全21件 (21件中 1-21件目)
1
しゃっくりが止まらない。息を止めても水をガブ飲みしても逆立ちしてもダメだ。おやっ。 うしろから妻が忍び寄ってくる気配。「わっ!」耳元で叫んだ。しばらく待ってみる。ダメだ。 出た。予測していたから驚けないんだ。いや、待てよ……。妻は実家に帰っていて、おれは今ひとりだ。しゃっくりは止まった。
2007年01月31日
コメント(6)
夜、ベッドに横たわったあなたは、くびすじにチクリと感じ、瞬時に四肢が動かなくなった。声も出せない。しかし、意識だけはしっかりしていた。しばらくして、下から、ささやき声が聞こえてきた。「百合子さん、百合子さん。ぼくです。翔太です。 まさか、お忘れではないでしょう? 3年前、あなたに交際を申し込んで、断られた男ですよ。 ほら、通勤電車で、よく顔を合わせていたでしょう。 いま、ぼくは、あなたの3センチ下、マットの中にいます。 3年前からずっとあなたを尾行していました。 いつかあなたのそばに行きたいと思って、 辛抱強く機会をねらっていましたが、 先日あなたが家具屋にいってこのベッドを注文したとき、 やっと苦労が報われたと思いましたよ。 読書が好きなあなたなら、江戸川乱歩の『人間椅子』って作品、 ご存知でしょう。 あれにヒントを得たのです。 このマットにもぐりこむの、けっこうたいへんだったんですよ。 ああ、もう詳しい話はやめましょう。 こうしてあなたの温もりを感じながら死ねるなんて、 ぼくはなんてしあわせものなんでしょう。 あ、言い遅れましたが、百合子さん、さきほどくびすじが チクリとしたでしょう。 あれは、体を麻痺させ、やがて死に至らしめる毒薬ですよ。 えへへ。 あれれ、百合子さん、失禁しましたね。 ぼく、興奮しちゃうな。 もうすこしあなたの体温を感じていようと思います。 そして、あなたが黄泉の国に旅立ったころ、ぼくも、奥歯に セットした青酸カリを噛み潰して、旅立とうと思います。 ああ、百合子さんって、なんてあったかいんだろう。 わかりますか? ぼく、勃起してます。 百合子さん、百合子さん……」 ◇「警部、ホトケさんは白鳥ヨネさん・82歳。 そして、マットの中のホトケさんは、30歳前後の男性です。 ヨネさんのお孫さんの白鳥百合子さんによると、下で死んでいる 男性に見覚えがあるそうです。 死因は解剖の結果待ちですが、それにしても けったいな事件ですねえ」
2007年01月29日
コメント(10)
白髪の老人が駅のトイレの鏡の前でくちを「い~」している。なにか気に入らないことでもあるのか、しきりに首をかしげている。そこへ波平さんのようなチョロ禿げの老人が入ってきて、小の方の用を足し、やがて白髪老人の横に立つ。白髪老人、手を洗っているチョロ禿げ老人の横顔をしばし見つめ、2,3度うなずいてから、後頭部をぶん殴る。不意をつかれたチョロ禿げ老人、入れ歯を洗面台に吐き出し、うしろにぶっ倒れる。白髪老人も入れ歯を吐き出し、うしろ向きにぶっ倒れる。白髪老人が吐き出した入れ歯、床に落ち、ガチガチさせながらチョロ禿げ老人に歩み寄り、ヒョイっとジャンプして、くちに納まる。チョロ禿げ老人、起き上がり、鏡に近づき、くちを「ガチガチ」とやって満足げにうなずき、何事も無かったかのようにトイレを出る。さっきチョロ禿げ老人が洗面台に吐き出した入れ歯、床に跳び下り、倒れている白髪老人のまわりをガチガチいわせて歩き出す。やがて、意を決したのか立ち止まり、白髪老人のくちにガボリと納まる。白髪老人、起き上がり、鏡の前で「い~」をして、不満げに首をかしげ、何事も無かったかのようにトイレを出る。------------------------------------------------【ご連絡】前回の松田優作さんに関する日記は、全部フィクションです。 おさわがせして、申し訳ないです。 すまんのぅ~。 わりぃ。
2007年01月27日
コメント(7)
以前、松田優作さんとの想い出話を日記(または、拙著「弱気な悪魔」)に書きました。きょうお話しするのは、その後日談です。といっても、だいぶ後の出来事ですが。「太陽にほえろ!」で人気が出た優作さんは、その後数々のドラマや映画で主演されました。わたしは優作さんを慕うように、いや、金魚の糞のように、付いて周り、そのほとんどの作品に子役として共演させていただきました。そんなわたしも子役からうまく脱皮することができず、映画「よみがえる金狼」で悪役のボスの隠し子役を最後に芸能界を引退しました。やがて三流大学を卒業したわたしは、むかしのツテで、吉元興業に就職し、そこで漫才やCMの台本を書くようになりました。そんなある日、あるスポンサーから、「太陽にほえろ!」の殉職シーンをパロったCMをつくってくれと注文をいただき、以下のような台本を書きました。ジーパン刑事(松田優作)、事件を解決し、ホッと一息とばかり路地裏で立小便をしている。そこに暴漢が現れ、ジーパン刑事の腹をジャックナイフで刺し、財布をうばって逃げ去る。ジーパン刑事、なに事が起こったのかとポカンとしながら腹に添えていた両のてのひらを見、「なんじゃこりゃあ!」と叫んで、うつぶせにぶっ倒れる。仰向きに体勢を変え、震える手で、Gジャンの胸ポケットからタバコの箱を取り出し、どうにか一本出し、くわえる。そこで、息絶える。と、ここまでは、テレビ放映されたものそのまま。ここから合成画面。「ジーパーン」と叫びながら、ボス(石原裕次郎のそっくりさんの芸人・裕太郎)が駆け寄る。裕太郎、眉間にシワを寄せ、「遅かったか……、持ってきたのに」と言いながら、ふところからあるものを取り出す。裕太郎の手元、ズームイン。携帯灰皿が大映しになる。画面下に、 『タバコのポイ捨ては、やめましょう~JT(日本たばこ産業)』 のテロップ。以上の台本は、放映間際に優作さんが亡くなったからでしょうか、ボツになりました。奥さんの熊谷さんはOKしてくれたのですが、石原プロから「待った!」がかかったのです。-------------------------------------------【お知らせ】プロの演劇女優の mika0821さん に拙著「見習い天使」の中の「メダカ」を朗読していただきました。(こちらで聴けます)ええ話やなあ。(だれも言ってくれないので、自画自賛する)ほんとにわてが創ったんかいな。 よく覚えていない。
2007年01月25日
コメント(11)
こんな夢を見た。仏壇の前で手を合わせている二人の男。うりふたつだ。しかし、想いはまったく違う。右:『小さいころ、ばあちゃんにコンペイトウをもらったっけ。 あ。ぶつぶつしてる。わあ。あま~い』左:『さんざん面倒かけやがって。この、くそババアめ。 ぐああ。畳にゲロ吐きやがった。おれが素手ですくうのかよ』右:『かあちゃんが死んでから、世話になったなあ。 え。弁当つくってくれたの。かまぼこと目玉焼きかあ』左:『この、くそババア。神経使わせやがって。 よろしくお願いします。こちらを追い出されちゃうと困るんです』……やがて二人はお互いの存在に気づく。「だれだ、おまえ」「おまえこそ、だれだ」「同じ顔しやがって、気持ち悪いなあ」「うるせえ、それはこっちのセリフだ」「なんだと。 このやろう」「痛てえ。やったなあ。 ダア!」「うげっ! こ、このやろううううう」「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅ。 うりゃあ」……そしてふたりはひとつになった。めずらしいことじゃない──でしょう?
2007年01月23日
コメント(11)
『13日未明。 筑波山第2ケーブル乗降口近くの 山林で腐乱死体発見。 死後6~8ヶ月経過。 女性。30~40歳くらい。身長160cm。痩せ型。 妊娠3ヶ月。 顔は鈍器か石のようなもので潰されており、復元不可能。 近くにハンドバッグがあり、中に2万3千円入りの財布があった。 筑波警察署では殺人事件とみて調査を始めた。』医務院の食堂で朝刊を読みながら、牧野医師はコップに残ったミルクをむりに飲み干した。こみ上げてくる嘔吐感をこらえるため、生唾を飲み込む。記事は昨夜自分が担当した腐乱死体についてのものだ。監察医になって8年、いろいろな死体を見てきたが、昨夜ほど悲惨な状態のものは初めてだ。無惨につぶされた顔。犯人は被害者の身元を判らなくするために、あれほどまで執拗に顔を殴打したのだろうか。いや。 だったら、身元が判るようなハンドバッグを持ち去ったはずだ。恐らく、怨恨による犯行だろう。 それも強烈な憎しみによる。牧野はそこまで考えて席を立った。こんなことは警察が考えることだ。 おれが悩むことじゃない。その夜、宿舎で眠っていた牧野は、胸の痛みを感じ、目を覚ました。ちょうどその時、ドアがノックされた。誰だ、いまごろ。不審に思いながら枕元のスタンドを点け、掛け布団をまくって起き上がり、ドアのほうを見た。「……くぁっくぁっくぁっ、ふぁぁぁああああああああ」叫んだが、声にならない。どうやって入ってきたのか。ドアの前に人が立っている。死体だ。 昨夜自分が執刀した腐乱死体だ。両目玉がだら~んと下がり、胸の辺りで揺れている。牧野は金縛りにあったようにその場で固まった。「くぁっくぁっくぁっくぁっくぁっ……」ずずずぅ、ずずずぅ。足を引きずりながらゆっくり近づいてくる。顔はまっすぐ牧野に向けられている。ずずずぅ、ずずずぅ。目と鼻の先で、ぐしゃぐしゃの顔が止まり、くちからどす黒い泡を吐いた。「あんたぁ~、失礼ぃ~しちゃうわねえ~~~~。 30~40歳くらい、ですってぇえええ~~~~~。 わたしはぁ~~、24歳だったのよぉ~~~~。 訂正しないとぉ~~、またぁ~、出るわよぉ~~」そして、消えた。牧野は、「女は怖い、女は怖い、女は怖い……」と、呆けたように呟きながら、震えていた。
2007年01月21日
コメント(13)
たまたま**年後の未来と交信ができたので、新聞を取ることにした。朝、新聞受けに音も無く出現した新聞を手に取り、さっそく開いてみる。なになに……。『田中通産大臣、正確に年収を申告する!』『四菱自動車、先月はリコール・ゼロ!』なんだこりゃ!『杉並区立第三小学校・斉藤洋介教員、拾得物の財布を 交番に届ける!』『社会保険庁、先週は年金処理ミス・ゼロ!』『盛岡県立盛岡西高校、先月はイジメ・ゼロと思われる』………見出しだけをざっと追っていた私は、最初こそ驚きはしたものの、やがて納得がいった。「犬が人間を咬んでも記事にはならないが、人間が犬を咬めば記事になる」とは、むかしからよく言われてきたことだ。**年後の日本では、凶悪犯罪や公務員の不正は当たり前すぎて記事にする価値が無いのだ。これはこれなりにおもしろい。 裏読みすれば、世相が分かる。ちょっとした推理小説だ。そんなふうに楽しみながら購読を続けていたが、1ヶ月ほど経ったとき、以下のようなお詫びのはがきが入っていた。『誠に申し訳ないですが、当社の新聞はこれが最終号となります。 新聞を刷る設備が破壊され、近々電力も供給されなくなります。 さようなら』
2007年01月20日
コメント(7)
今度はあああああああああああ、プロの演劇女優の mika0821さん に拙著「見習い天使」の中の「タンポポ」を朗読していただきましたああああああああ!(こちらで聴けます)老人ホームに入居していた祖母を思い出して創ったお話です。洗練されていないぎこちない文章と、朗読のプロの心のこもった声が、微妙にシンクロして、いいハーモニーを奏でています。(よく分らん説明)なんつってー!
2007年01月19日
コメント(7)
耳の中で耳クソが暴れているみたいだ。両耳とも。 不快な音だ。耳鼻科医院に行ったが、原因不明だった。6年ほども続き、ある夏の日に突然おさまった。喜んでいたのもつかの間、しばらくして今度は、金属を切断しているような甲高い音が聞こえるようになった。眠れない日々が続いた。ある晩、我慢できず、ベッドから起きだして耳をほじくってみた。茶色い粉が出てきた。そして、それに続いて、アブラゼミが出てきた。左右、一匹ずつ。アブラゼミは首筋をつたって肩と胸に移動して、競うようにひとしきり鳴いた後、おとなしくなって、ボトリと落ちた。気がつくと、わたしは両手をばんざいして、ブナの木になっていた。
2007年01月18日
コメント(8)
な、な、なななななななな、なんと、プロの演劇女優の mika0821さん に拙著「見習い天使」の中の「岩太郎」を朗読していただきましたああああああああ!(こちらで聴けます)やったあああああ! ばんざーい! やっほー!ビエエエエエエ~~~~ン(ピュンピュン丸の弟的うれし泣き)
2007年01月17日
コメント(18)
「宮ぁ様ぁあああ~~~~~~~~~~~~。 た~い~へ~ん~よぉおおお~~~~~~。 て~ん~ぷ~ら~あ~ぶ~ら~を~~~~ 床にぃ~~~~~~~~~~~~~~~ ぶ~ち~ま~け~ちゃってぇえええ~~~~、 火ぃ~がぁあああ~~~点ぅ~い~たぁあああ~~~。 消ぉ~火ぁ~器ぃ~を~~~~~~~~~ 持ってぇえええ~~~きぃ~てぇえええ~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」「なぁ~ん~だぁあああ~~~い~~~~~~。 雅ぁ子ぉおおお~~~~~~~~~~~~。 よぉくぅ~~~~~~~~~~~~~~~~ 聞ぃこぉえ~なぁい~~~~~~~~~~~。 もぉう~い~ちぃ~どぉおおお~~~~~~~、 言ぃえ~~~~~~~~~~~~~~~~」「台ぃ~~~~所ぉ~~~~がぁあああ~~~~ 火ぃのぉ海ぃいいい~~~~~~~~~~~。 消ぉ~火ぁ~器ぃ~を~~~~~~~~~ 持ってぇえええ~~~きぃ~てぇえええ~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」「分ぁかったぁあああ~~~~~~~~~~~~。 すぅ~ぐぅ~行ぃ~くぅううう~~~~~~~~~~。 待ってぇろぉおおお~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」「きゃあぁあああ~~~~~~~~~~~~~~。 天井ぉおおお~~~~にぃいいい~~~~~~。 火ぃがぁあああ~~~~~~~~~~~~~~、 うぅつったぁあああ~~~~~~~~~~~~~。 手ぇ遅ぅれぇだぁあああ~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
2007年01月17日
コメント(4)
元日に親戚が集まり、コタツに入って雑煮を食べていた。突然、姉の旦那の父親がうしろにぶっ倒れ、呻きだした。ノドをかきむしって苦しんでいる。「たいへんだ。ノドに餅が詰まったんだ」「吐かせろ」「胸を叩け」「いや、うつ伏せにして背中を叩け」「いや、水といっしょに飲み込ませろ」「掃除機、掃除機だあ。吸い取るんだ」「逆さにしてジャンプしろ」「マウスツゥーマウスで吸い取れ」「クチに指を突っ込んで吐かせろ」大騒ぎになった。結局、息子(姉の旦那)が柔道の活入れのようなことをやって吐き出させた。だいじょうぶかあ?みんな心配そうに取り囲んだ。わたしも姉の背中越しに輪の中心を見た。息子が安堵の溜息をついた。どうやらだいじょうぶなようだ。息子は手を伸ばし、畳に落ちた餅を拾って、見入った。「だいじょうぶだ。洗えばまだ食える」ふぅ。 よかった。
2007年01月16日
コメント(12)
プロローグスーパーに行ったらおかめ納豆が売り切れていた。テレビでダイエット効果があると宣伝されたからだな。俗物どもめ。 なんでもかんでも楽して得ようとする。ま。どうせ一時的なことだろうが。わたしだって、納豆と散歩は欠かさないが、それでも少しずつ腹が出てきたぞ。 ◇こんにちは。奥さん、お嬢さん、お元気でしたか。ふぇろ・もんたです。先週、納豆のダイエット効果をご紹介しましたら、たちまち売り切れになって、たいへんなことになりました。いやあ、テレビって怖いですねえ。 エヘヘ。今回は、受験生のみなさんに朗報です。はい、こちら。 テーブルの上には包丁やナイフが並んでいますね。実はですね、これらを使って殺人を犯すと、ストレス解消になることが実証されました。 また、集中力や暗記力の向上にもつながるようです。ここで大切なことを述べます。いいですか、受験生のみなさん。よく聴いてくださいよ。凶行の際、包丁やナイフは新品を使わないと効果は無い、ということです。これ、大切なことですよ。それでは、それぞれの刃物の効果をご説明しましょう。はい。 これ。 この刺身包丁で母親の胸をグサリとやると、理数系の問題を解く際の応用力が身につきます。それから、こちら。 このぺティナイフで父親の頚動脈をスパッと切ると英文の読解力が向上します。それから、この出刃包丁で…………翌日、全国のスーパーやホームセンターで、包丁やナイフがあっというまに売り切れた。 ◇「いやあ、ふぇろ・もんたさん。ありがとうございます。 おかげさまで刃物類が売れに売れました。 これで、わが刃物業界も一息つけます。 こちら、お約束のリベートです。お納めください」「お。ありがと。遠慮なくもらうよ」「おやじぃ~!」「お。なな、なんだ。 幸太じゃないか」「死ねえ!」スパッ!
2007年01月14日
コメント(10)
な、なんだよ、おまえ。洋画のジェイソンみたいに白いマスクして。来るな、来るなよ。わ、わああ。腰が抜けて動けない。ぎゃあああああ。電動ノコだああ。 オレのくびを……ううううううぅぅぅぅぅ。くるしい。だれかに首を絞められている。もうだめだ。 目の前が真っ暗になって……わあ、トラック! 横断歩道の信号は青なのに……うげぇ! ごぴゃあっ!腹減ったよお。寒いよお。眠いよお。静かだよお。ああ、将軍様は、なにもしてくれなかった。 ……げごぉっ! 餅がノドにつまった。 ぐるじぃ。ぐごっ、ぐごっ……。があああああ……な、なんだあ。ロシアンルーレト? なんで、オレ、こんなこと……ダァアーン!ああああああああああああ、熱い。 熱湯地獄だああああ。うがああ。 ぶくぶくぶくぶくぶくぶく…… ◇「おひさしぶりです、金田一博士」「お、助手の山田くん。 元気じゃったか?」「はい。おかげさまで。 ところで、今度の発明はなんですか? ずいぶん大きいカプセルですねえ。 あれ、人間が入ってる」「ああ、これか。 これはなあ、人間を冷凍冬眠させて、悪夢を見させる マシーンじゃ」「わあ、なんか怖そう」「名づけて、‘悪夢ちゃん’じゃ」「いつもながらネーミングもばっちりです」「そうじゃろそうじゃろ……。じゃがな、ちょっとまずいことになった」「え。どうしたんですか」「実はなあ、これは終身刑の囚人の刑罰用に開発したんじゃがな」「へえ~」「でな、警視総監がどうしてもってうるさいんで、テスト体験させたんだが」「はあ」「マシーンが未完成で、冬眠から覚ますことができなくなった。 無理に目覚めさせると死んでしまうのじゃ」「ま、まさか……」「あはは。 いま、入っているのが警視総監だよ。 運の悪い男じゃ。 永遠に、殺される夢を見続けるとはな」
2007年01月13日
コメント(7)
代議士先生や実業家や囚人の心に、小さな芽が出た。どんどん育って花が咲いた。それでも成長を続けて胸や頭をぶち破って顔を出した。代議士先生や実業家や囚人は即死して倒れた。「腐り切った心は植物にとって良い肥やしになるのだなあ」という結論に達した。遅れて他の人々もばったばった倒れていった。植物は猛烈なスピードで大きくなっていった。地球は緑に包まれ、本来あるべき姿になった。ああ、めでたしめでたし。 腐った心、バンザーイ!---------------------------------訂正:前回日記にて。1月朝6時の北斗七星の形に誤りあり。 (誤)逆さになったひしゃくのお椀の部分が右上、柄が左下だ。 ↓ (正)逆さになったひしゃくのお椀の部分が左上、柄が右上だ。
2007年01月12日
コメント(10)
朝、5時50分になると、向かいの主婦が窓を全開にして洗濯機を回すので、わたしは目覚める。(過去日記ご参照)目覚めたついでに、パジャマ代わりのジャージの上にコートをはおり、ポケットに入っている軍手をし、玄関の生ゴミを持ってドアを開け、ゴミ出しにいく。1月の朝6時。外はまだ暗い。西に1分くらい歩いた所にゴミ置き場がある。ゴミを置き、北の空を見る。わずかに光を放つ北極星の左上に北斗七星がある。逆さになったひしゃくのお椀の部分が右上、柄が左下だ。北極星の右下にあるはずのカシオペア座はビルに阻まれて見えない。そういえば、小学生の夏休みに天体観測をやったなあ。なぜか天体観測は北の空と決まっていたっけ。確か、北斗七星とカシオペア座は北極星を中心にして時計回りに移動してるんだよなあ。あれ、逆回りだったっけ。カシオペア座って早稲田大学のマークに似てるなあ。小熊座ってのも北の空だっけ。むかしシルクロードを旅した人は、北極星を目印にしてたんだよなあ。あっ、流れ星だ。 「カネ!カネ!カネ!」…… ◇「お客さん。起きてください」「……えっ。 ああ、すまん」プラネタリウムを観て寝入ってしまったようだ。北の星座が、わたしに、ゴミ出ししていた頃や小学生の頃の記憶をよみがえらせてくれたようだ。「よっこらしょと」医学の進歩で平均寿命が120歳になり、21世紀も半ばを過ぎた今も、こうしてなんとか生きていられる。しかし、物忘れはひどくなった。ええと、確か住居は……首に下げたプライベートカードを見る。住所はG378区だな。プラネタリウムの施設を出て、コンクリートの廊下を歩く。ここは地下500メートルの、娯楽施設がある地区だ。もう、本当の星座にはお目にかかれない。地上は放射能に汚染され、生物が生息できるような場所ではなくなった。地上にいられたとしても、空は一日中厚い雲に覆われていて星など見えない。わずかに雲の切れ間から、太陽が顔を出すくらいだ。ああ。生きているうちに、こんな世の中になるとは。
2007年01月10日
コメント(11)
<その1~交差点にて>警官、信号待ちのクルマの窓をコンコンと叩き開けさせる。「きみ。ダメだよ、運転中に携帯のメイルチェックしてちゃ」「いいえ。 携帯の時計機能で時刻を確認していたのです」<その2~一方通行の細い道で>逆行しているクルマとパトカーが鉢合わせし、寸前で両車、止まる。パトカーから降りてきた警官、前方のクルマの窓をコンコンと叩き開けさせる。「きみ。ここ、一方通行だよ。進入禁止の標識が見えなかったかい?」「はぁ? わたくし、バックでおまわりさんと同じ所から入ってきたのです」<その3~警察の取調室にて>刑事:「あんた、寝たきりの老母の介護に疲れ、 ほったらかしにして餓死させたな」男:「いいえ。 母は太りすぎを気にしていて、 自分の意志でダイエットしていたのです。 まあ、いわば、拒食症による病死ですね」<その4~満員電車内にて>OL、ハイヒールのかかとでサラリーマンのつま先を踏む。「痛てててて。ちょ、ちょっと、あんた、踏んでますよ、ぼくの足」「あら、踏まれるのイヤ? じゃあ、ひざまずいてお舐め!」<その5~国会にて>民主党議員:「総理。公約違反じゃないですか?」総理:「はぁ? 当時、わたくしは、『~したいと思います』 と言ったのです。 あくまでも予定であり、また、願望であります。 そうですよね、願望長官。 なんつってー! こりゃ余計でした。 あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは……」筆者注 : 以上、実行した方は、結果を教えてください。
2007年01月09日
コメント(12)
年が明けて一週間。お餅の食べ通しだった。太ったような気がする。恐る恐る脱衣所の体重計に乗る。我が目を疑った。5キロも太っている。手っ取り早くやせる方法はないかと考え、近くのヘルスセンターに行き、蒸し風呂に入る。四畳半ほどの広さがあり、ヒノキの香りがする。出入り口以外の3面に壁と一体になった長椅子がある。わたし以外に客はいなくて、貸し切り状態だ。長椅子に仰向けになる。熱い。我慢していたら、いつの間にか眠っていた。目覚めると、白いボールがわたしを押しつぶそうとしていた。わあ、重い。助けてくれ。ノドがカラカラで声が出ない。ボールはだんだん大きくなっていく。あれ、よく見ると、それは、わたしのお腹だった。やがて、ぷすぅ~っといって破裂し、わたしは気絶した。気が付くと、わたしは醤油まみれになって、海苔に巻かれていた。
2007年01月07日
コメント(20)
正月。帰省して、餅食ってテレビ観て部屋でゴロゴロして過ごした。7日の昼。明日から学校なので、下宿先の東京に戻るため、家を出た。手には、洗濯された下着と厳重に袋詰めされた沢庵の入ったバッグ。ちょっと臭う。見送らなくてもいいと言ったのに、母ちゃんがいっしょに玄関を出た。駅まで2キロほど。 タクシー代がもったいないので歩く。10メートルほど歩いて振り向くと、母ちゃんが立ってこっちを見ていた。100メートルほど歩いて振り向くと、まだ母ちゃんが立っていた。田んぼの畦をぬけ、砂利道をしばらく行き、立ち止まって、振り向いた。杉林のすきまに見える自宅の2階の窓に、母ちゃんらしき黒い影。駅に着き、少し待って東京行きの列車に乗り、ボックス席に座る。車窓からの景色をぼんやり見ていると、田んぼの畦に母ちゃんが立っていた。だんだん小さくなっていく母ちゃん。見えなくなる直前、母ちゃんは閃光を放ってヒュルル~ンと飛び上がり、猛スピードで列車を追いかけ、あっというまに目の前の車窓を通り抜けて、ぼくの胸ポケットに納まった。ポケットには定期入れ。5年前に病死した母ちゃんの写真。
2007年01月05日
コメント(12)
こんな夢を見た。「あけおめぇ~!」「な、なんだよ、いきなり」「ことよろぉ~! はじめまして。 わたくし、いい夢配達人の ‘夢見 セ太郎’ で~す。 副業にバク退治もやってま~す」「夢、見せたろう──? えらそうな名前だなあ。 (それに、『ことよろ』 と言っておいて 『はじめまして』 は変だ)」「いいえ。 夢見・セ太郎です。 ‘鼻をか・ジッタ’さんみたいなもんです」「古いなあ。 で、なんの用だい? ひとの夢に勝手に入ってきて」「そんなに冷たくしないでくださいよ。 きょうは、元日ですよ。 元日といえば、初夢でしょう。 知ってますか? 初夢ってのは、1月1日から2日にかけて 見る夢のことですよ」「へえ、そうなんだ。初耳だなあ。 あっ、初耳と初夢って似てる。 ちょっとしたダジャレだなあ。 こいつぁ、春から、ああ、縁起がい~い~ぜえ。ダッハッハッハッハッハ」「……」「笑え」「で、きょうは、いい夢をお届けにあがったわけですよ。 いつもは睡眠薬と精神安定剤を3錠ずつお代として頂きますが、 本日は無料です。 よいしょっと」「わあ、でっかい袋だなあ」「昨年の暮れに、サンタクロースさんに安くゆずってもらったんですよ。 ええと……、あったあった。 ほいっ。 ジャ~ン!」「あ~ん? なんだそりゃ。 弁当箱か?」「富士山のプラモデルですよ。 昭和30年代のタミヤ製です。 プレミアもんですよ」「なんだか、簡単に組み立てられそうだなあ」「それからと……あった、これこれ。 それっ。 ジャ~ン!」「なんだ? ちゃっちい人形だなあ。 ひょろひょろ~っとしてて」「とんねるずのフィギュアですよ。 でっかいほうが ‘タカ’ さんです」「なんだよ。 しょぼいなあ。 あぶない刑事の ‘タカ’ のフィギュアのほうがよかったなあ。 『いくぜ、タカ!』ってなもんだ」「あんたも古いねえ」「うるさい。 ほっとけ!」「それでと……。 ‘いち富士、にタカ’ と来まして、 3つめは、と。 あっ、ありましたよ。 ジャジャ~ン」「は?」「あれ、間違った。 ナスビだと思ったら手榴弾だった。 形が似てるから、ま、いいでしょ。 ‘いち富士、に鷹、さん手榴弾’。 なんつってー!」ドッカーーーーーーーーーーーーン!ああ、びっくりした。夢か……。 よかった。ふぅ~。あれ、クチから煙が出た。
2007年01月03日
コメント(10)
農家の縁側で老夫婦がお茶を飲んでいた。「ばあさんや」「なんじゃ、じいさんや」「ほれ、見ろ。 男体山の頂に笠雲が3重にかかっておるぞ」「おお、みごとじゃのう」「今年は米は豊作、野菜はまあまあじゃな」「そうじゃねえ、じいさん」『うっしゃしゃしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃ……』「ばあさんや」「なんじゃ、じいさんや」「ほれ、見ろ。 男体山の隣の赤城山の頂にくらげ雲がかかっていて 近くでカラスが6回鳴きおった」「おお、ひょっとして……」「今年7月の参院選で自民党はボロ負けして 安倍内閣が倒れ、麻生内閣の誕生じゃな」「そうじゃねえ、じいさん」『うっしゃしゃしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃ……』オールバックの胡散臭いオバハンより、農家のお天気占いのほうがよっぽど当たるのであった。
2007年01月02日
コメント(12)
全21件 (21件中 1-21件目)
1