仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2006.06.25
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カテゴリ: 国政・経済・法律
6月7日に公布された(平18法53号)。第28次地方制度調査会の答申のうち、地方の自主性自立性の拡大、議会制度の見直しに関する事項のいくつかを立法化したものだ。

柱となる主な改正事項は
 1 出納長・収入役の廃止、副知事・副市町村長に一元化。なお会計管理者を置く
 2 吏員制度の廃止
 3 議長の臨時会招集請求権
というところだろうか。

 1と2は自治体の実務レベルでは大きな改正になろう。長年親しんだ制度がなくなるのだから。ただ、基本的には行政の内部の話だから対住民では大きな話ではないとも言える。

 出納長・収入役の存在に象徴される会計事務を担当する出納機関(審査・出納)と執行機関(命令)とを峻別する会計制度は、国の出納官吏制度(会計法)とも似るが、独立の職を置く点など地方自治固有のものとして導入され(自治体は不正不当にカネを使うという思想が背景か?)、現行地方自治法の基本原則の1つでもある。現実には峻別による公正の確保などはほとんど形骸化している上に、非効率にも思われるのだが(私見です)、抜本的改革はとられていない。ただ、特別職として任用される出納長・収入役を実態に即して副知事・副市町村長に一元化する点だけが答申に盛られた。従来の出納長の職責である現金の出納などの会計事務は、一般職から選任される会計管理者が担任するようだ。

 以下では、3の点に関連して、議会の招集権限について考えたい。


 つまり招集は首長の権限であり、義務ではない(もっとも定例会は行われなければならないから全く招集しない自由はないが)。首長から見て他律的に強制されるのは、議員の4分の1による招集請求の場合だけだ。

 そもそも議会が首長とは独立別個の機関であり、しかも構成員は直接選挙で選ばれ、首長の執行をチェックする立場であることを重視すれば、なぜに首長が招集するのか、という素朴な疑問も沸く。議会の自律は、審議の内容の自由のみならず組織運営の面も含めて広く自由を保障して初めて十全に発揮されるはずだ、との意見も十分成り立つ。例えば、議員提案条例の審議、議長の選挙などをするにも、その会議を開く権限は首長にある、というのだから、確かに不自然な気もする。
 昨今の議会活性化論者には、日本の地方自治は「二元代表制」だから(首長も議員も直接公選であることを指すらしい)、議会側にも招集権があるべき、と単純に論じるものもある。
 今次の地方制度調査会の審議過程でも、参考人や委員から、「議会の招集権はなぜ首長か」、「議会について地方自治法で規定するのは地方分権に反する」などの意見が強くあったようだ。
 多少さかのぼるが、地方分権推進計画(平成10年5月閣議決定)でも、地方公共団体の長と議会が相互に機能を十分発揮しつつ地方議会の一層の活性化を図るため、(1)臨時議会の招集請求に関する要件の実質的な緩和、(2)議員の議案提出要件、議員の修正動議発議要件についての法定(8分の1以上)を緩和することを検討。
 地方分権改革推進会議が平成16年5月に出した「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」では、臨時会の招集請求要件の緩和、「一定の期間内に首長が招集しない場合における議長の招集権の容認」が盛り込まれている。
 特徴的なのは、政府が提案募集した構造改革特区(第6次提案募集)に、三重県議会が「議長にも招集権付与する特区」を提案した。これに対する総務省回答(平成17年2月)は、次のとおり。
 代議制民主主義における議会と執行機関の関係は地方自治制度の根幹をなす重要な事項であり、そのあり方は首長・議会など関係者によって意見も様々であり、制度設計の再構築にあたっては、制度のあるべき改革の方向について地方公共団体の代表者や各分野の有識者の意見を聴きながら幅広く議論して頂くことが適当であり、慎重な検討が求められる。
 と慎重な表現をした上で、特区対応不可、とした。そして、第28次地方制度調査会で取り上げられたわけである。
 他方で、全国都道府県議長会は、「二元代表制の趣旨から、自ら会議を開く権能がないのは疑問。一般的に議長が招集権を有し、臨時会の招集請求権を議員のほか首長に付与する制度に改めるべき」と抜本改革を迫った。三重県議会のみならず、宮城県議会などでも議会改革の文脈の中で矛盾を指摘し改善を迫っている。

 改正の方向はいくつか考えられる。もっとも端的なのは「一般的に議長が招集権を有する」とする全国議長会案だ。まさにコペルニクス的転回。やや穏健なものとしては、臨時会に限って、議長に招集権を与える案(宮城県議会案)。さらに穏健なものは、招集権を与えるまでは踏み込まないが、現行の招集請求権の要件を緩和する(4分の1をもっと少数にするなど)案。


 結果として採用された案は、議会運営委員会の議決を経て議長が臨時会の招集を請求できる、というものだ。
 地方制度調査会答申では(p.19)、こう言う。議会側が必要と認めるときに臨時会を開けることを担保すべき。この場合、長と議会の関係、長が事実上議案の大半を提案する実態を踏まえれば、議長に招集請求権を付与し(つまり招集権限までは与えないということ)、他方で招集請求を受けた長は一定期間内に招集すべきもの。

 ポイントは、
 (A)議会招集権限を端的に議会側に付与することはしない
 (B)しかし事実上議会の意思で開会できるよう担保として首長に義務を課する

という3点だろう。それぞれに配慮を示していると思われる。すなわち、(C)の点は、議長の独断を防ぐことになる。また仮にどうしても開会したい少数派議員は、従来の制度により4分の1で直接請求できる(これを規定する現行第101条第2文は削除されたが、て新法101条の第3項とされ存続。議長が招集請求する新制度と同様に、第4項で首長が20日以内に招集する義務を負うから、強化されたとも言える)。
 また、(B)の点は、首長が20日以内に招集する義務を負うから(新法101条4項)、実質的に議会側に招集権を与えたと同様の効果があると言える。地方議会側では、「二元代表制」の理念から不満も残るかも知れないが、実質的には大きな成果だし(首長の招集義務のみならず期限までも法定した)、そう思っているだろう。
 ところで、そこまで工夫するくらいするなら、なぜ端的に議会側に招集権を与えないのか、やっぱり気になる。

 実は私も以前から多少疑問に感じていた。なぜ自律的開会はできないのか。なぜ招集権は首長なのか。
 この点、憲法論(国政)としては、国会が常時的活動期間でないことから、会期の制度が採用されていることを前提に、その開会は(もちろん召集は天皇だが実質的決定は)内閣が行う(憲法7条)。また、各議院の総議員の4分の1以上の要求で内閣は召集を決定する義務を負う(53条)、とされている。
 立法例としては、議会が活動を開始する方法としては、自律的集会型(憲法や法律の定めによる、前回議会の議決による、議長の招集、など)、他律的集会型(議会以外の機関が招集)、折衷型があるが、我が憲法は他律的集会型で、53条に自律的側面もある、ということだ。

 国会と地方議会を比較すると、従来の制度はほぼ同様だから、一応パラレルに考えて良いのだろう。ただ、国政の場合は、天皇の国事行為に助言と承認を与える内閣の地位と責務、また、憲法の大原則である権力分立への配慮があるから、議論が違うとも言える。いずれの点も、他律的招集を導くだろう。
 他方で、地方の場合は、首長も直接選挙だから、その点から首長の権限を広げる方向に行く議論が成り立つ。地方制度調査会はこの点を重視するのか(事実上、と表現するが)。
 おそらく根底には、地方自治に対するある種のデザイン自由度というか立法政策の許容度という感覚があると思われる。かっこよくいえば団体自治の尊重、とも言えるのだが。
 この感覚は、他にも例えば、公務員の国籍条項、地方選挙の選挙権などの議論にも現れている。

 住民に直接影響は少ないことだが、理論的には面白い問題だ。





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最終更新日  2006.06.25 06:41:48
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