カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2007年02月26日
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カテゴリ: BLEACHパラレル
石田と鳴神は仲がいい。

ツンデレ同士の男女というのは厄介なものである。

「……帰る」
先刻までガンガン怒鳴っていた女がトイレに立て篭もり、三十分以上立って出てきてからこう吐き捨てたのだ。
怒りっぽさでは引けを取らない石田も、内心かちんときたが、それより鳴神の顔色が悪いのが気になった。
普通の男なら「気分でも悪いのか?」と声をかけるだろうが、すまして
「それじゃ、また明日」
「……うん」

ツンデレの扱いはツンデレが一番良く知っている、のかもしれない。

「うちのクラスの黒崎の実家が、個人病院らしいんだけど」
わざわざ縁故を気にするのは、さもしいが、「少しまけて貰えるかもしれない」と考えてしまうからだ。
二人とも一人暮らしで、バイトもしているが、基本的に懐が寂しい。
デート?でも、「金は一銭も使わない」という暗黙の了解があるくらいだ。
(お昼は、公園で石田が作った弁当を食べる)
出先のことなので、無論保険証など持っていない。
「男の医者は嫌……」
痛みにうめきながら主張したのは、それが下腹部の痛みだったからだ。石田には言い辛いが。
「じゃあ……」
どうしよう。

場所も、幸か不幸か黒崎医院より近い。
日曜の午後でも診察している。
そして何より、この見栄っ張りが無様に座り込むほど痛がっているのを、これ以上放置しておくわけにはいかない……!
「仕方ないな、僕がおぶっていくよ」
「え」

「大丈夫だよ。近くの病院に行くだけだから」
「う……」
渋々従う。仕方ない、本当に痛いのだ。
石田は彼女をしっかり背負うと、ぐっと地面を踏みながら歩き始めた。
モデル志願のシェイプされた肉体に感謝しながら。

空座中央病院までは、幸い一区画ほどしかなかった。
運が良かった、と石田はとりあえずほっとしたが、その肩に、ぎゅっと指が食い込んだ。
「この病院、見たことある……」
「そうかい?一応、市内で一番大きい総合病院だからね」
来たことがあってもおかしくないと思ったのだが、エントランスに差し掛かったあたりで、急に鳴神が暴れ出した。
「……ここ嫌。怖い感じがする」
「え?」
病院で怖い思いをした人間など珍しくも無いかもしれないが、
「降ろしてよ!あたし帰る!」
鳴神はいきなり暴れだし、ただでも少し無理をして彼女を背負っていた石田は、バランスを崩してしりもちをついた。
……要するに、彼女をクッションにしてしまったわけだ。
その感触に慌てて立ち上がるが、さっきまで痛みに蹲っていたはずの鳴神が、その一瞬のうちに逃げ出したのだから、本気で驚いた。
「病院が怖いなんて、子供じゃあるまいし」
たまたま近くにいた小学生の女の子が、軽蔑したように言ったが、石田には、そんな簡単な恐怖とは思われなかった。

(1月18日 前日記より)





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最終更新日  2007年02月26日 21時43分10秒
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