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2010年04月29日
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懐の深さを示す1989年作品 イギリス出身のジョー・ジャクソン(Joe Jackson)という人は、厄介なアーティストだ。アルバム毎に作風が違うどころか、ロックだったりクラシックだったりジャンルすら違うこともある。1979年にデビューした時の作品(『ルック・シャープ』)は、確かにパンチの利いた(かつ皮肉も利いた)ロックサウンドと言っていいものだったが、まもなくいろんな音楽に手を伸ばし始める。その結果分かってきたのは、ジョー・ジャクソンとはある種の天才であるということだった。彼は、まるで吸水スポンジのように、いろんなジャンルの要素を吸い込み、取り込んでいって、見事に自分の作品に仕上げてしまう。ロックだけでなく、レゲエにジャイヴ、R&Bにジャズ、ファンクにラテン、クラシック…、結果、アルバム毎にそれぞれ違った作風の作品が残されていく。その理由から、結局のところ、彼の代表作はこれだという明確なアルバムがなく、したがって一般受けしにくいという損な面もある。 筆者は彼の作品をすべて聴いたというわけではないが、わりとコンスタントに追っかけてきた。時折、突然に聴きたくなるというのが、彼のアルバムの中には多い。本作『ブレイズ・オブ・グローリー(Blaze of Glory)』もそうしたうちの一枚である。リリースは1989年、デビューからちょうど10年にして11作目。デビュー以来在籍したA&Mレーベルでの最後のアルバムに当たる。シングルカットされた8.「ナインティーン・フォエヴァー」は多少売れたものの、アルバム自体は大したセールスを挙げることはなかった。 正直、このアルバムは長い。収録時間は60分足らず(それでも当時にしてはアルバムとしては長い方)なのだが、どうも体感時間が長い。その理由は、ストーリー性があり、起伏に富んだ内容にある。全体としては、アルバムが制作された1980年代末からみた過去の郷愁とでもいうべきテーマで様々な楽曲がストーリーを紡いでいく。1950年代をテーマにした1.「トゥモローズ・ワールド」に始まり、3.「ダウン・トゥ・ロンドン」では、成功を夢見てロンドンに向かう若者が描写される。表題曲の6.「ブレイズ・オブ・グローリー」は若くして死んだロック・ミュージシャンを取り上げたもの。上記の8.「ナインティーン・フォエヴァー」では、“僕は絶対に35歳にならない”と“永遠の19歳”を歌っているが、ジョー・ジャクソン自身がまさしく当時34歳で、自身のことを詞にしていると思われる。冷戦体制を風刺した10.「イーヴィル・エムパイアー」、現代社会に人間のあたたかみを求めようとする内容の12.「ザ・ヒューマン・タッチ」、いずれも制作時のジョー・ジャクソンの心情に根ざしたやや重めのテーマで、いわば半自叙伝的な内容で統一されている。 長く感じるもう一つの理由は、これら楽曲が途切れなく演奏されているという点である。言い換えれば、上記の各曲の様々なストーリーが独立した1曲ずつの形で提示されているというよりは、連続したアンソロジーのようになっている点である。音的に各曲が切れ目なく連続して流れてくる。そのため、ぼうっと聴いているといつの間にか次の曲に移っている。ジョー・ジャクソン自身、そういう風に聴いてほしかったのだろうが、コンサートでの再現は難しいわ、ラジオのオンエアに合わないわで、セールスが伸びなかったのは当然かもしれない。アルバムとしては、全米では61位、全英でも36位止まりの結果だった。 とはいえ、筆者にとってはある日突然に聴きたくなるアルバムである。この長い1枚の中にたくさんのストーリーが詰め込まれているのと同時に、凝った音作りが凝縮されている。ロック/ポップで一般的な楽器類はもちろんのこと、各種サックス(アルト、テナー、バリトン)やトロンボーンといった管楽器、コンガにシタール、ヴァイオリンにチェロ、アコースティックベースと幅広い音の演出には総勢20名ほどのミュージシャンが参加している。上述のように、長くて重くてどちらかというと疲れるアルバムだが、聴けば聴くほど新しい発見があり、その意味ではただのロック(あるいはポップ)ミュージシャンではない、ジョー・ジャクソンの懐の深さが浮き彫りになる、“忘れ去られた名作”と言えるように思う。[収録曲]1. Tomorrow's World2. Me And You (Against The World)3. Down To London4. Sentimental Thing5. Acropolis Now6. Blaze of Glory7. Rant And Rave8. Nineteen Forever9. The Best I Can Do10. Evil Empire11. Discipline12. The Human Touch1989年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月28日
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原作者が凄いのか、解釈者が凄いのか… 解けない疑問 ジョン・ハモンド・Jr.(John Hammond Jr., 正確にはジョン・ポール・ハモンドJohn Paul Hammond)は、名プロデューサーのジョン・ハモンド(ジェイムズ・ヘンリー・ハモンド・Jr.、1910年生まれ1987年没)の息子で、1942年生まれのブルース/ロック系の白人ミュージシャン(シンガーおよびギタリスト)。2001年リリースの本作は、ジョン・ハモンドとだけ名乗っての名義でリリースされているが、この息子に当たる方の人物の作品である。 正直なところ、本作を繰り返し聴いていながら、筆者はいまだに悩んでいる、というか聴けば聴くほど疑問が膨らんでいくという感じなのだ。表題に挙げたように、原作者(トム・ウェイツ)が素晴らしいのか、それとも、解釈者(つまりは歌い手のジョン・ハモンド・Jr.)が素晴らしいのか、一体どちらなのかという問いが残り、いつまでたっても自分の中で解決しなのである。アルバムの企画自体は、旧知のミュージシャン(トム・ウェイツ)が全面バックアップし、楽曲を提供、さらにはギター、コーラス、プロデュースで参加したというもの。結果、トラディショナル曲の1曲(13 .)を除き、すべてトム・ウェイツのカヴァー曲という内容である。このパターンのカヴァー作はいかにも他にもありそうな企画である。本人参加ということから、曲のアレンジに関しても、曲が劇的に変化するということも基本的にはない。けれども、このおもわず引き込まれる演奏・歌唱は何なのだろうか。何度聴いても上の問いの答えはまだ見つかっていない。 トム・ウェイツが優れた作曲者であることは間違いがない。ブルース・スプリングスティーンが歌った「ジャージー・ガール」(B・スプリングスティーン『ザ・ライヴ1975-85』に所収)や、ロッド・スチュワートのヒット曲「ダウンタウン・トレイン」、あるいは、イーグルスの「懐かしき'55年」といった、別のアーティストが取り上げたものを聴けば、一聴してまったく違う雰囲気の取り上げられ方をしてもやっぱり名曲を作っているのだということが実感できる。 しからば、本盤が筆者の琴線に触れるのは、歌い手であるジョン・ハモンド・Jr.のよさということになるのであろうか。いや、これを上述のB・スプリングスティーンやロッド・スチュワートがやっても、やはり筆者のフェイヴァリットとなっていたのではないかという気もする。とまあ、ここまで書いてきてようやく気がついたのだが、ジョン・ハモンド・Jr.自身の他の作品をしっかりと聴いていないから疑問が解けないのではないだろうか。そのうちに機会を見てジョン・ハモンド・Jr.の諸作に落ち着いて親しむ機会を作ってみたい。そうすれば、いつかきっとこの疑問も解けるにちがいない。[収録曲]1. 2:192. Heartattack and Vine3. Clap Hands4. ’Til the Money Runs Out5. 16 Shells from a Thirty-Ought Six6. Buzz Fledderjohn7. Get Behind the Mule8. Shore Leave9. Fannin Street10. Jockey Full of Bourbon11. Big Black Mariah12. Murder in the Red Barn13. I Know I’ve Been Changed2001年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月26日
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メキシカン・ロック誕生期の古典曲 EL TRI(エル・トリ)は、40年以上の活動歴を持つメキシコのロック・バンドで、アレックス・ローラ(アレハンドロ・ローラ)をリーダーとするメキシカン・ロックの草分け的存在である。かつて同国でロックがアンダーグラウンドでしか存在していなかった時代(そもそもメキシコでは英米アーティストのアリーナ・コンサートが解禁されたのすら、ほんの十数年前のことに過ぎない)に、スリー・ソウルズ・イン・マイ・マインド(Three Souls In My Mind)という3ピース・バンドで活動を開始していた。1980年代に入り、ラテン系諸国で“ロック・エン・トゥ・イディオマ”(君の言語のロック、つまりはスペイン語ロック)というムーヴメントが起こると、その前からアンダーグラウンドな活動をしていたロック・アーティストたちはメジャー・レーベルからレコードを出し始める。そんな時期にメジャー・デビューしたバンドの一つが、このEL TRIである。 この「哀しき愛の歌(トリステ・カンシオン)」は1987年のアルバム『シンプレメンテ(Simplemente)』に収録されたものである。バンドを代表する曲として、今日まで彼らのコンサートのハイライト(聴衆の大合唱)を飾り、後に続く多くのロック/ポップス系アーティストに何度もカヴァーされている超有名曲である。詞の内容は、男と女の物語であるが、振った振られた云々といったありがちな恋物語ではなく、やや芸術チック(?)な詞である。おそらくはそこがこの曲を古典曲として定着させるのに一役買ったのかも知れない。歌詞の一部を少し引用すると次のような感じである。「彼は神のようで、彼女は聖母のようだ 神様は二人に罪を犯すことを教えた そうして永遠の中で 二人の魂は一つになり この哀しき愛の歌が生まれた」 音的には、スタンダードなロック調の曲で、ブルースハープ(ハーモニカ)を大幅にフィーチャーしている。ハープの使用はこのバンドの大きな特徴の一つで、現在もメンバーの中に専属のハーピストを抱えている。演奏自体に、特段“ラテン的”要素というものは見られない。むしろ、70年代までの米国のブルースとロックを消化し、ブルース的要素を残した(あるいはそれに根ざした)ロック・サウンドそのものを披露している。つまるところ、1990年代以降のバンドには、ラテン的やメキシコ的という要素を際立たせたバンドが増えてくるのだが、それに対して、EL TRIは、どちらかといえば正統派なロック・チューンを主に提供し続けている。1980年代にこの曲を含めいくつかの代表曲を送り込むことでラテン・ロック界のメジャーに進出して名声を確立したEL TRIは、その後、1990年代、2000年代とメキシコのロック・シーンの王者として君臨し続ける。そして、現在もばりばりの現役大御所バンドとしてロックし続けている。その原点の一つがこの曲と言えるだろう。[収録アルバム]EL TRI / Simplemente (1987年) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月24日
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セッションから生まれたスーパー職人バンドの到達点 TOTOはジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ルカサーらセッション・ミュージシャンとして活動していたミュージシャンたちが1977年に結成したバンドで、直接的にはボズ・スキャッグスの『シルク・ディグリーズ』のスタジオ・ミュージシャンに由来する。メンバーチェンジを経て2008年まで活動していた。 30年ほどの活動期間を持つ彼らの諸作に統一感があるかというと、少し返答に戸惑う。バンドの歴史とともに、メンバーは入れ替わり、それがバンドの方向性にも影響を及ぼしていくし、かと思えば、初期には『ハイドラ』のようなコンセプト・アルバムもあったりする。その点では、節操がない“産業ロック”バンドの典型例として批判されても仕方ないのかもしれないが、1980年代にバラード系のヒット曲を快調に飛ばしながらたどり着いた、一つの到達点がこのアルバムであると個人的には考えている。 タイトルが示すように、本作『ザ・セブンス・ワン』はTOTOにとって7枚のアルバムである。副題の“第7の剣”というのは、「ロザーナ」や「アフリカ」といったヒット曲を含むアルバム『聖なる剣(原題:TOTO IV)』(1982年)にちなんだというか、二番煎じで付けられた邦題と思われる。 セールスやシングル・ヒットを考慮すると、本盤を彼らの代表作と呼ぶのには抵抗感がある人もいると思う。けれども、ここに詰め込まれた楽曲群には、全体の塊として、「99」から「アフリカ」、「アイル・ビー・オーバー・ユー」などのヒットを経て積み重ねられてきた彼らの方向性が集約されている。“到達点”という言い方をしたのは、この意味においてである。個人的な好みという点では他にも好きなアルバムがあるのだけれど、TOTOというバンドの歴史を考えた時、本作は特にバランスの取れた好作だと思う。 では、そうした彼らの方向性とはどんなものだったのか。筆者は、次の二つの特徴が際立っていると感じる。一つは、ソリッドでコアなロックサウンドにたいする“こだわりのなさ”である。つまりはキャッチーで、軽くてもよい、さらには臆面なく甘いAOR系のバラードを披露できるという点である。恥ずかしげもなくこうした音を奏でる部分が、上で述べたように“産業ロック”云々と批判される部分でもあるのだが、思い切ってそれができることが(決して悪い意味でなく)肯定的な意味で、彼らの特徴とも言えるだろう。 もう一つの特徴は、スティーヴ・ルカサーのギターが出しゃばっていないこと。後にルカサーは、バンドの中心メンバーだったジェフ・ポーカロの死(1992年)後、TOTOの中で中心的役割を果たすようになり、ついにはメンバーチェンジを経る中でバンドのリード・ヴォーカルまでとってしまう。けれども、本盤を聴く限りでは、音作りには出しゃばるけれども、演奏では出しゃばらないというスタンスがはっきりしている。そしてこの形こそ、80年代のヒット連発期を駆け抜けたTOTOの大きな特徴の一つになっていると言えるそうな気がする。TOTOは元来、デヴィッド・ペイチとジェフ・ポーカロのバンドだとよく言われるが、“出しゃばらない”ルカサーのプレイが彼らの音楽に重要な効果を与えていた点も大事だったように思う。 ちなみに本作時点でのTOTOのヴォーカルは、TOTO史上最高のヴォーカリストという声もあるジョセフ・ウィリアムス(彼は本作『ザ・セブンス・ワン』とその前作『ファーレンハイト』のみ在籍)。加えて、ジョン・アンダーソン(イエス)が4.のコーラスで参加している。[収録曲]1. Pamela2. You Got Me3. Anna4. Stop Loving You5. Mushanga6. Stay Away7. Straight for the Heart8. Only the Children9. A Thousand Years10. These Chains11. Home of the Brave12. The Seventh One *日本盤のみ1988年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年04月21日
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2010年04月18日
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往年のマイルスのメンバー+若きW・マルサリスの完成されたプレイ ライブ・アンダー・ザ・スカイ(1977~92年に開催されていた野外ジャズ・フェスティヴァル)で来日したメンバーが、東京のCBSソニー・スタジオで録音した演奏を収録したものが、1982年リリースの本作『カルテット(Quartet)』である。リーダーとしての名義は、ピアニストのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)であるが、そのメンバーの内訳は、ロン・カーター(ベース)にトニー・ウィリアムス(ドラム)、加えてウィントン・マルサリス(トランペット)という4人組で、それゆえ、アルバム名も『カルテット』となっている。 これら4名のメンバーのうち、W・マルサリスを除く3名は長らく様々な作品で共演してきた顔ぶれである。これら3名のリズムセクションは1960年代のマイルス・デイヴィスのグループの屋台骨であり、なおかつハンコックのリーダー作でもその腕前を披露している(例えば、マイルス・デイヴィス『フォア&モア』、ハービー・ハンコック『処女航海』)。同じメンバーでライブをこなしているとはいえ、このメンバーに加わって演奏するマルサリスはさぞかし緊張したことだろう。何せこの時点でマルサリスはまだ20歳を迎える少し前だ。おまけに、かつてこれらのメンバーを率いた同じトランペットの大先輩マイルスが演奏したナンバーがいくつも含まれている。19歳でこのシチュエーションは、普通の神経では緊張を通り越しそうな気がする。 ところが演奏を聴いてさらに驚かされる。マルサリスが“完成品”と呼んでいい出来なのである。何より堂々とプレイしている。上記のシチュエーションからすれば、それだけでも大したものである。けれども、それに加えて、マルサリスが“出したい音を出せている”ことが何よりも素晴らしい。優れた演奏者は、頭の中にある(もしくは浮かんでくる)音をその通りに再現する。ここでのマルサリスの演奏はまさにそれだと思う。無論、さらに革新的なミュージシャンは、そうした“頭の中の音”を表現すべく様々な試行錯誤を繰り返す。ジャズ界で言えばマイルス・デイヴィス、ロック界で言えばジミ・ヘンドリクスがその代表例である。しかし、こうした演奏者の大前提にあるのは、既定の枠組みの中で自在に自分の音を表現できるということであって、その上で初めて新たな音や表現への探求が生まれるわけである。 そうした観点からしても、マルサリスが彼の楽器を自由自在に操り、おそらくはイメージした通りの演奏を繰り広げていること自体が素晴らしい。2.「ラウンド・ミッドナイト」をはじめ、マイルス・デイヴィスを意識したナンバーが含まれている(そして他のメンバーは上記のとおりマイルス・クインテットのメンバーだった)のも興味深い。奇抜な演奏や極端に枠をはみ出たプレイではないが、ウィントンの技巧と表現力の確かさが存分に発揮された1枚だと思う。 ウィントン・マルサリスは、特に近年の活動がいろいろと批評されているけれども、この録音時にはまだまだ若き新人に過ぎなかった。余分な雑音は放っておいて、当時のイメージで聴いてみれば新鮮に聞こえるに違いない。なお、LPでは2枚分だったが、現在はCD1枚に収録されているので、お買い得感も高い。内容・ヴォリュームとも充実の1枚で、ウィントン・マルサリスを最初に聴く人にも勧められる秀作である。[収録曲]1. Well You Needn't2. 'Round Midnight3. Clear Ways4. A Quick Sketch5. The Eye Of The Hurricane6. Parade7. The Sorcerer8. Pee Wee9. I Fall In Love Too Easily[パーソネル]Herbie Hancock (p)Ron Carter (b)Wynton Marsalis (tp)Tony Williams (ds) [録音]1981年7月25日 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤は全品ポイント5倍!】【輸入盤】Quartet [ Herbie Hancock ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月17日
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ブルー・ミッチェルの目立たない初リーダー作は玄人受けする名盤 何とも味気ないジャケットだ。中央の小ぶりの写真には6人のオジサン(お兄さん、と呼ぶべきか)たちが窮屈に写りこみ、その周囲は主に青系の配色で色分けされた帯状の部分に6人分のアーティスト名が黒字で記載されている。加えてジャケットの右上部、オレンジ地の部分には、アルバムタイトルの『Big 6』の文字(黒字)とレーベル(Riverside)やレコード番号を記した小さな文字(白字)。以上の文字部分は、特別洒落た字体や凝った字体なわけでもない。加えて、上で述べた各部分は白地の上に並べられているだけあって、個人的にはごちゃごちゃした印象を与えるものである。 とまあ、悪口を言っているかのような書き出しにしてしまったが、決して中身はそうではない。ジャケットがごちゃごちゃした印象であるとするならば、アルバムの内容はまったくその逆で、見事な息の合いようである。ジャケ買いをすることはなくとも、“内容買い”をすることはある、そんな盤だ。 上記ジャケには、参加メンバー全員の名が記されている。最上部にはブルー・ミッチェル(Blue Mitchell、トランペット奏者)の名。写真の左右には、横向きにフィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones、ドラム奏者)とウィントン・ケリー(Wynton Kelly、ピアノ奏者)。写真真下にはジョニー・グリフィン(Johnny Griffin、テナー・サックス奏者)の名がある。さらに、最下部には、ウィルバー・ウェア(Wilbur Ware、ベース奏者)とカーティス・フラー(Curtis Fuller、トロンボーン奏者)の名が記されていて、これが本盤の演奏メンバー全員ということになる。ここまでの名を見れば、ジャケ買いしなくとも、メンバー構成で“内容買い”しそうな盤ということになる。 豪華メンバーが揃ったからといって名盤になる保証がないのは、周知のとおりである。1曲目の「ブルース・マーチ」が勇壮な行進曲調で始まり、なおかつ10分の長尺なだけに、とっつきにくいのは事実だと思う。よく聴けば、これはこれでよくできているし、フロント(管楽器)のソロ部分は筆者も結構好きなのだけれど、そもそもこの曲調に馴染めなければ、思い切って次の曲から聴いてみよう。表題曲の2.「ビッグ・シックス」以降は、普通のブローイング・セッション風で、いわば普通にシンプルなジャズを展開している。とはいえ、ただただフロントの3人が好き放題吹きまくっておしまい、という適当な内容ではなく、それぞれの個性と特徴がいいバランスで混ざり合った印象を与える。このバランス感覚は、やはりリズムセクション(とりわけ、ウィントン・ケリーのピアノとフィリー・ジョー・ジョーンズのドラム)の安定感から来るものなのだろうと感じる。こうした観点に立って、本盤中で特に筆者が好きなのは、上記2.に加えて4.の「ブラザー・ボール」である。 なお、3.「ぜア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」だけは、ブルー・ミッチェルのワン・ホーン(他の管楽器はなし)である。ミッチェルのトランペットの特徴(彼のトランペット演奏を集中的に堪能したい方は、ぜひ『ブルーズ・ムーズ』をお試しいただきたい)が存分に発揮された1曲で、本盤が彼のリーダー作であったことを再認識させてくれる1曲である。実際、1958年に吹き込まれた本盤は彼にとって最初のリーダー作で、その後60年代にかけてリーダー作を順次発表していくことになる。本盤の最後の曲である7.「プロムナード」は、2分足らずの短い演奏だが、“もう少し続いていて欲しい”、“終わらないでいて欲しい”というリスナーの名残惜しさをかきたてる演奏で、続く他のリーダー作を聴こうという気にさせてくれる小品になっているところも憎い演出(?)に仕上がっている。 [収録曲]1. Blues March2. Big Six3. There Will Never Be Another You4. Brother 'Ball5. Jamph6. Sir John7. Promenade Blue Mitchell (tp) Curtis Fuller (tb) Johnny Griffin (ts)Wynton Kelly (p)Wilbur Ware (b)Philly Joe Jones (ds) 録音: 1958年7月2日、同7月3日 [CD]BLUE MITCHELL ブルー・ミッチェル/BIG 6【輸入盤】 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方は、“ぽちっと”応援よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月15日
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興味の入口がコンピものというのも悪くないのかも 手元にA&Mレコードから出された『サムシング・スペシャル(Something Special)』というコンピレーションCD(編集もの、オムニバスCD)がある。どこかで今も売っていないかと検索してみたものの、歴史の闇に葬り去られてしまったのか、ネット上ではヒットしない。たしか15年ほど前にメキシコで入手したCDだったと記憶している。以下は、そんな怪しげな盤をネタにした話ということで、お読みいただきたい。 このCDを買うまで、筆者はハーブ・アルパートとかチャック・マンジオーネ(マンジョーネ)といった、ポップ=ジャズ、フュージョン畑のミュージシャンのことは一切と言っていいほど知らなかった。本盤所収のアーティストでは、辛うじてセルジオ・メンデスぐらいしかまともに聴いたことがなかった。今となっては、なぜこのCDを購入したのかすらももう思い出せない(ひょっとしてショップで試聴でもしたのかもしれない)のだが、とにかく購入。しばらくは何度も何度も繰り返し聴いていた。 A&Mレコードは、ハーブ・アルパートがジェリー・モスという人と一緒に1962年に創設したレーベルで、頭文字のAはアルパート、Mはモスからとったという。やがてこのレーベルは成長し、70年代にはカーペンターズ、ポリスなどロック・ポップスも扱う総合的大手レーベルになるのだけれども、当初はハーブ・アルパートのレコードを出すための小さなレーベルだった。そのアルパートはと言えば、ロス出身のトランペット奏者で、ポップ寄りのブラス演奏にマリアッチ(メキシコ伝統音楽)のフレーバーを加えた、平たく言えば、ポップ=フュージョン系の音楽をやっていた人物だ(まだ存命だが、ここ10年ほどはあまり積極的な音楽活動はせず、後進の育成や教育に力を入れている)。 この『サムシング・スペシャル』は、概ねそうした方向性の楽曲を寄せ集めたコンピレーションものだった。フュージョン系中心にラテン・フレーバーを混ぜ込んだ感じで、はっきりと言ってしまえば、あまり統一感のない“ごった煮”っぽいアルバムである(こんな言い方をした後では身も蓋もないかもしれないが、ちなみに選曲者はエンリケ・パルティーダという人だった)。 そんなアルバムでも、筆者にとっては大きな意味があった。ハーブ・アルパートのみならず、ガート・バルビエリ(日本語表記はガトー・バルビエリ、アルゼンチン出身のジャズ/フュージョンのテナー奏者)、チャック・マンジオーネ(同チャック・マンジョーネ、ニューヨーク州出身のトランペット/フリューゲル・ホーン奏者)といったプレイヤーの代表曲に出会い、その後、彼らのアルバムを聴くきっかけになったからだ。確かに、いろいろと聴いた後で、このコンピ盤をあらためて見つめると、もう少しまとまりのある選曲はできなかったものかなどと思ってしまう。一応、合間にヴォーカル入りの曲(とくにザ・サンドパイパーズのもの)を散りばめて、ポップ畑のリスナーに聴きやすくしようとするなど、それなりの工夫の意図は感じられるけれど。 ともあれ、コンピ盤反対!という意見には、基本的に筆者も賛成する。だが、まったく未知のジャンルを聴き始めるきっかけとしては、うまく機能して効果を発揮することもあるのではないかというのが、今回の体験談である。他のアルバムを聴いた後では、最初に買ったコンピ盤は不要になる可能性が高いので、やはりサンプラー的な意味しか持たないとは思う。とはいえ、CDがこれだけ値下がりし、それこそ1000円ほどでそうしたサンプラーが買えるのなら、使い捨て的な意味合いでの選択肢としてはそれもありなのかもしれない。『サムシング・スペシャル』の個人的体験は、筆者にそんな思いを抱かせるものだった。 そんなわけで、“まったく未知のジャンル”という限定つきだが、編集盤も時に意味があり、聴き手(買い手)によっては、近ごろ多い80年代ロック・ポップスもの(“エイティーズ~”云々)とか、いまだ根強いジャズコンピ、とりわけピアノもの(“女性のためのジャズ・ピアノ”のような類)も新開拓の音楽への入口として、その聴き手にとっては重要なきっかけになり得ると思う。“作品”としての価値はなくとも、新しい世界への窓口という意味で存在意義がそれなりにあるのかもしれない。無論、わざわざ聴くアルバム(作品)としては薦めないが、結果論として“買ってよかった”コンピレーション盤というものも存在し得るのだろう。[収録曲・アーティスト]1. Feel So Good -Chuck Mangione2. One Note Samba / Spanish Flea -Sergio Mendes3. La Mer (Beyond the Sea) -The Sandpipers4. Fandango -Herb Alpert5. Europa (Earth’s Cry, Heaven’s Smile) -Gato Barbieri6. I Say A Little Prayer -Burt Bacharach7. Guantanamera -The Sandpipers8. Rise -Herb Alpert9. Promise Of A Fisherman -Sergio Mendes10. Give It All You Got -Chuck Mangione11. Do You Know The Way To San Jose? -Burt Bacharach12. She’s Michelle -Gato Barbieri13. Route 101 -Herb Alpert14. Never My Love -The Sandpipers15. Pais Tropical -Sergio Mendes16. Magic Man -Herb Alpert17. Raindrops Keep Fallin’ On My Head -Burt Bacharach18. Ruby -Gato Barbieri1995年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓ (にほんブログ村) (人気ブログランキング) (音楽広場)
2010年04月12日
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昨夜の時点で33333アクセスを超えました。同じ数がゾロ目で揃うと気持ちがいいものです。 皆様のおかげで、近頃は日々のアクセス数も順調に増えており、あらためて感謝申し上げます。 今後ともご愛読ください。 なお、過去の記事は以下にまとめてあります。ご興味がありましたら、INDEXから気になるアーティストの過去記事を探してご覧いただけると幸いです。アーティスト別INDEX~ジャズ編へアーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へアーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナー(1つでも2つでも嬉しいです)をクリックお願いします! ↓ ↓ にほんブログ村 → 人気ブログランキング → 音楽広場 →
2010年04月11日
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越谷政義 監修ジャパニーズ・ロックインタビュー集 ~時代を築いた20人の言葉~ティー・オーエンタテインメントのFさんという方からぜひ新刊案内をしてほしいとのことで掲載いたします。日本のロック誕生から、黎明期を支え続けたアーティスト達の証言を集めた、全編語り下ろしの自伝的長編インタビュー集とのことです。面白そうな企画だと思いましたので、本ブログでも紹介することにしました。本日(4月10日)発売で、4月24日(土、13:00~)には、渋谷のタワーレコードで記念イベントも催される模様です。楽天ブックスの商品ページはこちら: → 『ジャパニーズ・ロックインタビュー集』出版社のページはこちら(上記イベントの詳細はここに記載されています): → 『ジャパニーズ・ロックインタビュー集』 当ブログは下記のランキングサイト(3つ別々のサイトです)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、バナーをクリックして応援をお願いいたします! ↓ ↓
2010年04月10日
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サー(Sir)の原点、名曲揃いの2nd レジナルド・ケネス・ドワイト(Reginald Kenneth Dwight)改めサー・エルトン・ハーキュリーズ・ジョン(Sir Elton Hercules John CBE)。1947年、英国生まれのピアノ奏者でシンガーソングライターの、エルトン・ジョンのことである。出生名はレジナルド・ケネス・ドワイトだったが、本名を変え、なおかつ大英帝国勲章を受けたことで、現在では“サー”の称号が付けられる。 60歳をこえ、超大物として認知されている(そういえば先日、マヤ文明の世界遺産チチェン・イツァでコンサートをしたとのニュースもあった)エルトン・ジョンであるが、このアルバム発売時には、彼はまだ23歳の若者だった。前年の1969年に『エルトン・ジョンの肖像(Empty Sky)』でソロデビューしていたが、同アルバムは大した注目も受けず、米国にいたっては1975年になってようやく発売されている。それゆえ、エルトン・ジョンが世間から認知される上で、実質的デビュー盤とも言えるのが、1970年発表の本作『僕の歌は君の歌(Elton John)』である。このアルバムは、全英で4位、全米では11位のヒットを記録し、それによってグラミー賞にもノミネートされた。 本アルバムは、1.「僕の歌は君の歌(Your Song)」から始まるが、それ以外にも、有名な7.「人生の壁(Border Song)」のように、エルトンの代表曲をはじめ、名曲が目白押しの好盤である。本盤の特色かつ最大のよさとなっているのは、あまり明るいポップな路線に走らず、静かで内省的な楽曲が多いことであろう。しかもそれら一つ一つの完成度が異常なほど高く、高度に繊細で洗練された一曲一曲のつくりがとくに評価されるべき点である。こうした観点から、上記2曲以外に特にお勧めなのは、2.「君は護りの天使(I Need You to Turn to)」、6.「60才のとき(Sixty Years On)」、10.「王は死ぬものだ(The King Must Die)」といったあたりである。いずれのナンバーもどちらかと言えば暗めの曲調ではあるが、きめ細かくそして非常に丁寧に仕上げられており、6.や10.に関しては荘厳な空気すら漂っている。ソロ2枚目にしてこの完成度を誇り、なおかつある種の落ち着き払った貫録を示しているのは、驚きと言ってよい。この若い時点から既にエルトンの才能が一級品であったことの証しだと思う。 最後にもう一点。別の記事(ビリー・ジョエル『ニューヨーク物語』)の際にも同じようなことを書いたのだけれど、1970年代までのアルバムや楽曲には“邦題”のついたものが多かった。本アルバムの邦題(『僕の歌は君の歌』)は、代表曲1.Your Songのタイトルをそのまま持ってきただけで、少々お粗末ではある。同曲がエルトン・ジョンを知らない人でも知っている超有名曲になってしまった現況では、陳腐にすら響くかもしれない。しかし、筆者は、本盤所収の各曲につけられた邦題はいまも輝いていると思う。必ずしも直訳がいいとは限らず、けれども短い言葉で表現しなければならない曲名の邦訳は、訳者のセンスが問われる。しかも曲の題名としてそれらしいものでなければならない(ちなみに昔の外国映画の邦題についても同様のことが言える)。その点で、本盤の曲の日本語タイトルはうまく付けられていると思うし、個人的に気に入っている。そんなわけで、以下の収録曲データには、邦題も挙げておくことにする。[収録曲]1. Your Song(僕の歌は君の歌)2. I Need You to Turn to(君は護りの天使)3. Take Me to the Pilot(パイロットにつれていって)4. No Shoe Strings on Louise(ルイーズに靴紐はない)5. First Episode at Hienton(ハイアントンの思い出)6. Sixty Years On(60才のとき)7. Border Song(人生の壁)8. The Greatest Discovery(驚きのお話)9. The Cage(檻の中に住みたくない)10. The King Must Die(王は死ぬものだ)1970年リリース(日本盤は1971年)。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】僕の歌は君の歌 +3 [ エルトン・ジョン ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”クリックをよろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月10日
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ラテン系姐御のどこかしら哀愁をたたえた楽曲群 ロックの姐御と言えば、これをお読みの方はどういったアーティストを思い浮かべるであろうか。イギリス系のロック好きならプリテンダーズのクリッシー・ハインド(参考記事はこちら)を思い浮かべる方もいるかもしれない。あるいは米ロック界ならジョーン・ジェットが姐御キャラとしては一番手だろうか。はたまたボニー・レイットの姐御ぶりも同じように定着している。日本のロック界だと、白井貴子あたりがそのイメージに当てはまりやすいかもしれないし、あるいは浜田麻里や中山加奈子(元プリンセス・プリンセス)、もうちょっと上の世代だとアン・ルイスなどを思い浮かべる人もいるかもしれない。こうした姐御イメージが当てはまるアーティストとして、ラテン系ロック界でのNo.1は、筆者の独断と偏見において、圧倒的にこのセシリア・トゥーサン(Cecilia Toussaint)である。 セシリア姐は、メキシコの首都であるメキシコ市の出身。1958年生まれなので、今年で52歳を迎えるということになる。現在は二人の子供がいるとのことだが、もともとは音楽一家で生まれ育ち、ジャズ・ピアニストのエウヘニオ・トゥーサンは彼女の兄にあたる。70年代後半に音楽活動を開始し、ラ・ノパレラ(La Nopalera)というグループで活動した。80年代半ばにソロとなってから頭角を現し、早くからロック姐御なイメージが定着していった。その後、テレビの連続ドラマや映画への出演、映画の吹き替えなど多彩な活動を続けている。年を重ねても(そして子をもうけてからも)姐御イメージというのは、ある種、クリッシー・ハインドと共通するように、個人的には感じている。 本作『アルピア(Arpia)』は、1985年のリリースで、ソロとして最初のアルバムである。アルバムは前半(A面)と後半(B面)に分かれていて、前半が“El Amor(愛)”サイド、後半が“La Ciudad(都会)”サイドと題されている。後々、彼女のライブやラジオのオン・エアーなどで定番となった代表曲(例えば、7.「アマメ・エン・ウン・オテル(ホテルで私を愛して)」や12.「ビアドゥクト・ピエダー」など)を含み、セシリアの実力を知らしめるとともに、ロック姐としての彼女のイメージを定着させた1枚である。 アルバム全編を通じてドラムとベースのリズム音がしっかり聴こえてくるという印象がある。けれども、ただノリのいいロックを披露するというだけでなく、どこか陰のある、哀愁を含んだ曲調が印象的で、ところどころで鳴るソリッドなギター音も印象的である。その意味では、“ラテン系=明るい”というイメージとは必ずしも一致しない。しかしどこかしら憂いをたたえたロックサウンドというのは、後に1990年代以降のいくつかのメキシカン・ロックのバンドの特徴となっていくので、セシリア・トゥーサンはいわばその先駆的となる音作りをやっていたとも言える。 ちなみに、セシリアというのは芸名で、音楽の守護聖人の“聖セシリア”からその名をとったらしい。今でもカトリック信仰が根強いメキシコならではエピソードだと感じる。本盤での演奏は4ピースのバンド編成を基本としていて、セシリア(ヴォーカル)以外のメンバーは、ホセ・ルイス・ドミンゲス(ギター)、エクトル・カスティージョ(ドラム)、ロドリーゴ・モラレス(ベース)である。ソングライティングは、セシリア自身も数曲提供しているが、大半は外部のライター(ハイメ・ロペスおよびホセ・エロルサ、特に前者はメキシカン・ロック・バンドのカフェ・タクバCafé Tacubaの楽曲を作ったことでも知られる)が担当している。[収録曲]~El Amor~1. Testamento2. Prendedor3. Astragalo4. Me siento bien pero me siento mal5. Corazón de cacto6. Tres metros bajo tierra~La Ciudad~7. Ámame en un hotel8. La viuda negra9. Buldog Blus10. Sex farderos11. La 1ª calle de la soledad12. Viaducto Piedad1985年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月08日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。ここ最近の記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右欄(フリーページ欄)からお入りください。アーティスト別INDEX~ジャズ編へアーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へアーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ*邦ロック・ポップスについては記事数が少ないのでINDEXページを作成していません。下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナー(1つでも2つでもありがたいです)をクリックお願いします! ↓ ↓ ↓ ↓にほんブログ村 → 人気ブログランキング → 音楽広場 →
2010年04月06日
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時の流れに埋没した輝石たち 1966年、ビーチ・ボーイズ(というか実質的にはブライアン・ウィルソン)が『ペット・サウンズ』を発表、「サーフィン・USA」とは別世界の陰を持ったポップ・サウンドを世間に問う。これに呼応するかのように、翌1967年には、ビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を世に送り出す。いわゆるサイケ・ポップはこうして頂点を迎えていった。ザ・ゾンビーズ(The Zombies)はまさにこの時代を生き、何の因果か、時の流れに埋没し忘れ去られる不運を被ったグループだった。 ザ・ゾンビーズは、1961年にイギリスのロンドン郊外で結成され、1964年にデビューした5人組。いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョンの波に乗って2、3のヒットは出すものの、その後はヒット曲にも恵まれなかった。そんな中、1967年にデッカ・レコードとの契約が切れ、移籍先としてCBSレコードと契約。その契約からリリースすることになったのが1968年の本作『オデッセイ・アンド・オラクル(Odessey and Oracle)』であった。 事の成り行きとしてはこうだ。移籍後、1967年9月にCBSからの第1弾シングル(本盤11.と4.を所収)を発表、続いて同11月には第2弾シングル(本盤1.と3.のカップリング)を発表する。しかし、泣かず飛ばずで、翌68年にはバンド・メンバー5人のうちの2人が脱退。ところが、CBSとの契約からアルバム制作を迫られたため、既存の音源をまとめてアルバムを作ることになる。それがこの『オデッセイ・アンド・オラクル』であり、いったんはモノラル・ミックスで完成したものの、CBSの求めで続いてステレオ・ミックスを製作するはめになった。 こうした経緯の末、英国で本盤がリリースされたのは1968年4月のことだったが、早い話、アルバムが発売された時にグループは既に機能していなかった。サイケ・ポップのブームは下火になり、ブルース・ロックのような新しいトレンドが始まっていた。そのため、米国での発売も見送られたのだ。しかし、アル・クーパーが彼らの作品を見出し、1968年6月、9月にシングル、10月には本アルバムの米国での発売にこぎつけた。こうして米国で評価された(特に後者のシングル=本盤所収の12.=は全米3位のセールスを記録した)ものの、時すでに遅く、ザ・ゾンビーズは既に存在しておらず、彼らの音楽も忘却の淵に消えていくことになる。 現代からの評価として、本盤を「サージェント・ペパーズ症候群」の典型のように言うことがある。確かに、どう聴いてもビートルズの『サージェント・~』の影響から免れ得ない音だということは確かであると思う。しかし、単なる二番煎じというのとは違い、彼らの洗練度は並ではない。どの楽曲も非常に完成度が高くて甲乙つけがたいのだけれど、筆者の独断と偏見で何曲か挙げるなら、1.「独房44」や11.「フレンズ・オブ・マイン」のもろサイケ・ポップな曲調、3.「彼去りし後には」や7.「変革」のハーモニー、6.「夢やぶれて」の物憂い曲調といったところは聴き逃せない。こうやって挙げ始めると全曲外せなくなりそうなぐらいの完成度・洗練度で、“宝石箱”と評されるのも頷ける。まとまったコンセプト・アルバムという訳ではないので、大きな宝石細工というよりも、輝石がとにかく詰め込まれた宝石箱といった感じである。 最後に余談ながら二点ほど付け加えておくと、タイトルの“Odessey”とはギリシア叙事詩のオデュッセイアのことで、英語では正しくは“Odyssey”と綴るのだが、ジャケット・デザイナー(バンド・メンバーの友人がデザインを担当したらしい)のミスで、このような表記で定着したとのこと。それから、ザ・ゾンビーズは上記のとおり解散したものの、数度の一時的リユニオンがあり、加えて2004年からは元メンバー2人(リード・ヴォーカルのコリン・ブランストーンとオルガンのロッド・アージェント)が新メンバーを迎えてゾンビーズ名義で活動をしている。[収録曲]1. Care of Cell 442. A Rose for Emily3. Maybe After He's Gone4. Beachwood Park5. Brief Candles6. Hung Up on a Dream7. Changes8. I Want Her, She Wants Me9. This Will Be Our Year10. Butcher's Tale (Western Front 1914)11. Friends of Mine12. Time of the Season13.~24. 上記1.~12.のモノラル・ミックス25. I’ll Call You Mine -single version- 26. Time of the Season -U.S. radio spot-オリジナル盤、1968年リリース。 【送料無料】オデッセイ・アンド・オラクル/ザ・ゾンビーズ[SHM-CD][紙ジャケット]【返品種別A】 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月04日
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ゲスト多彩な晩年作、初めて聴く人にも推奨 ジョン・リー・フッカー(John Lee Hooker)は、1917年生まれの米国のブルースマンで、2001年に83歳で亡くなっている。11人兄弟の末っ子として生まれ、幼い頃に父を亡くすが、その後に母が再婚した相手(つまりは義理の父になった人物)がブルース歌手で、そこからブルース人生が始まったらしい。第二次大戦が終わった後、1948年から本格的活動を開始し、1960年代にはバンドスタイルを確立しつつ、独特のブギーのスタイルを作り上げていった。 このように、ジョン・リー・フッカーは、非常に長いキャリアを持つミュージシャンである。試しにウィキペディア(英語版)で「ジョン・リー・フッカー」の項を見て、そこに掲載されたアルバム数を数えてみたのだが、何と86枚にも及んでいた。アルバム間で重なる曲もあるのだろうが、いわゆるベスト盤の類を除いてこの数である。1948年から2001年まで50年以上の活動期間があるとはいえ、尋常な枚数ではない。 ジャズ界では中山康樹氏の著書に『マイルスを聴け!』というのがある。海賊版やコンピものも含め200枚を超える程度(だったように思うが、曖昧な記憶なので違っていたら失礼)のマイルスのアルバムをひたすら紹介している解説・案内本である。そこまで大部にはならずとも、誰かが『ジョン・リーを聴け!』という本でも作るならば、これまた相当な分量になり得るのではないだろうか。とはいっても、筆者はジョン・リー・フッカーのマニアというわけではない。聴いたアルバムも10枚に及ばない程度である。しかし、聴いた経験のある少数のアルバムの中にもお気に入りがしっかりとあり、本盤はそうした1枚と理解していただきたい。 本盤のリリース時点で、ジョン・リー・フッカーは74歳。前年(1990年)にはロックの殿堂入りも果たしており、既に超大御所として存在していた。1980年代半ばには新作リリースが滞っていたのだが、1989年に様々なゲストを招いての新録アルバム『ヒーラー』をリリースしてカムバックし、上記の殿堂入りを経て録音・リリースされたのが本作『ミスター・ラッキー』ということになる。 こうした背景もあるためか、とにかくゲスト陣が多彩である。アルバート・コリンズ、ライ・クーダー、ロバート・クレイ、ジョン・ハモンド、ブッカー・T、ヴァン・モリソン、キース・リチャーズ、カルロス・サンタナ、ジョニー・ウィンター等々…実に贅沢なゲスト・ミュージシャンの顔ぶれである(ライ・クーダーとカルロス・サンタナはプロデュースにも関わっている)。よくまあ、10曲収録のアルバムでこれだけ多くのミュージシャンが参加できたと思うほど豪華なメンバーである。だからといって、本作がイベント企画的な単なるお祭り騒ぎに終わっているかと言うと、まったくもってそうではない。1曲1曲(曲はいずれもジョン・リー単独もしくは共作のオリジナル)の演奏の出来ばえは、上記メンバーから予想される通りの見事なものである。無論、豪華メンバーが集結したからといっていい作品に仕上がる保証はないわけだが、本作の場合、ゲスト陣は無理に個性を押し出すのではなく、ジョン・リー・フッカーのカラーにあわせて演奏している。この点が確かな演奏を生み出す大きな要因だったのだろう。 実はここにいてもいいもう一人のゲストが存在し得た。しかし、残念ながらそれは実現しなかった(というよりも、運命のめぐりあわせによって、実現し得なかった)。クレジットを注意して見ると気づくのだが、「このアルバムをスティーヴィー・レイ・ヴォーンの思い出に捧げる」との記載がある。スティーヴィー・レイ・ヴォーンは、ジョン・リーとは親子あるいはそれ以上に年の離れた新時代のブルースの担い手であったが、本作『ミスター・ラッキー』の前年に事故により35歳で死去していた。上記の一言には、ブルース界を案じ、ゲスト参加がかなわなかったスティーヴィーに対するジョン・リーの哀悼の念が込められていたのだろう。 初期のジョン・リー・フッカーもいいのだが、最初はエレクトリックなバンド・スタイルのものから聴くのが断然とっつきやすいと思う。その点で本盤は初めて聴く人にも、またゲスト・ミュージシャンをきっかけに聴いてみるのにも適している。そして、何よりも、70歳を超えているにもかかわらず、元気全開のジョン・リーがカッコいい。きっとゲスト目当てに本アルバムを手にしても、気がついたらジョン・リーに聴き惚れていることになるだろう。ついでながら、赤いギターを大事そうに抱え、優しそうな表情で写りこんでいるジャケット写真もなかなか秀逸である。[収録曲]1. I Want to Hug You2. Mr. Lucky3. Back Stabbers4. This Is Hip5. I Cover the Waterfront6. Highway 137. Stripped Me Naked8. Susie9. Crawlin' King Snake10. Father Was a Jockey1991年リリース。 [枚数限定][限定盤]ミスター・ラッキー/ジョン・リー・フッカー[CD]【返品種別A】 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月02日
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アイドル歌手がアーティストを目指すとき ~その2~ 前回の河合奈保子(『スカーレット』)に続き、今回もアイドルとして活動しながらもアーテイスト路線へと方向転換を図った歌い手のアルバムで気に入っている盤を取り上げたい。森川美穂といってもピンとこない人もいるかもしれないが、もともとVapからアイドルとして売り出され、やがて学園祭の女王として人気を定着させていったシンガーである。1990年代にいくつかのヒット曲を残し、その実力から、現在は大阪芸術大学のヴォーカル実技の専任講師を務めている。 1983年にヤマハのオーディションに選ばれ、1985年にアイドル歌手としてデビュー。同期には、南野陽子、本田美奈子、中山美穂などアイドルの一時代を築いた見事な顔ぶれが揃っていた。所属レーベルVapの強い押しでトップテンなどにも取り上げられたりするが、本人はアイドルとして売り出されていることに納得していないようだった。1987年、ASKA作の「おんなになあれ」(6枚目のシングル、アルバムとしては2枚目)の辺りから徐々に路線変更し始め、ヴォーカリストとしての立場を明確にしていく。そんな中、同年11月に発売されたのが、アルバムとしては3枚目にあたる本作『ヌード・ボイス』だった。 森川美穂という人の性格・キャラはアイドルに向いていなかった。デビューからしばらくすると、ラジオ番組等でのトークが好評を博し、歯に衣着せぬ物言いがファン層の拡大につながった。振り返ってみると、1987年の本作『ヌード・ボイス』、翌1988年の『1/2Contrast(ハーフ・コントラスト)』の辺りの彼女は、開けっ広げで単刀直入でストレートな性格そのままの歌声を披露していたと思う。ヴォーカリストとしてのセールスの全盛は1990年代前半で、その頃にはヴォーカリストとしてのテクニックも増していったのだが、筆者としては、粗削りな部分も含めて、特にこの時期の生き生きした歌いっぷりが気に入っている。 収録曲のうち、2.「Pride(プライド)」は先行シングルとして発売され、それ以前のシングル曲と同様にミノルタ(カメラ)のCM曲として使用された。思いっきりのよいヴォーカルが印象的なナンバーで、アルバム収録曲では、1.「Nice Meet」や6.「Good Luck」なども似た傾向にある。まだアイドル時代を若干引きずっているような曲もあるけれど、全体としてとても気持ちよく歌っているという印象がある。もう一つ付け加えておくと、男女関係云々といった詞の内容が中心である中、10.「Bird Eyes」は唯一の落ち着いたバラード曲で、内容もこの1曲だけ普遍性のある内容である。この曲はとにかく名曲で、なおかつ後々開花していく歌唱力の片鱗が存分に伺える。NHKアニメ「ふしぎの海のナディア」の主題歌など後々のヒットしか知らない人はぜひさかのぼってこのアルバムも聴いてもらえるといいように思う。追記: 余談ながら、森川美穂のVap時代のCDは、1990年の東芝EMI移籍に伴ってすべて廃盤となり、一時は1万円などというプレミアが付いていた。1999年に一斉に再発されたが、現在では再び廃盤のため入手しにくいアルバムもある模様(本作『ヌード・ボイス』は中古であれば入手は特には難しくない)。[収録曲]1. Nice Meet2. Pride3. By Yourself4. 月曜日の痛み5. やさしくなって…6. Good Luck7. Cancel8. Silent Talk9. クリスマスはどうするの?10. Bird Eyes1987年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年04月01日
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