ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Nov 11, 2006
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「大御所の余裕」

 今日はピアノ弾きのセスと、モーツァルトのバイオリンソナタK301を合わせてみました。

 この曲、特に1楽章がすごくわかりやすくて、なんていうか 正直な音楽 で好感が持てます。思わず鼻唄で歌っちゃいそうなメロディー。
 全部で二楽章しかない曲なので物足りなく感じるのですが、春のそよ風のように爽やかに弾き流すこともできるし、こってりたっぷりウェットに弾き込むこともできそう。是非、プロの方の演奏をナマで聴いてみたい。
 余計な音の一切ない簡潔さに、大御所モーツァルトの余裕さえ感じて、なぜかこちらが畏縮してしまったり。

 ところで、天下のベーレンライター版の譜面に重大なミスを発見。曲の一部が、ピアノのパート譜はト短調(フラット二つ)で書かれているのに、バイオリンのパート譜はト長調(シャープ一つ)のまま、というお粗末ぶり。
 一緒に弾いていて、なんか変だなとは思ったのです。現代音楽っぽい不思議な雰囲気に包まれて、「おぉ、モーツァルトったら意外に 前衛的 なんだなー」なんて一瞬思いつつも(笑)やっぱり不協和音には耐えられず……、でも僕は楽譜どおりに弾いてるわけだし、全てはピアノのセスが間違って弾いてるんだとばかり思って、 彼を睨みつけながら

 僕らはついに観念、演奏は中断され、激しい言い争いに発展。
ちゃんと楽譜を読め、コノヤロー! 寝ぼけてんじゃねーよ!
 ……楽譜上のミスだとわかるまでに、かなりの時間を費やしてしまいました。共演者への日頃の信頼感って、こんなとこで試されるんだなーと反省したりもして。一触即発の緊張の瞬間でありました。

 せっかくの名曲に酔いしれながら楽しく弾いてたのに、一気に興ざめ。大御所ベーレンライターの原典版を心底から崇拝しているセス氏にとってもショックだったようです。

 20曲近くあるモーツァルトのバイオリンソナタ(24番K296以降のみを対象)を、片っ端から弾いてみようというプロジェクトを始めたのが一年半前。セスに限らず、ピアノ弾きをつかまえては共演させてもらっていますが、それでもまだ何曲も残っています。 前回弾いたのは四月 でしたから、半年も空いてしまいました。この全曲制覇プロジェクト、ほんとに達成できる日が来るのでしょうか。

 なお、このK301、自分が今までに弾いた約十曲のモーツァルトのソナタのなかでは間違いなく上位三曲に入るほど気に入りました。そんなに難しくもないし。





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最終更新日  Nov 16, 2006 09:15:26 AM
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