おしゃれ手紙

2026.10.03
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テーマ: 読書備忘録(1543)
カテゴリ: 読書


釣りと酒と将棋をこよなく愛し、95歳の長寿をまっとうした井伏鱒二。
情緒的にならず、ユーモアと忍耐をつねにわすれず、しぶとくも愉しげに日々を送ることの秘訣を文章のうちに溶かし込んだ──。
太宰治、牧野信一、青柳瑞穂などとの長い友情をシニカルにつづった人物評も収めた、日本語を読む歓びにのびのびと浸る精選集。


1終電車/はじめて見た映画/ヘットの匂を嗅ぐ/森鴎外氏に詫びる件/角帽の色(早稲田)/子供のときのこと/仔犬のこと/坪内逍遙先生 

2母/牛込鶴巻町/青羽雀のおじさん/面罵の熟語/釣魚記/増富の谿谷

3晴耕せず雨読せず/小鳥の巣/阿佐ヶ谷会/支離滅裂/牧野信一のこと/余談/眼鏡/グダリ沼/雨のいろいろ/在所言葉/時計・会・材料その他/「が」「そして」「しかし」/猫/におい

4琴の記/七月二十三日記/釣りの旅──釣竿・魚籃/英語について/正宗さんのこと/宇野(浩二)さんの魚釣/シンガポールで見た藤田嗣治/川/青柳瑞穂と骨董/下曾我の御隠居


★井伏鱒二(イブセマスジ)
1898-1993年。
広島県福山市生まれ。
本名満寿二。
はじめは画家をも志すも、やがて文学に専心し、『鯉』『山椒魚』で文壇に登場。

★はじめて見た映画

●徳富蘆花の「不如帰(ほととぎす)を知らない人は稀(まれ)であろう。
片田舎の老婆達でさえも、このロマンスを思いだせば顔が赤くなると告白し、しかし内心は老いたる心臓をおどらすのである。
彼女達は、美男子の青年士官である川島武男は実在の人物に違いないと信じて、機会があったら一度その美男子を拝顔しようと念じているものである。
(略)(略・・・映画館で弁士が語る)
「これは川島武男であります。
天下未曽有の美男子であります。
わらび狩りに出かけるのであります。
連れていくのは、これなる美人浪子嬢といいます。
楽しい行楽であります。」(略)
●見物人達は、弁士がしばらくの間でも口を閉じるのを好まなかった。(略)

それ、何か言え!
骨おしみするな!」

●熱狂した虎次郎は、手に持った竹で、スクリーンの母堂(悪役)の肩をたたいたので、幕がゆれ、場面は波立って見えた。
★眼鏡
●当時、蕎麦屋で酒を飲むことは

★グダリ沼
●雲谷峠のことを、土地(青森)の人はモヤノトンケと云っている。

★雨のいろいろ
●土井先生は
「サンノウズまでシビテを上げて、何たることじゃ不行儀な」という口癖があった。
シビテとは着物の跳ねのこと、
サンノウズとは、ぼんのくぼのことを云う方言である。

★在所言葉
●私が子供のときには父親母親を呼ぶにも家庭によって違っていた。
大体において、地主のうちの子は父親母親を
「オットサン」「オッカサン」と云っていた。
村会議員とか顔役のうちの子は
「オトッツアン」「オカカン」と云っていた。
自作農のうちの子は「オトウヤン」「オカアヤン」と云っていた。
小作人のうちの子は「オトッツア」「オカカ」と云っていた。

子供の名前を呼ぶにも、階級によって敬称が違っていた。
地主のうちの子供を呼ぶには「何々サン」と云い、
顔役のうちの子供のときには「何々ツアン」と云っていた。
その下が「何々ヤン」、その下位が「何々サ」であった。
●「てめぇ」というのを、昔のままに「おどれ」と云った。
「ひっぱたく」というのは、「胴づく」(略)
「叫ぶ」は「おらぶ」、「非常に」は「ぼうっこう」である。
★七月二十三日日記
●そのクルミの太い幹に宿り木が生えていた。
(略)松グミだと云うのだが松グミとは違う。
その濃緑の細かい葉がすがすがしく見え、クルミの大ざっぱな葉と対照的である。

*松グミ*
果実は食べられるので、かつては子供がおやつ代わりに集めたものである。
ほのかに甘く、またチューインガムのように何度も噛んで楽しめる。
ただしそれよりはずっと早くに溶けてしまうとのこと。
伊勢地方では店で売っていたこともあった由。
また、民間療法として、高血圧症の治療と予防に使われた。
降圧効果があることが知られており、その成分についての研究も行われている。

**私も子供の頃、食べた。
松ミドリと言っていた。
★解説
●井伏鱒二はだてに長生きしたのではなかった。
苦難を飄然と乗り越えて、しぶとくも愉しげに日々を送るすべを、彼は文章を綴る仕事をとおしてつかみとった。

●早稲田での友人関係を、いい大人になってからも維持するような男同士の仲良しグループが「阿佐ヶ谷会」だったろうか。

とにかくまあ、しょちゅう集っていたらしい。
井伏の住む荻窪の隣、阿佐ヶ谷の青柳瑞穂邸に参集して将棋の勝負にうつつを抜かす様子は、放課後に友人宅でゲームに興じる子どもたちのようだ。
しかも、肝心の青柳を始めとして、将棋を指せない者たちまでも熱心なメンバーとなっているのだからおかしい。

*「しょうしょう館日録」という本を思い出す。
◎井伏鱒二は、釣り好きで、釣りエッセイも多い。
初期の作品に「鯉」があるし、代表作に「山椒魚」がある。
本人の名前も井伏 滿壽二(いぶし ますじ)を鱒二と魚に関する名前にしている。
★読みたい作品
●珍品堂主人
●駅前旅館
●ざなみ軍記
●荻窪風土記

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Last updated  2026.10.03 00:24:12
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