Accel

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January 31, 2014
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 恐ろしく、忌むべき場所ハーギー・・・
 そのハーギーを、仲間と共に出てきた少年、ニルロゼ。
 仲間達は、4つの班に分散していた。
 そのうちの一つに残した女性、ナーダを、これまで・・・・

 忘れたことは、なかった・・・

 1年余、ずっと。
 どれほど集中しても、ふと気が緩んだときに・・・
 赤い太陽が西に沈んで、大地が赤く染まり・・・あのメルサを思い出し、その空が暗くなって星が出たときなどに・・・
 ナーダを思い出さずには、いられなかった。



 目をうっすらとあけると、狭そうに、ビアルが眠っていた。
 冷たく、石でできたハーギーとはまるで違う、木でできたビアルの家。
 釜には火が入ったままで、パチリ、パチリと音を立てていた。


 料理長の家に行って、
 ナーダの処に行って、
 また料理長の処に行って。そうしたら料理長は城に行っていて・・・?

 城に行ったらリュベナは、馬を自分にくれた。

 そして、あのセルヴィシュテが・・・・やって来た。

 おもしろくなってきたな。

 ニヤリ、ニルロゼは笑った。

 かなり、自分の見ていく場所が変わったな、と思った。
 今まで、見えなかったのだから・・・
 ビアルになら、見える。
 そう、確信していた。

 不思議なことに、ビアル自身のことは、まるで”みえなかった”が、ビアルなら”みえる”と思えるのだ。


 なににも、屈しない精神を持っているように感じた。
 だからこそ、その強さに・・・人々が惹かれていくのだ。
 その目に見える美しさではなく、そのつよさに。

 そのつよさ、どこから来る・・・

 今日は、いつもどおり治療に出歩いて行ったビアル・・・
 少し塗れているかのような髪を、人差し指でいじってみた。

「俺は・・・
 お前に、お前ができない以上のことを、頼んでいるのかもしれない・・・
 けれど」
 ニルロゼは、美しいビアルの横顔を見つめた目を、少し逸らした。

 ・・・でも、俺も、俺にできない以上のことを、やろうと思っているんだ・・・
 俺にはできないかもしれない。
 でも、やらなきゃならないんだ・・・

 だから、メルサ・・・
 きゃつを、みつける・・・
 いや、メルサの、その上だ!
 ぜったいあるはずだ・・・・
 その裏の裏・・・・


 ニルロゼは、ビアルに背を向けて転がった。
 リュベナが見せてくれた、十二神記。
 あれは、どのような意図で、リュベナは見せたのだろう・・・

 リュベナ・・・

 触れると、少し。
 俺が、包まれる感じがするんだ・・・

 同時に、リュベナ・・・
 君も、辛いの・・?
 なにか、切なく・・
 苦しんでいるようだ・・・


 明日になったら、ビアルに・・・
 あの本の事を聞いてみよう。
 ニルロゼは、自分の指を見て、それからその視線を壁際に向けた。

 あの城に、ある。
 ぜったい。

 あかへ・・・
 あかへのとびらが・・・



 朝露がぽたり、と、一枚の若葉から落ちた。
 地面に落ちるまでの間に、沢山の若者の姿が、その雫に映ったであろう。
 それぞれに、甲冑を着込み、剣を腰に挿し、そして、皆、若々しかった。
 まるで、その朝露が触れれば弾くかのように。

 彼らは、ハーギーから別れた班の一つで、東にやってきて・・・
 最近、ナイーザッツ城の付近で落ち着いていた。
 落ち着いたのは、本当に最近のことである。
 大人と食い違いが生じ、大人達と別れたのだ。
 24歳位の青年が筆頭に、一番年少でも10歳位の少年達が、ひしめいていた。

 この班の取り締まりは、以前ワーエという男がしていたが、その男も、別れた大人の方で・・・
 まあ、自然と、年上のポネが、全体を取り仕切る格好になっていたが、みな、それぞれ力は同じ位だった。
 それでも、年長者に敬意を持つよう、富豪に教わった者達がいるので、年長の者をたてていた。

 そのポネを後ろに控えさせ、やや高めの位置に立っている少年がいる。
 名は、レガン。
 ハーギーで集結し、ハーギーを出る時の立役者となった者である事、この班で知らない者はない。
 今日は、男性・・・というよりも、少年を集め、大事な話があると、昨日から触れ回っていたのであった。

「なにがあるんだろうね」
 この班の客人となっていた少年・・・
 セルヴィシュテの茶色の髪が、朝の光に反射し、淡く優しく煌いた。
 その髪の下の茶色の瞳は、踊るように動き、興味を隠せないようである。
 客人は、昨日来たばかりなので、一番後ろでひっそりと、大勢の少年達の様子を見ていた。
 全身茶色のものばかりを身に纏った少年の一歩後ろに、なんとなくはかない雰囲気の少年がいた。
 皮の帽子、黄緑色の上衣、緑がかったフォルセッツ・・・
 その様子だけを見たら、ただの町の少年のようでもある。
 皮の帽子を被った少年ラトセィスは、青い瞳を、やや伏せていた。

「みな、集まったな?
 俺の声はよく聞こえるか?」
 レガンの声が、浪々と響き渡った。
 少年達が、一斉に頷いたり、あるものは軽く手を上げたりして意思を伝えていた。

「よし。
 後ろの者には見えないだろうから、ちゃーんと喋るからな。
 よく聞いてくれ。
 これから前に出て貰う人がいる。
 自分だと思うなら、俺の前に出てきてくれ。
 ただし、4人だ。」
 レガンの声は、朗らかに一区切りされた。
 少年達は、少し、知り合い同士の者達が目を合わせたらしいが、すぐにレガンの方へと目を向けているようだ。

「ラトス。
 なんか、4人、悪いことでもしたのかな」
 セルヴィシュテは、軽く笑って相方のラトセィスに片目を瞑って見せた。
 みせしめでもないのに、こうやって、わざわざ4人を出させようとは、何事だろう?

「俺の言う内容を、間違えて捉えては困るからな?!
 そのまんま受け取るように。
 ええ、実はだ。
 アモから頼まれた仕事がある。
 隣の国、ラマダノンに、これから調査に行く」
 ざわり、少年達が少し声を出した。

「調査といっても、まあ調査。深読みは不要だ。
 だが、俺らはこのとおり。
 長きの戦いで、見た目も悪い。
 そこでアモが、銀貨をくれたのだ。
 5枚だ。
 ああ、勿論1枚は俺が貰った。
 さあ、ここに置こう・・・」
 レガンの声が一旦途切れた。



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Last updated  January 31, 2014 10:40:38 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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