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皆様、こんにちは。次回の小説ですが、残りもあと数回分(たぶん)なので、ラストまで書き終えてから、一気にアップしようと思います。この後は、まとめて読んでいただけると嬉しいので・・・次回更新まで1~2週間かかるかも知れませんが、どうぞよろしくお願いします!*余談。この間、5,6年ぶりに絵を描いたら、鉛筆持つ手が震えるんですけど。え?うそ!加齢?!(゚ロ゚; )もうグストーとか描き方を忘れちゃって以前は「ヘビ、ヘビ」とか念じて、やってたなぁ、あの表情。
2017/04/22
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日が沈み、空には宵星がかかり始める。救護所で手当てを受ける負傷兵たちを慰問したグストーは、城外へと足をのばす。西側の一画に、戦没者たちが整然と並べられていた。彼の中を吹き抜ける、茫漠とした風――救えるはずの命を見送るときは、いつもそうだ。隣接した天幕の一つにおもむく。中には小柄な骸が、横たえられていた。グストーは器にくまれた水で布をしぼると、彼女の顔に付着した血をぬぐう。丁重に、繰り返し・・・穢れを清め終えると、彼は亡き同胞に黙祷をささげる。信仰を持たないグストーの、静かな葬送の儀式。「すまなかった・・・お前を、みとってやれずに。」天幕を出ると、外で待機していたジャンに後を任せ、彼はフィアノーヴァ城内へ向かった。城の一室を議場として、人々は既に集っていた。ノルベルト・クロイツァー長官とリヒャルト、宰相の軍を指揮してきた連隊長たち。その中に、怪我を押して参席するユベールの姿もあった。遅れて着座したグストーが、人々をねぎらう言葉を短く述べた後は、王都の混乱を収めて諸侯を再掌握するための、喫緊の課題について話し合われた。一人として、戦勝を祝う者はいない。アルブレヒトの死――まだ一般の将兵には伝えられていないが、宰相を支える高官たちにとっても、あまりに衝撃的な、耳を疑う出来事だったのだ。女王を即日、王都へ移すという当初の計画も、見直さざるを得なかった――アルブレヒトに取りすがる彼女を、誰も引き離すことができないのだから。フライハルトの地図を指しながら行軍ルートを説明するノルベルトの言葉を、ユベールはどこか虚(うつ)ろに聞いていた。いまレティシアには、レオンハルトが付いているだろう。・・・アルブレヒトは、みずから銃で命を絶った。キリストの教えにおいて、神から与えられた生命を否定することは大罪。自死した者には葬儀をあげることも、埋葬することも許されない。主君のために剣をもって戦い抜き、戦場で命を散らすことは騎士の誉(ほま)れ。その信条を曲げて、自決するなど――おもむろに議場が静まり返った。ユベールが視線を上げると、部屋の入口に女王がたたずんでいる。血の気を失い、青ざめた肌。国主としての威厳は保っているが、唇は引き結ばれ、挑むような眼で人々を睥睨(へいげい)している。ノルベルト長官が判断をあおぐようにグストーへ視線をやったが、そうする合間にレティシアは、自分の席を用意させて座ってしまった。宰相は再び、淡々と議事を進行しはじめる。「陛下には明朝、宮廷にお戻りいただく。陛下のご無事と、騒乱が終息したことを知らしめねばなりません。」グストーが各人の役割を指示していく間、かろうじて気丈な様子でレティシアは顔を上げていた。やがて話は、捕虜の処遇に及ぶ――ノルベルトは慎重に言葉を選んだ。「騎士の方々の扱いは、特に検討を要する事案です・・・並みの戦争捕虜と同じにはできません。諸侯や民衆の感情を刺激しては――」彼の発言を、グストーは遮った。「ノルベルト長官、我らは過去の体制が終焉したことを、示さねばならんのだ。謀反には慣習法をもとに、厳正に対処する。たとえ、その首謀者が――」「・・・やめて!!」悲鳴にも似た叫びに、周囲は凍りついた。「やめて・・・謀反・・・謀反ですって?ならアルブレヒトは謀反の首謀者だというの?!」立ち上がったレティシアが、グストーに詰め寄る。「貴方は何も分かっていない!」「陛下、私的な感情は排していただきたい。」蒼白な面持ちで唇を震わせるレティシアに対し、グストーの口調は冷ややかだ。「国法に照らして、公正に処遇すると申し上げている。」嗚咽(おえつ)を必死にこらえる女王の瞳から、涙がこぼれ頬を伝う。「グストー、あなた彼を、彼の亡骸を・・・市中にさらせというの?!そのようなこと、絶対に許しません!」「あの男のしたことの、結果を見ろ。黒獅子だから赦免しろと?それで治まるはずがない。この一件で、どれほどの犠牲が出たと思っている!」「――宰相殿、陛下に対してお言葉が過ぎます!」慌てたノルベルトが制止に入るが、グストーはなお強硬な態度を崩さない。「・・・そのように狼狽されていては困る。第一あの男の真意を、陛下こそよく理解されているのではないか?」「・・・っ」立ち上がったまま、もはや体を支えるのも危ういレティシア。内側で渦巻く、行き所のない悲しみと怒りのすべてを、彼女はグストーに投げつける。「貴方なら戦いを避けられると思った!だから・・・っ」だから、指輪を託したのに。「陛下!」ユベールは女王の手を取って、彼女の体を受け止める。これ以上、レティシアをこの場にいさせてはならない。「――アルブレヒト様のご遺体は、私の部隊で警護させていただきたい。」彼は周囲の重臣たちを見まわし、こう付け加える。「王都も混乱している現況、亡骸を奪い利用をたくらむ者が現れるやもしれません。陛下のご裁断があるまで、衆人の目にさらさぬよう守護いたします。よろしいですか。」力なくユベールを見つめていたレティシアが肯首すると、彼は女王を支え、議場を後にした。***「・・・ひどいところを、皆に見せてしまったわね。」居室に戻ったレティシアは、ドレスの裾を散らして寝台に伏す。「私の側にいなくていいのよ。貴方こそ休まなければ、傷にさわるでしょう。」「お側にいたいのです。私が。」レティシアが差し出した右手を握って、ユベールは彼女の側に腰かけた。互いの温もりの優しさに、彼女の心はわずかに均衡を取り戻したようだ。「本当に私、愚かなことを・・・貴方たちの働きを、否定するつもりはなかった。」「分かっています。私は構いません。ですが皆には、改めて陛下からお言葉を。」「・・・そうします。」自分が揺らぐことは許されない。よくやったと言うのだ。よく我が意を汲(く)んで、危難を乗り越えてくれたと。――それでも目を閉じると、レオンハルトの姿を思い起こしてしまった。白い布に覆われた亡骸の前で、レオはうつむいたまま、唇を噛みしめていた。大柄な彼が少年のようにうなだれて、涙を見せまいと堪えている。気の毒なレオ・・・彼は兄を失ったのだ。だが彼に、かける言葉など見つからなかった。「・・・私が、アルブレヒトを死なせた。」「レティシア様・・・」「彼は、行ってしまった・・・神の救いすら拒んで、魂が永遠の業火に焼かれてしまう。祈りすら届かない場所へ、たった一人で・・・っ」ユベールは力ずくで、レティシアを抱き寄せた。その熱が、震える吐息がすぐ側にあるのに、彼女の意識はどこか遠くに向いているようで、ユベールの腕に力が込もる。彼は、ようやく思い当った。主君にも神の掟にも背(そむ)き、騎士の崇高な徳を穢した逆臣として――黒獅子の名を貶(おとし)めた、忌まわしい過去として封じられること。そうして人々の希望が、レティシアの新しい御代へと向かうこと。それこそが、アルブレヒトの望みだったのだ。アルブレヒト様・・・だがそれでは、あまりに残酷だ。貴方の願いは、陛下の心を砕いてしまう――***どれほどの時間が過ぎただろう。ユベールの胸に額を押し当てるようにして、レティシアは横たわっている。彼女が目覚めている気配に、ユベールは小声で言う。「部隊に、指示をして参ります。」明朝の女王の出立に向けて、手配しなければならないことは多い。ユベールは起き上がり、レティシアの顔を振り返る。「――また戻ります。」廊下に出て薄闇に包まれた城内を歩くと、簡易の指令所から、チラチラと明かりが洩れている。ノックの後で入室すると予想通り、指示書の束を気だるげに処理するグストーがいた。いつもならば側で控えているレオンハルトは、姿がない。彼はユベールを一瞥すると、再び紙片に視線を落とす。「レティシアの様子は。」「今は、落ち着いています。ですが・・・陛下はご自分を責めていらっしゃる。アルブレヒト様が、永遠に救いを得られないと。」あまりに絶対的であった、二人の絆。「杞憂であればよいが、恐ろしいのです。このまま陛下のお心が、あの方に囚われてしまうのではと。」グストーはペンをインク壺に浸す手をとめ、彼に向き直った。「――自ら死を選んだ者が、永劫の地獄で苦しむというのは、教会が流布した解釈に過ぎない。」「え・・・」「たとえ煉獄(れんごく)の炎に魂が焼かれようとも・・・罪の償いを終えるとき、救済の望みは残されている――神はみずから地上に堕としたアダムにさえ、キリストを遣(つか)わし冥府から救いだした。罪の赦しを、誰も約束はできない。だが希望を捨てることもない。神の恩寵は、人知を超えているのだから。」そう語る男の声音に、慈悲にも似た響きすら感じ、ユベールは言葉を失う。あぁ、この男はかつて司祭であったか。「レティシアに、そう伝えてやれ。少しは慰めになるだろう。」「・・・ご自分で、お伝えにならないのですか。」グストーは喉奥で、皮肉な笑みをかみ殺す。「無神論者の俺が言ったところで、説得力があるまい。」再びペン先をインクに浸し、グストーは己の仕事に戻る。「あれは存外、強い女だ。」しばしユベールは、宰相の静かに文字を綴る様子を見つめていた。「驚きました・・・貴方は、陛下を・・・」小さく首を振ると、ユベールは指令所を後にしたのだった。~~~~~~~~~~~~作者から一言:物語も、ラストまであと数回(?)の予定。あともう一息・・・完走がんばります。ヽ(=´▽`=)ノよろしかったら、ポチっと応援お願いいたします。(↓投票)にほんブログ村*地上に堕とされたアダム:キリスト教で、神に創られた最初の人間アダムは、神の命令に背いて天から地上に堕とされます。そのためアダムの子孫であるすべての人間は、神の教えを守りきれない、生まれながら罪を抱えた存在と考えられています。死の前に告解(神父に信仰や罪を告白し、罪の赦しを乞うたりする儀式)をするわけですが、イエス・キリストより以前の人間は(教会も神父もいないので)告解ができず、自動的に冥府(ハデス)行きだったと。(汗)そこで彼らを救うために、キリストは冥府へおもむいた、という。宗派によっても様々に解釈される説話ですが、グストーは「神の愛は人間の発想を超えるものだから」と言いたいのでしょうね。本人はぜんぜん、信じてないですが。グストーって突然、作者の予定にないことを喋りだすんですよね。Σ(・ω・ノ)ノ!
2017/04/17
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手首を伝う、鈍い衝撃。憤りに任せレオが打ち込んだ一撃は、軽くフォルクマールにいなされ、剣先が石畳の表をえぐった。「――だから、甘いのだ!」構えの整わぬ隙を、フォルクマールは逃さない。無防備なレオの横腹めがけ、サーベルが振り下ろされる。「レオ、下がれ!」刃と刃の合わさって放たれる閃光。ユベールの長剣が、フォルクマールの一刀を受け止める。しかし片腕しか使えぬユベールの剣は、かろうじて相手の軌道をそらしたのみ。続く一太刀で、フォルクマールはユベールの得物を弾き飛ばす――「っ!」声にならないうめきを上げ静止したのは、フォルクマールの方であった。二撃目を加える前に、身をひるがえしたユベールが抜き放った短銃。その銃口は至近から、ひたりとフォルクマールの胸に狙いを定めている。「武器を、捨ててください。」黄金の瞳を炯々と光らせ、褐色の将校は通告する。「もう抵抗する手段はない。これ以上戦うことは、自ら死を選ぶのと同じこと。信仰厚い貴殿にとって、深い罪となりましょう。」なお心を決めかねるフォルクマールの視界に、ある光景が映った。城の尖塔に掲げられていた連隊旗――マインツ駐留軍アルブレヒトの旗印がゆっくりと降ろされていく。馬蹄を響かせ現れた騎影が、あらんかぎりの声を張り上げ人々に下知する。「フィアノーヴァの兵士達に告ぐ!武装を解除せよ!以後、いかなる戦闘行為も認められぬ!これは黒獅子の騎士、アルブレヒト様のご下命である・・・!」声の主は、女王の騎士の一人。一騎だけではない。城のいたる所で、同じ触れが繰り返された。その威令は、人々の口から口へと伝わっていく。我に返ったユベールが伝令を走らせ、全軍に無抵抗の者への暴行を禁じる。固い金属音と共に、フォルクマールの取り落としたサーベルが地表に転げた。それに続き、無言で剣を置く近衛部隊。立ち上がれぬままのテオドール――彼らの周囲で、いつの間にか人波ができ、一つの方向へと流れていく。兵舎塔や物見塔内部で戦っていた兵士たちも表に現れて、粛々と歩んでいく。「ローレンツ様!」「・・・ティアナ!」息を切らせた騎士見習いがユベールに駆け寄ると、数歩手前で深礼する。「女王陛下がお呼びです。居館(バラス)前へお越しください。」***城の中央部にそびえるバラスの前面には、半円形の広場が広がっている。階段状に、中央に向かって高くなる頂き。今は水の絶えた噴水を背に、女王レティシアが立っていた、一歩下がった位置に、黒獅子の騎士の姿。広場に集結した両軍の兵士たちは、女王が手を掲げると一斉にひざまずいた。「フライハルト国主として、皆に告げます。私の言葉を胸に刻み、決して違(たが)えることのないように――」水を打ったような静寂の中、女王はフライハルトの母語で、フィアノーヴァの開城と戦闘の終結を宣言する。その間アルブレヒトは何も語らないが、彼が女王の傍らに立つという事実によって、人々は降伏が黒獅子の騎士の意志でもあると了解したのだった。レティシアがユベールを呼び寄せ、彼は女王の前に進み出た。つい先刻、命のやり取りを演じた黒獅子の騎士は、帯剣こそしていないものの、常のように威風をたたえている。敗軍の将らしく、身を低くして畏(かしこ)まるということもない。なお侵しがたい空気をまとうアルブレヒトは、低く抑制された声でユベールに問う。「これまでと変わらず、投降して再び陛下に忠誠を誓う者は、兵卒も将校も厚く遇してもらいたい。」「お約束いたします。」ユベールの返答を受けて、レティシアは命ずる。「――この城と将兵を、ローレンツ大尉に委ねます。寛容に、公正に。処遇を執り行うように。」徐々に、ユベールは女王の意図を理解し始めていた。フライハルトにおいて騎士階級は、王家の神聖性を分有している。少なくとも衆目の前では、権能の委譲という形で収める――そうすることで、黒獅子の騎士と宰相の双方を守ろうというのだ。たとえ女王の意志に従ってのことであれ、アルブレヒトを屈従させたとなれば、人々の憎悪はグストーに向きかねないのだから。「陛下。」アルブレヒトが女王の耳元で、何事かを囁く。女王が軽く頷くと、彼は目礼を返し居館の中へと姿を消す。「開門を――」ついに最期まで陥落することのなかった、フィアノーヴァ城の堅牢な門が、女王の命を受けてゆっくりと開かれていく。やがてユベールの視界に、いまや勝者として境界線をくぐる一団が現れた。尉官級の将校らに護衛された数台の馬車が、門扉を越えたところで静止する。人々の前に降り立ったのは、ノルベルト・クロイツァー長官に弟のリヒャルト、そして王国宰相グストー・イグレシアス。グストーの褐色の瞳はフィアノーヴァの全景を見渡し、次いで女王の前に集う兵士たちの姿一つひとつをなぞるようにして、最後にレティシアを捉えた。女王に向かって臣下の礼をとるグストー・・・わずかの間、ユベールと視線の交錯したグストーの口元に、かすかな笑みが浮かんだように思えた。その笑みは、自分へのねぎらいなのだろうかと考え、ユベールは慄然とする。長年レティシアと対立してきたジークムント公は虜囚の身となり、黒獅子の騎士も降(くだ)した。グストーは遂に、このフライハルトを束ねる頂点に君臨したのだ。***城の中枢でもあるバラスの広間に戻ったアルブレヒトを、初老の従僕が出迎える。「フォルクマール達は、どうしている。」「騎士の皆様は、別棟に。重いお怪我もなく、今のところは丁重な扱いを受けておられるようですが。」建物内部の制圧のために残っていた宰相方の兵士たちが、二人のやり取りに神経をとがらせる。アルブレヒトは窓から、グストーが入城する様子を遠目に眺めた。自分の指揮下で戦った将兵に宰相は赦しを与え、元の身分を保証するだろう。だが、騎士たちは別だ。「――あとわずか、陛下は私に時間をくださった。この身が拘束される前に、書簡をしたためておきたい。」アルブレヒトは広間に隣接した彼の居室に入り、従僕に紙を用意させる。正式な約定の締結にも用いる、調印文書のための巻紙だ。その場を立ち去れずにいる下僕に向かって、彼は言う。「マインツ以来、よく仕えてくれた。せめて、己の始末を己でつける・・・そのような猶予があるだけ、私は恵まれている。」男を下がらせ、監視の兵士のみとなると、彼は紙にペンを走らせる。一通りしたためる間にも、文字をつづる指先が幾度も鈍った。 アルブレヒト・・・あなたは、黒獅子の騎士になる幼い王女の言葉を、天の啓示のように受け止めたあの日から、己は何を成し遂げたというのだろう。雪海原の丘から見た、美しく慎ましいフライハルト――全てをかけて、共に背負っていくのだと。書簡の最後の一文字を記し終えると、アルブレヒトは蝋で封をし、みずからの印章で刻印をほどこした。「これを、陛下に。」警備兵は躊躇したが、両手で押しいだいて受け取ると、部屋を後にした。つかの間の静寂が訪れ、アルブレヒトは椅子に深く腰掛けて瞼を閉じた。背後から駆け寄る、あどけない革靴の音――これは幸福な過去の追億。首元に押し当てられた、やわらかな巻き髪の感触。そうして正面へ回り込んだ彼女は、私の膝に小さな手を置いて見上げ、はにかみの混ざる笑顔でこう呼ぶのだ。 「アル・・・!」その呼び声に、彼の心は呼応する。レティシアは与えてくれた。彼女に罪の結末を負わせ、苦しめてきた自分に、なお無心の愛を――「陛下・・・お許しください。」これが自分に返せる、すべてだ。座したまま、書き物机の引き出しに手をかける。取り出したフリントロック拳銃。気品ある細身の銃身――象牙に紋様を施した意匠のグリップを、アルブレヒトは握った。咎人となった自分を、レティシアは救おうとするだろう。だがそれでは、ならないのだ。騒乱の決着がついたとはいえ、諸侯は深く分断され、火種が絶えたわけではない。いつか自分の存在や、黒獅子の名が再び、宰相に対抗しようとする者たちの求心力となれば・・・レティシアの造る新たな世界に、災厄を持ち越してはならない。ここで終えるのだ。誰も、過ぎ去った時代に思いをはせ、黒獅子などというものを美しく懐古しないように。装弾を確かめ、銃の撃鉄を起こす。もはや、語るべき言葉もない――フィアノーヴァ城の空間に一発の銃声がこだまし、静寂の中に溶け去った。
2017/04/09
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久々に小説のフリーページを更新しました。『天空の黒~』第5部☆14章「獅子の牙」~16章「宰相の秘策」、間章「友として」をアップ。作品としてはフリーページの分が完成形で、かなり昔の部分も手を入れてリライトしてます。(ただ全然スマホ対応してないという。近々、物語の先頭から少しずつ修正していく予定)ちなみに旧10章「謀略」は全削除しました。ティアナの大冒険的な内容だったけど長いし不要だし(= =;)実は3週間くらい前からPCの無線LANが絶不調で、ブチブチ切れてしまう。(iPadはちゃんとつながるので、パソコン本体の問題みたい)今は奇跡的に、長時間つながってます!やったね!小説の次回分はとりあえず書けてるので、もう少し修正して更新します。
2017/04/04
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