仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2011.06.04
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カテゴリ: 東北
日本では西欧ほどに秘密結社は論じられない。人種的民族的に同質的であることが関係しているだろうが、たしかに政治的秘密結社の土壌はなくとも、入社的秘密結社についてはアルカイックな秘密結社の伝統を有している。民俗芸能として残っている「なまはげ」「アカマタ・クロマタ」「かくれキリシタン」「修験」などが関係する。(綾部恒雄『現代のエスプリ』第90号、1975年。秘密結社を特集。)

岡正雄は、既に戦前に、メラネシアやポリネシアの伝統的秘密結社が日本文化の深層にあると語った(1928年)が、これは折口信夫の「まれびと」の考えにつながっていく。折口の「まれびと」は、古代の村に海の彼方から来臨し幸福を与える神であるが、日本の秘密結社を先駆的にとらえたのであった。その原型になったのは、沖縄八重山の「アンガマア」「マユンガナシ」「アカマタ・クロマタ」だ。アカマタ・クロマタは稲の豊作をもたらす仮面仮装の来訪神で、神事のための祭祀集団は、厳しい入社式と階梯制を伴う閉鎖的秘密結社だ。メラネシアのプリミティブな秘密結社が日本にも入ったことを示している(宮良高弘)。他には秋田のナマハゲが知られる。

なお、折口は、来訪神たる「まれびと」として、スサノオ、隼人、斉明紀の鬼、などに触れている。

岡は、日本文化を5つの種族複合文化からなると説明した(「日本文化の基礎構造」日本民俗学大系第2巻『日本民俗学の歴史と課題』平凡社、初版1958年)。
(1)母系的・秘密結社的・芋栽培 - 狩猟民文化
(2)母系的・陸稲栽培 - 狩猟民文化
(3)父系的・「ハラ」氏族的・畑作 - 狩猟民文化
(4)男性的・年齢階梯制的・水稲栽培 - 漁撈民文化
(5)父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化


岡は、「メラネシアやアフリカの秘密結社は有名で、異様な仮面仮装者たちが、祖先・祖霊として島や村に出現し、食物を強請し、子供に秘儀的なイニシエーションを施したりするのである。我が国における仮面仮装者複合は、(中略)海のかなたの国から訪来すると信じられていた仮面仮装者を仲介してみると、メラネシアのそれと本質的な点において、驚くほど一致する。」という。秘密結社は、霊魂崇拝から発生し、祖霊が彼方から訪来するという宗教観念がもとになっている。

秘密結社は母系社会と関係があるらしい。なぜ男だけの秘密結社が多いかの答えでもある。メラネシアでは家は女性のもので、男は集会所に屯し、妻問い婚である。

この縄文中期以後の(1)の文化の上に、次々と4つの文化が重なったが、最も古い層に、秘密結社文化は残っているのだ。

■参考 海野弘『秘密結社の日本史』平凡社新書389、2007年

■関連する過去の記事
秋田ナマハゲは秘密結社か 再論 (2010年5月20日)
なまはげと東北人の記憶を考える (2010年4月27日)
なまはげ事件を考える (08年1月13日)
秋田なまはげは秘密結社か (07年8月13日)





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最終更新日  2011.06.04 22:05:29
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