近代日本文学史メジャーのマイナー

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2019.08.08
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​   『穴』小山田浩子(新潮文庫)

 ◎下記本文中に「sperm」という表現があります。私は最初「精〇」と書いてたんですが、「〇液」と書くと、アップデイトするときに「本文にわいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています。」と出て、アップデイトできないんですね。やれやれ、としか言いようがないですね。

 前回の続きです。(すみませんが、詳しくは前回のところを読んでください。)​
 「いたちなく」「ゆきの宿」の2つの小説について、少し丁寧に見ていきたいと思います。

 主人公夫婦のうちの夫「僕」は41歳~42歳(作品内で、遡った時間を含めると1年半くらいの経過があります。)、「妻」も同じ歳の設定です。
 二つの短編の舞台となる家は、「僕」の友人の「斉木君」の家で、彼は「僕」と同じ歳、奥さんの「洋子さん」は32歳~33歳となっています。

 以下、作品の記述を少しほぐして、時間軸に沿って並べてみます。

 1.X年(仮の年度をこうしてみます)の事柄
 ◎妻、不妊の悩み。漢方薬など飲む。
 ◎排卵日に合わせた性交をしても「二人して疲労困憊」うまくいかないことがある。
 ◎12月頃か→斉木君、結婚とそれに伴って転居。
  (やり取りから、「僕」の不妊に対する関心や理解の低さが浮かぶ。)
  ◎同夜、sperm採取。今までは妻と一緒に寝ていたが、その夜は別部屋で寝る。

 2.X+1年の事柄
 ◎1月中旬→斉木君から結婚と転居の通知来る。返事として「僕」が斉木君に電話。
 ◎3月下旬頃か(「春先」)→斉木君から電話。いたちの話題とシシ鍋の誘い。
 ◎さほど間のない日→斉木君宅でシシ鍋。(「いたちなく」の舞台の日)
 ◎洋子さんは妊娠初期であった可能性。
 ◎妻の少女時代の母いたち殺しの話が秀逸。
 ◎シシ鍋会からさほど間のない日(妻と洋子さんの電話の話題から推定)
   →斉木君宅で「いたち殺し」あり。
    (「ゆきの宿」にも「あれ以来一度も出ていない」とあり。)
  ◎4月中旬頃(「遅い桜満開」)→妻はsperm検査結果を今に至るも僕に知らせない。
  ◎sperm採取日以降、妻から子供の話題はない。

 一応ここまでが、「いたちなく」の内容になっています。(洋子さんの妊娠話は続編に出てきますが。)私が「いたちなく」だけを読んだ時はさほど感じなかったのですが、2作セットで読み返した時違和感があったのは、不妊治療に関するこの夫婦のちぐはぐさです。それは、単なる「僕」の無理解というより、妻の意志と行動もちぐはぐではないかという事です。
 では続編「ゆきの宿」へ進みます。

 同じくX+1年の事柄
 ◎12月中旬頃か→洋子さん出産。予定日よりずっと前の早産。
 ◎同じ頃、妻、受精成功か。(詳細後述)

 3.X+2年の事柄
  ◎1月末頃か→洋子さんの本来の出産予定日。
 ◎2月末頃か→斉木君宅で雪に閉じ込められる。(「ゆきの宿」の舞台の日)
        赤ん坊はすでに2か月過ぎか。(目、首のすわりの話)
 ◎その夜……

 さて、ここから、何といいますか、ヘンな表現が3つ出てくるんですね。
 まず一つ目、斉木君の家で泊まることになった「僕」は、明け方隣で寝ている妻の顔を見ます。その時の描写がこうなっています。

​ 隣には妻が寝ていた。閉じた瞼の下側がぷっくり膨れて影になっていた。妻の寝顔を見たのはもう一年かそれ以上ぶりだった。​

 妻の寝顔を一年以上ぶりに見たということは、前回見たのはちょうどX年のsperm採取日の前日ということではありませんか。つまりこの描写から読めるのは、sperm採取の日以来、この夫婦は寝室を別々にしてしまったという事であります。
 一体、なぜ?

 次の「ヘン」な所に行きます。
 斉木君の家に泊まった翌朝、「僕」は雪の庭に出て斉木君に会います。そして彼から、「僕」が先に寝た後、妻が泣いていたという話を聞きます。そこはこう書かれています。

「妻は最近仕事が忙しいんだ。それは知っているよ。大変なんだ。毎日すごく遅くまで残業でさ……」
「ふーん」斉木君は僕を見た。「まあ俺は倫理的な人間でもないし、口は挟まないけれど、少し心配になったもんでね。奥さんが、元気なら、いいんだ。なんだか気の道のようなことだろう」

 ここは、いわば「ゆきの宿」のクライマックスの部分です。
 すみません。今回ではまとめきれませんでした。次回に続きます。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 
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Last updated  2019.08.08 19:25:38
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analog純文 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  シマクマ君さん、コメントありがとうご…
シマクマ君 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  ボクも読みました。結構素直な作品とい…
analog純文@ Re:主人公の心情がよくわからない(06/14)  シマクマさん、コメントありがとうござ…
シマクマ君 @ Re:主人公の心情がよくわからない(06/14)  昔、この作品が出たころ読んで面白かっ…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…

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