2005年06月26日
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カテゴリ: BALLET
ベルリン国立バレエ「ニーベルングの指環」
2005年6月26日 上野・東京文化会館

すごい作品でした。
やはりベジャールは天才だ。
ワーグナーという巨人に、ベジャールという不世出の天才がインスパイアされるとどうなるか。「ニジンスキー」にインスパイアされたノイマイヤーしかり。すばらしい化学反応が起こるのだ。

しかし長い!
2時に始まって終わったのが7時。これほど消耗したバレエ作品は初めてだ。熱出そう。
なんといってもブリュンヒルデのディアナ・ヴィシニョーワがすばらしかった!
それから青年、少年のジークフリート! 両者ともすばらしかった。

マラーホフがローゲという狂言回しの役で、全編にわたってちょこちょこ出てくる。
こんな素晴らしい作品が日本で見られるなんて、なんて幸せなのかと感謝の気持ちで一杯です。

音楽は語り部分、つなぎめがエリザベット・クーパーの生演奏で、オペラのおいしい歌の部分はオペラをテープで流していた。

序夜 ラインの黄金

舞台はオーケストラピットが空いていて、真ん中に花道のようなものが作ってある。オケピの中にエルダが立っている。

弁者(ミカエル・ドナール)がストーリーを語っていく。
さすらい人(アレクセイ・ドゥビニン)が下手から現れる。
カーテンが開くと、人々がいっぱいいる。舞台中央奥のコンサート用グランドピアノ。その上に花火が散っている。さすらい人が花火の火花を飲み干し、グランドピアノのふたを開けると、ふたの裏側が銀紙のようになっていて、フラッシュが光る。さすらい人=ヴォータン(神々の王)は片目を失った。

ヴォータン(アルテム・シュピレフスキー)が登場する。銀色の衣裳。
大きい!190センチぐらいある。
ヴォータンは槍で皆を睥睨する。

火の神ローゲ(ウラジーミル・マラーホフ)、ヴォータンの妻フリッカ(ヴィエラ・ナチェーワ)、フリッカの妹、フライア(ベアトリチェ・クノップ)、雷神ドンナー(マルチン・クライエフスキー)、フロー(ライナー・クレンシュテッター)。
ローゲは非常に個性的な圧倒的な存在感を放っている。真っ赤な髪が逆立っていて、はだかの上半身に黒い燕尾服をはおっている。一人だけキャラが「道化」。ほかの神々は表情がまったくないので、目立つ目立つ。
雷神ドンナーのソロ、マルチン・クライエフスキーすばらしい!
黄金の仏像では素顔が拝見できなかったので堪能! 黒髪ですごいハンサム。いかめしい表情ですごい踊り。
好対照なのが、ライナー・クレンシュテッター、金髪で優しい表情。まるで女性のように細くて、優雅で美しい。


巨人がまたすごい。竹馬に乗って、4mぐらいある。

ここで時間が遡る。
オペラだと、ラインの黄金を盗むアルベリヒが先なのだが、この作品ではここからそのシーンが始まる。
舞台の上からさかさまの山?みたいなセットが下りてきて、アルベリヒ(マルティン・ブチェコ)がラインの乙女たちの背中に乗って、黄金を盗む。

アルベリヒ、すごい邪悪で存在感があった。

巨人たちはその黄金をくれとやってくる。
(さきほどのシーンに戻る)
フライアは人質として連れ去られる。竹馬の杖をフライアが掴んでいて、一つ間違えれば倒れるぞと心配だった。

フライアの林檎を失った神たちは床に倒れている。ヴォータンがついに決心する。
「ローゲ、ニーベルングへ指環を奪いに行くぞ!」

ニーベルング。地底のこびとの国。
舞台奥の鏡がいっせいにばっ!と開いて、ニーベルングたちが出てくる。彼らは奴隷のように黄金を鍛えている。カンカンカン…。あの有名なスタカートの音。ニーベルング族のテーマ。

自らの力を誇示するアルベリヒ。ローゲは姦計を弄し、
「大蛇になってみろよ!」
するとニーベルングたちが集まって大蛇になる。ベジャールお得意の集団での円形。ローゲ、
「おっかねえな~ でも小さいものにはなれねんだろ?」
するとアルベリヒは蛙になった。いっせいに人々が蛙のようにジャンプしだす。
「捕まえろ!」
哀れアルベリヒを捉えた、ヴォータンとローゲ。
黄金を奪う。黄金で編んだショールみたいなものを神々が被る。隠れ兜もいただく。指環も。アルベリヒは指環に呪いをかける。

フライアをつれてきた巨人たち。フライアは竹馬に乗った巨人の持っている杖をつかんでいる。フライアを床に寝かしてその上に黄金を積み重ねていき、姿を見えなくする。もっともっと!
ここで黄金を表すイメージ?の男女が出てきて、黄金色の衣裳でパドドゥを踊る。女性の髪が長いのでポリーナかと期待したが違った。
巨人たちは指環も要求する。

知恵の女神エルダが現れ、指輪を渡すように進言する。エルダは頭白塗りの坊主、スカートの後ろに黒い線が入っている。

巨人のファフナーとファーゾルトは指環を得た途端に殺し合い、ファーゾルトは死ぬ。

雷神は夕立を降らし、フローはワルハラへの橋をかけた。神々はワルハラへ厳かに入場する。ローゲは神々とは一線を画し、何事か思案している。

ここで長くローゲが踊る。ローゲと弁士との掛け合い。弁士はわざとなが~く言葉を伸ばし、その間ローゲはずっと足を上げたりしたままでいなければならず、弁士をにらみつけたりしてユーモラス。

ここで本来ならオペラ版の「ラインの黄金」了。

なのだが、引き続き、舞台では物語が展開していく。
ヴォータンとエルダ。エルダのスカートが地球儀になっている。エルダは、くるくるくるくる回る回る回る…

ヴォータンとエルダの睦み合いで、ワルキューレ(戦乙女)たちが生まれる。彼女たちが乱入してくる。ここがすごい迫力。
「ホヤトホー、ホヤトホー」の歌(ワルキューレの騎行)と共に、頭に真っ黒長い羽根がついた兜を被り、全身黒のレザースーツ、&トウシューズの9人のワルキューレたち。先頭は長女のブリュンヒルデ(ディアナ・ヴィシニョーワ)。

ヴィシニョーワめっちゃ小さくて可愛い! コスチュームがなんか可愛い。顔が気が強くて勇ましいのも可愛い!
すばらしいダンス。

そしてここで舞台版の「ラインの黄金」が終わる。幕。

ふつうだったらここで休憩なのだ。しかし休憩はまだお預け。


第1夜「ワルキューレ」

人々が踊っている。狼の頭部をかぶったヴォータンが出てくる。ヴォータンはヴェルゼ(狼)という人間になりすましている。ぼろぼろのジーンズを着た汚い人間がその狼の頭部をもらってかぶる。彼女がジークムントとジークリンデの母ちゃんなのかもしれないがよくわからなかった。

裸の男女が台車に乗ってお互いをしっかり抱きしめあいながら出てくる。双子の兄妹、ジークムントとジークリンデだ。
ジークリンデがポリーナちゃんじゃない~~
コリーヌ・ヴェルデイユに変わっていた。ちょっち残念。
ジークムントのイブラヒム・ウェーナルは、トルコ人で、黒髪、エキゾチックな顔だち。コリーヌ・ヴェルデイユは金髪なのでどこが双子だよ?なのだが、とにかく双子。

ジークリンデの夫、残虐なフンディング(ロベルト・ヴォラート)が出てくる。この人、すごくうまかった。おじさんなのに。すごい回転。きれがあって、めっちゃくちゃ上手だった。

双子は引き離され、ジークリンデはつまらない、エプロンつきの主婦の衣裳を着て、夫に仕えている。夫は黒のスーツにネクタイで、まるでマフィア。
戦いに疲れ、ジークリンデの家にたどりついたジークムント。
ジークムントは破れまくりのジーンズの上下(これがおされ)に着替える。

フンディングは
「客人よ、名乗られよ。よければ妻にでも語ってくれ、」
といなくなる。ジークリンデに身の上話をし始めるジークムント、二人が生き別れの双子だとわかる。
ジークムントはトネリコの木にヴォータン(ヴェルゼ)がさしていった剣を引き抜く。ノートゥンクだ。
ここは音楽がもっとも感動的なところ。
二人は愛を確信し、逃避行。
フンディングは仲間と共に2人を追う。

ワルキューレたちが戦で死人を狩っている。まるでヴァン・ヘルシングでドラキュラの花嫁が人間を狩っているみたい。音楽はもちろん「ワルキューレの騎行」。

逃げ疲れて舞台の上手で寝ているジークリンデとジークムント。
一方、舞台上ではワルハラのヴォータンの居室になっている。
ワルキューレたちがブリュンヒルデに率いられてやってくる。
ヴォータン、
「行け! ジークムントに加勢するのだ。」

そこへやってくる妻のフリッカ。片方だけ長い白い手袋。白いベジャールお得意の全身スーツ。フリッカは舞台上手手前で回っているオープンリールのところにずかずかと歩いていって音楽をぶちっ!と止める。これに似たようなシーンが、ボーンの「Play Without Words」でもあった。グレンダがプレンティスの踊っているラジオの音楽を自分の好きな音楽にぎゅいんと変えちゃう。
いきなりシーン””となって、フリッカがわざと引きずって歩くトウ・シューズの音だけがずるっずるっと聞こえて、舞台も客席も凍りつく。

「愛し合っている汚らわしい兄妹を勝たせるなんて許さないわ!」
ここオペラだとえんえんフリッカが夫を責めるのでいやになっちゃうのだが、バレエではさらっと。舞台上ではあっという間に戦いのシーンになり、スロウモーションのように、ジークムントと、フンディングが決闘する。
ブリュンヒルデはワルハラに入れるのよ(あなたは死ぬ運命なの)とジークムントに告げる。ジークムントはジークリンデにもう会えないのなら、意味がないと、舞台下手でノートゥンクを振りかざし、眠るジークリンデを殺そうとする。
「やめて!」
ブリュンヒルデは慄然とし、ジークムントの味方に回る。しかしヴォータンは許さない。折れないはずのノートゥンクがまっぷたつになる。
ブリュンヒルデは妊娠しているジークリンデを密かに逃がす。ヴォータンは「息子よ!」と手を拡げ、ジークムントを呼ぶ。ジークムントが父に抱きつこうとした瞬間、ヴォータンはさっとよける。そこに待っていたのはフンディングの剣。刺し貫かれてジークムントは絶命する。
悲しみに打ち砕かれながらヴォータンはフンディングに
「去れ! フリッカにお前との約束は果たしたと告げよ」
一撃でフンディングは死ぬ。
ヴォータンは裏切り者(ブリュンヒルデ)への復讐を誓う。

Part2 に続く。





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最終更新日  2005年06月29日 00時00分24秒


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