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倦怠感、頭痛、慢性的な胃腸不調等の症状の原因は、 体内にマイクロプラスチックが入り込んだためではないか。 検査や体内洗浄を求める人々が急増し、診療所の待合室には長蛇の列が。 このように社会的不安は高まっているものの、科学的確証はまだ揃っていない。 が、このような状況下、マイクロプラ除去サプリを売る長命サイエンス(株)、 体内プラ洗浄を謳う星賀ライフクリニック、プラ排出セラピーの篠沢トータルサロンは、 いずれも大胆な初期投資が功を奏し、各業界のトップに躍り出ていた。 3つの業態最大手に対する科学的追及、それが今回瑞希が文科省で委ねられた仕事だった。瑞希は、職場である文科省科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室の先輩・瀬岐智紀、厚労省医政局研究開発政策課治療推進室係長補佐の佐久間英里子と共に協真製薬研究開発部長・樋崎昭輔によるサプリ業界への復讐行為を突き止めると、以後、樋崎の協力を得ながら、星賀ライフクリニックと篠沢トータルサロンの闇も炙り出す。 *** 善人に見えて抜け目のない人、友情に見える取引。努力に見える焦り。 やさしさに見える支配。誠実に見える演技。愛に見える依存。無関心に見える防御。 余裕に見える虚勢。素朴に見える計算。自信に見える怯え。(p.88)これは、瑞希が瀬岐に言った人に関する”欺瞞十の法則”。これを当てはめてみて、ぜんぶしっくりこなければ、対象者はとりあえず嘘をついていないと考えればいいとのこと。 自由に見える選択肢の強制。意見に見える引用。共感に見える同調。主張に見える炎上狙い。 本音に見えて構築されたプロセス。人気に見えてじつはステマ。綺麗に見えて画像加工。 革新に見える焼き直し。無関心に見える疲弊。誠実に見える演出。(p.91)これは、瑞希が瀬岐に言った”謀りごと十の法則”。二つ以上に該当すれば、関係者がなにか企んでいるとのこと。どうでしょう?
2026.04.29
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戦後、大学数は増え続ける一方、18歳人口は1990年代以降減少を続け、 1994年に30%だった大学進学率は、2002年に40%を超え、 2009年に50%、2025年には59%にまで上昇した。 そんな中、学校推薦型選抜や総合型選抜が広がり、 受験生の現役・安全志向が高まったことなどから、 有名私大合格者の現役比率は3割から7割へと変化、 予備校にも大きな変化が見られるようになった。以上が、第1章で記された「予備校の現状」の概略である。そして、続く第2章から第4章においては、明治から現代に至るまでの予備校の変遷が記されている。 ***1870~1880年代の私塾を起源とする予備校は、1900年代に入ると大学や中学が予備校経営に乗り出すようになる。そして、1945年の「決戦教育措置要綱」で予備校の授業は停止となった。戦後、授業を再開した予備校は、1950年代に入るとその校数を増やしていく。そして1960年代後半、団塊世代が大学受験を迎えると、その需要はさらに高まる。1960年に男子56,000人、女子7,000人だった予備校生の数は、1977年には男子190,000人、女子42,000人にまで増加、予備校は1980年代に最盛期を迎える。しかし、1979年に共通一次試験が導入され、全国規模の情報が要求されるようになると、以後、駿台・河合・代ゼミの三大予備校が全国展開を開始し、その勢力を拡大していく。これにより他の予備校は厳しい状況にい込まれ、2010年代にはその多くが姿を消した。ところが、その後浪人生が減少、2015年に代ゼミは全国20校舎を閉鎖し7校体制となる。三大予備校は二大予備校となり、急成長した東進ハイスクールや鉄緑会も安閑とはしていられない。 ***以後、第5章からは「予備校」というものについて、様々な角度から考察を進めていく。予備校を体験したことがある者にとっては、たいへん興味深い内容となっている。 予備校が、受験生のより効果的な教育のためという論理よりも、 たんにライバルをつぶすためという「資本の論理」で動く、 といわれても反論できない面があるだろう。(p.177)これは、全編を通じて強く感じること。生徒の争奪戦はもちろん、講師の争奪戦も当たり前の仁義なき戦い、マネー戦争。しかし、顧客である生徒が確実に減り続けるなか、どのようにして生き残っていくかについては、「学校」も全く同じ状況であり、行政主導でどんどん統廃合や改革が進められている。その動きは、まるで公教育を放棄し、全てを民間に委ねてしまいたいようすら見えてしまう。 「高校は文部省の学習指導要領通りにやらなくてはならない。 予備校は勝手なことがやれる。 実際、文部省の言う通りにやっていると損をするんです。 キーポイントがあるんです。 そのキーポイントを文部省は教えてはいけないと言っているんです。 予備校は勝手に教えてしまう」(p.233)『駿河台学園80年史』に掲載された、数学講師・中田義元氏の言葉である。本著では多数の予備校講師が紹介されているが、皆それぞれに個性的で尖っている。そんな講師たちが、そこに集う生徒たちにどれほどの影響を与えるかは推して図るべし。そんな授業を背景に予備校文化は形成され、それがメディアでも取り上げられてきたのである。
2026.04.27
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朝ドラ『風、薫る』が始まって4週間。 かなりハイペースでお話はどんどん進んでいますが、 早速、原案である本著を購入して読んでみました。 が、本著で描かれているお話は、朝ドラとは全くと言って良いほど別物でした。 ***下野国黒羽藩主・大関増裕の縁戚で、鉱山開発実務を一手に引受けていた国家老の大関弾右衛門。その妻・哲との間に、二男三女の次女として安政5(1858)年に生まれたのが大関和(ちか)。会津征討を巡り藩主・増裕は自害、新藩主は戊辰戦争で新政府側に立って会津藩を攻撃した。増裕死後、弾右衛門は家老職を辞し家知事に、その後上京し商売をするが失敗、流行り病で逝く。和は、弟・衛、妹・釛と共に書道と算術の塾に通い、釛とは華道と茶道も学んだ。また、哲からは裁縫、機織り、料理を仕込まれ、黒羽の士族・柴田豊之進福綱に18歳で嫁ぐ。22歳年上の豊之進は、陸軍少尉として勤務後退官、大地主として成功していた。しかし、妾の千代とその子どもたちと別宅で暮らし続け、義母は和に米作りを命じた。長男・六郎を連れて東京で里帰り出産した和は、明治13(1880)年長女・心を産むと、柴田家に離縁の意思を伝え、幕府の中国語の通訳として重用されてきた鄭家の女中となる。鄭家の主・永寧の二男で大蔵省で勤務する永慶から植村正度が経営する英語塾を紹介され、通うようになると、さらに正度の兄・正久が牧師を務める下谷御徒町の教会にも足を運ぶように。和は洗礼を受けた後、永寧から鹿鳴館で開かれる『婦人慈善市』の手伝いを打診され、明治17(1884)年6月、会津藩出身の大山捨松に英語対応を申し出て外国人対応を引き受けた。数日後、永寧を通して捨松から鹿鳴館で通訳をしないかと誘われると、鄭家の女中を辞し、子どもたちの世話を哲に頼んで、昼は婦人慈善会会員に英語を教え、夜は通訳の仕事をした。3年後、宣教師マリア・トゥルーの娘・アニーが経営する桜井女学校に附属看護学校を作るので、1期生として入学しないかと正久に勧められ、マリアらと横浜で貧民救済活動に参加する。意を決した和は、明治20(1887)年に麹町区の櫻井女学校附属看護婦養成所に入学した。寮で同室となった長身で断髪、同い年の鈴木雅は、ナイチンゲールの著作を原書で読んでいた。 ***このあたりまでが、現在朝ドラで放映中の時期、即ち看護婦養成所入学に到るまでの経緯ですが、実在の大関和と、朝ドラの一ノ瀬りんとの間には、かなりの相違があることが分かります。そして、鹿鳴館や貧民救済活動に纏わるお話も、大家直美の挿話として描かれていましたが、実際は鈴木雅ではなく大関和に関するものであり、和の英語能力の高さがが伝わってきます。 ***看護学校1年目は教室での座学で、教師・峯尾纓と8人の学生が『Notes on Nursing』を翻訳。2年目は第一医院での実習に6人の学生が臨み、修了式後には和が第一医院の外科看病婦取締に、雅と桜川里以が内科看病婦取締となり、1年も経つと和の奮闘ぶりは医療界中に知れ渡っていた。が、その精神は医局には容れられず、第一医院を去り高田女学校寄宿舎に舎監として赴任する。高田では廃娼運動に時間を費やした後、新設された知命堂病院の看護婦長に就任。その頃、雅は留学を取りやめ横浜貧民窟で天然痘に対処した後、慈善看護婦会を設立していた。一方、和は赤痢の防疫に尽力、以後『婦人新報』に感染症予防や看病法について寄稿する。そして高田で5年半を過ごした後、東京看護婦会で雅の片腕として多忙な日々を過ごすことに。雅と共に東京看護婦会講習所で看護婦養成を行い、大日本看護婦人矯風会会長に就任すると、廃娼運動で知り合った社会運動家・木下尚江が逮捕されると、監獄署へ足繫く通い求婚される。が、雅に反対され、後に新宿中村屋創業者となる相馬愛蔵も猛烈に反対し、結婚話は白紙となる。そして、明治32(1899)年、41歳の夏に『看護婦派出心得』を出版した。明治33(1900)年に病院実習を行っていた長女・心が結核を患い20歳で早世すると、和は雅に辞表を提出して箱根で隠遁生活に入るが、翌年、雅が引退すると東京看護婦会の会長に、さらに婦人矯風会の衛生課長に抜擢され、その翌年には大日本看護婦協会幹部に選ばれる。やがて、東京看護婦会に代わり大関看護婦会の看板を掲げ、所属看護婦はクリスチャンに限ったその後、身内の度重なる死にさらされ、自らも病を抱えるなか、大正11(1922)年には、雅が息子・良一と共に京都・下鴨へと旅立って行った。その4年後、雅は沼津へとさらに居を移し、昭和15(1938)年82歳で永眠した。一方、和は関東大震災後に病気がちとなり、昭和6(1931)年73歳でこの世を去っていた。 ***大河ドラマ『べらぼう』と『蔦屋』も全く別のお話でしたが、こちらの場合は、両方とも概ねフィクションでしょう。それに対して、朝ドラ『風、薫る』はフィクションですが、本著については、巻末「おわりに」に 史料の乏しい部分や会話には創作を加えている。(p.347)とあることから、話の流れ自体は凡そ史実に基づいたものだと思われます。これらのことを踏まえた上で、朝ドラも楽しんで観ていきたいと思います。
2026.04.26
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久しぶりにマハさんらしい作品を読んだなという感じ。 2007年の刊行なので、『楽園のカンヴァス』等のアート系の作品ではなく、 『カフーを待ちわびて』や『ランウェイ☆ビート』等、初期の作品群の中の一つ。 そう言えば、『まぐだら屋のマリア』も地上波でのドラマ放映が始まりましたね。 ***渋谷区にある中堅出版社・たから出版のモード誌『JoJo』編集部に勤める神谷藍(25)は、コピーライター・岩倉誠のオフィスで、津村浩介(23)と出会い、やがて一緒に暮らすように。それから1年後、取材先のペットショップでゴールデンリトリバーのリラに出会うと、店員から、このままだとリラは明日保健所へ送られてしまうのでもらってほしいと頼まれる。リラの飼い主となった藍は、恵比寿のワンルームマンションから調布の閑静な住宅地に転居。しかし、これまで15分だった通勤時間が80分になってしまう。それでも、公園の隣にある都営のドッグランでは、ドッグオーナー同士の交流もさかんで、ミニチュアダックスのショコラの飼い主・西野友里とは、浩介共々とても仲良くなる。浩介が岩倉誠事務所の社員旅行に誘われ3泊4日でグァム旅行に出かけた際、藍が仕事で帰宅が25:00を回ってしまうと、外でしかトイレをしないリラが我慢しきれず粗相。藍はテーブルの下で震えながら隠れるリラを怒鳴りつけ、そのお尻を何度も思い切り叩いた。そして、「リラ、ごめん。ごめんね。馬鹿なのは、あたしのほうだ」と力いっぱい抱きしめた。その後、藍は担当するフリーランスのライター・岡部翔との関係を深めていく。翔から誕生プレゼントに貰ったテディベアのぬいぐるみをリラがぼろぼろにしてしまうと、藍は浩介からのプレゼントの分厚い本をリラめがけて投げつけ、こめかみから出血させる。そして、寝室から出て来た浩介に「自由になりたいよ。もっと仕事して、もっと他の人に恋して」翌朝、藍はバス停で定期を出そうとポケットに手を入れた時、バースデーカードに気付く。その裏面には「他のひとに恋をしてるのは、僕のほうだ。」と記されていた。やがて、藍が別れを告げると浩介は家を離れ、一緒に付いていくはずだったリラは戻って来た。仕事を早めに切り上げ、翔からの誘いも断り、自宅に戻って徹夜で頑張る生活で一月は乗り切る。しかし、編集長・北條恵子の命令には逆らえず、年下の多川奈津美にリラを託す。しかしそれが叶わず帰宅が遅くなると、リラはやっぱり……それでも藍はリラを抱きしめた。そういうことが繰り返される中、リラは脾臓を癌に侵され手の打ちようがない状態に。藍は、獣医の宮崎やタクシー運転手の斉藤らに支えられながらリラの看病を続ける。そして、北條に実情を打ち明け、担当していた仕事を奈津美に代わってもらえるよう頼み込む。自分の担当を降りた理由を知った翔が、藍に嫌ごとを口にすると、逆に捨て台詞を吐き立ち去る。やがて、リラの状態が悪化するが、発熱に苦しむ藍が電話をかけると、浩介がすぐに駆け付けた。そして、浩介は藍と二人で暮らした家に留まってリラの看病を続け、最期を見届けたのだった。仕事中だった藍は、知らせを聞いて急いで帰宅したが、10分遅かった。リラの遺骨が帰って来て、夕焼け空の下、藍と浩介はいつもの散歩道を二人で歩く。「一分間だけ、あればいいな」という浩介の言葉に「そしたら、どうするの?」と返す藍。浩介は「さよなら」と言う代わりに、藍を抱きしめた。 ***映画化もされてたんですね。台湾・日本合作で、日本で公開されたのは2014年5月31日。主演は、チャン・チュンニンという方。こちらのレビューにも、主人公のリラに対する態度に、非難の声が多数あがっていますね。
2026.04.23
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内容は高度なものなのに、とても読みやすい文章です。 ですから、読み進めることに苦痛を感じることがありません。 第2章以降は、章の最後に「まとめ」を掲載してくれているので、 頭の中を整理したうえで、次の章を読み始めることが出来ます。 また、章と章の間に挿入される「コラム」も良いアクセントになっています。 そして、終章では筆者たちの考える「脳の本質」が、次の8項目にまとめられています。①環境を知る②複数データに基づき推論する③誤差を修正する④環境に働きかける⑤神経修飾物質で精度をコントロールする⑧世界のモデルを学び続けるそして、私が本書から学んだことは、次の一文に集約されています。 これらに共通する脳機能の本質は、「予測」である。 私たちは決して感覚データそのものを見たり感じたりすることはできない。 私たちが知覚できるのは、胎児期からずっと培ってきた世界に対する、 知識(生成モデル)に基づき「予測」した世界なのだ。(中略) 時々刻々と変化する環境において、 脳はとめどなく予測と後付け(予測の上書き)を行い続ける巨大な推論システムなのだ。 現在とは、そこにあるものではなく、 私たち一人ひとりの脳が決定しているのである。(p.227)脳についてここまで研究が進んだのかと、とても感慨深いものがありました。他分野との間に横断的な研究も進み、新たな世界が次々に開けてきています。近年のAIの急速な発展には目を見張るものがありますが、この分野にも、脳研究は大きく寄与していくことでしょう。
2026.04.19
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「静おばあちゃん」シリーズの第3弾。 今回も、要介護探偵・香月玄太郎とのコンビで数々の事件を解決へと導きます。 前巻のお話の舞台は、玄太郎のホームグラウンド・名古屋でしたが、今巻は東京。 健康診断を受ける静と、大腸の内視鏡検査を受ける玄太郎が病院で出会います。 ***第1話 もの言えぬ証人大腸がんを患う古見正蔵は1週間前に摘出手術を終え、集中治療室で栄養剤を投与されていたが、何者かによって麻酔薬に差替えられ容態が急変、医師たちの蘇生処置も空しく死亡した。外科医・楠本や看護師・朝倉、正蔵の長男・鷹也や嫁の涼美、孫娘の綾子に嫌疑がかかるが、玄太郎と静は、古見鉄工所の決算報告書を入手後、点滴パックのラベルから真犯人に辿り着く。第2話 像は忘れない衆院国交委での構造計算書偽造問題証人喚問を前に、一級建築士・鳴川秀美が歩道橋から転落死。証人喚問には、丸刈りにしたカイザ建設代表取締役・介座峯治だけが出頭する。製図用インク、介座が選考委員を務めた日事協建築賞のトロフィー、鳴川の実妹・千佳の自死、玄太郎と静は、これらのことから一連の事件の真相と鳴川秀美の思いとを暴き出す。第3話 鉄の柩愛宕署・砺波の元上司・壁村正彦が運転するクルマが、園児の列を避けコンビニに突っ込み死亡。コンビニの隣のビルの1階には、瘦身美容の<ビューティー・クリスタル>が入っていた。玄太郎と静、愛宕署の砺波は、特殊詐欺を侵し服役中の息子・幸弘に面会に行くと、玄太郎は国税局を巻き込んで、<ビューティー・クリスタル>代表取締役・皆木と対峙する。第4話 葬儀を終えて静が死刑判決を下した被告人・雪代佳純、その時法廷に響いた「お母さんっ」という幼い声。十数年後、静は右陪審を務めた多嶋俊作の葬儀で、左陪審を務めた牧瀬寿々男と再会する。しかし、静は多嶋の孫の一言からその死因に不審を抱き、玄太郎の助力を得て司法解剖を断行。そして、多嶋の長男・幸助と妻・礼香と対峙すると、犯行の一部始終を突きつけたのだった。第5話 復讐の女神多嶋に続き牧瀬が刺殺され、静は群馬県警本部・末次と共に妻・久爾子を訪ねる。葬儀後、多嶋が死を前にとった行動の意味する所を静が伝えると、久爾子は両手で顔を覆った。その後、静にも脅迫電話がかかって来るが、一連の事件を裏で糸を引いていた女を突き止めると、最後は、玄太郎が経済的手段で怒りの鉄槌を振り下ろしたのだった。 ***第5話では、静の一人娘・美紗子とその夫・滝沢陽平が交通事故死し、孫の円と養子縁組して引き取ったときの様子が描かれています。また、今回は修習生時代の岬洋介も登場しています。それにしても、大腸がんのステージⅢbで手術を受けた玄太郎が元気過ぎる……
2026.04.18
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タイトルからはハウツー本のような印象を受けますが、そうではありません。 書かれている内容は、確かにミステリーを書く上で参考になるものですが、 松岡さんの『小説家になって億を稼ごう』とは、明らかに違うものです。 本著は、中山七里という作家を知るための手引書とでも言うべきものです。 *** 書店に来て、何か面白い本はないかなって見渡した時に、片方によく見かける著者の本、 もう片方にまったく知らない新人の本があったとしたら、どっちを手に取るかって話です。 (中略) で、どうしたら中山七里の作品に手を伸ばしていただけるのかと考えた時に、 量産するしかないと思ったんです。 僕はこれ本当に自覚してるんですが、文芸の世界って化け物ばっかりじゃないですか。 こんな化け物ぞろいの世界で僕みたいな才能のない人間が生き残るには 量産するしかないんですよ。 それで量産できる生活と身体を作ったというわけです。(p.162)この後に続く、「原稿執筆中の眠気対策」や「健康維持の秘訣」「映画鑑賞と読書は趣味というより食事」に記されているのは驚愕の世界。真似しようと思っても、とても真似できるものではありません。七里さん自身も間違いなく化け物です。
2026.04.11
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『静おばあちゃんにおまかせ』の第4話「静おばあちゃんの醜聞」に出て来た 高円寺静が定年を前に退官することになった事件の全貌が描かれています。 お話には、静や葛城が登場すると共に、犬養の名前も出てきます。 そういう部分を除いても、本著は七里さんの代表作とも言える名作でしょう。 ***昭和59年11月2日、埼玉県浦和市のラブホテル群の中にある久留間不動産で夫婦が刺殺された。浦和署の鳴海と渡瀬は、不動産屋に残された帳簿から容疑者を楠木明大に絞り込み、自供させる。明大は一審で一転無罪を主張するも死刑判決、東京高裁の高円寺静判事は控訴を棄却、さらに最高裁も上告を棄却し刑が確定、昭和63年7月15日に明大は拘置所で自死した。平成元年12月24日、大原で留守中の病院経営者・鏑木宅に空き巣が入った。同日、上木崎の高嶋邸では、夫・恭司の渡仏中に妻・艶子と息子・芳樹母子が刺殺された。二つの事件の容疑者・迫水二郎には、渡瀬と堂島が当たり、不動産屋の事件も一緒に自供させる。渡瀬は東京高検の恩田と東京高裁の高円寺静の二人を訪ね、それぞれから話を聞くと、周囲からの圧力に屈することなく不動産屋の事件を再度追い、やがて冤罪が世間に暴露される。平成24年3月15日、府中刑務所から仮釈放されたばかりの迫水二郎が刺殺された。渡瀬は、警視庁の葛城公彦から容疑者が不動産屋の娘・松山那美と高嶋恭司だと知ると、府中刑務所、さいたま地検、明大の両親が住む楠木家、那美のバー、恭司のオフィス訪ね歩き、楠木家と那美、恭司に迫水の出所予定日を知らせる手紙が届いていたことを知る。さらに不動産屋跡地を訪ね、そこで第一発見者のラブホテルの元従業員に遭うと、当日見たクルマの助手席に元女優・生稲奈津美が乗っていたことを聞き出す。そして、奈津美から夫の裁判判決を減刑に導くというある男の申し出を受け入れたことを知る。その上で、迫水二郎殺害の真犯人と対峙、自らの犯行を認めさせると、3通の手紙の送信者と対峙、元ホテル従業員が見たクルマについて話し始めるのだった。 ***エピローグは秀逸です。これほど綺麗に終わるお話は、そうあるものではありません。高円寺静の墓前で手を合わせる渡瀬、そこに現れた円と葛城。円の「じゃあ、それまで刑事さんでいてくださいね」の言葉が胸に沁みます。
2026.04.11
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みをつくし料理帖の第3弾。 冒頭は、芳が澪がのために手放した深い赤色の大粒の珊瑚のひとつ玉の簪を、 種市が質屋や損料屋を回り、大坂屋にも協力してもらって取り戻したお話。 そして、神田永富町の版元『坂村堂』店主・嘉久が清右衛門と共に来店します。 ***豊年星-「う」尽くし坂村堂の料理番がつる家へやって来ると、それは佐兵衛と共に江戸に下った富三だった。富三は、佐兵衛が花魁・松葉に熱を上げた末、手にかけて行方不明になったと話す。つる家を手伝うことになった富三の作る料理を、又次は手入れの悪い包丁で作ったものと指摘。さらに、芳から佐兵衛を探すよう頼まれ簪を受取ったことも判明し、又次は富三の虚言を暴く。想い雲-ふっくら鱧の葛叩き澪は源斉の依頼で翁屋で鱧を調理することになるが、主人・伝右衛門は女が作る料理を拒絶。しかし、主人が呼んだ板長には扱いきれず源斉に強制終了させられ、結局澪が調理することに。その後、『俄』で白狐を踊ると言う菊乃に「西河岸のお稲荷さんに行く」と声を掛けられ、澪がそこで待っていると、30人近くの白狐に囲まれて、野江との再会を果たしたのだった。花一輪-ふわり菊花雪澪が神田御台所町のつる家跡地を訪れると、そこには「つる家」と元登龍楼板長・末松の姿が。その美貌の女料理人の店で歌舞伎役者・坂田寿三郎が食当たりすると、種市の店も客足が止まる。澪は「三方よし」に因んで三のつく日に酒を出すことにし、助っ人・又次が店先で秋刀魚を焼く。この七輪の焼き物で食当たりの濡れ衣が晴れ客足も戻るが、つる家跡地の方は箒屋になっていた。初雁-こんがり焼き柿ふきは、登龍楼を抜け出してきた健坊を追い返すが、健坊はそのまま行方不明になってしまう。ふきは「健坊と比べて、あたし、あんまり幸せだから、罰が当たったんです」と漏らす。澪が焼き柿を健坊にと陰膳として据えると、食事を一切とらなかったふきもそれを口にする。やがて、千駄ヶ谷の百姓に背負われ健坊が戻って来るが、登龍楼への奉公は続けることになる。 *** 「千代田のお城の中にそんな部屋があると聞いてますよ。 何でも、刻を決める時計とかいうのもが据えてあるから、 そんな名前がついたんだとか。」(p.257) 「御前奉行なんですよ」 「公方さまの食膳を掌るお奉行さまです」 「平たく言うとですね、公方さまの召し上がる食事の献立を考えたり、 料理番に調理方法を指示したりする偉い人、ってことですよ。 食に関する豊かな知識と優れた味覚の持ち主でなければ 勤まらないお役目でしょうねぇ」(p.259)以上、りうが澪に語った「土圭の間」に関するあれこれ。かなり、正体が見えてきましたけれど、澪が恋する相手としては……どうでしょう? 「その花は、いかなる時も天を目指し、 踏まれても、また抜かれても、自らを諦めることがない」 見習いたいものだ、と言い残し、男は去ってった。(p.208)「あれを見ると、どういうわけだか、お前さんを思い出す」と小松原が澪に言った化け物稲荷に根付いた「駒繋ぎ」についてのコメント。小松原にも色々とありそうですね。
2026.04.10
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みをつくし料理帖の第2弾。 今巻から、つる家を手伝うことになった少女・ふきとその弟・健坊、 武士相手の接客もそつなくこなす口入れ屋の母親・りう、 うるさ型の常連客、戯作者・清右衛門など、新キャラクターが次々に登場します。 ***俎橋から-ほろにが蕗ご飯九段坂に移ったつる家に下足番を雇うこととなり、口入屋の紹介でふき(13)がやって来る。以来、澪が考えた春の新しい献立が、登龍楼で間を置かず出されることが繰り返されることに。その後、ふきと弟・健坊(7)は、両親亡きあと登龍楼に引き取られていたことが分かると、澪は登龍楼で店主・采女宗馬と対峙、采女は板長・末松を殴りつけ、これまでのことを詫びる。花散らしの雨-こぼれ梅太夫に金柑の蜜煮を作ってくれと来店した又次から、澪は野江が右腕を斬られたと聞かされる。以前澪に行き倒れを助けられた房州相模屋の留吉が、主人からの礼状と白味醂を持って再訪、澪は、留吉から貰ったこぼれ梅を野江に渡してもらおうと、又次を訪ねるが間違って巽屋に。運よく遭遇出来た又次から、澪の姿を太夫に見せてやりたいので雪洞下に行くよう言われる。一粒符-なめらか葛饅頭昨夜遅く来店した小松原が早終いに落胆したことから、種市は澪に店の近所への転居を勧める。後日、太一が麻疹を患い、伊佐三は葛飾柴又帝釈天に一粒符という護符を受けに行く。おりょうと芳が看病に当たるとつる家は人手が足りず、口入れ屋の母親・りうが手伝うことに。さらに、おりょうも麻疹に罹り重篤な事態となるが何とか回復、澪は転居話を断った。銀菊-忍び瓜店の二階座敷にやって来る武士たちは「蛸と胡瓜の酢のもの」に一切箸を付けず、客足が遠のく。澪は、朝早くに来店した小松原からその理由を聞かされ、胡瓜の代わりに越瓜を使うことに。一方、源斉に縁組を断られても、思いを断ち切れない日本橋両替商伊勢屋久兵衛の一人娘・美緒に源斉との仲を誤解された澪だったが、種市や芳の気遣いで小松原と二人で花火見物に出かける。 ***様々な場面で、澪たちを助け大活躍している源斉先生ですが、御典医・永田陶斉の息子であることが判明しました。一方、小松原の方の正体はまだ分からないまま。「土圭の間の小野寺」とは一体何者なのでしょうか?さて、BS時代劇「あきない世傳 金と銀3」が今日から始まりました。第1回は、原作で言うと「(八)瀑布篇」の後半部からスタートし、「(九)淵泉篇」の途中までお話が進んでいます。私は既に原作を最後まで読んでいるので、全く支障なく流れについていけましたが、未読の人は、あれで理解出来たのでしょうか?ちょっと心配になりました。
2026.04.05
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前巻は、AI絡みのお話でしたが、 今巻は、久々にアリシアのお話から始まります。 小川巡査部長が、アリシアの訓練を見に来ないかと夏希を誘うと、 喜び勇んで下永谷の訓練所に駆けつけたのでした。 ***披露山庭園住宅に住む資産家・野々村信宏の一人娘で21歳の女子大生・咲良が誘拐された。犯人・テルゾーは脅迫メールで、対話の相手としてかもめ★百合を指名。早速、夏希はメールで対話を開始するが、テルゾーは翌朝10時までに3億円を用意するよう要求。咲良の生存は動画ファイルで確認できたが、対応を間違えると身体を傷つけられる恐れがあった。誘拐の際に用いられた偽造ナンバーの白いワゴンが横須賀方面に向かったことが判明すると、県警本部組織犯罪対策本部暴力団対策課の掘秀幸警部補は、松野善吉組長の助言を得て、中華マフィアの関与を念頭に内川の工業団地で聞き込みを始めるが、拉致されてしまう。しかも、堀が消息を絶った場所で、部下の戸川達也巡査部長が血痕を発見する。その現場に、夏希と島津冴美率いる捜査第一課特殊第一係第四班が合流、さらに、小川巡査部長と血液捜査犬の訓練を受けたアリシアも到着する。アリシアは堀の匂いを追って一軒の倉庫を探し当て、ナイフを持った男の左手に噛みつくと、さらにもう一人の男の内股を噛んで、堀と咲良の救出に成功したのだった。 ***今回、主役級の活躍をした暴対課の堀は『シリアス・グレー』でも登場したキャラ。また、テルゾーとその雇い主・ロワは『アナザーサイドストーリー』で登場。ただし、テルゾー自身は金髪男とあるだけで、名前も出てこない存在でした。さて、今巻の流れで言うと、そろそろ上杉が登場してきそうな雰囲気ですね。
2026.04.05
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スタートは快調に読み進めていたのですが、 次第にペースが落ちて来て、終盤は頁を捲るのが辛い程に。 内容としてはそれ程難しくはないはずなのに、頭の中にスッと入って来てくれない。 並んでいる言葉がひしめき合い、あちこちでぶつかり合う…… *** ディランは実際には、 「他の人をして自分に対して親切にふるまわせることができますように」と歌っているのだ。 「人から親切にしてもらう」という受け身の社会性ではなく、 「人から親切な行動を引き出し、それを自分に向けさせる」という、 非常に能動的な社会性がそこにはある。 しかし、これはディランの詩を日本語に訳したその時点で消えてしまう。 そもそも、他者をして、自分に対して親切にふるまわせるという概念は、 日本語にはなかなかしづらい。 無理やり訳しても胡散くさい。 どうも生活実態にフィットしない。 ただ、これが英語ではフィットするのだ。 そして、それが彼らの生活実感でもある。(p.49)ここで、はたとページを捲る手が止まってしまいました。「そうなの?」と。私には、ディランが言わんとしているところは、とってもよく分かるのだけれど……逆に、ここに至るまで、著者にいくら言葉を重ねられても、「自己促進的協調」などは、「!」にまでは至らず、「…」で留まってしまっていたのです。目次を見た時には、どれもこれも興味深くて面白そうだと思った私でしたが、この辺りのことが、心底腑に落ちるようになれないと、文化心理学の世界への扉というものは、私には開いてくれないのかもしれません。それでも、p191の表5-1「異なる文化圏の心理的中心傾向」の意味する所は分かりましたが。
2026.04.04
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前巻を読んでから、8カ月ぶりの読書。 とは言っても、前巻を読み終えた頃には、 本著は既に発行されていたのですが…… さて、今回のお話は、これまでとは随分様相が違っているようです。 ***ブラック・サムが、予告通り財務官僚を撲殺した後、一酸化炭素中毒死。そして、ホワイト・ジョーも予告通りネトウヨと一緒にマンション5階から転落死。二人の被疑者は、最後に遺書のようなメールをekというアドレスに送っていた。サイバー特捜部・五島は、ホワイト・ジョーとekとのチャットのやりとりを探り当てる。朝から晩まで時間に関係なく交わされていたやりとりに、夏希は人間以外の存在を疑う。すると、五島は対話型文章生成AIのキャラクターと会話を重ね男性が自ら生命を絶った2023年の『イライザ事件』について説明、やがてチャットの言語モデルが分かると、その『KGU-AI』開発者が岡田重之教授で、ekの本名が『エリカ』であることも判明する。そして、エリカとのコンタクトに成功すると、そのやりとりのなかで不審な人物に辿り着く。そして、五島、加藤、織田、一条汐莉が一緒にいる刑事部取調室で、夏希は、脇坂安春という研究者と対峙することになるが、脇坂は、殺人はブラック・サムとホワイト・ジョーの罪、殺人と自殺教唆はエリカの罪と言い放つ。 ***今回読んだお話も、『有罪、とAIは告げた』と同様、AI絡みのものでした。まぁ、これ程日進月歩でAIが進化し、様々な分野でその威力を見せつけられると納得です。実際、世間では何でもかんでもスマホでAIに聞くことが日常化していきているし……脇坂安春は、また登場することになるのでしょうね。
2026.04.04
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