お霊参り2

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清之助^^ @ Re[1]:怪談実話系6 著者9名の競作集(01/14) 風船猫~☆彡さん 大根は痙攣しないものと…
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2021.12.29
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「呼ぶ声」

『おぉぉい』 また下の方から父親の声が聞こえてきた。ずいぶんせっかちな父親である。
『ここに綺麗な水が流れているよ。顔を洗うと気持ちいいよ』
今後は湧き水らしい。
『今日のお父さんはずいぶん急いでいるわね』 母親さしき女性が言う。
『もしかして雨でも降るんじゃないの?』 小学校低学年くらいの女の子が返す。
『ここに綺麗な水が流れているよ。顔を洗うと気持ちいいよ』
また、父親の声が聞こえてきた。僕は、タバコの火を点けながら、思わず吹き出しそうになるのを
こらえていると、母親と目が合った。
優しい顔で軽く会釈をした母親につられて、僕は少しバツの悪い顔になって会釈を返した。
そのまま素知らぬ顔もできなくて、僕はそのまま言葉を繋げた。

『はい、夏が終わり、紅葉がはじまるこの時期、一年に一回こうやって栂池から白馬大池を往復するんです』
『いえいえ、旦那さんですよ。いつも先を歩くんですか?』
母親が怪訝そうな顔をして僕を見た。
『いえ、私たちは、いつもふたりですが・・・・』
今後は僕が怪訝な顔になった。
『もしかして・・・・あなたは主人の声が聞こえるのですか?』

母親と女の子がびっくりしたように、顔を合わせた。
『おじさん、お父さんの声が聞こえるの?』

ふたりが何を言っているのか、僕にはしばらく理解できなかった。
『主人は三年前の冬、この山で亡くなりました』
『え?』
『亡骸はまだ見つかっていません。その翌年から私と娘は山が静かになるのを待って、いつもこの山を
訪れているんです。
『ねえ、おじさん。お父さんの声が聞こえるの?』
『聞こえるよ。下の方に綺麗な水が流れているんだよね』
『わあ、聞こえるんだ』
『私たち以外に主人の声が聞こえる方に出会ったのは初めてです。主人とご縁があったのでしょうか?』
そう言われても、僕には思い当たる節がなかった。なにより僕は、自分に霊感があると思ったこともないのだ。
その時、下の方から、またあの声が聞こえてきた。
『おぉぉい、ここに綺麗な水が流れているよ。顔を洗うと気持ちいいよ』
『ほら、お父さんが呼んでいるよ。急いで行かなきゃ』
そう言って、僕は女の子の頭を撫でた。
『ありがとうございます。あなたに出会えただけで今年の山は、とても思い出に残るものになりました』
『おじちゃん、ばいばい』
振り向いた女の子が満面の笑顔で手を振った。





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Last updated  2021.12.29 16:45:23
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