.28 読了 )

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Last updated  2025.11.15 11:28:45
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