突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2011.09.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類



 右も左も、360度、あるのはただ、夜の闇に冷たく冷えきった砂と、満天の星空ばかり。
 くるりと振り返れば、もう方向さえわからなくなりそうだ。

 ――― 一人でリシャーナの森に帰らなければなりません ―――
 そう言ったゴルギアスの声が、耳の奥に反響した。
 千年の呪いが跡形もなく消え去った、その場所に、今アルデバランはたった一人、取り残されたのだった。

 少し離れたところに、黒い影がひとつ、横たわっていた。
 それが何なのか、すぐに気がついた。
 砂を蹴って、駆け寄った。

 アンタレスは、すでに冷たくなっていた。
 今生で見る、最初で最後の、兄の姿 ―――
 バルドーラ族とパピト族、今生では血のつながりもない、異なる種族のはずなのに、アルデバランととてもよく似ていた。
 懐かしいのか、悲しいのか、胸がつまって、声が出なかった。

 震える手で、その顔に触れる。
 胸の奥のどこかで、懐かしい兄の声が聞こえたような気がした。

 アルデバラン、俺はここで木になる、そう言ったように聞こえた。

 この不毛の地に根を下ろして、雨を呼び、命を呼ぶ。 
 小さなころから俺を守って育ててくれた、あのユーカリ樹のように、強く優しい、孤高の木になって、たくさんの命を呼び、増やし、大きく育てて、いつかきっと、この砂漠を、もうひとつのリシャーナの森に変える。

 そう聞こえた。

 兄もまた、たくさんの命を奪った罪の意識に苦しんでいたのだ、と思った。
 ここで、数限りない命を育て、見守ることで罪滅ぼしをしようとしているのだ、と。

 アンタレスの顔が一瞬、ふっと緩んだように見え、それから、その体がぱっと白く輝いた。
 そして、その光が消えたとき、アンタレスの体は、ひと粒の、植物の種に変わっていた。

 小さな、希望の色をしたその種を、注意深く砂の中に埋めると、アルデバランは、立ち上がり、星あかりを頼りに歩き始めた。

 世界のどこかに必ずあるはずの、リュキアの国を目指して。
 プロキオンの待つ、リシャーナの森へ帰るために。
 兄アンタレスに変わって、リシャーナの森を守り、レグルス王を補佐するために。

 頭上に広がる満天の星空が、明るく輝いて、アルデバランの行く道を指し示してくれているような気がした。

< 完 >






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最終更新日  2011.09.02 18:18:20
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