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2025.12.14
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カテゴリ: 昭和期・中間小説
『てんやわんや』獅子文六(新潮文庫)

 映画をわりと見るようになって3年ほどになります。なに、それは毎日が日曜日になっただけのことであります。
 映画館で見る映画だけを映画というのだ、と言ってた知人もいましたが、なるほどと思いつつも、私は家でけっこうテレビで見ます。
 何と言っても、家での映画は圧倒的に気楽であります。

 で、家でお気楽にいくつも映画を見ていますと、同じ映画を複数回(大概は2回ですかねぇ、3回以上はあまりありません)見ることがぼちぼちあって、で、ここからがポイントなんですが、複数回見ると後のほうがよく感じる、と。
 ……ま、当たり前といえば当たり前の感想ですわね。
 2回目を見ようと思う段階で、すでに作品に少なくない好意を抱いているうえに、1回目はどうしてもストーリー中心に見ていて見落としていたものに、この度は新たに気付いたりすることができるわけで、当然2回目のほうがよく思える、と。

 さて、この前振りの話をどこに持っていこうとしているか、ほぼ、言うまでもありませんが、冒頭の小説の読書報告であります。2回目の読書報告なんですね。前回の報告のタイトルが、「……うーん、面白くない」というのになっています。(困ったことだ。って、別に困りませんか。)

 やはり、今回のほうが面白かったんですね。少なくとも「面白くない」と言い切る気持ちはありません。
 思うに、私が前回引っかかってしまったのは、ざっくり二つの点ではなかったか、と。
 一つは、主人公の性格設定に引っかかってしまったこと。
 この二つが我が感想の中心原因じゃなかったかと思います。そして軽率に「面白くない」と書いてしまった……。

 では、今回の読書感想として、この二つが好意的に感じられたのかといいますと、それはやはりあまりないです。特に四国独立運動は、その後同様のテーマで井上ひさしが名作『吉里吉里人』を書きましたが、あそこまでいかずとも、今一歩も二歩も、独立運動のリアリティを描いてほしかったという思いはあります。

 ただ今回私が、多分前回はそこまで読めていなかったのだろうと気が付いたのは、この上記の二つの設定と展開が、まさに戦後すぐの日本人の姿と重ねることができ、そしてささやかな彼らの希望そのものであったのじゃないかということでした。
 例えば、四国独立運動についてこのような文章があります。

 石油、鉄、石炭、そしてウラニウムを産しないことは、絶対平和主義の四国島にとって、なんという幸福であろうか。

 四国島には、国民も、人民もいない。市民あるのみである。従って、君主も、大統領も要らない。代表者として、市長が一人いれば、結構である、そして、国家でなければ、国際紛争に捲き込まれる心配もなく、また自給自足の原始経済で、資本主義以前の社会に戻るのだから、階級闘争による内乱も、起る道理がない。
 そういうところが、ひどく私の気に入るのである。臆病者の天国といっていいではないか。

 また、主人公の性格設定にしても、このような表現が随所にあります。

 我ながら、魅力のない人間だと思うのだが、その割に人から嫌われないのは、私が高慢を知らぬからであろう。私は運命にも、人間にも、よく服従する。それが、私の性格であり、また処世の道でもあった。

 私は、鶴ヶ浦の別荘で聞いた、夜半の爆音を、忘れることができない。あの人間侮蔑の、いやな音は、いまだに、耳の底深く残っている。あの音の意味する一切のもの――戦争、内乱、暗殺、喧嘩、強盗を、私は、断固否定する。私は、怖いのである。生まれつき臆病であり、現在も臆病なのである。

 そして、「臆病者の天国」であった四国独立運動があっけなく崩壊した後、生活のすべを失った主人公は、最終盤このようにつぶやきます。

 私の頼みとする相手は、もはや、一人も日本にいない。ただ、生来の臆病と非力の犬丸順吉個人だけである。一茎のワラのような私だが、今は潔く、敗戦国の暗い激流の中に、身を投ずる覚悟である。

 本作品は、昭和23年11月から翌年4月まで毎日新聞に連載されたそうですが、このエンディングについて、なるほど、決してハッピーエンドには描かれていませんが、読者にとっては、かなりリアリティのある、そして、一点の灯のかすかに見えるようなものであったのかも知れませんね。

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Last updated  2025.12.14 07:35:09コメント(0) | コメントを書く
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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