Accel

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April 5, 2013
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 上、下、左、右・・・
 見えるところ、すべて、白い。

 いや、色というものは、そう、全ての色というものは、
 ほかのいろがあるからこその”いろ”なのであって・・・
 ここでは、ほかのいろ、がない・・・・・

 その、ほかのいろのない世界を・・・
 黒い衣装を着た者が。
 ゆっくり、歩いていた。

 長々と、足元まである外套だ・・・
 その足元から、ちらり、と。
 これまた、黒い髪が、歩む度に・・・はみ出す。

 黒い髪に囲まれた顔は・・・
 白かった。
 ただし、周りの白と比べれば、断然に違う色彩を放っている。
 精気と、硬い意思に彩られている。
 黒く煌く瞳は、物憂げに長いまつげに覆われ・・・
 ふわりとした、ほの赤い唇は、やや、悲しげな形に結ばれていた。


 黒い衣装のその者は、ラ家の末裔、ラ・ルー・ヴァ・ウー・・・。
 自ら仕えていたミョールを失い、この世界の神に・・・


 しかし、使っているその力は、依然として、ミョールの契約の力・・・・

 軽い眩暈を感じていた。
 もう、ちからがもたないかもしれなかった・・・・



 それでも、いい



 黒い瞳が、美しい色彩を放った。
 自らの大陸、ミョールが一度滅んだ時に・・・
 わたしも、もはや滅んでいるのだ。
 なにを、おそれる?


 頭を軽く振っていると・・・
 わたしは、足を止めた。

 どうしてだろう・・・・
 最近は、いつも、てきとうの神にお会いする前に、その弟子にお会いしてしまう・・・・


 わたしは・・・

 戒を追っていた。
 それは、てきとうの神がそうするよう言い出したことであるが。
 だが、自ら選んだのだ・・・

 戒。
 以前、わたしたちが苦しんだようなことが、戒によって行われている。

 また、同じようなちからが現れようとも
 いま、わたしができるのであれば・・・


   ウー・・・・

 ここちよい、響きが聞こえて来た・・・
 あの、てきとうの弟子が、このわたしを呼んでいる。

 弟子が導く白い魂のように・・・
 弟子の呼びかけは、わたしをみちびく・・・

「てきとうの弟子よ・・・
 みつけました。
 戒の場所を・・・」

 わたしは、黒い髪を、風に揺らした。


 長かったか
 短かったか

 これまで、いたるところへと赴いた

 あらゆる”黒”と相対してきた。

 いままでは一つ一つしか潰せなかったが
 元凶を潰せば、あとはもう・・・

   ウー・・・・・・

 また、弟子がわたしを呼んだ・・・
 弟子が、こちらに近づいて来るようだ。


 てきとうの弟子よ・・・
 わたしは、どうやらあなたをこそ恐れている・・・
 わたしは、なぜ、あなたを恐れているのか・・・




「きゃああああああああ!!!!!!!」
 寒い朝。
 ルヘルンの街の一角で、少女の悲鳴が響いた!
 その悲鳴は、このあたりではちょっと有名な料理屋の二階から発せられた。
 あまりに朝早かったから、街の人はまだ起きてはなかったが、流石に、その下の部屋に寝ていた、少女の父親は、驚いた。
 驚いたが、もさーーーーっと起き上がって、面倒くさそうに、肩をコキコキ鳴らしてから、二階へと向かう・・・

「な、な、なにすんのーーーーーーーーっ!」
「な、なにって・・・
 あ、あれ?ビアルちゃんは・・・」
「もう!信じられない!変体!スケベ!どうしてくれるの!結婚前なのに!」
「ど、どうしてくれるって、抱きついただけじゃないの」
「きゃあ、信じられない!乙女にあんなことしておいて・・・あっ!
 ちょ、ちょっと、オヤジ、なによ、こいつ!」

 オヤジ、といいながら、モサツいた男の影に隠れた少女は、赤みのある金髪の、闊達そうな雰囲気である。
 一方の、オヤジ、は、ぼさーーーっとしていて、こげ茶の髪はどうやら3日は洗ってないようで、着ている服はどう見ても夜着だ。

「あ、料理長!おはようございますっ!」
 シャキーーン!と爪先立ちになって、少女に叫ばれていた少年が、”料理長”に挨拶した!

「なんか、俺らの寝台に、変なのいたんですよ!?本当、困りますよね!
 じゃ、俺、家の周りでも掃除しますよ」
「ちょ!ちょっと!
 あんた、何考えているの!
 謝りなさい!
 そ、その寝台は大体にしてあたしの寝台なの、変なのって誰の事よ!?」
 少女が”料理長”の後ろから飛び出してきて、少年に詰めかかった。

 その少年は、いたく背が高かった。
 詰め寄って見上げたはいいが・・・・
 なかなかに、鍛えているようで、薄い衣服の下に、筋肉が見え隠れしている。
「え?き、君の寝台なの?」
 少年は、濃い黄色の瞳を驚かせた。

「り、料理長~!?」
 少年が、思わず”料理長”の方に困った目線を送った。
 料理長は、ぼさーーーーーっと言った。
「俺の娘のマエーリだ。」



 呆れたことに、ビアルは寝台の下に落ちて寝ていた。
 蜂蜜色の瞳の少年、ニルロゼは、ビアルを寝台に引き上げ、毛布をかけてやった。
 それを、憎憎しげに、マエーリが見据えている。
「いや、ほんと、ごめんって。
 本当に、ビアルだと思ったんだってば」
「・・・・・・」


 このマエーリは、16歳の少女である。
 父親とは、昔から、そりが合わなかった・・・
 いつも家出を繰り返しては、父に見つかって連れ戻されていた。
 どうして、そんなに父が面白くなかったのかは、実はよくわからなかった。

 最近、ようやく、家出癖も収まり・・・
 父の料理を手伝うようなことも増えた。
 今回は、使いに行っていた。

 そして、帰ってきて、いつものように寝台に寝ようとしたら・・・
 毛布から、ニュッと手が伸びてきて、マエーリを羽交い絞めにした、というわけだ。



 事の発端は、昨日の事に遡る。
 あの、背の高い少年ニルロゼと、美しい少女を、オヤジが勝手にあたしの部屋に、泊めたらしい。
 いちいち、思い出すと、ムカムカするマエーリであった。
 何分、これまで、男性とあのように抱きしめあったことがないというのに!
 この少年は、それを全く意に介していないようである!!
 その上・・・
 今、寝台に寝ている、ビアル、という少女と勘違いした、と言うのだった・・・

 まあ、そう言うのなら、仕方ないわ、と、理屈をつけて、自分を納得させようとするマエーリであった。
 なにぶん、ビアルは、恐ろしいほどに美しい少女、なのだ。
 その少女に、自分を間違えた、というなら、そんなに悪い気もしないでもないのだった・・・




 下の方では、オヤジが、あのニルロゼに、なんだか料理をやらせているらしい。
 オヤジが珍しく家にいるのを嗅ぎつけた街のやつらが、もう店に来ていた・・・・
 マエーリも、下に降りて行った。

 オヤジの事は、あまり好きではなかった。
 でも、最近、まあ仕方ないのかなと思うようになってきた。
 だって、あたしのオヤジなんだから・・・


 マエーリは、階段を降りきらないうちに、急にあらぬ事を妄想して一人で赤くなってきた!

 あ・・あれ?
 あのニルロゼが、ビアルと間違えてあたしを抱きしめて来たってことは・・・

 あの人たちって、
 そういう関係、よね・・・?


 急に、ドキドキしてきた。

 どう見ても、自分と同年代のニルロゼ達。
 特に、あの背高のっぽは、女性を抱きしめるなど、痛くも痒くもないようだ。

 ということは・・・


 口に両手をあて、マエーリは、こっそり上の方を見た。


 い、いやだ。

 え、えっと。

 私達くらいの年代で、もう、ねえ・・・



 少女の鼓動が収まるまでの時間が、かなりかかったような気がした。

 ようやく、マエーリは厨房へと行った。
 オヤジが、いつものように食材を切っている・・・

 背高のっぽは、うっとりするような目つきで、オヤジの手元を見ながら、自分の手元を見ないで野菜を切っていた。


 マエーリも厨房に入ろうとすると、オヤジがそれを留めた。
「昨日寝ていないだろう。俺の部屋で寝ていろ」
 オヤジはぼそっと言った。
「大丈夫よ。
 ショーンさんの処で寝させてもらったの」
 マエーリは、出来上がった料理を運び始める。

 オヤジは、あまり好きではないが、ああやって、少しは自分を気にかけてくれるあたりが、少しは”オヤジらしい”んだな、というのが、最近ようやくわかってきたマエーリである。
 不器用な父なのだ・・・

 背の高い少年も、皿を客に持っていくと、客人となにかよく話をしていた。
 どうやらなかなか、客受けがいいらしい・・・

 昼間になると、客足が少なくなった。
 面白いことに、この料理屋はいつも、昼や夕方のいわゆるご飯時の時間は込まないのだ・・・
 マエーリが机を拭いていると・・・
 二階から、トン、トンと、誰かが降りてきた。

 誰かが、などと、いちいち明記しなくても、もう判りきってはいたが。
 あの、美少女に違いない。

「あ、ビアル、おはよう」
 背高のっぽが、”少女”に声をかけた。
 黒髪の少女は、黒い服をばさりと着ていた。

 その姿を見た、残りの客の一人が、驚いた声をあげた。
「ビ!ビアルだ!」






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Last updated  November 7, 2013 06:05:07 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
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