仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2015.12.15
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カテゴリ: 東北
■前回の記事
高専の立地と誘致の歴史(その2 創設概史) (2015年12月13日)
高専の立地と誘致の歴史(その1 立地状況) (2015年12月9日)

いよいよ、各県ごとの誘致事情を調べてみたい。今回は、宮城県。

「宮城県史」では、編纂時期の関係だろうか高等専門学校の記載はないようなので、まずは宮城県議会の議事録で(高等専門学校、高専、工専などのワードで)検索した。
(なお、下に引用する議会での発言内容は、おだずまジャーナルで要約及び補記(カッコ)しています。)

昭和36年7月に、下記のように工業高専の県内誘致を求める質問がなされている(門間議員)。

学校教育法改正で高専が実現するが、文部省ではさしあたり昭和37年に1200人、6校程度を計画しており、他県では既に誘致運動を起こしているところもある。中堅技術者の養成として期待が大きいことから、早期に本県に誘致すべし。方法として、さきに設立を決定した3つの工業高校の一校を指定してもらう、或いは農業短大を思い切って切り替える方法もあろう。


すなわち、(1)他県では早速誘致運動が起きていること、(2)宮城県では県が新設を計画する3工業高校の1校を指定する方法などの議論があったことがうかがえる。

そして、同年10月には、宮城県に国立高等専門学校を昭和37年に設置されるよう格別の御配慮方を国に求める意見書が可決されている。その「理由」の中では、 国が法制措置を終えて明年度設置するに際して、東北の中心であり仙台湾臨海工業地帯の整備に伴い第二次産業の急速な振興をみること、仙台市周辺はかつて国立仙台工業専門学校が置かれ東北の中で理想の地であること、教員充足でも東北大学の協力を得られること、名取市に最適の敷地2万5千坪を確保していること 、などが記されている。

ここでは、(1)他県との比較を念頭に宮城県の立地の優位を説いていること、(2)県が用地を確保したこと、がわかる。

昭和37年2月議会では、次のようなやりとりがある。県立高校の計画についての論議なのだが、国立高専についての県の方針や経緯がわかる。

(高橋議員)県の高校急増対策として工業3校、商業2校、うち1校は普通校に切りかえて4200人の生徒を収容する計画だが、白石工業高は37年開校、石巻工業高と普通高は今回予算化されて提案。名取工業高は、昨年夏に国立工業高等専門学校に乗りかえることとして、知事はじめ関係議員も盛んに誘致運動を行なった。長谷川文部次官を有する宮城県だから絶対確実と思ったが、遺憾ながら失敗。明年度は国立工専校誘致は成功すると思うが、国立工専は県工と違い志願者は東北大学同様全国、特に東北近県から集まると思われる。(先行して)本年4月発足の国立工専12校では、募集人員が1480人に対し志願者が25791人で平均17.4倍の競争率。福島県の平工専でも120に対し1979の16.5倍。従って、名取市に建つとしても、県が長期計画で意図した県立工業とは性格がすっかり変わるので、じっくり考えて見る必要がある。
 生徒数では、県立は白石で200だが、国立は120名と80少なく、しかも他県から集まる。さらに、名取市に県立工業を建てれば仙台学区中心だったのだが、国立工専になると少なくとも県内なら全県から集まり、近県からも来る。また、38年から45年のピーク時代には臨時対策として(県立高校の)7千名の生徒を収容するため特別教室を利用する、つぶす、すし詰め学級などを、恒久対策以外に考えねばならない。
 こう考えると、国立工業高専が名取市にできても、最初の既定通り5つの新設高校は必要だと考える...
(以下略)

(三浦知事)国立工専の名取市誘致に大いに努力したが、文部省のいろいろ条件があり遂に37年度においては実現できなかったことは非常に残念。38年度に誘致できるよう最善の努力を尽して参る。そこで、国立工専の収容力や全国的に受験者が集まることから、かつて私どもが立てた高校急増対策が齟齬を来たすのではないかとの御質問だった。実は現在37年度は(募集)数も非常に少なく倍率もひどい(高い)が明年以降は相当数(募集数が)増えて来ることも一つは考えられ、また、県の高校の急増対策も進んで参るので、それと関連をさせると、現在の高校急増対策を、国立工専にかわったことによって非常な響き(影響)は考えらないので、現在のところ高校急増対策を変える考えはもっていない。


37年9月の県議会では、高校の生徒急増対策に関して、再び高橋議員から、次のように。

(高橋)新設5高校の計画だが、白石工業は37年度から、石巻工業と仙台の普通高は来春開校になっている。名取工業高校は国立名取工専の誘致運動に切りかえられたが、大丈夫だという情報は聞いているものの既に十月、その後この問題はどうなっているのか。また、名取が国立になると最初の計画5つのうち4つができ、残りの商業高校の問題があるが... (後略)

同年12月の議会。日野議員の質疑。

(日野)長期経済計画の教育計画中で県下に3つの工業高校を設置するが、白石、石巻はメドがついているが、名取地区における工業高校の設置が問題。国立工専校誘致と関連して見合わせている状況だが、国立工専校誘致の状況からしてどう措置する考えか。
(重村副知事答弁)名取工業高校は工専誘致をすることで、工業高校の1校はそれに替えることとしているところ。本年は非常に有望と思っているので、誘致の条件等について文部省とも打合せしている状況で、希望どおりできるものと思う。


昭和38年2月の県議会では、国立高等専門学校設置期成同盟会補助金(3千万円)について質疑(猪股議員)があり、開校準備経費として総額1億円程度が必要で、県と市で負担していくこと、地方財政法の規定のために期成同盟会を通していること、などが答弁されている。翌39年2月議会では、再び猪股議員から、国立工専設備協力費6170万円について質問がなされ、答弁として、2年間分併せて県の負担すべき約1億円程度となると説明されている。

なお、昭和40年には国立電波高校の高専昇格の意見書が議決されている。




○ 高等専門学校の法制化を受けて宮城県でも誘致に動いた。しかし第1期校(昭和37スタート)には乗り遅れた。
○ 名取市に用地を用意し、整備資金も負担した。
○ 県立高校の生徒急増対策として新設を予定した3つの工業高校のうち、名取市に設置の計画を、高専誘致に切り替えた。

おそらく現在の仙台高専名取キャンパスの用地は、当初は県立の名取工業高校として計画された場所だったのだろう。しかし、なぜ、白石や石巻にならなかったのか、両市での誘致運動は無かったのか、は不明だ。

また、県立高校計画を切り替えるという「消極策」に出たようにも思われるのだが、生徒急増に対応する県立高校新設とは別枠で堂々と国立高専を誘致しなかった事情は何か(用地の提供などで差し迫っていたことなどが考えられるだろうか)、など気になる点は多い。



別の史料でさらに調べてみたい。





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最終更新日  2015.12.15 21:39:50
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