ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2021.04.29
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カテゴリ: 国際政治
その後のミャンマー

クーデタで実権を握った軍政による弾圧は続いていますが、弾圧の仕方はスマートのなってきていることを前回記しました。少なくとも、都市部のデモ隊に、無差別に発砲するような、国際的非難を浴びるようなことは無くなっています。ASEAN首脳のソフトな忠告が効を奏したのでしょう。

一方で夜間に住まいを急襲して逮捕連行するような一種の闇討ちは続いています。そしてミャンマーの辺境地帯、少数民族地域では、独立志向の強い少数民族の武装勢力とミャンマー軍との戦闘が激しくなっています。チン族の武装勢力がミャンマー正規軍の拠点を急襲して占領すると、正規軍はチン族の基地を空爆して、数十人の犠牲者を出していたりします。

さて、CRPH(連邦代表委員会)とNUG(挙国一致政府)では、少数民族出身者の割合が高くなっているのが気になります。CRPHの顔ともいえるササ医師は、チン族の出身ですし、NUGが任命した閣僚の半数は少数民族の出身者です。 NLDの主要メンバーのビルマ人がほとんど拘束されていますので、残った少数民族出身者が反体制運動の主力を担うことになったのでしょうが、その結果少数民族の武装勢力との連携を重視することになり、ロヒンギャとの連携を呼び掛けることにも繋がってきます。

問題は、こうした体制と方針に、全人口の6割強を占めるビルマ人が、離れてしまわずについて行くのか、一抹の不安があります。まずロヒンギャに対して、ビルマ人の大部分は否定的な感情を持っています。それゆえにスーチー女史も、軍部のロヒンギャ虐殺を静観して評判を落とす結果に繋がったのです。ロヒンギャとの連携となると、ビルマ人はCRPHを支持できなくなる可能性が強まります。

現在は、国軍憎しで市民は一体となっており、CRPHの発信力は国の内外を問わず大変高いので、民主派の代表として、何処からも認められています。しかしCRPHのメンバーは、NLDの指導部や中核メンバーではなく、NLDの議員だったメンバーも数十人程度に過ぎません。従ってCRPHの正統性については、限界があります。現在の劣勢の苦しい状況が続くとなると、ビルマ人とその他のメンバーの間で、亀裂が生じるリスクが避けられなくなる可能性があります。国軍が仲間割れを誘うようなネガティブキャンペーンに出ることも考えられます。

軍部の分裂が起こらない限り、今は人的損失を極力抑え、とりあえずは面従腹背の精神で、軍政の臨時政府を一時認め、民主派の力をためる時期に来ていることを、残念ですが認めるしかないようです。勝ち目のない戦はすべきではありません。





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最終更新日  2021.04.29 21:59:05
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