Accel

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February 25, 2010
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 ・・・ガルトニルマから“還えされた”リュベナは・・・

 ただ、生きている。
 それだけ、のようだった。
 でも、私にとってリュベナであることに・・・
 変わりはなかった。


 業火の神ガルトニルマ・・・
 彼奴は、人の魂を喰ろうているという。
 この私が、彼奴の好む魂を見つけたあかつきには・・・


 私は、あの子の魂のために、私の魂を彼奴に売り渡したようなものであった。
 私などどうでもいいのだ、あの子が目覚めて笑ってさえくれれば・・・


 だが・・・リュベナの為に、他の誰かを陥れるなどとは・・
 本当は私の好むことではなかった。



 彼奴は言った。


 エルダーヤ大陸に、忌むべき魂あり・・・
 エルダーヤはその魂によりて混沌たる世界に陥っている・・・
 エルダーヤの忌むべき魂を焼け!
 エルダーヤの汚れた大地を焼け!!
 エルダーヤの全てを!


 さすれば、この世界も浄化され
 迷える魂も戻るであろう・・・・


 焼くのだ
 焼くのだ・・・



 わがものなれば

 すべては
 わがものから分かつ
 すべては
 わがものより分かつ

 炎
 業火
 わが炎

 わが炎は常に
 わがものなれば

 炎は
 わがものから分かつ
 炎は
 わがものより分かつ








 ここは本当にどこまでも白い世界であった。
 白い風が吹いて、わたしの長く黒い髪がなびいた。

 しなやかな自分の髪を手に取り、見つめながら、ふっとわたしはため息ではない・・・なんというか、軽い吐息に近いようなものを唇から漏らした。


 とうとうわたしは、てきとうの神と契約を交わした。

 800年。
 わたしが死して、800年が経過しているという。
 わたしは、「てきとうの神」との契約により・・・
 “人”でありながら、「この世界」と人世とを、行き来する事とした。
 それがよかったのか、悪かったのかはよくは判らないが・・


 わたしが求めていた、本来の目的・・・
 我が治める大地が潤い、そして我が大地が活気を取り戻すこと・・・
 それが、神へ申したき事だった。
 だが、もはや・・・わたしを慕っていた民は、もう死んでいるであろう。
 今までわたしが治めていた地も、他の者が治めているであろう。

 大切なものは既にもうなく、代わりに、あの地は今潤い、美しき地となった。


 わたしは、てきとうの神の仕事を手伝わないか、とまで言われたが、わたしは神にはなるつもりはなかった。
 わたしは、人の身近な苦しみを、この目で見て、
 大地の苦しみを、この目で見て、
 このちから、使っていきたい。
 我がミョール神のちから・・・



 わたしが、そろそろ、人界に戻ろうと思っていた時であった。


 ふわり・・・

 白い光が・・・・
 近づいてきた。

 小さい、光だ。
 わたしをここに導いた「みならいの神」だ。
 どんなに目をこらしても、唯の光の塊である。


 わたしはそちら側に言った。
「いかがされました、みならいの神。
 わたしはそろそろ、参ります。」
 すると、小さき光は小さく言った。

   ウーよ・・
   これを・・・

 ふっと、わたしの足元に、黒い外套が現れた。
 それは、今までわたしが着ていた、『ラ家』の外套だった。
 身をかがめて外套を取り上げ、押し寄せるようなこれまでの想いを抱き、つくづくとその外套を撫でるように見つめる。
 だが・・・これまで着ていた外套とは・・どこかが違うようだ。

 小さき光が言った。


  あなたが ながらく きていたこのふく
  よろしければ また と おもいまして


 わたしはさらに外套に瞳を落とした。
 これまでとその黒さは変わらなかったが・・・
 『ラ』の文様が・・・なくなっている。

 わたしは、ふっと、笑った。
「ちいさき神。
 粋な計らい、ありがとうございます。」
 わたしは、黒き外套をばさりと羽織った。


 わたしは思わず振り返り、声を張り上げて白き世界に語りかけた。
「人の世に参りて、この目で大地を踏み、あなた様方と合間見える・・・
 このわたしにその大役が、身に余ること、重々承知しております。
 この我侭をお聞きいただいたことに感謝申し上げ・・・
 あなたさまにお仕えしましょう、てきとうの神よ・・・・」
uu-7.jpg

 わたしは白き世界を後にした。
 後にした、といいたいところだったが、後ろに下がったやら、下におりたやら、定かではなかったが。



 ふっとわたしが気が付いたその場所は・・・
 どこかの大きな屋敷の、庭のようであった。
 ここがどこの大陸なのか、いったいどのような世情になっているか、無論わたしには判るわけがない。
 流石に、やや緊張しながら周りを何度も見回した。
 あの”白い世界”と違い、目で見れば風景を見ることができるという事が、なんとも嬉しい事であった。
 確かにここは、下界・・・
 いやいや。
 ここが、わたしの生きるべき「現世」のはずだ。


 庭の中ではあちこちにすばらしく美しい花が咲いている。
 屋敷は、まるで、城のように塔がそびえている。
 塔は大理石でできているようだ。
 こんな処に急に来てしまった?


 これは困ったことになってしまった・・・
 もし、ここが富豪や貴族、ましてや王族の城の類となれば?
 わたしは今、勝手に侵入している事になる。


 しかし、静かだった。
 庭には、池があった。
 ゆっくりと近づいて、池に映るわたしを見る・・・

 神は、約束どおり、額の紋章を取ったようだ。
 水に映ったわたしの顔は、あいかわらず白い顔。
 黒い髪・・・


 そこで、そんな自分の顔をみたわたしは、黙って膝をついて池に映る自分の姿に対峙した。
 わたしは、「人の世界」に戻ったら、最初にしようと決めていたことを、その場でした。
 やり終えると、ふっと、池の自分に笑った。

 いにしえの『ラ家』の・・
 荘厳で、厳粛たるあの末裔でありながら。
 800年経った現在も、こうして「わたし」は居る!



「誰?」
 女性の声が向こうからした。
 誰かにみつかってしまった。
 一応、言葉を聞き取れるということは、同じ語源を使ってよいということか・・・

 わたしは、できるだけ、平静を装っていた。
 そう、わたしは唯の迷い人。
 それも、まさか、800年も迷っていたなど、誰に言えるものか・・・


「誰なの?」
 落ち着いた声をさせながら、女性が姿を現した。
 わたしは、そちらの方に向き直り、にっこりと、ほほえみかけた。



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Last updated  February 25, 2010 03:22:04 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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