仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2012.05.06
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カテゴリ: 宮城
1 中世の郡、保、荘

宮城県南部の中世は、黒川、宮城、名取、亘理、柴田、刈田の諸郡に、大谷、高城、深谷、金原の「保」、八幡荘、伊具荘の「荘」から成っていた。これら郡、保、荘は、それぞれ独立した所領単位であり、例えば八幡荘は陸奥国八幡荘であり、宮城郡八幡荘と呼ばれることはない。地頭も宮城郡とは独立して任命されている。

このほか、南宮荘、田子荘(塩竈神社の日御供米を負担)の荘園も文書に見えるが、寺社のための免田のごときもので独立した所領ではない。また、根白石を中心とした地域は山村(やまむら)と呼ばれ、荘園と推定されるが、宮城郡山村とされて、郡内の半公半荘のようだったろう。
(地頭名 南宮荘:留守(伊沢)氏)

黒川以下6郡はどれも『延喜式』『倭名類聚抄』に見え、9、10世紀以来の郡である。陸奥国では古代から中世の間に新しい郡が出来ることが多いが、この地域ではなかったのである。
(地頭名 黒川:東氏?、宮城:国分氏、名取:和田氏、亘理:千葉氏、柴田:柴田氏?、刈田:中条氏?)

大谷、高城、深谷の「保」は、12世紀前半の水田開発でできた公領の単位。多賀城の東と北を取り巻く形なので、低湿地開拓には国府関係者すなわち在庁官人が関わった可能性がある。
(地頭名 大谷保:菅原氏、高城保:千葉氏、深谷保:長江氏)

荘園(荘)では、伊具荘は後宇多院領。八幡荘は、鎌倉殿を本所とする関東御領と推定される。伊具荘は古代の伊具郡がそのまま荘園化したもので、成立は保よりやや遅く12世紀中頃以降と推定。これに対し山村と八幡荘は、国府所在の宮城郡のなかにできた荘園で規模も小さい。


鎌倉時代には、陸奥国全体がそうであったように、関東御家人が、(八幡荘など宮城郡内の地と柴田郡を除いて)これら郡、保、荘の地頭に任命された。

2 宮城郡の特殊性

郡、保、荘を単位に地頭が任命されるのが普通だが、国府所在地の宮城郡内は複数の地頭による所領で構成されていた。

宮城郡の公領の中心は高用名(こうゆうみょう)という「名」で、その中に幾つも村を含む広大な領域だったが、鎌倉時代は陸奥国留守職を世襲する留守(もと伊沢)氏の所領だった。国府は一般に「こう」と訓ずるから、高用とは、「国府用」の宛て字と考えられる。すなわち、国府直属の土地であった。

なお、留守職とは、国府の在庁官人を指揮する留守所の長官の地位。奥羽両国に平安時代以来この職が置かれ、他の国にはない。文治奥州合戦の時、留守職は大河兼任に与同して所職を没収され、建久元年(1190)、その後に関東御家人の伊沢家景が補任された。

中世の国府は、古代の多賀城正庁よりは西の岩切付近と考えられ、陸奥国の縦貫道たる奥大道が冠川(七北田川)と交差するあたりで、鎌倉時代には河原宿五日市庭(いちば)、冠屋市庭の2つの市場が開かれていた。

中世の宮城郡には、留守氏と陸奥介(むつのすけ)氏のほか、属(さつか)・税所(さいしょ)を名乗る在庁官人がいた。税所の所領は荒井七郷で、郡内が有力な在庁官人で分割領有されていたと想定される。

郷には、このほかに宮城本郷と国分寺郷が史料に見える。宮城本郷は留守氏一族の宮城氏の所領、国分寺郷は国分氏の所領。宮城郡の公領は、高用名などを除くと原則として郷によって構成され、それが所領単位になっていたようである。

3 塩竈津と湊浜

宮城郡には以上の他に、塩竈津があり、ここに陸奥国一宮の塩竈神社があった。一般に国の一宮は12世紀頃に、新しく再編された国府の守護神として祀られたものであるが、塩竈神社も多賀国府と深い関わりが推定され、塩竈津には留守氏の譜代の家臣筆頭の佐藤氏が居城を構えていた。

港としては七ヶ浜の1つ湊浜もある。多賀国府近くを流れる冠川は中世まで湊浜に注いでおり、塩竈津と並ぶ国府の外港であった。また、七ヶ浜の1つ花淵(鼻節)浜にある式内社の鼻節神社には、国府厨印(りゃいん)という印文をもつ古代の銅印が伝えられていた。七ヶ浜は国府直属の漁業や海運に従事する人々の集住地として宮城郡内の独立した領域だったと考えられる。



(以下、 中世の郡、保、荘と宮城郡の特殊性(その2) に続く)

■難波、大石編『街道の日本史8 仙台・松島と陸前諸街道』吉川弘文館、2004年から(大石直正執筆部分)





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最終更新日  2012.05.06 12:48:09
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