仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2007.01.02
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カテゴリ: 東北
1 東北本線鉄道建設略史

明治の東北開発に交通の発展が不可欠であり、鉄道敷設が急務となった。

当時の交通機関は馬車や人力車の乗継ぎで、東京から福島町まで4日掛かったとの記録がある。奥羽方面への鉄道敷設は、明治5年5月に高島嘉右衛門が東京青森間の鉄道を建議。次いで、同年11月に岩倉具視が、京浜鉄道開通の報に接して、ロンドンから三条太政大臣宛に東北鉄道敷設の意見を提出している。明治新政府の東北開発の熱意が伺える。

明治11年に岩倉は前田(旧加賀藩)、松平(旧越前藩)らの華族に働きかけて、北陸地方に鉄道敷設を企画したが、募集資本が集まらず失敗してしまう(明治17年11月)。未だ日本人には鉄道が理解しにくかった。岩倉は明治2年に東京横浜間の鉄道建設を決定するが(明治5年開通)、将来東西の都を連絡する幹線として諸藩割拠の弊風を一掃する狙いもあった。北陸鉄道を勧めたのは、凶作に際して米の速やかな輸送を図ることが理由だったとされる。

政府では岩倉が、民間では高島が、それぞれ華族に鉄道建設を説いて回る形になる。その後、明治14年1月安場保和らが岩倉に鉄道建設の必要を説き、宿望達成をめざす岩倉も賛成し、東北鉄道建設の動きが活発化して、明治14年、東京青森間の鉄道建設の特許が下り、日本鉄道株式会社が成立した。形は民営だが一切の工事は政府(井上勝)が行っており、実際には半官半民の国策会社である。

まず東京高崎間の鉄道を開通させ、次いで大宮から東北本線に着手。宇都宮まで18年7月落成。なお利根川鉄橋は19年6月落成。黒磯まで開通19年1月。白河・郡山まで開通20年7月。仙台・塩釜まで開通20年12月。岩切一関間開通23年4月。盛岡まで開通23年11月。青森までの720キロの全通は24年9月。満9年を要した。

なお、我が国最初の鉄道は明治5年の新橋横浜間だが、その次とされる京都大津間の全線開通の直前、明治13年2月に釜石鉄道(17.9キロ)が完成している。鉱山の専用鉄道なのだが、明治15年からは一般旅客にも利用された。しかし、明治16年に大阪の鉄道に資材を転用するために売却してしまう。

2 山形県のルート変更運動

東京青森間の鉄道については、政府は明治6年から下調査でルートを検討していた(小野友五郎、ボイル、クロフォルドなど)。東北開発と併せて関心が高かったようで、安積疎水や野蒜築港などを視野に入れて、福島・仙台を経由して青森に至るルートを考えていた。



政府は19年1月に、折田県令の建議を却下、そのうち工事は福島仙台間の着工に至る。そこで山形県は、今度は仙台から関山峠を越えて山形に達する路線計画を立て、県費で関山トンネル開削費を議決までした。しかしこの第2案も、井上鉄道局長と奈良原社長が実地検分の結果、関山峠の鉄道は不可能だと結論づける。

20年には第3の計画として、佐藤里治らが山形鉄道会社を創立、白石から高畠、赤湯を経て大石田に至る124キロの新線を企画して、請願した。

山形県側の熱烈な運動に対して、岩手県が反応する。山形・秋田にルートが変わっては県の興廃に関わると、県会では満場一致で石井県令に建議。石井県令は早速財界人を伴い上京して、伊藤首相等に既定方針通りのルートを陳情する。山形、秋田の陳情に先んじたので、伊藤首相は、山形、秋田、福島の3県令を呼び、ルートは変更できないとキッパリ言い渡した。

従来酒田港を中心とした西回りの海運が栄えていたのが、明治になり蒸気船が通ると、寒風沢や石巻が栄えた。そして、東北本線の開通により、石巻から塩釜・仙台に繁栄が移った。北上川の舟運から鉄道による陸運に転換したのである。

3 山形県民の粘り

上述の白石から大石田の路線をあくまで実現すべく、青森、秋田、山形の有志が東京で運動し、明治22年に仮免許状を獲得する。しかし、実測の結果、白石高畠間は山間のため実現不可能とされ、結局、明治18年以来の5年越しの奥羽線実現工作は失敗する。

その後、赤湯大石田間だけの仮免状も受けたが失敗。政府の山形県の粘りに動かされ、明治23年、奥羽線について、福島から山形秋田を経由して青森に至るルートなど3路線を実地調査。その結果、いずれも営業路線にはならないと結論した。そして、鉄道国有化の流れもあって、明治25年度から10カ年計画で、官営鉄道として奥羽線(仙台経由の右線に対して左線とも呼ばれた)の建設決定を見る。

なお、政府案は新庄から院内を越えて秋田に至るから、取り残された酒田がおさまらず、26年の県会で、奥羽線と平行して羽越線を建設する建議が可決された。

■参考 岡田益吉『東北開発夜話・続』金港堂出版、1977年





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最終更新日  2007.01.02 18:05:08
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