「スーパーコンピューターを20万円で創る」
伊藤智義 2007/6 集英社 新書 235p
No.961 ★★★★★
予
予算枠が更に20万円にも増えれば、うん、たしかに何年か前の「スパコン」などと呼ばれていた計算機を凌駕するようなコンピュータを自分の書斎に所有することができるようになるかもしれない。
し
かし、この本はそのような話ではない。仮に私が20万円の最新の自作「スパコン」を手にいれたとしても、やることは、せいぜい、現代版の読み書きソロバンであるエクセル・ワード・インターネット+アルファぐらいであろう。あとは、ブログを書いたり、ちょっと気取ってセカンドライフの云々なんて、しゃべってみる程度だ。
たしかにグラフィックボードが最新じゃなきゃ駄目だの、CPUが二個ないとだめのと言ってみたところで、こちらの「創造力」にそれほどの要求があるわけではない。流行に乗ってそう思わされているに過ぎない。
こ
の本で登場するスパコンは、まずは解決すべき「問題」ありきなのだ。つまり天文学を研究する人々が、たとえば二つの銀河が激突した場合に、どのような経過をたどって、どのような結果になるかを、スパコンを使ってシュミレーションをしてみよう、というのがそもそもの発端なのだ。しかも時代は1980年代後半。
そのレポートは立花隆の 「電脳進化論」
でも紹介されているという。また、学生時代に漫画の原作も書いてかなりな高額な(年間1400万円)収入を得ていたという筆者の、ノンフィクションの姿を借りたレポートである。NHKの「プロジェクトX」の番組予定にも入っていたそうだが、あのような不幸な終わり方をした番組だったので、幸か不幸か、このグループの開発したスパコン「グレープ」はテレビ番組になることはなかった。
しかし、「プロジェクトX」の火種になったとされる「栄光なき天才たち」の原作者でもある筆者の筆致はなかなか快適で、すっかりその世界に読むものを引き釣りこんでいく。
著
者が天文学を選択し、研究室にとどまる経緯においても、西部邁が 中沢新一
を東大の教員に推薦して反発をくらい辞職した経緯と重なってきて、最初この本のタイトルから連想したイメージとはかなり違った展開をし始めるのが、なかなか興味深い。
月はなぜ出来たのか、という人類創世以来の謎も、彼らの開発したスパコンは、あざやかに解いてみせる。どうやら彼らのシュミレーションでは、地球が別の惑星と衝突した際に、地球の周りに散らばった岩石片が渦状に衝突を繰り返し、やがて、その中から成長を始めて、さらに周囲の岩石塊をひきつけて、月を形成したのではないか、と推論しているP188。すくなくとも、そういう計算結果がでているようだ。
こ こで不埒なことばっかり考えている当ブログとしては、 地球も月もすべての天体は空洞 である、と主張する潮流に対して、どのような影響を与えるだろう、と考えてみる。ここでのスパコン「グレープ」ではそのような結果がでてきたかもしれないが、じゃぁ、地球は何故できたのか、あるいは空洞には絶対ならないと断言できるのか、というあたりまで、ぜひこのスパコンでシュミレーションしてほしいものだ、と思う。
「ワープする宇宙」
のリサ・ランドールは、たしか、いくつかある力の中の「重力」だけは極端に弱いのはなぜか、という疑問から、彼女なりの「5次元」の発想がでてきたようだった。そのことがちょっと気になっていた私は、近頃、それって、ひょっとすると「地球の内部が空洞だから、重力が弱いのではないかしらん」などと考え始めている。
しかし、こんなあまりに単純な妄想ばかり追っかけていくと、こちらの頭脳が空洞化していることの証明になってしまうので、そこそこでやめておく。
著
者は、「ゼロから1を作り出す研究」と、「1を10にする研究」の違いを述べるp161。もちろん、どちらも大切であり、どちらもそうそうたやすくできることではない。 ネット・トレード
などではなおさらだ(笑)。1962年4月24日生まれの筆者は、 バースチャート
を見ると、おひつじ座からおうし座へ太陽が移動しつつあり、創造力豊かで持続可能な堅実な世界観の持ち主でもあるようだ。
それにしても、ゼロから生まれた20万円のスパコンは、「重力多体問題専用」マシンから、汎用モデルに転換し、「分子動力学法」を用いたタンパク質のシュミレーションなどにも応用されていく。宇宙の研究と分子や細胞の研究が酷似していたなんて事実は、想像することは難くはないが、実際にそのように活用されたと説明されると、なるほど、と深く納得してしまうのである。
グルジェフ伝 神話の解剖 2009.01.14
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