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2008.09.21
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テーマ: 洋楽(3407)
カテゴリ: ビートルズ

 それはないね。
 でも、『Free As A Bird』は再結成かな」----ポール・マッカートニー


ビートルズ 25年ぶりの"新曲" として'95年12月に発売された「Free As A Bird」は、"The Beatles Anthlogy"プロジェクトの一環として制作された企画シングルである(米6位、英2位)。
オノ・ヨーコから提供されたジョンの未発表テープに、ポール、ジョージ、リンゴのオーバーダビングを加えることによって完成された。
プロデューサーに選ばれたのは、ELOの中心人物にして、ジョージやリンゴのソロ作を手掛けた実績を持つ才人 ジェフ・リン である。
音楽的にも精神的にも円熟した三人のビートルと、ビートルズ・フリークの第一人者でもある職人ジェフによって作られた本トラックは、見事な "ヴァーチャル・ビートルズ"
僕も、イントロでのリンゴのスネアを聴いた瞬間、 「おお! と息を呑んだことを覚えている。
よみがえるはずのない"ビートルズ・マジック"が、完成度とかそういうのとは別次元の "何か" がここには詰まっている、と今でも思う。
感傷的になったり、笑いあったりしながら進められたというレコーディングには、ジョンも見えない姿で参加していたのかもしれない。

原曲は、ジョンが"主夫業"に専念していた'77年に作られたもの。
'88年にラジオ放送された 「Lost Lennon Tapes」 でもその音源は流れており、マニアの間では既に知られていたという。
元のテイクは、ジョンのヴォーカルとピアノのみの演奏で、 歌詞が未完成 となっていた。
レコーディングの際には、ポールとジョージが歌詞を補作し、さらにはコードも若干変えて演奏されている。

まったりした仕上がり となった。
ジョンのオリジナル・テイクは不思議な透明感があるものの、楽曲そのものは 「つかみどころがない」 という印象も強い。
それをここまでのポップ・ナンバーに仕上げたファブ・スリーとジェフの手腕には感服するしかない。
ただし、現行アンソロジーの日本語訳では「サビのメロディを作ったのはポールとジョージ」みたいに思えてしまうが、楽曲自体のメロは ジョンのデモをほぼなぞったもの

構成としては、Aメロがジョンで、サビをポールとジョージがそれぞれ歌うという形になっている。
はかなげなジョンの歌声と 淡白な美しさ を持ったメロディが実に印象的。
それを繊細に包みこむファブ・スリーの声と演奏が泣ける。
浮遊感あふれるサウンド は自由に空を飛ぶ鳥のようで、曲のタイトルにふさわしい。
リンゴのヘヴィなドラム、甘く厚みを持ったビートリー・コーラスは時代を越えた響きを持っている。
シンプルながらしっかりと耳にのこる ポールのベース・ライン もさすがです

一方で、録音状態の悪いジョンの声は、良くも悪くも "作り物のビートルズ" ということを強く思わせ、複雑な感情を掻きたてる。
ジョージの 激渋スライド・ギター も凄い。
成熟の極み とも言えるその音色は、年代物のワインのようでもあり、仙人様が弾いているような貫禄がある。
サビ(二回目)で聴ける彼の歌声もよれよれ。 この後の運命 を知っているだけに、また違った意味で悲しくなります

曲は4:00あたりにきたトコロで大円団!
…と思いきや、またリンゴのフィルが豪快にとどろき、「Free...」のコーラスとともになぜか バンジョー・ウクレレ の音が聞こえてくる。
それにまぎれて「Made by John Lennon」 と聞こえるセリフがあるが、これはジョンがビートルズ時代にたまたま言った 「うまくいったね」 という言葉を逆回転させたもの。
最後まで遊びゴコロを忘れないのが彼ららしい。
関係ないけどボクの場合、このエンディングを聞くとフォーク・クルセイダーズの 「帰ってきたヨッパライ」 (のエンディング)を思い出します^^

サウンド的には オーバー・プロデュース気味 な所も否めず、一部のファンから批判が出るのも分かる仕上がりではある。
それでも今の時代(といっても10年以上前だけど)にビートルズを甦らせるとしたら、こんな感じが妥当ではないかと。
少なくとも彼らの名を汚すクオリティではないし、再結成企画としては 上々 だ。
雲の上のジョンも、「最高だ」とは言わないまでも「悪くはないね」とほくそ笑んでいたのではないだろうか。

また、最高なのがこの曲のPVで、鳥の視点からファブ・フォーの歴史を見ていくという作りは、何度見ても 目が潤んでしまう
ストロベリー・フィールドやアビイ・ロードはもちろん、ドクター・ロバートからグラス・オニオンまで飛び出す内容はまさに "アンソロジー"
それらを違和感なくつなぎ合わせてある映像は、CG時代ならでは産物だ。
ジョンの子供時代の写真からはじまり、拍手をされる彼の後姿で終わるという構成も素晴らしい。
曲、PVともに「Free As A Bird」は、ジョンへの愛情とテクノロジーの発達が幸せな出会いをした素晴らしい作品だと思う。
これを作り上げたファブ・スリーとジェフ・リン、関わったスタッフたちに心から拍手を送りたい。

つーコトで「Free As A Bird」のPVは ここ をクリック!

ブラジルのマニアが作った "ヴァーチャル・再結成ライヴ" の映像も一見の価値あり。
ここ をクリック。





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Last updated  2008.09.24 03:55:00 コメント(10) | コメントを書く


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