ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Aug 12, 2006
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「光と影」

 今日はマイク(第二バイオリン)、トム(ビオラ)、ケーティー(チェロ)と一緒にカルテットの練習をした。

 モーツァルトの短調ものの室内楽は、弦楽五重奏やピアノ四重奏(ともにト短調)、バイオリンソナタK304(ホ短調)など、今まで結構弾いてきたつもりだったけど、肝心のこの弦楽四重奏曲をきちんと合わせたのは今日が初めて。だから、曲への期待が思いっきり膨みまくった状態で練習に臨んだ。

1楽章: おそらくこの曲のなかで一番難しい。譜面にアレグロとあるのでまず驚く。一般にかなりゆったりめに神秘的に弾かれてるみたいだったから、アンダンテ・コン・モートあたりかと思ってた。せっかく稀有な短調曲だし、緊張感を維持して弾くためにも、指示通り速めにアレグロで弾くべきか。この楽章のポイントは、随所に出てくる六連符をさりげなく弾くことかと思う。

2楽章: 美しく、はかなく、哀しい。熱唱するのではなく、たんたんと唄うから余計に説得力がある。何か重大なことを言おうとしている曲。

3楽章: 強烈に短調を意識させるインパクトがある。第一バイオリンの独壇場。三人の奏でるピチカートに乗っかってメロディーを弾いたりもする。こういうピチカートの使い方は、モーツァルトにしては珍しいと思う。

4楽章: 変奏曲。こういうリズムの舞曲をシチリアーノと言うらしい。この曲のなかで僕が一番気に入っている楽章。第一バイオリン率いる第一変奏もいいが、第二バイオリンのシンコペーションが幅を利かす第二変奏とか、ビオラが主役の第三変奏とか、いずれの変奏も味がある。そして、長調になる第四変奏の途中で、チェロがいきなり下降音階でファーストに華を添えるとこが特に良い。この曲の中で数少ない「光」の部分。しかし結局は短調でぷっつりと終わってしまう。

 全体にモーツァルトの影の部分が色濃く出ている曲だと思う。弾いてて息が苦しくなって、逃げ出したくもなる。

 けど、第一バイオリンのフィーチャーの仕方とかはハイドンっぽくもあり、急にフォルテやピアノになるとこなどはベートーベンっぽくもあり、そのうえ19世紀っぽい斬新なとこもあり、弾き込むほどに新たな発見がありそう。





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最終更新日  Aug 16, 2006 05:20:55 PM
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