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2011.09.07
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『高丘親王航海記』澁澤龍彦(文春文庫)

 ……うーん。
 「うーん」って、なんかしょっちゅう私は唸っているような気がするんですが、今回も唸りから始まってしまいました。
 そういえば、ちょっと昔、女房から「あなたは幾つになっても悩んでいる様な人だ。」と言われたような記憶があります。

 いえ、別に好きで悩んでいるわけではありませんが、というより、私は悩んでいるんじゃなくて、あれこれ想像、いえ、「妄想」しているだけのように思うんですがー。

 で、今回の「妄想」は何かといいますと、いろいろとあるんですが、とりあえず一言で言いますと、その「想像力」について、もう少し詳しくいいますと、「想像力に限界はあるのか」という事であります。

 一般的に「豊かな想像力」とか「無限の想像力」とか、「精神世界のまったき自由」とか言いますが、本当に想像力には限界がないんでしょうか。

 これも昔の読書なので、詳しい内容は覚えていないんですが、ジャズ・ピアニストの山下洋輔のエッセイにこんな事が書いてあったように記憶します。
 音階、ドレミファソラシドですね、その音階を頭の中で音をしっかりイメージしながら昇っていくんですね。

ドレミファソラシドレミファソラシドレミファソラシドレミファソラ……。

 どうです。どこまで昇れますか。山下洋輔が言うには、とってもこのまま無限に昇り続けられるものではなく、ある高さ以上の音階になるとほとんど頭の中が地獄のようだ、と書いていました。そして、「だから、想像力には限界があるのだ」と。
 なるほど、いかにも音楽家らしい発想と証明ですね。面白いです。

 今、「想像力」と一言で書きましたが、今回私が冒頭の小説を読んで「妄想」していたのは、いわゆる現実にはないもの、生き物とかと、状況を想像して書くという種の「想像力」であります。
 ちょっと日本の小説家で考えてみますね。

 この手の想像力について豊かそう、レベルが高そうと私が思う作家は(きっと他にも沢山いらっしゃるだろうとは思うんですが)、とりあえず3人です。この方達。

谷崎潤一郎・江戸川乱歩・太宰治

 どうでしょう。他にもきっと、私の見落としている作家がいらっしゃるでしょうが、例えば、筒井康隆なんか。
 うーん、『虚航船団』あたりは、いい線行っていそうですが、筒井氏の「想像力」は、今回私が取り上げようと思っている種類の想像力とは、少し違うような気がします。
 (もちろん筒井康隆の作品について、「想像力豊か」と評価するには全くやぶさかではないんですが。)

 私が今回イメージしている「想像力」とは、実際にはないもの(状況)を描写する力なんですね。
 例えば谷崎潤一郎の作品で一等それらしいのは、たぶん『美食倶楽部』ではないかと思います。
 若い女性に顔面をマッサージされていて、そのマッサージの指が口中に入ってくる、そして思わずその指を食べてみると、とっても美味しいとか(凄い発想ですよねー)、食べた後のおくび(「げっぷ」のことですね)が得もいわれず美味しいとか(これも凄いよねー)、そんな話ですね。

 (ついでの話ですが、谷崎潤一郎って、本当に「食いしん坊さん」だったらしいですね。最晩年の谷崎の食欲について書かれた本を読んだ事がありますが、美食を、とても老人とは思えないくらいの量で食べたそうですね。ついでのついでに、正岡子規も量というだけなら、やたらに食べました。これは子規の随筆『仰臥漫録』を読めば分かります。)

 次に江戸川乱歩ですが、この人は、いかにもそんな「ヘンな」想像力の持ち主という感じですよねー。
 サンプルとして紹介したい小説も、キリがなさそうなくらい一杯ありそうですが、二つほどに絞るなら、私は『人間椅子』と『押絵と旅する男』を挙げておきます。

 前者は、タイトルからぼんやり想像できそうな話を、我々の想像を超えた内容と描写で語っています。後者は、人が絵の中に入る話ですが、そこに至る状況に、恐ろしいような想像力による人工空間があります。

 最後に太宰治ですが、あ、予定分量を超えてしまいました。
 すみません。次回に続きます。


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Last updated  2011.09.07 06:33:05コメント(0) | コメントを書く
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