[BLEACH SS] カテゴリの記事
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そういえば一護の誕生日過ぎてる。
「というわけでおめでとう黒崎。何か欲しいものは？」「そろそろ彼女が欲しいです」「……候補なら幾らでもいるじゃないか。朽木さんとか」「あいつの座布団にはなりたくねえ」「井上さんとか」「せっせと飯とか服とか作ってきそうでやだ」「有沢さんとか」「女とも他人とも思えねえ」「ネルちゃんとか」「あの二人を義兄と呼びたくない」「りりんちゃんとか」「やばい趣味とか思われなくない」「じゃあやっぱり瑠璃千代ちゃん」「彼女は欲しいがまだ結婚はしたくない！」「何贅沢言ってるんだ黒崎！主役特権でもこれだけフラグたってる奴そういないぞ？」「量より質だろ普通！どいつもこいつもEDまでいかねえよこのままだと！第一、見た目の平均年齢やばくね？」「実際年齢は逆の意味でまずいけどね。還暦いくかもしれないよ」「……「ありえないほど綺麗な人」なんて贅沢言わないから、優しくて、家事が得意で、女らしくて、厄介な係累がいないごく普通の彼女が欲しいです……」「君の全フラグを狙い撃ちたい」
2008年07月16日
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自己愛は確かに毒を含んでいる。
いったいこれは、生者のための能力なのか、死者のための能力なのか。「あんたも、僕を殺したいと思ったことがあるのか？」自分から聞いておいて、どうして「ある」と言われて傷ついたような顔をするのか。「「僕」は「あんた」じゃない」わかっているつもりで、それでも飲み込んでしまいそうになる、あの花が覗く池のように。お前を殺して自分を殺して、全てを終わりにしてしまいたくなる。
2008年03月28日
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その頃の父たち。
(164話)「おい、愚息どもが戻ってくるらしいぞ？」「何？原作か、それともアニメのほうか」「どっちもらしい」「……この状況でどの面晒して撤退するつもりだ、半端ものが。戻ってきたら……」「まずは風呂と飯だな」「その前に、貴様の息子の胸と尻にシリコンを詰め込んでしかるべきところに売ってやる！」「おお！お前の行きつけの店か？今度一緒に行こうな」「間髪いれず混ぜっ返すな！それでも人の親か！」*首と肩と背中が痛くて寝返りも打てなかった……。治ったらもうちょっとまともなハピバを書きます。多分。
2008年03月14日
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その頃のウルキオラ その２．
(153話)「井上織姫に何か仕事を与えてはどうでしょうか」ウルキオラが東仙要に切り出したのは、要するに一人で相手をするのが耐え切れなくなってきたからである。そもそも何かさせるために手間隙かけてさらってきたはずなのだ。客人扱いがおかしい。「しかし、人手は足りている」だったら連れて来るな。言いたいのをぐっと堪える。「そうだ、ワンダーワイスの情操教育を任せるか」「情操教育？」統括官が、新入りと言うか新作の彼に目をかけているというのは知っている。だが、情操教育というのがわからない。どうせ戦闘の道具である。「歌や説話などだ」「………………そうですか」絶対無理だと思ったが、とにかく一息入れられそうなのでよしとすることにした。 「……と、いうわけだ」「わかりましたっ、お父さんっ！」統括官の命に、織姫はびしっと敬礼を決めた。この任務が気に入ったらしい。「お父さん……」喜んでいるのか凹んでいるのかよくわからない統括官。「とりあえず唄いますか？どんな歌がいいですか？」「そうだな、君が子供の頃、ご両親に歌ってもらったようなものがいいだろう」「あたし、お兄ちゃんに育てられたんですけど」「構わない。……そうか、君も苦労したんだな」何処となくしみじみしてる上司を、ウルキオラは醒めた目で見つめている。どうしてオレの宮でやるのだろうと。ワンダーワイスは興味なさげにあさってを向いている。しかし織姫はそこらへんにあった独鈷を握り、ノリノリで唄い出した。 「宇宙の名においてのびたに絶対権力神秘の名においてのびたに敵対宣告 社会党の決議においても、のびたは正義の味方農林省のお偉いさんでも 生首魂込めコントロール♪ 不定見の極みに措いても 敵対勢力戦術家の高みは老いても 絶対殲滅三歳以下は捨て置くにしても そこから一人も帰すな♪」 ……のびたって誰。妙にノリのいい曲調で、ワンダーワイスは喜んで体を揺らしているが、ウルキオラの感性が全力で違和感を訴えている。賭けてもいい、彼女は絶対間違えて覚えている。「戯れ歌か」盲目の男はぽつりと呟いたが、「何時の世にもあるものだな」と続けるものだからウルキオラは本気でずっこけた。井上織姫ワンマンショーはその日の深夜まで続き、ウルキオラは何か言いたげな従属官たちに退去を命じてやった。＊今回の替え歌の元がわかった方がおいででしたら御連絡下さい。特に何も出来ませんが、せめてお好きな鰤キャラが良い目を見るお話を書いてプレゼントさせていただきます。……古くてマイナー路線でアニメでも特撮でもない上、収録アルバム持ってる人でも変わりすぎててわからない気がする……。
2007年12月22日
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その頃のギン。
(152話)「チルッチちゃーん、聞こえてるー？」「……聞こえてるけど、どうして隠しカメラから声が聞こえるのかわからないわ」「まあそう固いこと言わんと。今うまいことそっちに一人追い込むから、いいとこ見せてやー？」「はあ？」チルッチは基本的に誰も信じていない。特に狐目の元死神は信じていない。「魂胆は何」「嫌やなー、君に十刃に復帰して欲しいに決まっとるやないか。女の子が少ないよって、むさくるしゅうて敵わんわ。あ、君たち、ポット置いたらもう退うてええで」「って見世物扱いじゃないの！」カメラ越しにえらい形相で睨みつけてくる部下に、ギンはひらひらと手を振った。無論向こうには見えていない。「見世物ゆーたらなー、ロリとメノリがこの前言うとったで？チルッチは気位ばかり高うて阿呆や、スカート捲りあげるくらいの根性があれば落とされへんやろうってな」「媚を売るしか能のない女と一緒にしないでよ！」「ボクから見ると、キャバレーのホステスとピンク専門のホステスくらいしか違わへんけどね、君たち」映像が切れた。チルッチが切れてカメラを壊したらしい。「馬鹿な子やね、査定に響くのに。どうせ幾らでも見る方法あんのになあ」「君が苛めるからだよ。可哀想に」「ちゃっかり見に来てる人には言われたくないわ」
2007年12月12日
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その頃の織姫とウルキオラ その3。
(151話)「……少し、聞きたいことがあるのだが」ウルキオラは少し硬い表情で切り出した。「何？」織姫は臆せず切り替えす。、「……今流行の宴会芸といえば、どんなものがある？」「え？宴会芸？」流石の織姫もこれには驚いたが、「虚も宴会するのか。そういえばそろそろ年末だし」と簡単に納得した。「そだね……やっぱり○△□ファイヤー？」「は？」思わず、聞き苦しい単語を脳内削除したウルキオラは、変な声を上げた。「だから×▽/ファイヤー。ライターをこうやってね、」「いや、いい。他にはないのか」「鼻の頭の油を搾り出すとか、スカートで開脚前転とか」「本当にそれが流行なのか？」「ううん」織姫は真面目な顔で、「お兄ちゃんが言ってた、すかした二枚目は同性に嫌われるって！ウルキオラは何時もぶすっとして愛想がないから、年に一度の忘年会くらい気さくに振舞ったほうがいいよ」「い、いや、オレが芸をするとは一度も言っていない」「そうなの？じゃあポピュラーに安来節とか、一人チークダンスとか？」「やすきぶし？」「教えてあげるよ」無論五分と耐えられなかった。「コスプレして○ヨネー○の「麦畑」をデュエットしない？」「……何だか知らんが、もういい……」
2007年12月08日
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その頃の十刃落ちたち。
(150話)「……暇だな」虚夜宮の僻地？にある十刃落ちたちの詰め所で、誰かが呟いた。残りは見るともなく、オッサンのダンスを眺めている。「働かずに食べられる身分なんだから文句を言うなよ……胸が痛むぜ」「しかしなあ」窓際族も、それはそれで辛い。24時間勤務の上に、殆ど娯楽がないのだ。そこに現役組のお使いに呼ばれたチルッチが戻ってきたのだから、皆一瞬そちらを向いた。何しろ女である。いるだけで場が華やぐし、何より耳が早い。大体何か聞き込んで帰って来る。チルッチは楽しげに周囲を見回すと、「お金」と請求した。「金取るのかよ！」「化粧品が切れそうなのよ」渋々小銭を払う一同。チルッチは合計が希望金額に達していることを確認すると、「あの堅物のウルキオラが、現世の女を囲ってるのよ！」とぶちまけて場を沸かせた。多少ならず事実とずれがあるが、本当のことは誰も知らないのでノープロブレム。「え、あいつか？ノイトラかスタークの間違いじゃないのか？」「人は見かけによらないな」「どんな女だ！小娘か年増か？」「まあ、みてくれは悪くなかったわね。ぼーっとしてるし色気がない子供みたいな奴だったけど。いかにも童貞が好きそうなタイプ？」言いたい放題である。金取ってる以上盛り上がるように喋る義務があるが、それにしても酷い。「3サイズを書いたメモを寄越して、その女の服を見繕ってこいっていうのよ。幾らツケてもいいって」おお、とどよめく暇人たち。「それで、やっと探して持っていったら、露出度が高くて駄目だっていうのよ！別にハルペルみたいに露出趣味の服じゃないのに」「あいつむっつりだったんだな」「従属官が愚痴ってるのを聞いたんだけど、部屋を模様替えして、お茶は一日二回お取り寄せ、宮にいるときは女の部屋に入って出てこないんだって。全く呆れたものね」「二十歳過ぎてかかった麻疹は重いというからな……胸が痛むぜ」他の面々は、胸が痛むどころか動悸が治まらないという顔である。暫くウルキオラの動向が此処での話のネタになりそうだが、決して当人の耳には入らないだろう。おそらく。……合掌。
2007年12月05日
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その頃の織姫とウルキオラ。その2
(「149話)「ねえウルキオラ、あたし藍染さ……様に会いたいんだけど」織姫の申し出に、ウルキオラは警戒を露にした。「何用だ」「見ただけでサイズを測る秘訣を教えて貰いたいの！」ちょっと待て。この状況で何を言い出すんだ。思わず普段と違うノリで突っ込みそうになり、とりあえず黙るウルキオラ。「あたし手芸部だったんだけどね、それが出来るのって部長の石田君だけだったんだよね！聞いたんだけど「企業秘密」っつって教えてくれないし！でも藍染様はアパレル関係に進むわけじゃないし、どうせ暇だから教えてくれそうじゃない？」「……そこまで暇じゃない」多分。お茶飲んで崩玉と人事弄って綺麗どころとどんちゃん騒ぎしているところしかウルキオラもみたことがないが、彼の見ていないところではきっと忙しくしているはずだ。……多分。「(でもあたしは暇だな……。)あ、じゃあ、ウルキオラの服を作っていい？目分量で」「……いいだろう」サイズが上手く合うかどうかわからないが、それで暫くおとなしくしていてくれるなら損はない。そう思ったウルキオラは、布と手芸道具一式を織姫に託した。ちくちくと約半日。「出来たーっ！」「そうか」興味なさげだったウルキオラは、織姫の作品を見て絶句した。「……おい」「よく出来てるでしょ？見た感じはサイズもぴったり！着てみて着てみて」「……いや」「人前で着替えるのは恥ずかしい？大丈夫、試着室も製作済みだから！」ウルキオラは動揺を隠し切れない目で即席試着室を見た。その彼をずんずん押し込む織姫。「これが上手くいったら藍染さまの服も作るから！うわ楽しみ！」(……勘弁してくれ)無論、この宮で誰も助けは入らなかった。
2007年11月28日
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その頃の織姫とウルキオラ。
(148話)「あれがいい！」織姫は、憮然としつつお使いを果たしたチルッチの後姿を指差した。「あたしもああいう服がいい！寒くもないのにこんな動きづらい服は嫌！」(……わざわざ露出度が低いのを持ってこさせたのに……)自分なりの心遣いを無碍にされ、クールなウルキオラも内心で衝撃を受けている。「それのどこが不満だ」「そうじゃなくて、ああいう膨らんだ袖は女の子の永遠の憧れなの！男の子にはわからないだろうけど……」仲間の霊圧を感じ、またそれがふっつりと消えたのを感じ取ったせいもあるだろうが、子供のような駄々を捏ねている。ウルキオラでなければ、苛立ちのままにひっ叩いていたかもしれない。「いいから着替えろ。その格好のままでは安全は保証できない」「え……」「お前が何者か、下の者は全く知らないからな」「……」織姫はいきなりおとなしくなったかと思うと、ひょこんと頷いた。「わかった。着替えるね」「オレが出て行ってからでいい！」(肝が据わっているのか単に状況が理解できていないのか、とにかく読めん女だ。勝手に外出できないよう手を打たないと、誰かに殺されかねないぞ。ノイトラだのアポロだの、釘を刺しても無駄だからな)(そっか、ここ女の人少なそうだもんね。藍染さん凄くやらしい感じだし、市丸さんは蘭菊さんと付き合ってたらしいし、セクハラとか嫌だよね。ウルキオラって意外と気が回る……っていうかお兄ちゃんみたい)(とりあえず扉に術をかけて……くそ、面倒だな。どうしてああ警戒感がないんだ？)多分貴方のせいです。
2007年11月20日
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その頃のウルキオラ。
(147話)「藍染様、井上織姫の処遇についてご相談したいのですが」「ああ、なんだい？」藍染はお気に入りの部下の言葉に優雅に微笑んだが、「服装についてなのですが」と言われてぽん、と膝を打った。「そう！あの丈はいただけないよね。やっぱり女の子が恥じらいがないと」「いえ、(萌え語りがしたいわけではなくて)覚悟を促すため、我々の装束に着替えさせてはいかがでしょうか」「着替え……」(餓鬼じゃあるまいし一々反応するなおっさん。ハレム持ってんだろが)主の前だけでだけ口が重いウルキオラ。「私は構わないが、君はそれでいいのかウルキオラ」「何がですか」「着替えを手伝うなんて、まるで執事のようじゃないか」「あの歳なら一人で着られるでしょう」「女の子を服を選ぶのって、緊張しない？」「誰か女に任せます」「君って制服フェチじゃなかったっけ？」「中の人と一緒にしないでください」一々大人気なく反論する部下に、藍染は嘆かわしげに首を振った。「中の人なんていないよ、特撮じゃないんだから。君は昔から夢がない」「おや、反抗期やねえ」黙って聞いていたギンが、首を突っ込んできた。「ちなみに藍染さんの中の人はどんな人？」「夜明けのコーヒーをペアストローで飲む人でしたか」「…………夢がないわりにおもろいこと知ってるね」ギンはけらけらと笑った。新世界の神は「それちょっと違う……」と部屋の片隅に蹲りながら呟いているが、その間に二人がさっさと退出したため、誰も聞いてさえくれなかった。
2007年11月08日
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ギャグになってない！
「石田、誕生日だってな。何か欲しいものあるか？」「十刃倒したい」「いや、恋次よりはマシだろ？」「どうして阿散井の名前が出てくるんだ」「回復ユニットが来て欲しい」「いや、チャドが優先で正解だろ？」「どうして茶渡君の名前がでてくるんだ」「女の子と恋愛フラグ立てたい」「啓吾みたいなこと言ってんなよ」「どうして浅野君の名前が出てくるんだ」「とっ……とりあえず右の頬を差し出せばよろしいでしょうか？」「作者の代理として土下座しろ」
2007年11月06日
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石田お誕生日おめでとう！
天が湿るのは無意味ではない地に成長を促すため地が乾くのは無意味ではない天に自覚を促すため黒の中の白地にあって天を踏み越えよ
2007年11月06日
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合成アレキサンドライト
そいつは当たり前のように僕を無視した。だから僕はそいつの鼻先に一発入れてやった。「なんだてめえ」そいつは見慣れた顔で、まるで始めての人のように僕を見た。「初めまして、黒崎の偽物君。おとなしくしていてくれ」「ああ？何様だよ」「滅却師さ」つまらなそうに背を向けるな。失敬な奴だ。所詮黒崎の偽物の分際で。 「偉そうだな、お前」「それの何が悪い」僕は本物だ。虚じゃない。まがい物の君が僕より固いというなら、遠慮なく僕を打ち砕けばいい。
2007年11月05日
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当人は慰謝料と主張。
「恋次、ゼリービーンズを食べないか？」「おお、くれくれ！」甘いもの好きの恋次は喜んでルキアに手を差し出したが、そのルキアがうきうきと「わかめ大使」の人形を取り出すのに思わず固まった。「……わかめ大使ゼリービーンズ……？」「おお、石田の提案でな。真ん中をこう、きゅっとすると二つに割れるというわけだ」……なんだかいやなことを思い出すのは気のせいか。つかこれマルパク？ルキアはカラフルなお菓子をひょいひょいと自分の口に放り込み、「うむ、美味い！女性死神協会にも好評だったし、売れるぞこれは！ほら、貴様も遠慮するな」「い……いや、なんか食欲がなくなったからいい……」
2007年11月04日
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その頃の織姫。
(146話)自宮に戻ったウルキオラは、思い切り不機嫌そうな顔をした捕虜に出迎えられた。捕虜、というのは少々事実からずれているかもしれないが、他にどう呼んだものか彼にはわからないし、別に拘る必要も感じない。ちゃんと一室を与えてやって、小奇麗な調度も入れてみたのだからもうちょっと友好的な態度をとってくれても罰はあたらないだろう、とも考えない。ただ、「女が喧しいのは厄介だな」と思っただけだ。「何処に行っていたの」……仲間の気配に気づいたか。それとも、何か違和感があるだけなのか。別に、駆け引きの必要も感じなかった。「仕事だ」それだけで背を向けようとしたウルキオラの左腕をしっかり掴むと、織姫は「嘘！」と叫んだ。「おい」ウルキオラはそれを振り払おうとしたが、「だって凄くいい匂いするもの！あたしに内緒でお茶して来たんでしょ？」……当たってる。図星をつかれて、思わず固まってしまった。「この匂いからして紅茶はブレックファースト、お茶菓子は酒まんじゅうだね。あたしには宇宙食みたいなのしか出してくれないくせに」ちなみにウルキオラは、自分が飲んだ紅茶の種類など皆目見当もつかない。「煩い、会議のついでに振舞われただけだ」「嘘！」ストレスでハイになっているのか、織姫はウルキオラをびしっと指差した。「会議にはミネラルウォーター、これ世界の常識！」正確には現世の常識？であるが、ウルキオラも多少「空気にそぐわない」と思っていたので、これにはなんとなく同意した。が。「あたしもお茶したい！逃げないから喫茶店に連れてって！」「ルームサービスで我慢しろ！」……藍染様、面倒な役を全部オレに押し付けるのは勘弁してください。従属官にお茶とお茶菓子の手配を命じながら、ウルキオラは内心嘆息した。
2007年10月31日
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全てが私を拒絶する。
私にその資格があるのなら、私は私を拒絶する。地に潜れるなら土竜になるし、水に潜れるなら山椒魚になるし、明日死ぬ蜉蝣でも別にいいし。前にも後ろにも右にも左にも逃げ場はなくて、見上げた空はあまりに暗くて、飲み込んだ言葉はあまりに醜かった。
2007年10月30日
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拒絶。
そぐわぬものがあるから、消してしまうの。世界に余るピースを消してしまうの。だってうまく嵌らないんだもの。 嫌いな色があるから、消してしまうの。汚い色だから消してしまうの。だってグラデーションがおかしくなるもの。 気づけば世界が穴だらけだけど気にしないわ。皆がそこから落ちていくけど気にしないわ。だって悲鳴も消してしまうだけのことだもの。
2007年10月29日
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織姫ちゃんのお仕事。
(「一応2,000本記念です。」の続き)「これを戻せ」「……え？」織姫の前に引き出されたのは、何の変哲もないダンボールだった。見慣れたメーカーのロゴが入っている。「……何ですか、これ」「確かダンボールといったな」気まずいのか、あさってを向いて言うウルキオラ。「だから、どうして」「先日まで、オレ達が買い出した食糧が入っていた。それを、戻せ」織姫は目を見開いた。「あっ頭いい！じゃなくてせこっ！」「黙れ」決して目線を合わせないウルキオラ。どうやら「恥」という概念は持ち合わせていたようである。「うーん、誰に迷惑かけるわけじゃないからいいけど……ハゲとかミスドは入ってる？」「……?」「えっと、嗜好品？」「嗜好品なら、確か鉄人のケーキをヤミーが」「頑張ります！」思わず腕まくりした織姫が、「あたし、ここに何でつれてこられたんだっけ？」と我に返ったのは、ティータイム後のことだった。
2007年10月28日
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火と水と(イチウリ)
橙と青、並べてみればファイアー・オパールとウォーター・オパール。「どちらも綺麗」「僕が後者なら、褒められた気はしないな」「どうして？」「背景が暗ければ映えるが、明るければ意味がない」 「非常時には使えない、ということさ」
2007年10月27日
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剣ちゃんは真性Mだと思う。
ある日の昼下がり、水色がにこやかに切り出した。「石田君って、SとMのどっち？」と。一護と啓吾が茶を吹いた。「……服のサイズかい？SとMの中間というか……自分サイズで作っているけど」冷静を取り繕いながら答える石田に、水色は動じず「やだなあ、LやLLの入らないほうの話だよ。僕はどっちもいけるタイプ、チャドはノーマル、啓吾と一護はMだよね絶対」「「断定するな!!」」麗らかな風の中でなんつう話題を振りやがる。「僕もノーマルだと思うけどな。黒崎や浅野君と違って」……こらてめえ。M設定を後押しされ、一護は眉をひくつかせた。「いや、ノーマルってこたねえだろ」「なんだと？」石田も睨み返す。「うちの親父の話じゃ、てめえの親父って真性ドSの女王様気質って奴らしいじゃねえか。そういう親の子って、先天性Sなのか後天性Mなのか、オレも興味あるぜ」一護にしては意地の悪いことを、と目を輝かす水色と啓吾、心配そうなチャド。「竜弦が、君の父親を真性超ドMって言っていたから、それをサンプルケースとすれば先天性が正解かな。あ、でも、うまいことS系の女性を捕まえたって言っていたから、断定はできないか。残念だね」「お、親父はともかくお袋の悪口はやめろ！」……石田雨竜はSの方だ。水色は満足げに首肯し、チャドと啓吾はげんなりした顔を見合わせた。
2007年09月29日
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一応2,000本記念です。
「藍染様、どちらにおいででしょうか」「ああ、こっちだよ、要」藍染は、盲目の統率官にゆったりと笑いかけた。彼らが本拠を虚園に移してから、数日後の話である。「君がわざわざ私を探すとは珍しい」綺麗どころを二人ほど侍らせた藍染は余裕の態度だったが、「申し訳ありません、現世に買出しに行って頂けませんか」と言われて椅子から転がり落ちかけた。まさか、此処の主である自分が、部下にパシリに使われるとは思わなかったのだ。「何故私が……」つい口に出したところ、「予算がありません」と身も蓋もない返答が帰ってきた。「予算……」あれだけあったのに、と言いかけて口を噤む。「つまらないことに大金をつぎ込むからです！」などと、部下たちの前で言われては示しがつかない。「鏡花水月で、会計をごまかしてください」「……君、それは正義に反しないか？」「衣食足りて礼節を知る、という言葉をご存知ですか」何か一寸ずれているような気がするが、ここで言い返すと思わず泣きたくなるほどみみっちい話になるような気がする。破面に強奪させることも考えたが、もし古巣に知れて「食うにも困っているのか」と思われたら恥ずかしい。藍染は渋々と立ち上がった。「荷物持ちがいるね……ドルドーニ、チルッチ、ガンデンバイン、ついておいで」「はい」十刃から選ばれたメンバーは、素直に頭を下げた。が。「ドルトーニ、お茶菓子にはマドレーヌとバームクーヘン、どちらがいいと思う？」「いけません藍染様！チョコラテなどもってのほか！」「……いや、チョコじゃなくて焼き菓子なんだけどね」「それもチョコラテです！」「……じゃあいいよ、君の好きなもので」「では、さきいかとバタピーを」ぽん。「チルッチ、何か欲しいものは……うをっ」「ちょっと、気安く障らないでよこのパワハラ親父！」「お、親父って、私はまだそれほどの歳じゃ」「はあ？加齢臭漂わせて何言ってんの？」「い、いや、私はただ、何か欲しいものはないかと聞こうとしただけだよ」「ファブリーズと、氷結ジェット対人用」よろよろ。「ガンデンバイン、いい肉はあったかい？」「我々が肉を食べるのか……胸が痛むぜ」「君は草食主義者なのか？」「植物も生きているんだよな……胸が痛むぜ」「……君、それでよく虚になれたね」「実家は代々敬虔なクリスチャンです」なんなんだこいつらは。何とか買い物を済ませて帰った藍染は、東仙に「明日もお願いします」と言われて一瞬倒れ掛けた。「大丈夫ですか？」声をかけてきたのは、荷物を運ばせるべくさっさと背を向けた統括官ではなく、先日抜擢したばかりのウルキオラと、その従属官のヤミーだ。「ああ、大丈夫だよ。……買出しに行ったのだが、どうも量が足りなかったようだね」それ以前に、部下とのコミュニケーションに疲れ果てたとは言えない。「では、次は我々がお供いたします」「おうよ、この倍くらい、オレが運んでやるぜ」「君たち……！」これをきっかけにヤミーは十刃入り、ウルキオラは藍染のお気に入りの座をゲットしたが、「なんかオレたち、先陣というよりはお使い役じゃねえか……？」「黙れ。これも務めだ。第一オレ達以外に、素直に雑用をこなす十刃がいないんだから仕方あるまい」「まあ、そりゃそうだけどよ……」ヤミーですらこれで納得するくらいだから、藍染が崩玉完成とその成果(もっと優秀で従順な部下)に期待するのは、無理もないことであった。
2007年09月14日
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もうちょっと一般的なネタはないのかおい。
(「こんなのでごめん織姫。」の続き)「よっし綺麗にできた！」放課後。織姫の買い物に付き合うために、部活終了をだらだらと待っていた一護は、同じく待ち時間に熊を弄っている眼鏡女のほうを何気なく見た。見て吹いた。「何やってるんだてめえ！」石田も眉を顰めた。「本庄さん、備品で遊ばないでくれないか」「そういう問題じゃねえ！」カラクライザー仕様のテディには、何故か真っ赤なワックスコードが巻きつけられている。ロープよりはましだが。「見てみてヒメ、囚われのヒーロー！」「うわー燃えるー！」「何処の悪の組織が、捕らえたヒーローに亀甲かけるんだよ！」「いや、本当はもっとマニアックなやり方も知ってるんだけどね、度を越すとヒメにひかれちゃうかもしれないし」「今、ひいてないのは井上だけだ！」正確には、石田とみちるもひいてはいない。ちょっと困っているだけだ。当の織姫は全く能天気なもので、「定番だよねー、縛って吊るして鞭でびしばし」「井上さん、僕そこまでやってるの見たことないんだけど……？」「逆さ吊りにして「腕から溶かーす！」とか」「いくらヒーローだって、縛って吊るしたら血が巡らなくなって死ぬぞ」「あら、意外と詳しいのね黒崎のくせに」「人体の構造を知ってりゃわかるだろうが！」ただの石田作のぬいぐるみならいいが、一応自分設定？のこいつを見殺しには出来ない。今日はなんとしても井上のご機嫌をとってやる、と一護は悲壮な決意を固めた。
2007年09月05日
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こんなのでごめん織姫。
「はい、井上さん、お誕生日のプレゼント」「わあ、ありがとう！」「また熊かー！」けろりとして新学期の教室でぬいぐるみの受け渡しをする石田と井上に、一護は軽く切れたが、反面「熊でよかった……」と思っている。何しろ南瓜タイツの王子様バージョンだ。これを自分の顔でやられたらとてもじゃないが居た堪れない。「服を裏返すと、カラクライザーに変身するんだ」「おお！」「余計な真似すんな！」チャド(死覇装)、自分(破面コスプレ)、井上(コレ)と、どんどんおかしな方向に進化してきているような気がする。自分のイメージを大事にしたい一護はほとほと参っているのだが、他にきちんと説教してくれる人間がいないのでどうにもならない。「目覚ましはついているの？」「今回は「勝利だ！カラクライザー」の一番を丸ごと入れてみたよ」「入れるな！つーか歌ってるのは誰だ！」「まあ……聞けばわかると思うよ？」「……井上。黙ってそれ渡せ。後で何でも好きなもの買ってやるから！」必死の形相の一護に対し、井上は素直に顔を輝かせたが、「本当？でも石田君に悪いよね……」「オレの人権侵害に加担するな！」「そんなもの初めからないわよ」未だ一護が名前を覚えていない眼鏡の女が織姫からぬいぐるみをひったくると、素早くスイッチを入れた。勇ましい前奏が鳴り響く。「輝け斬月 ウォウォォォォ 空高く 技と力と心が通うリリン！ ノヴァ！ クロード ウォウォォォォ唸れ斬月 カラクライザー行く道一つ おおただ一つ これがおいらの生きる道カラクライザー ウォウォォォォ カラクライザー ウォウォォォォカラクライザー フィニッシュ！」石田は勿論だが、コンの奴、覚えてろよ……。一護及び級友たちは残らず凍りついたが、井上だけは例によって素直に喜んでいる。「ボーナストラックとして、生徒会長による「輝け！ハゲスター」も収録済みだよ」「わあ、聞きたーい！」「お願いやめてそれだけはー！」凍り付いていた啓吾が泣き出した。*わざわざ書くのもなんですが、カラクライザーは「アクマイザー3」の替え歌、ハゲスターは「カゲスター」の替え歌です。ハゲスターの歌詞は、本物を調べればほぼ10割予想がつきます。
2007年09月03日
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一護がロンハー見てたらなんとなく嫌。(イチオリ前提)
「え、女は50kg以上あるのが普通なのか？これだけ細くてもウエスト60cm台かよ！」「馬鹿番組見て馬鹿なこと叫ぶなよ、馬鹿兄貴」妹の容赦ない突っ込みに、一護は声をぐっと詰まらせつつ反論した。「だってこの女なんか、体重石田と変わんねえぞ！ちゃんと括れてんのに。まさか……」井上もこれくらいあるのか、とは流石に声に出さなかったが、家族にはおおよその見当がついたらしい。妹たちの視線は途端に冷たく、父のそれは逆に生暖かくなった。「見た目が良ければ、数字なんてどうでもいいと思う」「だから、スタイルのいい女の子は体重40kg台、ウエスト50cm台は幻想だって青木○○○が言ってるだろ」「まあ、織姫ちゃんの場合は体重45kg前後だと父さんは睨んでいるけどな！」思い切り主観的楽観的な意見を吐いた父は、二人の娘に思い切り蹴りを入れられた。ぴったんこかんかんだがこの場合はどうでもいい。「でも、ルキアより明らかに重かったぞあいつ」「ルキアちゃんが軽すぎるんだよ。あたしたちと2kgしか違わないんだもん」「げっ、そうだったのか？」「……それにしても、どちらもおんぶなりだっこなりしたことあるんだ、一兄」夏梨の指摘に、思わず視線を逸らす一護。「ああ、いや、その、足場が悪かったりで」「ほほう。それで、ルキアちゃんは軽々だったのに織姫ちゃんは一寸梃子摺ったので、織姫ちゃんは重いと思ったんだな。自分の腕力が足りないからだとは思わなかったんだなこの甲斐性なし」「うるせえ！」自己申告55kgの石田を抱えて全力疾走したチャドと比べられてたまるか、と脳内で反論する程度には実は気にしている。……自分と同じ体重の相手を持ち上げられなければ男ではない、というのも幻想なので、本当はそんなに気にかける必要もないが。「リアルな話、平均体重ってのは年とともにどうしても増えていくもんなんだよ。たとえ見た目は変わらなくてもな。まだ16歳の織姫ちゃんは絶対40kg台、スリーサイズだって」「「しつこいよお父さん」「数字は気にするなって話なんだけど」空気読めない父はとうとう居間から追い出され、一護も自室に引き取ったが、(年とともに体重が増える……？じゃあ、ルキアは元々何kgだったんだ?)とらちも無いことを考えて悶々と夜を明かしたのは、これでも思春期なので仕方がない。
2007年08月16日
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2日早いけど檜佐木副隊長ハピバ
「何だって誕生日まで編集部に篭ってなきゃならねえんだ」檜佐木修兵は不覚悟な台詞とともにため息をついた。「来月の企画すら纏まってないのに何言ってるんですか」隊士……もとい編集Aがすかさず突っ込む。「だからギ」「あんなものに嵌っている死神は編集長代理だけです」「せめて琵琶か尺八にしてください」「あんた需要って知ってます？」篭りっきりでうんざりしているのは皆一緒だった。現在所在不明の編集長は、誤字一つ見逃さず締め切り破りを一切認めない辣腕で、あまり人気のなかった自分の連載「正義の道」を新企画「正義のレシピ」で見事建て直すという偉業をなした。それに比べると、編集長代理に軟派っぷりと押しの弱さに、編集部員たちは非常な不満と不安を感じている。元々の席順とは別に、文才で集められたメンバーだということもある。東仙要は全方面で全く妥協というものをしない人物だった。「じゃあやっぱり料理で行くか」「二番煎じじゃないですか」「じゃあどうしろっていうんだよ！」四面楚歌についにキレる編集長代理。「7月号の、雛森副隊長の恋愛相談、あれ大人気だったんですよ。連載で行きましょう」「い……いや、あれは駄目だろう……？」本来の彼女のファン層からは大幅に外れていると思われる、逝ってるファンレター群を思い出し、冷たい汗を拭う一同。世の中には、売り上げのためにはどんな手も使う編集者もいる。編集Bはもろにそのタイプだった。「そういえば、女性死神協会から、現世の服の型紙を載せて欲しいとの要望が」「それだ！旅禍に外注を出せ！」石田雨竜と井上織姫は、快くオリジナルデザインの型紙を提供したが、それを見た編集部は「何故」の嵐となった。これほどアンケートの結果が読めない企画は、おそらく過去一度もなかっただろう。新編集部の瞑想振りからすると、今後は度々ありかねないが。
2007年08月12日
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バウバウの背中での会話
「そう言えば、大虚が出たとき、なんで死神は出てこなかったんだ？」一護がいきなり言い出した。「ああ？何時の話だよ」「君たちが朽木さんを捕まえに来て、止めようとした僕たちに大怪我させた前日だよ！」石田が口を突っ込んできた。つーかてめえまだ根に持ってたのかよ！「あー、あの時か……」「そもそもこいつが虚を呼び集め出した時点で出陣しろよ。あん時は大変だったんだぜ？」「石田が呼び出したのかよ！」そりゃ初耳だ。とそっちみたら凄え目で睨まれた。怖え。「いや、あん時は人手が足りなかったんだよ！席官の半分近くが、怪我してるか牢屋に入れられてて、身動き取れなかったんだ！」一護、チャド、石田、全員この話に目がマジになった。「何が……あったんだ？」チャドが重い口を開きやがった。「いや、あの三日くらい前に、男性死神協会主催の飲み会があってさ」「……は？」「イヅルたちと、「雛森と伊勢さんと砕蜂隊長、つきあうとしたら誰がいいか」って話になってな」「中学生かよ！」「そこに檜佐木先輩と射場さんが突撃してきて、イヅルと先輩が取っ組み合いになったのをきっかけに貧乳派と巨乳派の乱闘になっちまって」「……」「一角さんたちは相手構わずぶっ飛ばすし、涅隊長は「バランスが全てダヨ！」と喚いて相手構わず毒を食らわすし、仕舞いにゃ朽木隊長と市丸が始解して料亭が全壊」「……」「卯の花隊長は四番隊の出動拒否するし、山本総隊長は「呼ばれなかった」って拗ねて端から牢屋に突っ込むし、市丸の奴がイヅルに始末書代筆させたことがばれて余計話が長引いて、実を言うとルキアが見つかるまで六番隊の牢にいたんだよな、オレ」「………………そんなくだらねえ内輪もめで動けなかったっつーのか」「おうよ」「ぼ……僕は死神を憎む！」「お、落ち着け石田！立つな暴れるな弓を構えるな！」結局、オレは(男性死神協会を代表して)謝罪させられた。
2007年08月04日
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ちょっと遅いけど
「黒崎さーん、お誕生日おめでとうございます！これ、僕の手作りのケーキです」「おう……でもなんでショートケーキなんだ？」「僕これしか作ったことありません」「黒崎君、あたしタルト作ってみたの！」「タルト……ってこんなのだっけ？」「一護、恋次に手伝わせて大福を作ってみたぞ。ありがたく思え」「何で真夏に大福なんだ」「そう言うと思って、僕は夏らしくシャーベットにしてみたよ」「何で赤いんだ」「とりあえず明太子味じゃないから安心したまえ」「一護、啓吾とチャドと3人で超有名店のミルフィーユを買ってきたんだけど……入る？」「ぜってー無理。つーか何でみんなイチゴなんだよ！」「「「「「なんとなく」」」」」
2007年07月18日
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有沢たつきハピバ……のはずだった話……。
鈴 「何で「勝たなくてもいいから怪我しないで」なんて試合中にいったの？」織姫 「だってそう思ったから……」みちる 「じゃあ大会に出るのを止めればよかったのに」真花 「あたしたちがどうこう言うことじゃないと思うけど」千鶴 「あたしてっきり顧問が止めると思ってた」みちる 「普通止めるよね」織姫 「だって、頑張って練習してきたのに、こんなことで出場できなくなるなんて」鈴 「こんなこと？腕を折ったのが「こんなこと？」」千鶴 「ちょっと止めてよ。そんなに怒らなくたって」鈴 「あたしは足痛めたら、どんな大事な大会だって諦めるわよ。あたしたちはまだ高校生よ。まだまだ先があるのよ。あんな大怪我した人間が空手大会に出るなんて、当人も周りもどうかしてるわ」真花 「たつきだってわかってやってるよ。子供じゃないんだから」みちる 「でもあたし、試合中すっごく怖かった。だから織姫がああ言った気持ちわからなくもない……」真花 「周りは睨んでたけどね」織姫 「うっ」千鶴 「ヒメは優しいのよ！だから大会に出て欲しいけど怪我はして欲しくなかったのよ」鈴 「馬鹿が馬鹿をやるのを止めないのは単なる無責任」織姫 「ううっ」みちる 「あたしは出て欲しくなかったな。もっと大怪我したら大変だもの」千鶴 「怪我がばれて強制欠場になればいいな、とちょっとは思った」真花 「やりたきゃやればいいのよ。息の根が止まるまで」鈴 「真花……何もそこまで」真花 「自分の体のことは自分で責任もつのが当たり前」千鶴 「でもたつきに何かあったらヒメが泣く」みちる 「だったら止めればいいのに……織姫の言うことなら聞くかもしれないじゃない」鈴 「全く、そんなに大会に出させてやりたいのかと思ったら、「負けてもいい」なんていうんだもの。あたしどっちつかずって大嫌い」織姫 「あたしは勝ち負けなんてどうでもいい」鈴 「勝たなくていい程度の覚悟なら戦うべきじゃない。怪我が怖いなら棄権すべきよ。いい、壊れたものは基本直らないのよ。骨が折れたら、くっついたって「折れた」という事実が残るのよ。だから怪我は怖いの」織姫 「……元に戻らないの？」鈴 「無理しなければ、機能にはなんら問題ないって話よ、今回はね。でも、「折れた」のはやっぱり大事よ」織姫 「…………」千鶴 「だ、大丈夫よ！あいつ、ぴんぴんしてたじゃない」織姫 「う、うん……でもあたし、やっぱり止めるべきだったのかな」真花 「止めないなら、最後まで前向きに応援すべきだったと思うな」みちる 「えー、初めから止めようよ」織姫 「わかるけど……でも、戦って欲しいし怪我はして欲しくない……」鈴 「それはただの欲張り」千鶴 「女の子が貪欲で何が悪いのよ！」織姫 「壊れたものは直らないのか……なんで直らないんだろう……なんで元通りにならないんだろう」鈴 「時間は常に前に向うからよ」
2007年07月17日
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一日早いけど一護ハピバ
「黒崎、明日は君の誕生日だったな」「言っとくけどテディベアはいらねえ」「何故だ遊子ちゃんなら喜んでくれるのに！」「いらねえっつってんだろ！」「じゃあ、橙に君の顔を描いて手足をつけて」「みか○星人か？著作権は大丈夫か」「だったら普通に君の服でも作ろうか」「……………………コンの服にしといてくれ」翌日、一護はボンテージコンにケリを喰らった。
2007年07月14日
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七緒ちゃんハピバ。
「七緒ちゃん、お誕生日のプレゼントは何がいい？」「一滴も飲まない上司ですね」「……去年も一昨年もそう言わなかったっけ？」「ええ、言いましたね。今年はどうなることやら」「ごめんね、今年はちょっと控えるよ」「そんな酒臭い息で言われたくないんですが！」多分、隊長はとっくにルビーの指輪を買ってあるのに、毎年渡しそびれていると思います。
2007年07月07日
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意味無いです。
「石田君、部活行こうよ」「ああ御免、ちょっとこの本を読んでから行くから、先に行ってくれないかな」「じゃあ待ってる」当然のように雨竜の前の席に座った織姫に、一護が何気なく突っ込んだ。「お前、石田構うの好きだよな」「うん、石田君って妹みたいなもんだし」このさりげない返答に、放課後の教室が静まり返った。「い、井上さん、妹って」「ごめんね、同い年なのに。でも石田君のほうが誕生日後だったよね？」いや、雨竜が気にしてるのはそこじゃないんだが。「あたし第二子だから、ずっと妹が欲しかったんだ。でもたつきちゃんや朽木さんだと、どちらかというとあたしが妹ポジじゃない？」公式ではルキアも妹キャラです。織姫のびっくり発言になれた級友らも、息を詰めて成り行きを見守っている。……彼女を正面から論破なんて無理だから見ているだけ無駄だが。「じゃあ、一護は何ポジ？」笑いを堪えながら水色が聞く。「黒崎君はね、王子様ポジ！」「…………」水色の笑顔が引きつった。「か、帰ろうぜ水色」「そうだね」「鈴、英語でわかんないところがあったの」「部活があるから、明日でいい？」「お待たせ井上さん、行こうか」「うん」「誰かオチをつけろよ！」黒崎が怒鳴った。
2007年06月30日
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去年のお話。(父の日記念SS)
「お前駆け引きに向いてないな」たまに相談を持ちかけられたからといって偉そうに！他に心当たりが無い自分の不甲斐無さを棚に放り上げ、竜弦は一心を睨みつけた。「雨竜君に幾ら小遣いやってる？」「諸経費込み月１万だ」「お年玉は？」「五万。ただし全額貯金させている」「今年総額幾ら貰ったが知ってるか」「さあな。だが無駄遣いはするなと」「全っ然フォローになってねえ」一心は断言した。「滅却師なんか金にならないからやめろって、聞くわけねえだろ。そんだけ潤沢な資金があって、どうやって金のありがたみがわかる？」正論だ。流石の竜弦も反論できない。実は当人もちょっぴりそう考えないでもなかったのだが、自分の子供時代の苦い思い出から、雨竜に金の苦労など味合わせたくなかったのだ。「滅却師のことはとりあえずおいといても、真っ当な金銭感覚を身に付けさせねえと、親が金持ってる分ニートになりかねんぞ、ニートに。だからなあ、此処は手っ取り早く……勘当しちまえ」「勘当だと？」竜弦は青くなった。万年反抗期でもただ一人の子供である。追い出したくなどない。「そこそこ貯金はあるんだろ？滅却師を続けるならもう家には置いておけないって言ってやれ。どこかにアパートでも借りてやって、学費だけ出して、後はバイトか貯金を食い潰すか、3年も苦労すりゃ金の有り難味が嫌って程わかるって」「ふむ……」なるほど一理ある。滅却師をやっていたらまともにバイトも出来ない、という現実を早めに教えてやるのはいいことだろう。眼が醒めて医学の勉強を始めるかもしれない。「考えてみよう」「おお、そうしろ。んじゃオレ、息子の三者面談があるから。「ああ」珍しく感謝の眼差しで(無論口に出しては何も言わない)一心を見送った竜弦だが、一年後、その息子が自分の子の同級生兼死神となり、より深みに突っ込んでくれようとは思いもしなかった。知っていたら……一心が無事に自宅に戻れたかどうか、かなり、怪しい。
2007年06月19日
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わにのゆめ。(父の日記念SS)
ワニ（鰐）は、脊索動物門 脊椎動物亜門 爬虫綱 ワニ目に属する動物の総称。熱帯から亜熱帯にかけて23種が分布し、河川、湖沼、海岸などに生息する。水場からあまりはなれることは無い。長い吻と扁平な長い尾を持つ。背面は角質化した丈夫な鱗で覆われており、目と鼻孔のみが水面上に露出するような配置になっている。イリエワニでは全長6ｍに達する記録もあるが、キュビエムカシカイマン、ニシアフリカコビトワニなどの小型種では、1.5mほどで成熟する。現生の動物群の中で鳥類とは最も近縁な間柄で共に主竜類に属する。（ウィキペディアより）動物園に行ったのは生涯一度きりだ。小学校の時の遠足は金が無くて欠席せざるを得なかった。いわゆるデートでも行った事は無い。ただ、十年ほど前に、一度だけ雨竜と二人で行ったことがある。確か、たまの休みだったのに、父に強要されたのだ。この頃の雨竜はまだ素直で、檻の中を覗いては歓声を上げていた。せっかくだから兎を抱かせてやろうと思ったのに、一々立ち止まって十五分は動かないものだからさっぱり前に進まない。こんなに要領が悪くて将来大丈夫かと不安になった。内部のパーラーで昼食を済ませ、少し眠くなったのか、大人しくなった雨竜を抱き上げて歩き出す。目的地は無論ふれあいコーナーだ。うーうーと唸っていた雨竜が、ぱっちり眼を醒ますと、「わにさんだ！」と叫んだ。「ああ、鰐だな」「わにさん、見たい」……失敗した。雨竜の目線なら絶対見えない位置にいたというのに！仕方なく抱きなおして熱帯コーナーの前まで連れて行く。周りの生温かい視線が不愉快だ。「わにさん、お昼寝してる」「そうだな」どいつもこいつもこの騒音の中、よく寝ていられる。「わにさんも夢を見るの？」「……見るんじゃないか？」鰐にも脳があるんだから、夢を見たっておかしくない。専門外なので断言は出来ないが。「どんな夢を見るの？」「……」だから専門外だ！だが子供相手に「知らない」とは言えない。みっともない。「……昔の夢だ」「え？」「前にあった事を、夢の中で繰り返し思い出しているんだ」うむ、これなら鰐の脳の容量でもなんとかなるような気がする。「ふうん」何処まで理解できているのか、雨竜は頷いた。「わにさん、何を思い出しているの？」「それは」ジャングルの沼や川を、こいつらは覚えているんだろうか。見たことがあるんだろうか。あるとすれば、それはもう、遺伝子レベルのものに違いない。きっと、何代にも渡って、こんな檻の中で生きてきたのだろう。古代から生き延びて、太古の空を夢に見て、ただ搾取されるために此処に在る。時は戻ることがなく、幸福はただ過去にしかなく、それを知ることすらないがためにこの鰐たちは生きていられるのだろう。何故我々は、それを知りつつも滅びる道を選ばなかったのかと、眠ってしまった雨竜を抱いたまま私は考えていた。それ以来一度も動物園には行っていない。
2007年06月18日
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次の連載に続く予定……
「やっぱりリボンだよね！」「僕はネクタイの方がいいな」「リボンがいい！絶対可愛い！」どっちでもいいから部室でやってくれ。部活説明会を前に、普段以上にテンション高めの織姫から逃げ出したい一護だが、笑顔の魔力(それなんかちょっと違う)に居残りを余儀なくされている。何時もの仲間たちは、手芸部のコスプレをそれなりに楽しんでいるが、かっこつけたいお年頃の一護には、イタいとしかいいようがない。もう一人、「イタい」と言い切った鈴は、自分も壇上に立つからと、とっとと教室を出て行ってしまった。羨ましい限りだ。「本日のびっくりどっきりアイテムー！ねこみみとねこしっぽー！」織姫が堂々と持ち出した危険物に、啓吾と千鶴が悲鳴をあげ、雨竜が後ずさった。「いいでしょ？絶対石田君に似合うよね」「ってやっぱり僕用なのか？」何故感づいた石田雨竜。露骨にがっかりしているものもいるというのに。「ねこみみっていいよね織姫！」「だよねみちるちゃん！やっぱり今は執事さんにも萌え属性を入れないとね！」「ハヤテ○如くなんか参考にしないでくれ！せめて黒○事とか！」がっちり手を取り合うみちると織姫に雨竜がつっこんだが、それはそれで問題があるような気がしなくもない。今更だがオタ度高いぞ手芸部。「執事なら猫より犬じゃない？」「犬は用心棒だよ」「うさぎは違うよね」「きつね？たぬき？」「たぬきはキャラ違う」「きつねは、色が駄目だよね。石田君黒髪だもん」流石織姫の友人たち。こんなコアプレイにも真顔でついてきている。男は(可愛いもの好きの一人除いて)げんなりだが。「井上さんと小川さんは何もつけないの？」半泣きの啓吾に、織姫はけろりとして堪えた。「手錠をつけるよ」「……も、もうちょっと穏当なアイテムにしてくれないか井上さん！」「手首に包帯を巻いてからつけたら、いい感じだと思うんだよね」「フォローになってない！」頑張れ石田。手芸部の存続はお前の肩にかかっている。一護は腹の中でエールを送った。
2007年06月07日
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タイトル無用。
「……なんて癒されない風景だろう」雨竜の呟きに、一護と茶渡が大きく頷いた。三人が浦原に虚退治を依頼されたのは、八月も下旬のことだった。「皆さん、去年も今年も殆ど泳いでないでしょ？電車代と宿泊費を奢りますから、ちょっと遠出して海で泳いできてくださいよ」「海ねえ……」一護が苦々しく呟いた。無論泳げるし海に未練もあるが、たとえ知り合いが一人もいなくても、傷だらけのこの体を晒す気にはちょっとなれない。「ム」で済ませたチャドは、腕にタトウを入れている。「どこかで大虚でも出たんですか？」真面目に聞いた雨竜の胸には、どんな理由でついたんだと突っ込まずに入られない五本の傷がある。「石田さんなら知っているかもしれませんね。○○県の○○海岸です」「ああ、あそこですか」「何だ？」「有名な怪奇スポットだよ」「ええ、有名すぎて近年閑古鳥が鳴いているらしいんですよ。息抜きついでに、ぱぱっと片付けてきてくれません？」「不謹慎な……」雨竜は眉を顰めたが、それでも三人とも泳ぎたかったので、素直に県外までやってきたのだ。が。「おう、お前らも来たのか！」気さくに手をふったのは、ド派手な刺青をいれた赤毛の大男だ。「井上織姫はいないのか」素直に残念がっているのは、顔にびみょーな意味に取れる数字をいれたおにーさん。「にぎやかでいいのう」と笑ったのは剃り込みグラサンのおっさん。あっちでは派手な水着のデブが、我関せずと何か食っている。沖合いで溺れかけているのは……やめよう。非情に虚しい。男ばかりの夏の海が、何故此処までむさくるしいのかと、どちらかというと淡白揃いの現世組も考えるほど萎える光景だとわかればそれでいい。「何でお前らがこんなところに？」とりあえず見慣れた恋次に話し掛ける一護。「副隊長の親睦会だよ」「……乱菊さんとか女もいたろ？」「男は海、女は温泉」「いいのか？お前らそれでいいのか？」この顔ぶれにビビッたのか、一般客は殆どいない。貸切状態だ。気兼ねなく泳げるはずだが、どちらかというと「こいつらの(組の)仲間だと思われなくない」という気持ちのほうが強い。「よくこの面子で盛り上がれるよね」「ナンパもできねえしな」「ネムさんとか虎徹さんとか、スタイルがいい人も多いのに」「下手に女が絡むと親睦にならない？」「あぶれる奴もでるからな」ひそひそと遠慮なく陰口を叩いている高校生たちに、檜佐木はますますその眼光を鋭くした。「心配ない。ナンパし放題だ」「町に戻ってだろ」「海岸でだ！」檜佐木はぐっと拳を握った。「夜更けには、海岸線の向こうから整の大群がやってくる」「僕はそちらには興味が無い」雨竜が生真面目な突込みを入れたが、「肌も露わな、開放的な美人揃いだぞ！」と切り替えされて目を丸くした。「え、でも整って……」「何年か前、ブラジルからの船がこのあたりで沈んでな。以来、この時期になると、魅力的な衣装の情熱的な女たちがわらわらと」「「「魂葬しろ！」」」結局死神たちは、滅却師の「君たちがやらないなら僕が滅却する」との脅しに屈した。
2007年05月26日
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誠実な花 (今更花太郎ハピバ)
「山田七席、射場副隊長が松本副隊長を押し倒したそうです！」「ええーっ！」「う・そ♪はいこれ、皆でお金を出し合いました」「花、姉ちゃんが俺に家督を譲って隠居するって言い出した！」「ええーっ！」「がはは、嘘に決まってんだろ！これ、とっときな！」「花太郎、貴方は十一番隊に移動となりました」「ええーっ！」「ふふ、嘘ですよ。こちら、よかったらお使いなさい」今年も疲れた……。どうして皆、嘘をついてからプレゼントをくれるんだろう？(回答・四月馬鹿とセットで覚えているから)「花太郎！これを貴様にやるぞ！」いや、一人だけ、前置き無しでくれるものもいた。顔が見えないほど大きな花束を抱えたルキアだ。「わあ、可愛い花ですね」「ちゅうりっぷという花だ。真実や誠実さを現すそうだぞ」「ありがとうございます！」「何時かは礼を言いそびれてしまったからな。貴様は私に誠を尽くしてくれた」「そんな……僕なんて、結局役にたたなかったのに」「謙遜せずともいいぞ」些か覇気に欠ける花太郎の顔も、色とりどりのチューリップを加えると華やいで見えた。「おう花太郎、鯛焼き食うか？」「あ、ありがとうございます阿散井副隊長」詰め所までやってきた恋次から鯛焼きを受け取ると、花太郎は何気なく、「これ、ルキアさんから誕生祝いに頂いたんですよ！綺麗でしょう？」とチューリップを自慢した。「へえ、よかったな……俺はルキアに花なんか貰ったことねえぜ」「え……えっと……嘘ですか？」「嘘じゃねえー！」
2007年04月08日
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チャドハピバフライング。
二年生の一学期初日は、同時にチャドの誕生日だった。「おめでとう！」最初に祝いを述べたのは、何故か織姫である。どうも、メイド服着用でテンションが上がりっぱなしらしい。「井上、その服は……」「これで新入生を勧誘するの！あたしとみちるちゃんがメイドで、石田君が執事さん。で、これが庭師さんのお洋服！」どんな理由でプレゼントを決めている。というか、「……忍者、じゃないのか？」ド派手なパッケージの中から登場したのは、誰がどう見ても忍装束だ。「上様のお庭番は、普段は庭師なんだよ。チャド君ならスケハチというよりハンゾーかな？」「そう……なのか？」イマイチよくわからないのは皆一緒だ。探り合うような視線は、結局鈴に集中。「……確かにそうだったらしいけれど、その格好で枝を切ったりはしないと思う」「え、そうだっけ？」「井上さん、俺一日が誕生日だったんだけどっ！」「あ、浅野君のもあるよ」「「「太鼓持ち？」」」「何で皆同じこというんだよー！」
2007年04月05日
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27巻発売記念。
「お父さん、臭い」煙草を取り落とした私は、絨毯を焦がして余計立場を無くした。それから十年。「飲酒や煙草で命を縮めるのも、個人の勝手か」患者と看護士の会話を漏れ聞いていた雨竜は、大人びた表情で「確かにその通りだけどね」とのたわまった。「だがそういう輩からは保険証を取り上げるべきだ、そう思わないか竜弦」「……お前にしては手厳しいな」「僕は、そんなものに依存するつもりはないからね」「……」誰のせいだと思っている！仕事とお前の修行の間に一服したからといって、その言い草はなんなんだ。妻が身篭ったとわかって一度は煙草をやめた。一度復帰しかけたが、お前が嫌がるので断念した。お前が家を出て行ったのでまた吸うようになった。流石に院内では避けていたが……。どうしてこうお前に振り回されねばならん！などと取り乱しては沽券に関わるので、ぶっ倒れるまでしごいてよしとした。翌日には再び、心置きなく吸えるようになった。それが残念に思えるのだから、全く忌々しい。死神崩れが、人の病院に押しかけてきた挙句「禁煙」だと？それくらい把握しているに決まっているだろうが。あの馬鹿息子が、ご丁寧に倉庫を漁ってから家出しようとしているのに、じっと突っ立っていろというのか！こいつの出来損ないの餓鬼が戻ってきたら、きっと目にものを見せてくれる……！
2007年04月05日
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啓吾ハピバ(中編)
「1,500かける30日で、月に45,000円か」「何馬鹿な計算してるんだよ」うま煮丼を頬張りながら上機嫌の啓吾に、雨竜はすかさず突っ込んだ。彼は毎日、10時から18時までバイトを入れているので、昼食は弁当を作り、夕飯はそれから作っている。啓吾は、やっぱり殆ど何もしない。ただでいいから、がみがみやって追い出してやればよかった、と思いつつ今日は5日目だ。勿論、金は毎日取っている。テレビもオーディオもない部屋では間が持たないらしく、昼間は殆ど外出している啓吾の気持ちは全く理解できない。「いい加減帰りたまえ」「やだ」「……」困ったことに、「帰りたくない」気持ちはよくわかるのだ。何せ家出？一年突破。月に4,5000円か。バイトの制服に着替えながら溜息をつく。当然ながら雨竜の家賃より安い。しかも食費込み、家事負担あり。とてもじゃないが割に合わない。置いてやっているのは、まあ友達といえる関係だし馬鹿だし甲斐性なしだからだ。追い出したら厄介ごとに巻き込まれるような気がする上、ちゃんと対処できないように思える。それにしても、一日1,500円はやっぱりきついだろうに。何時まで居候するつもりなんだろう？
2007年04月03日
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啓吾ハピバ(前編)
「暫く泊めてっ！」「は？」……級友の啓吾が雨竜のアパートを始めて訪れたのは、春休みに入ってすぐのことだった。「いきなりどうしたんだい」「みずほが……みずほが……ううっ」「ああ、兄弟喧嘩か」顔を覆って泣き出す啓吾に、一人っ子の雨竜は軽く溜息をつく。「悪いけど、予備の布団なんてないよ」「寝袋もってきた」「……食事も出して上げられないし」「貯金通帳もってきた！」「…………黒崎か誰かに泊めてもらえば？」「黒崎んちは妹が病気で、チャドは泊まりこみのバイトで、水色は……あいつは……っ！」それは聞かなくても解る気がする。「一泊三食付き2,000円」「マジで金取るのかよ！」「嫌なら他当たって。大体僕は君に住所を教えた覚えもない」「冷たっ！」結局1,500円で落着した。しかし、石田にも言い分はある。自分ひとりなら粗食でもいいが、啓吾はそれなりのボリュームがなければ満足できないだろうし、家事はできないしする気もないのは普段の様子を見ればわかる。春休みだし、緩んだ気持ちで長居されてはたまらない。「おおっ一汁三菜！」夜の食卓(今日だけは無料とした)を見て啓吾は歓声をあげた。皿の数が多いからといって豪華なわけではない。鳥のみぞれ煮と野菜炒め、漬物の大盛りとけんちん汁という、かなり地味なメニューだ。「定食屋みてーだな！」それは褒め言葉のつもりなんだろうか。口煩い医者の父にそれなりに大事に育てられ、しかもお爺ちゃん子だった石田には、今時の家庭はワンプレートが主流だということが解っていない。とりあえず、……口にあったのはよかったけど、もう少し遠慮して食べてくれないかな？と思ったことは啓吾には内緒だ。
2007年04月02日
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卒業
その日は、僕たちの卒業式の当日だった。まさかわざとぶつけたわけじゃないだろうが、黒崎もなにか微妙な顔をしていた。この日を境に彼は「代行」ではない「死神」となり。僕は「滅却師」をやめた。僕たちが高校に入学した頃は、霊的世界は忌々しいほどに安定していたが、この三年の間に凄まじいほど様変わりした。一番大きいのは、死神の現世の出現率が、一桁以上上がったことだろう。何年も捜していた死神が、今では父の病院にほぼ在中している。病院では、死者が出る確率が非常に高いからだ。誰かが死ぬと、すかさず死神がそれを魂葬する。一般的な死神のイメージに近づいたといっていい。整がどんどん現世から消えていく。虚になる確率のある魂が次々消えていく。そして、滅却師は完全にその存在意義を無くした。「やっぱり、僕は最後の滅却師か」できるだけ明るく言ったつもりだったが、黒崎も茶渡君も井上さんも、どこか困ったような表情で僕を見た。「てめえ、不満でもあるのかよ」「まさか」死神が生者を守ってくれないとの思いから、僕たちは生まれた。虚を殺す存在が必要だと思ったから、僕たちは退かなかった。でも、もう僕たちは必要なくなった。だから僕は生きている人たちを助けるための勉強を始める。「ああ、桜だよ。今年は早いね」「本当！綺麗だよね」「ム」「ああ」ソウル・ソサエティは「技術・知識」としての滅却師の存続を許可したが、僕はもうそんなものに拘るのは止める事にした。どうせなくなってしまうのなら、精々潔くあればいい。花の散った桜の木のように、景色に溶け込んで見分けもつかなければいい。別の大学に進んだ黒崎とは以後、不思議なほど接点がなく。久々に出会ったとき、互いの第一声が「変わったな」だったことに、共に苦笑した。
2007年03月30日
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バレンタインSS 17話
更に翌日。「勝手に冷蔵庫を漁るなっ！」どげっ。小型冷蔵庫の中を確認するためしゃがんでいた一心は、遠慮なく頭を蹴られて扉に激突した。「俺でなきゃ死んでる……」「貴様だからいいんだ」竜弦はきっぱりと言った。空座中央病院の院長室の隠し冷蔵庫は、普段はスタミナドリンクくらいしか入っていないが、今日はチョコレートムースに占領されている。診療時間が終わってすぐ押しかけてきた一心は、これに非常な関心を示した。「いいじゃねえか一個くらい」「貴様にやるよりは猫に食わせたほうがましだ」何時ものことながらえらい言われようである。竜弦がこのムースを入手できたのは、つまるところ一心のお陰なのだが、それを伝える気はない。一心も、逆ギレした竜弦に殴られて嬉しいと思うほど真性ではない。「これ全部喰ったら腹出るぞ、腹」「医者が自分の体くらい管理できなくてどうする！」一方息子たちの方はというと。一護は翌朝織姫と水色の報告を聞き、とりあえずどちらにも礼を言った。しかし、水色が石田に、何も言わないままだということには気が回らなかった。「竜弦には誕生日に何かしてやろう」と思うことにした石田が、この友人たちの要らぬ心遣いを知ったときどう思うか。「雨竜のムース」が全く当人の意思とは関係なく自分の手に渡ったことを竜弦が知ったとき何を考えるか。答えが出るまで、おそらく一月もかからないだろう。＊犬猫にはチョコは毒物にあたるそうです。うわー大失敗。どうもすいません。
2007年03月30日
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バレンタインSS 16話
織姫の保険証を、合鍵を持っているたつきの母に持って来て貰うと、石田はお役御免となった。病院の職員にはかなりの確率で面が割れているので、みちるを促してそそくさと帰る。みちるにしても、この状況でお茶しようなどとは言えないので、結局駅前で二人は別れた。一人きりになって、石田は重い足を引きずるようにして学校に戻った。学校の冷蔵庫を貸してもらえるのは今日までなのだ。残っているのはアイスではなく、今日急いで作ったムースだけ。しかしどう処分したものだろうか。今更(本当に今更だ)病院にもっていくわけにはいかない。今朝の騒ぎを見られているから、一護に渡すことは出来ない。織姫たちも同様だ。啓吾に渡すなら、何か理由が必要だろうし、チャドは事情を聞かないでくれるかもしれないが、もういい加減チョコはいらないだろう。一番後腐れないのは死神にくれてやることだが、連絡手段がない。手作りのムースなど、何日も持たないし……。「あれ、石田君まだいたの？」……いたよ。チョコをあげてもおかしくない相手が！眼鏡の奥で目をぎらぎらと輝かせながら、石田は振り返って水色に話し掛けた。「小島君こそ、こんな時間までどうして学校に？」「昨日の返事。一ヶ月も引き伸ばすなんて僕の趣味じゃないよ」一体何人こなしてきたんだ。突っ込みたいのを必死にスルー。「もうチョコレートはいらないかもしれないけど……小島君、よかったらこれ、貰ってくれないか？」出来るだけさりげなく、ムース入りの冷却バックを差し出す。「やっぱり君にだけ上げないのは意地が悪いかと思ってね。チョコレートムースを作ってみたんだ」「え、いいの？」水色はにっこりと笑う。「よかったら彼女とどうぞ」「ありがとう」これで片がついた、と石田はほっと息を吐いた。水色が、その後空座中央病院に直行したなどとは思いもせず。
2007年03月29日
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バレンタインSS 15話
（あたしって天才！)織姫は内心でガッツポーズを決めた。「じゃああたし着替えるから、みちるちゃん鞄持って来てくれる？」「うん、そうだね」「ごめん、僕も外に出ていないと……」「あ、石田君、何か食べるもの持ってない？診察まで待たされるだろうから、あたしお腹すくと思うんだよね」「ああ、わかったよ」それから十五分後、三人は無事タクシーに乗り込んだ。織姫の表情が暗いのは、今更寒さが堪えたからではなく、石田にコンビニで買ったと思しきサンドイッチとペットボトルを渡されたからである。「わざわざ買ってきたの？もうチョコ残ってないの？」「……アイスなら残っているけど、そんな冷たいもの食べさせるわけにはいかないよ」「あたしそれでいい！」「駄目だよ」尤もである。織姫は結局風邪一つひかなかったが、作戦は見事に失敗した。
2007年03月29日
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バレンタインSS 14話感想
「わかった！あたしが何とかする！」ドンと任せなさい、と胸を叩いたのが誰か書く必要があるだろうか。「…………よろしく頼む」一護はかなり不安げだ。「要するに、石田君に中央病院に行く名目があればいいんだよね！」というわけで。それから約15分後、部活に参加していたみちるは、携帯で織姫に呼び出された。「ちょっと織姫、どうしたの？先輩たち怒ってるよ！(少し誇張)」「ごめんみちるちゃん、裏庭に体操着とタオル持ってきて欲しいの」「え？体操着とタオル？」どういう状況か考えて、みちるは少し青くなった。「あとね、石田君に保健室まで来て貰えないかな」「わ、わかった！すぐ行くから待ってて！」「ど、どうしたんだ井上さん！」石田は声を上ずらせた。頭から水でぐっしょり。夏だったら目の保養だったかも知れないが、今は真冬である。鼻をぐずぐずされては、煩悩に走る暇もない。「雨も雪も降らないから、花壇にお水を上げようとして、失敗しちゃったの」いや、無理があるだろそれは。花壇に水をやるのは園芸部の仕事だし、普通失敗しても全身ずぶ濡れとはならない。さらに台詞は棒読み。しかし、「石田君、中央病院に連れて行ってくれない？」「黒崎病院の方がいいんじゃないかな」「黒崎君ちは、今日インフルエンザの予防接種で忙しいんだって」普通シーズン前に打ちます。それくらい普段の状態の石田にも理解できるだろうが、真冬に水浸しの相手を前に、いい具合に判断力が狂っている。「……わかったよ」
2007年03月18日
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何気に夜一さん始めてかも
「なんじゃ、わしがこれを着るのか？」十二単を見た夜一は、少しも嬉しそうではなかった。「いや、久しぶりにお姫様な夜一さんを見たいと思いまして」「わしは久しぶりでも楽しくない」「……浦原さん、話をつけてからきてくれませんか？」勿論今日の料金は頂きますけど、と石田は時計を見ながらクレームをつけた。「仕方ありませんね、お内裏様ではどうです？」「ふうむ、まあその辺りで妥協するか」「駄目です」石田がきっぱりと拒絶した。「十二単に加齢臭がつくじゃないですか！」「ああっ、酷っ！」大袈裟に泣き崩れる浦原を、手芸部及び写真部の面々が胡散臭そうに見ている。「だってあたしたち駆け落ち同然に出てきたから、式もあげていないし籍も入れていないし、一緒に暮らしていないから内縁でもないじゃないですか。せめてそれらしい写真を撮ってみたいという乙女心、わかってくださいよ」「おぬしの何処が乙女じゃ」「いいからもう帰ってください」そしてウェディング写真を撮れる所を当たって下さい。「知っておるじゃろう、わしはそもそも服を着るのが窮屈でしかたないのじゃよ。裸でなら撮ってもよいが……」「はあ？」一同(石田含む)の目が点になる。「仕方ありませんね、それでいきましょうか。雛壇だけ借りて」「……貴方たち、僕を停学にしたいんですか？」「あはは、冗談に決まってるじゃないですか」浦原はひらひらと手を振るが、「………………夜一さん、もう脱ぎだしてますけど」「ああ、後で記憶を消しますか」「止めてください今すぐ！」
2007年03月18日
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バレンタインSS 13話感想
その更に翌日のお昼休み。一護の携帯が鳴り出した。送信先が実家だったため、一護は(事故か何かかと)慌てて出たのだが、「石田君に代わってくれ」と父に言われて眉間の皺を思いっきり深くした。「石田なら、部活の用とかでいねえけど」「そっか、じゃあ伝言伝えてくれるか？」「何」「空座中央病院にチョコレート持っていってくれって」……何故オレが虎の尻尾を踏むようなことをしなきゃならねえ！「パス」石田の父親の話題は未だ禁句なのだ。一護はにべもなく電話を切ろうとしたが、「まあちょっと待て、話だけでも聞け！」父は慌てて捲くし立てた。「あそこの院長はな、学生時代喰いまくった反動でチョコが大嫌いなんだが、息子の作ったチョコは院長室の隠し冷凍庫にカビが生えるギリギリまでいれておくような奴なんだよ！」「……単に喰いたくねえんじゃ？」「いや、あいつは他のチョコは基本全く受けとらねえし、押し付けられたのは綺麗さっぱり処分してる！おまけにオレが昔、石田君のチョコを勝手に喰ったときは、腕を折られかけた！」「隠し冷蔵庫の手作りチョコを勝手に食うてめえの常識を疑う……」「そんなわけで、よろしく頼む！大丈夫、石田君の性格からして絶対作るだけは作ってあるはずだから」その自信は何処から来る。携帯を切ると、どうやら全員聞き耳を立てていたらしい。チャドは困ったように、啓吾と水色は面白そうにこちらを見ている。無論、誰もいい案を出してはくれなかった。
2007年03月18日
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続きました。
(「続くか未定。」の続き)「先輩、オレ女性死神協会に用なんすけど、一緒に行きません？」「行く」即答。「って仕事だなんて聞いてないぞ恋次！」「仕事じゃなくて無料奉仕です」男子禁制が表向きの女性死神の会合に、何の裏もなく混じれると考えるほうが悪い。「心配しなくても、分量量るのも材料混ぜるのもオレが全部やりますから。先輩は、生地の搾り出しとかやってくれるだけでいいです」それくらいできるだろうといわんばかりの後輩に、がっくりと肩を落とす修兵。逃げようにも、女性人が次々厨房を覗き込むので出来ない状態である。丁度一月前、恋次はルキアのチョコを無事ゲットした。石田作なのは口にしてすぐわかったが、この際良しとする。しかし彼女は、この礼として3月の女性死神協会の茶菓子製作を依頼……もとい命じてきたのである。てめえは人の作ったので済ませたくせに……その礼を兄貴にさせたくせに……。ルキアの理不尽さに慣れきった恋次も、その晩はちょっとだけ泣いた。でも次の日、石田にどんなお菓子がいいか相談した。「丁度ホワイトデーだから、クッキーとかマシュマロとか、チョコレートかな。朽木さんだけなら白玉あんみつだろうけど、大勢が相手なら洋菓子のほうが珍しくて受けがいいと思うよ。オーブンがあるならクッキーがいいかな、一度に沢山焼けるし、持ち帰れるし」無論そんなものに心当たりはない。オーブンがあれば、ケーキもパイもタルトも焼けるが、ないものはしようがない。鍋で作れるものしか作れない。いいよな、オーブン。と職場で部下相手に愚痴った翌日、朽木邸の厨房にどうみても現世の（そして業務用の）オーブンが設置された。一体どういう仕組みなのかわからないが、とりあえず目出度い。目出度いが、この時点でもう会合当日。フルーツコンポート製作済み。しかしオーブンを使わなければ後が怖いので、(簡単に釣れる)修兵をアシスタントに、クッキー作りに乗り出したというわけである。「やっほー、焼き菓子出来た？」素晴らしい勘のよさ。誰かさんとは大違い。乱菊が厨房に現れたのは、オーブンが完成を告げる約2分前だった。「今持って行きますから……コンポートは？」「全部食べちゃった。すっごくおいしかったわよ。あたしも恋次にチョコあげとけばよかった！」「はは……どーも」何となく視線が痛い。「あれ、修兵もいたの？」……これで先輩も料理を習い始めたら、何となく寒い。バニラ、チョコ、チーズ、シナモンの四タイプ！見た目はそこそこだが味は上々。これならルキアの顔を潰すこともないだろう。後ろでぶつぶつ言っている先輩が不気味だが、乱菊さんと楽しくお喋りすれば機嫌も直るだろう、と恋次はクッキーを運びながら考えた。ルキアと二人で食べるのが無論ベストだが、周囲に賞賛を得るというのも嬉しいものだ。「お待ちどうさん、焼き菓子持って来たぜ！」「わーい！」「お疲れ様」「待ってました！」「待ちかねたぞ。恋次」一瞬視界から色彩が消えた。「たたた隊長？何でいるんすか？」「此処は私の屋敷だが」いやまあそうなのだが。「会合場所を提供したのもオーブンを手配したのも兄の残業を免除したのも私だ。その私が茶会に参加して何がおかしい」絵面が変です。とはとても言えない。修兵は恋次の肩をぽん、と叩くとしっかり乱菊の隣に座った。恋次は、……多分これまでの人生で一番もてもてだったが、結局ルキアとは一言も話せずに終わった。
2007年03月17日
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バレンタインSS 12話感想
空座中央病院では、毎年バレンタインにチョコレート作りのイベントが行われる。始めは看護士の有志によって行われていたらしいが、石田が物心ついた頃にはもう、長期入院の患者が自分たちで作り、渡しあうイベントとなっていた。特に子供がよく参加するということで、石田も小学生の頃から一緒にチョコレートを作っていたのだが、院長である父は「反吐が出る」と言って食べようとしなかった。ただ、小学四年の時だったか、息子が作ったチョコムースだけは「悪くはない」と食べてくれたのだ。（ちゃっかり二人分)父との間が完全に決裂していても、これだけは去年まで参加していた。それに、結局正月も実家に戻らなかったし、せめてこのくらいは……学校のイベントの余り物として……と色々と考えて覚悟を決めたのに、事情を知らない友人たちに食べられてしまったのだ。思わず怒鳴り散らしたものの、出鼻？を挫かれて石田は困っていた。材料は残っているので、授業をサボれば作り直せる。放課後、ツンな態度で持っていけばいい。……持っていけばいい。持っていけばいいのだが……一度挫けた意気は簡単には元に戻らないのだ。「……どうしよう」石田は呆然と呟いた。目の前のボールの前にはムースががっつりと入っている。これを二時間ほど冷やせば人前に出せる。……誰の前に？授業をサボって作ったというのに、「別にあんたのために作ったわけじゃ」と言うためにわざと沢山作ったというのに、これを持っていく覚悟はまだ出来なかった。
2007年03月13日
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本番開始。
(「着物だからある程度融通利くはず」の続き)「いやあ、持つべきものは人気者の友達だね！」「……」織姫の能天気なおべっかに、水色はにこにこと笑い、たつきは少々顔を引きつらせた。手芸部の雛祭りイベントはかなりの好評を博したが、思ったより収益率が悪かった。平日は早朝一件・放課後二件、休日は十二件がぎりぎり(無論完全予約制)。これで一件一人前(千円ぽっきり)では足が出てしまう。できるだけ人数が多いほうがいい。で、思いついたのが、お雛様・お内裏様役の貸し出しである。お雛様役は大勢いるから問題ないが、お内裏様役の男子が手芸部には殆どいない。部長の石田は和風の顔立ちで線が細く、貸し出し希望も多かったが、彼はお裏方(調理)で忙しい。それで、部員の友人であり、女子の人気の高い水色とたつきの二人が導入されたというわけである。……たつきについては、お雛様役の貸し出し希望も何件かあったことを、当人の感情と名誉のために追記しておく。「ちらしもいいけど、たまには炊き込みご飯とか食べたいなあ」「じゃあ明日はグリンピースご飯にするよ」水色たちは有志ということで、バイト料は貰わず、代わりに石田の作った昼食を食べている。客へのお土産、部員の賄い食と同じものだが、どうにか黒字に持ち込みたい部長の石田は、女子をぞろぞろ連れ込んでくれる二人(特に水色)を逃がすわけには行かないので、普段は聞かない我侭を聞くしかない。「たつきちゃんは何か食べたいものある？」「うーん……チャーハン。キャベツとアスパラが入った奴」「おお、いいっすね！」「筍ご飯もいいよね。菜の花の天ぷらをつけてさ」「……」わざと言っているんだろうか。石田だって出来れば春らしいお弁当を出したいが、しかし、予算というものがあるのである。筍ご飯に菜の花の天ぷら？そんな素敵なもの出してたら、何時まで経っても衣装の元が取れない。「あ、そういえばマリエさんたちも着てみたいって言ってたっけ。石田君、うちの生徒でなくてもいい？」「……後で予約を入れてくれたまえ」耐えろ、石田雨竜。客が来なければ話にならない。
2007年03月06日
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