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May 20, 2008
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カテゴリ: つぶやき
こんな話があります。

 彼は、1996年1月1日にワシントン州の郊外ベセスダの海軍病院で亡くなっているのですが、その葬儀に参列した石田捨雄元海上幕僚長の話によると、バーク氏の遺体の胸には、その勲一等旭日大綬章だけが付けられていたそうです。もちろん、棺外側には受賞した勲章がずらりと並べられていたのですが、胸に付けられていたのは日本の勲章だけ…。石田海上幕僚長が副官にそのことについて尋ねると、日本の勲章を胸につけるのはバーク氏の遺言だということでした。

 生前のバーク氏に対して海上自衛隊はその功績を忘れないために、海上幕僚長(海軍大将)が訪米するたびに表敬訪問し、それに加えて歴代の防衛駐在官が誕生日になると自宅に必ず花を届けたというのですから、日本の海軍関係者がいかにバーク氏に対し、感謝していたかがわかります。

 晩年のバーク氏は、米海軍よりも海上自衛隊の方が自分を大事にしてくれると大変喜んでいたというのです。


 しかし、このバーク氏は、かつては大変な日本人嫌いであり、太平洋戦争では、第23駆逐艦群司令として出陣し、次のように日本海軍に大きなダメージを与えました。
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       巡洋艦                  1隻撃沈
       駆逐艦(川内、初風、大波、巻波、夕霧など) 9隻撃沈
       潜水艦                  1隻撃沈

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 バーク氏がなぜこれほどまでに日本に対して敵愾心を持ったかですが、おそらく日本軍が真珠湾攻撃で戦艦「アリゾナ」を沈めたのが原因ではないかと思います。バーク氏は海軍兵学校を出たあと、最初に乗り込んだ軍艦が戦艦「アリゾナ」でしたから。




そのバーク氏が日本にやってきたのは、朝鮮戦争勃発後の1950年9月のことです。そのときのバーク氏の階級は少将――ときの米海軍作戦部長フォレスト・シャーマン大将直々の要請で、日本にやってきたのです。

 彼は日本に向かう飛行機の中での気持を自伝の草稿の中で次のように書いています。
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       東京に飛ぶ飛行機の機内で、私は突然司令部が東京にあることの意味に思い至った。おそらく日本人とかなりの程度やりとりせねばならないだろう。戦争中の経験から、日本人はまったく好きではなかった。できる限り彼らと接するのを避けよう、(接するにしても)礼儀正しく、冷たく、なるべく距離を置こうと決意した。

 ――阿川尚之著『海の友情/米国海軍と海上自衛隊』より。中公新書
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 バーク氏の東京での宿舎は帝国ホテルだったのですが、そこでバーク氏が日本人を見直す小さな事件が起こります。バーク氏に用意された部屋は小さく、ベットと椅子と鏡台があるだけの陰気な部屋だったそうです。
 そこで、バーク氏はホテルの地下の花屋で花を買って、コップに入れて鏡台の上に飾り、残りの花はそのままにしておいたのです。ところが、その次の日、花は花瓶にきれいに飾られていたのです。それから、毎日部屋に少しずつではあるが、花が飾られるようになり、バーク氏は随分となぐさめられたといいます。

 バーク氏は、花を飾ってくれる心遣いに対してフロントに謝意を述べると、フロントはそのようなことはしていないというのです。結局その部屋を担当するメイドさんの心遣いであることがわかったのです。彼女は太平洋戦争で夫を亡くした未亡人でしたが担当の部屋の外国人が、花を求めていることがわかったので、乏しい給料の中から少しずつ花を買い、毎日部屋を飾ってくれたとわかったのです。



 後にバーク氏は、この小さな出来事によって、自分の日本人嫌いが正当なものか、考えるようになったといっています。実際にこの帝国ホテルの小事件を境に、バーク氏はかつて自分が日本人に対して立てていた方針――できる限り彼らと接するのを避け、接するにしても礼儀正しく、冷たく、なるべく距離をを置く――を撤回し、積極的に日本人と付き合うようになったといいます。


 バーク氏は、日本という国をもっと知りたいと思い、当時極東空軍司令部(明治生命館)にいた同期のエディー・ピアス大佐に相談します。そして、ピアス大佐から紹介されたのが、野村吉三郎元海軍大将なのです。こうして戦争に負けた国の老海軍大将と、戦争に勝った国の前途ある海軍少将との交流がはじまったのです。 





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最終更新日  Jun 1, 2008 06:30:23 PM
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