仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2025.02.14
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カテゴリ: 国政・経済・法律




外務省のサイトに出ている記者会見録からポイントを整理してみる(北村外務報道官会見録、1月29日。おだずま整理)。


・読売記者 女子差別撤廃委員会が、昨年、日本の皇室典範改正を求める勧告を出したことで伺う。日本政府として、皇室典範改正に関する記述の削除を求めていて、委員会は要望に応じていないが、日本政府としての対応はどうか。
・北村外務報道官 女子差別撤廃委員会に対しては、対日審査のプロセス及びその審査後にも、我が国の考えを、繰り返し、丁寧かつ真摯に説明してきた。にもかかわらず、最終見解においても、皇室典範の改正に係る勧告が維持された。
 この状況を踏まえ、政府として我が国の考えを改めて書面で提出し、女子差別撤廃委員会のウェブサイトに、それを掲載させたところ。
 ここで、我が国の考えとは、具体的には、まず皇位につく資格は、基本的人権に含まれておらず、皇室典範で継承資格が男系男子に限定されていることは、女子差別撤廃条約にいう「女子に対する差別」には該当しないこと、そして、皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる事項であること。従って、女子差別撤廃委員会が皇室典範を取り上げるのは適当ではなく、皇位継承に関する規律は受け入れられず、削除されるべきだという内容である。
 また、今般の事案を踏まえ、女子差別撤廃委員会に対し日本政府として2つの措置を講じることとした。第1に、女子差別撤廃委員会の事務を行っている国連人権高等弁務官事務所に対し、これまで用途を特定して毎年拠出している任意拠出金があるが、その使途から女子差別撤廃委員会を除外すること。そして、第2に、本年度に予定していた、同委員会の委員の訪日プログラムの実施を見合わせること。この2つの措置を講じることとして、女子差別撤廃委員会側に伝達したところ。

・読売ほかの記者の質問に対し北村回答(要点)

 任意拠出金の総額は手許にないが、正確には女子差別撤廃委員会に向けてではなく、その事務を担う組織の国連人権高等弁務官事務所に対して、大体年間2から3千万円任意拠出している。国連人権高等弁務官事務所に対する任意拠出金の中から女子差別撤廃委員会に関連する活動に金が使われたことは、少なくとも平成17年以降はないのだが(近年では北朝鮮、カンボジア、ハンセン病差別撤廃などの活動に充てるということで拠出)、今般の決定により、今後とも、女子差別撤廃委員会の活動に、この任意拠出金の一部なりとも使われないことが確保されるので、日本政府の立場をより明確に示すことになる。
 任意拠出金は分担金とは違い、日本政府が重要と考える活動や組織に支出するもので、使途を組織に伝達することはよくあること。高等弁務官事務所に対する拠出金じたいを止めるということではない。



問題の国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)(おだずま注、一般には女子でなく女性の訳語を充てるようだ)の最終勧告は、昨年(2024)10月29日だった。その要点は下記。

・男系男子にのみ皇位承継を認める皇室典範は女性差別撤廃条約の趣旨に反する。なお、委員会の権限の範囲外とする日本の立場には留意する
・夫婦同姓を義務付ける民法を改正し、選択的別姓を導入すること
・中絶に配偶者の同意を必要とする母体保護法の改正
・婚外子とその母の社会的な差別からの保護

日本政府の任意拠出金の使途制限の公表のあと、テレビを眺めていると、ある女性の有識者氏が、 これ(日本政府の対応)はとんでもないことだ、ジェンダー平等に反する、日本が国際的に遅れている象徴だ 、などと威勢のいい解説をしていた。

しかし、そのような批判的解説は 実は事態の的を射ておらず、一般の耳障りは良いと思っているのかもしれないが、問題の解決にもさほど貢献しない一方的な論調に過ぎない

1 基本的な議論の仕分け
 議論を整理しなければならない。皇位承継の問題には、男女同権の議論とは質の異なる論点を含むからである。
 皇位継承を論じる際に人権の視点や女性活躍を促進する視点などが当然あって良いが、そもそも日本国憲法は基本的人権とは別の章(しかも第一章)を設けて天皇について記述しており、象徴である国家機関の性格から一般の国民に保障される人権(例えば男女の本質的平等)が制約されることは前提としている。このことは念頭に置かねばならない。
 加えて、これも重要なことであるが、民主主義国家の君主(争いあるが)である天皇のありようをどう定めるかは、主権国家の自律的判断であるとするのが国際常識だろう。従って、他の国や国際機関が介入すべき問題ではないということは重要である。異質の論点と指摘したのは、この点である。
 以上から、 皇位継承で女系や女子を認めよとする立場の論者が、そうだとしても国際機関からの日本批判は不当だと主張して全くおかしくない
 テレビの有識者氏は、民法などの問題について積極改革派で、それと同列に皇位継承問題を捉えているのだろうが、問題なのは、その勢いだけで、国連機関からの介入に対する政府の対応までバッサリ切り捨ててしまっていることだ。

1-2 補説
 あえて論点比較的に整理すれば、次のようになろうか。
(a) 国内での議論の局面
 ・一般の女性人権問題に対して皇位問題は国家機関たる特殊性 →人権制約を容認
(b) 国際関係の局面(自律か介入か)
 ・世界普遍の価値観を踏まえ人権救済の観点からの介入は、一般の女性人権問題でも皇位問題でもあり得る構図
 ・ただし、皇位問題は、介入自体が不当とされる余地が大きい ←(a)の特殊性。また、国家の根本に関わる事項であるため

2 政府の対応について
 外交には詳しくないので自信はないが、今回の政府対応は、報道には異例とするものもあったが、じつはさほど突飛なものでもなく、むしろ落ち着いた対応とも言えると思う。
 拠出金はそもそも政府が国際協調の視点から、各国の人権状況の改善のために、裁量的に支出するものだろう。従って、日本の国策としての姿勢が反映することは当然だ。また、実際に拠出金が従来CEDAW活動に使われていないことから、使途についての措置を表明しても現実問題として活動に支障は出ない。これらを勘案して、つまり配慮をした上での政府の判断だったと言えるのではないか。
 報道の中には、関税などで他国をゆさぶるトランプ新政権を引き合いに、日本もトランプに倣ったかなどと評するものもみられるが、面白さだけで注目(ヒット稼ぎ)を引き出す報道姿勢は、本当に勘弁してほしいものだ。

3 条約と国内法の関係
 さて、テレビの有識者氏は、日本政府が国際機関に反発することがおかしいというのだが、その意見を根拠づけるとすれば、国際政治的な視点から妥当かどうかという議論の場面とともに、あまり議論されていないと思うが、(介入を許すべきほどに)我が国の国内法整備が国際規準に決定的に遅れている或いは国際基準に反しているのかという議論の場面において、遅れているとか劣っているとかいうことが説明されなければならないと思う。
 この議論とは、言い換えれば、日本の国内法が国際法(条約)に反しているのかという議論である。政府が反論した皇室典範の問題だけでなく、民法等の問題についてもいえることだ。
 憲法上の大論点であるが、承認された条約は、国内法形式に変型する(焼き直す)必要がある(二元論)のではなく、そのまま国内的にも法規範として効力を生じる(一元論)のであり、さらに条約は憲法に劣位し、憲法に反する条約は無効というべきである。もっとも、条約が違憲審査の対象になるとしても、現実に司法審査が可能かどうかはまた別問題で、司法権を限界づける統治行為論により、一切審査はできない、或いは、一見極めて明白な違憲無効の場合は司法審査の対象となる(砂川判決)。
 これは数十年前の私の学んだ図式なので、いまは違うのかもしれない。
 テレビの有識者氏は、憲法学説はともかくとしても、条約と国内法整備の関係について、あるいは国際政治の側面から日本の位置やあるべき姿勢などの視点でもよい、論議の作法をわきまえて解説してほしいものだ。持論を補強したいとばかりに、或いは政権の姿勢批判のためだけか、なんでも頭から否定や批判してみせるのでは、何のためにもならない。





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最終更新日  2025.02.16 09:20:56
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