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ソングライターとしての才能が発揮された盤 ゲイリー・ポートノイ(Gary Portnoy)は、1956年、ニューヨーク出身の作曲家・ミュージシャン。1982年に始まった米テレビドラマ(『チアーズ』)の主題歌を手掛けたことで知られる。1970年代後半に曲提供で名を知られるようになり、一度はソロの企画が頓挫したが、1980年、チャールズ・コッペルマンの後押しでソロ・デビュー盤のリリースとなった。なお、ポートノイは、その後、21世紀に入って何枚かのアルバムをのこしているが、その当時としてはこれが唯一の盤であった。 本盤の原題はシンプルなセルフタイトルだが、邦盤では『月影のロング・ナイト』となっている。収録曲のほとんどにも、この時代らしい邦題がつけられている(下の曲目を参照)。アメリカでは特にチャート・アクションはなかったが、日本では田中康夫の『なんとなく、クリスタル』で取り上げられて注目された。そんなわけで、広く知られたものでも、ヒット作品でもなく、世の中からは忘れ去られた盤なのかもしれないが、それでは少々もったいないと感じている。 哀愁のあるメロディと、どこか頼りなげなヴォーカルで始まる1.「月影のロング・ナイト(イッツ・ガナ・ビー・ア・ロング・ナイト)」は、さすがはソングライターと思わせてくれるナンバーで、実によくできた美曲。同じく曲の美しさという点では、5.「涙の誓い(レイト・ナイト・コンフェッション)」も注目ナンバーと言える。 アルバム後半(元のLPでは、5.までがA面、6.以降がB面)では、6.「翳りゆく夜(ホエン・ザ・ナイト・エンズ)」が楽曲のよさという点では際立っている。これと並んで曲の素晴らしさに感服するのは、7.「危険な誘惑(ユー・キャント・ゲット・アウェイ・ウィズ・ザット)」。ポートノイよりももっと野太い声でキレのある男性アーティストが歌ったら大ヒットしたのではないかと思ったりする。アルバムを締めくくる10.「おやすみ(セイ・グッドナイト)」(11.は同曲のリプライズとなっている)もなかなかの好ナンバーである。[収録曲] *( )内は邦盤での曲タイトル。1. It's Gonna Be A Long Night(月影のロング・ナイト)2. The Driver(ザ・ドライバー)3. Half Moon(ハーフ・ムーン)4. The Lady Is A Liar(恋のかけひき)5. Late Night Confession(涙の誓い)6. When The Night Ends(翳りゆく夜)7. You Can't Get Away With That(危険な誘惑)8. Goodbye Never Felt This Good(悲しみにさよなら)9. Come To Me Tonight(カム・トゥ・ミー・トゥナイト)10. Say Goodnight(おやすみ)11. Say Goodnight(Reprise)(おやすみ(リプライズ))1980年リリース。 [期間限定][限定盤]月影のロング・ナイト/ゲイリー・ポートノイ[CD]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年06月23日
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気まぐれ80s~Chapter 14(その3) ボブ・シーガー(Bob Seger)は、1970年代から1980年代にかけて人気を博したデトロイト生まれのロック・アーティスト。2004年にロックの殿堂入りを果たしています。 若い頃の前へ前へといった感じの彼も好きなのですが、この人の魅力は1980年代、1990年代と時を重ねていく中で、ロックの魂を保ちつつも、円熟味を増していったところにあります。いい感じで肩の力の抜ける場面が出てきたとでも言い換えるとよいでしょうか。そんな気配が見え始めたナンバーの一つがこの「ロール・ミー・アウェイ(Roll Me Away)」ではないかと思ったりするわけです。まだまだ肩に力の入ったロックだ、と言われてしまうかもしれませんが、筆者的には前へ前へと押すだけではない余裕が少し出始めているように感じます。もちろん、ボブ・シーガーの楽曲のなかでも私的には上位のお気に入り曲です。 そして、年を重ねた後年の映像をご覧ください。2011年ということですので、この楽曲発表から30年近くを経た時点での映像です。ボブ・シーガーは1945年生まれですから、60歳代後半に差し掛かった年齢の姿ということになります。オール白髪と見た目も若い頃とは大きく異なっていますが、素晴らしいステージでのパフォーマンスを披露していると思います。 [収録アルバム]Bob Seger & the Silver Bullet Band / The Distance(1982年) 【中古】 ザ・ディスタンス/ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド 【輸入盤CD】Bob Seger & The Silver Bullet Band / Greatest Hits(ボブ・シーガー) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年06月08日
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ファースト作にして時代を先取りしていた名盤 デラニー&ボニー(Delaney & Bonnie)は、アメリカの夫婦デュオである。夫のデラニー・ブラムレットは、妻となるボニーと1960年代後半にロサンゼルスで出会い、結婚。そして夫婦デュオができあがるものの、最初に録音した音源はリリースされなかった(後に『ホーム』としてリリース)。その後、本盤を吹き込み、この『オリジナル・デラニー&ボニー(The Original Delaney & Bonnie & Friends)』でメジャー・デビューを果たした。 本盤の凄さは重層的である。そもそものデュオとしての力量について語るだけでは、まったくもって不十分と言ってもいいだろう。その力量については、ストリングスに携わったアレンジャーが、白人デュオだとは思わなかったというエピソードがあるらしい。白人か黒人かという、現代世界から見たらレイシズムそのもののような「偏見」が当たり前だった時代に、その「偏見」の壁を感じさせない歌唱を見せていたという訳である。しかも大部分の曲は、デラニーあるいはボニーがソングライティングに関わったものだった。 さて、本盤の凄さを語るには、“デラニー&ボニー”の名義にも触れなければならない。ジャケットには“デラニー&ボニー”としか書かれていないものの、実際には“デラニー&ボニー&フレンズ”なのである(裏ジャケには写真入りでその“フレンズ”の内容が記されている)。そして、その“フレンズ(友人たち)”には、レオン・ラッセル(ピアノ、ギター)、ドクター・ジョン(キーボードのほか、4.の曲提供)などの“濃い”メンバーたちがいる。これらの面子の存在もまた、本盤のディープでスリリングな演奏の元になっていることは、忘れてはいけないと思う。 話が何だか抽象的になってしまった。以下、筆者の個人的好みのおすすめ曲をいくつか挙げておきたい。1.「団結しよう(ゲット・アワセルヴズ・トゥギャザー)」は、曲のノリも、ヴォーカルも、印象的なホーンも、ギターワークも文句なしの1曲。2.「いつの日か(サムデイ)」のような、デニーとボラニーのヴォーカルの掛け合いは、このデュオの良さがよくわかるナンバーだと思う。5.「老人(ディア・オールド・マン)」のようなソウルでファンキーなヴォーカルは、“黒人/白人”の垣根を思いっきり越えている。 個人的にお勧めのナンバーとして、6.「もっと愛し続けて(ラヴ・ミー・ア・リトル・ロンガー)」は外せない。本盤の翌年にはデレク&ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』がリリースされているが、ソウルとロックが融合したこのスタイルは、デラニー&ボニーが先に完成した形で提示していたことがわかる。アルバム終盤では、9.「十字架の兵士(ソルジャーズ・オブ・ザ・クロス)」が出色。ボニーのソウルフルなヴォーカルがロック調のフォーマットと完璧なまでに調和しているところが、筆者の気に入っている部分である。[収録曲]1. Get Ourselves Together (団結しよう)2. Someday (いつの日か)3. Ghetto (ゲットー)4. When the Battle Is Over (闘いが終わる時)5. Dirty Old Man (老人)6. Love Me a Little Longer (もっと愛し続けて)7. I Can't Take It Much Longer (堪忍袋の緒が切れた)8. Do Right Woman, Do Right Man (ドゥ・ライト・ウーマン)9. Soldiers of the Cross (十字架の兵士)10. Gift of Love (愛の贈りもの)1969年リリース。 オリジナル・デラニー&ボニー [ オリジナル・デラニー&ボニー ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2022年06月21日
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TOTOのシングル曲追想 ~その2~ TOTOのアルバム作品としては第4作目の『聖なる剣(TOTO IV)』(1982年)のオープニング・ナンバーで、シングル曲としては全米2位(ついでにオランダでもチャート3位)を記録するヒットナンバーとなった。この曲によって、TOTOは翌年のグラミー賞を受賞するに至っている。 曲自体はデヴィッド・ペイチの作だが、リード・ボーカルをとるのは、スティーヴ・ルカサーとボビー・キムボールである。ルカサーはバンドの中ではギター兼ボーカル、キムボールはこのしばらく後に脱退することになるボーカル専属というメンバーである。 何といってもこの「ロザーナ」は、これら二人のボーカル、そしてルカサーのギター演奏が実にスリリング、の一言に尽きる。5分間というシングル曲としてはやや長めの演奏時間を通して、曲としてのドラマ性に富んだ展開が見事である。TOTOの代表曲を1つだけ選べと言われれば、個人的にはこれが圧倒的に第一候補の筆頭である。 あと、この曲の特徴的なシャッフルの仕方は有名で、ミュージシャンの間では、“ハーフタイム・シャッフル”またの名を“ロザーナ・シャッフル”と呼ばれている。このシャッフルもそうなのだが、上で挙げた歌と演奏のスリリングさは、こういうプレイを難なくこなすTOTOメンバーのテクニックに裏づけられているということなのだろう。 “売れ筋バラード”と揶揄する向きもあるけれど、これだけの1曲を通してのドラマ性(曲の展開)を支えているのは、結局はセッション・ミュージシャンとして鳴らした彼らの腕前、それが本領発揮されているといったところか。無論、単に腕利きミュージシャンが集まったからと言ってこういう作品ができあがるというわけではなかろう。デヴィッド・ペイチが言ってるように、「飛びつきたくなるような申し出には、決して事欠かなかった」にもかかわらず、そこに飛びついていかずに地道にグループとしての活動を心がけたからこそ、こういう大ヒットに最終的にありついたのだろう。その意味では、TOTOは“軽薄な売れ筋狙い”どころか、真摯に自己研鑽を重ねていった、そういうバンドだったとも言えるのかもしれない。 ちなみに歌詞の内容は“君と一緒にいたい”系のラブ・ソング。詞の内容で聴かせるというよりは、繰り返しになるが、演奏の構成と精度で盛り上げるタイプの曲なので、部分的にしか聴いたことがない方には、ぜひ5分間通して一度聴いてほしい1曲。[収録アルバム]TOTO / TOTO IV(聖なる剣) (1982年)その他、ベスト盤類(例えば下記)にも収録。TOTO / Past To Present 1977-1990 (1990年)TOTO / Best Ballads (1995年)[関連記事リンク] TOTOのシングル曲追想(その1)「99」 TOTOのシングル曲追想(その3)「アフリカ」 TOTOのシングル曲追想(その4)「アイル・ビー・オーヴァー・ユー」 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011年06月15日
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80~90年代、グロリア・エステファンの足跡を振り返る(その8) グロリア・エステファン(Gloria Estefan)の80~90年代の曲を時代順に追ってきているこのシリーズ。いよいよ終盤に差し掛かってきました。もうあと3回ですが、よろしくお付き合いください。 さて、彼女の出自はキューバ。父親は軍人で大統領のボディガードを務めていたりしたらしいのですが、キューバ革命が起こり、その直後に家族でアメリカに移住。3歳でキューバを離れたグロリアにとって、祖国は郷愁の念を抱く地になったことだろうと思われます。 過去記事でも取り上げた『ミ・ティエラ~遥かなる情熱(Mi Tierra)』の表題曲「ミ・ティエラ」をどうぞ。文字通り、この曲名およびアルバム表題は、スペイン語で、“私の地、我が故郷”の意味です。 上述の過去記事にも書いたことなのですが、実際にはキューバは記憶の彼方の遠い地なのだろうと想像されます。けれども、消されえない望郷の思い、あるいは心理的にも遠い生まれ故郷への郷愁の気持ちといったものに満ちています。カリブ音楽のリズムを取り込みながらも、この切ない心もちが何とも言えない名ナンバーではないかと思います。 ところで、グロリアは、この曲を発表する以前、1990年に交通事故で脊髄を損傷するという大きな事故に遭いましたが、1年ほど後に見事に復帰。その後の元気さは55歳を超えた現在まで続いているようです。そのようなわけで、今回は同じ曲の新しい映像(2013年、アルゼンチンでのライヴ演奏の模様)をご覧ください。とっくに“若いおねーちゃん”ではなくなっているグロリアですが、50歳代半ばでこの若々しさはなかなかできないのではないかと思ったりもします。 [収録アルバム]Gloria Estefan / Mi Tierra (1993年) 【送料無料】【輸入盤】Mi Tierra [ Gloria Estefan ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年09月19日
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80~90年代、グロリア・エステファンの足跡を振り返る(その9) つい最近、東京での夏季オリンピック開催(2020年)が決定し、盛り上がっていましたが、今回はグロリア・エステファン(Gloria Estefan)に関するオリンピック絡みの曲です。 前述の交通事故の怪我の後、復帰したグロリアがもっとも輝いていた瞬間の一つが、アトランタ・オリンピックの時という言い方もできるかもしれません。1996年、近代オリンピック開始100年を祝う大会となった、米国ジョージア州の州都での夏季オリンピック大会でした。 オリンピックの商業化が言われ始めたのはこれよりももう少し前でしたが、いつしか公式スポンサーだけでなく公式ソングなども設定され、音楽やエンタテイメント(特に開会式)も重視されるようになっていきました。この時の大会に合わせてリリースされたコンピ盤『リズム・オブ・ザ・ゲームス(Rhythm of the Games)』にも収録された「リーチ(Reach)」です。オリジナルのビデオ・クリップと五輪閉会式でのパフォーマンスを続けてどうぞ。 でもって、この曲のスペイン語ヴァージョンというのも存在します。上記アルバムとは別に“ラテン・ヴァージョン”のオリンピック・アルバムが制作され、その目玉はグロリア・エステファンはじめオールスターズによる「リーチ」のスペイン語ヴァージョン(西語タイトルは「プエデス・ジェガール(Puedes Llegar)」)でした。 まるで「ウィー・アー・ザ・ワールド」をパクっているのかと言わんばかりにフレーズごとに異なるシンガーが登場するのですが、そのメンバーが実に豪華。若い頃(世界ブレークする前)のリッキー・マーティンのほか、果てはフリオ・イグレシアスやプラシド・ドミンゴといった超大物まで登場するといった具合です。 [収録アルバム]Gloria Estefan / Destiny(1996年)Various Artists / Rhythm of the Games, 1996 Olimpic Games Album(1996年)←以上二作には大ヒットした英語ヴァージョンを収録。Varios artistas / Voces Unidas (1996年)←こちらには上に挙げたオールスターズでのスペイン語ヴァージョン収録。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年09月20日
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完成度の高さが際立つトランぺッターの推奨盤 ルイ・スミス(Louis Smith)は1931年テネシー出身で、2016年に85歳で没していて、ブッカー・リトルのいとこにあたるトランペット奏者である。1990年代以降に10枚ほどのリーダー作は残しているものの、教師を本業としたこともあって、それ以前の作品数は少なく、1950年代に2枚、1970年代に2枚のリーダー盤を吹き込んでいるに過ぎない。 1950年代に吹き込まれた2枚とは、『ヒア・カムズ・ルイ・スミス』と、今回取り上げる『スミスヴィル(Smithville)』で、いずれもブルーノートからリリースされた。とはいえ、前者は厳密にはブルーノートで制作された作品ではない。トランジションというレーベルの音源をアルフレド・ライオンが買い取ってリリースされたものだった。そのようなわけで、真の意味でルイ・スミスのブルーノート盤はというと、後者の『スミスヴィル』だけしかないということになる(ただし、非リーダー作としては、ケニー・バレルの『ブルー・ライツ(Vol. 1 & Vol. 2)』などにも参加している)。 『ヒア・カムズ~』の完成度も高いが、本盤『スミスヴィル』はさらに輪をかけて完成度の高さが印象的である。サックスはチャーリー・ラウズで、2.「ウェトゥ」や5.「レイター」に見られるように、スミスのトランペットとの絡みは、なかなか迫力がある。こうしたナンバーにおいても、もう少し落ち着いた曲調の演奏においても、完成度の高さの大きな要因は他のメンバー抜きには成立しなかっただろう。前作にも参加したアート・テイラー(ドラム)に加え、ソニー・クラーク(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)という鉄壁のリズム隊がこの演奏を支えている。 ちなみに、筆者の好みを言うなら、ナンバー1は表題曲の1.「スミスヴィル」。味のある、あるいはカッコいい演奏を一つ決めて“さあどうだ”という演奏も悪くはないけれど、10分以上もびしっと決め続けられると、聴き手としてはそのまま惹き込まれていくしかない。滋味豊かなトランペットに全体としての見事な演奏ということなのだけど、“見事”なんていうのもおこがましい気がしてしまう。そして、目を閉じてじっと集中すると、このトランペットの抜け具合が実に心地よかったりする。[収録曲]1. Smithville2. Wetu3. Embraceable You4. There Will Never Be Another You5. Later[パーソネル・録音]Louis Smith (tp), Charlie Rouse (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)1958年3月30日録音。Blue Note 1594 ↓本文中で触れた2枚のカップリングです↓ 【輸入盤】Legendary 1957-59 Studio Sessions (2CD) [ Louis Smith ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年02月13日
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80年代の映画サントラを振り返って…(その2:オーバー・ザ・トップ、1987年) 1976年から始まった『ロッキー』シリーズ(さらには80年代に入ってからの『ランボー』シリーズ)で人気を博していたシルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)。そんな中で制作されたスタローン主演映画の一つが、1987年の『オーバー・ザ・トップ』だった。妻子を残してさすらいの旅に出た男がアームレスリング(腕相撲、ですね)のチャンピオンを目指して奮闘する、といったストーリーだったように記憶しています。 まあ、結局のところ、映画のストーリーはあまり頭には残っておらず、強く脳裏に焼き付いているのは、サミー・ヘイガー(Sammy Hagar)が歌ったこの曲の方でした。当時の彼は、デイヴ・リー・ロスの後釜としてヴァン・ヘイレンに加入していた頃で、エディ・ヴァン・ヘイレンとの連名でこの曲を提供していました。 映像中に出てくるスタローンも若々しい(といっても当時すでに40歳過ぎぐらいだったとは思いますが)ですね。最後にスタローンが歌っている本人と腕相撲をするのはご愛嬌ですが、サミー・ヘイガーのヴォーカルは本当にカッコよくて大好きです。本人的はこの曲、あまり気に入っていないらしいとの話もあるようですけれども、結構いい曲だったのではないかと思います。 ライヴの演奏シーンはないかと探してみたのですが見つからず。そこで、その当時の別の曲のライヴ映像をおまけでご覧いただこうかと思います。ヴァン・ヘイレンの一員だったということで、サミー・ヘイガー自身の“持ち歌”をヴァン・ヘイレンでやっている、80年代の映像です。 サミー・ヘイガー、エディ・ヴァン・ヘイレンともに(もちろん他のメンバーも)何とも溌剌とした若々しい動きです。ちなみにこの曲は過去記事でも紹介した「ゼアズ・オンリー・ワン・ウェイ・トゥ・ロック」というナンバーで、ヴァン・ヘイレン加入以前にサミー・ヘイガーがソロで発表していたものです。[収録サウンドトラック盤]Over The Top (Original Motion Picture Soundtrack) 【送料無料】オーバー・ザ・トップ オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年08月04日
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気まぐれ80s~5thシーズン(その9) 大物アーティストの共演企画というのはたまにありますが、これほど見事なまでの大物たちが“覆面バンド”(といっても正体ばればれだったわけですが)というのは、珍しい例だったと言えるかもしれません。トラヴェリング・ウィルベリーズ(The Traveling Wilburys)が1988年にリリースしたシングル、「ハンドル・ウィズ・ケア(Handle With Care)」です。 メンバーは、ボブ・ディラン、ジョージ・ハリスン、ジェフ・リン、ロイ・オービソン、トム・ペティの5人。体裁は、所属や権利関係を超えたあくまで“覆面バンド”ですので、メンバー名はこれと同じ順に並べると、ラッキー・ウィルベリー、ネルソン・ウィルベリー、オーティス・ウィルベリー、レフティ・ウィルベリー、チャーリー・T・ウィルベリー・Jr.。まあ、いい加減な名前の付け方です(次作の『Vol. 3』ではこの名前すら変わっていたりしますし)。 メンバーのうち、ロイ・オービソン(1988年没)、ジョージ・ハリスン(2001年没)は既に鬼籍に入ってしまいました。以下は、ジョージの追悼コンサートの模様です。トム・ペティと彼のバンド(ハートブレイカーズ)を中心に、ジェフ・リン、さらにはジョージの息子ダーニ・ハリスンも参加したライヴの映像です。 息子のダーニ・ハリスン、面影がありますね。[収録アルバム]The Traveling Wilburys / Volume One (1988年リリース)↓元のアルバム単体はこちら↓ 【メール便送料無料】トラヴェリング・ウィルベリーズTraveling Wilburys / Traveling Wilburys, Vol. 1 (輸入盤CD)(トラヴェリング・ウィルベリーズ)↓オリジナル・アルバム2枚セット+DVDのお得盤↓ トラヴェリング・ウィルベリーズTraveling Wilburys / Traveling Wilburys Collection (w/DVD) (輸入盤CD) (トラヴェリング・ウィルベリーズ) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年11月12日
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ブルースの帝王による名ライヴ盤 少し前にベン・E・キング追悼の記事を書いたのに、今度は別の(これまた大物の)“キング”が逝ってしまった…(2015年5月14日逝去)。以前から、“これは取り上げねば”と認識していながら、いつまでもほっとらかしにしていたのが、B・B・キングの名盤『ライヴ・アット・ザ・リーガル(Live at the Regal)』である。 B・B・キング(B. B. King)は、1925年ミシシッピ生まれ。やがてテネシー州メンフィスに移り、同州の州都ナッシュビルで初レコーディングを行う。1950年代から2000年代まで多くのアルバム、シングルを残し、1987年にはロックの殿堂入りを果たしている。アルバート・キング、フレディ・キングと並んで“ブルース界の3大キング”などと呼ばれたりもする。 本盤は、表題の通り、“リーガル劇場”でのコンサートを収録したもので、録音は1964年ということだからB・B・キングの若き頃とまでは言わないまでも、40歳直前の元気いっぱいのころの演奏を収めたものである。“元気いっぱい”というのが、ある意味キーワードかもしれない。1曲目から観客のヴォルテージ(黄色い声?)が高く、音声だけでも盛り上がった雰囲気が感じられる。ブルースと聞けば、多くの人が“枯れた音楽”とか“マイナー調な重く地味な音楽”をイメージするかもしれないが、ブルースのシンガー/ギタリストのライヴはこれほど盛り上がり得る、その事実を肌で感じるだけでも本盤を聴く意味はあるように感じる(おまけにホーンセクションが本盤ではなかなか活躍している)。とりわけ、ロックは聴くけれどもブルースはもう一つ…といった向きには、死ぬまでにこの盤は一度聴いた方がいい。ブルースが“辛気くさい音楽”ではないことがきっと実感できると思う。 全体としてはギターだけを聴く作品でもなければ、ヴォーカルだけでもない、その両方(もちろんブルースとしてのギター、ヴォーカル、ただし本人が言うように“ギターを弾きながら歌うのは難しい”)が楽しめる作品である。2.「スウィート・リトル・エンジェル」や7.「ウォーリー、ウォーリー」、9.「ユー・ダン・ロスト・ユア・グッド・シング・ナウ」のように、いかにもブルース的な演奏もあるが、全体のトーンはやはり“ブルースマンの演奏・歌唱にノリを感じる”点。ついでながら、ファンの間では賛否が分かれるところだろうけれど、ラストの10.「ヘルプ・ザ・プアー」の実験的な演奏は、B・B・キングがブルースマンでありながら、狭い意味でのブルースというジャンルに閉じていなかったことがよく分かる。 闘病生活があったとはいえ、89歳での大往生。安らかに眠らんことを祈ります。[収録曲]1. Every Day I Have The Blues2. Sweet Little Angel3. It's My Own Fault4. How Blue Can You Get?5. Please Love Me6. You Upset Me Baby7. Worry, Worry8. Woke Up This Mornin'9. You Done Lost Your Good Thing Now10. Help The Poor1965年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ライヴ・アット・ザ・リーガル [ B.B.キング ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年05月21日
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ヴァイブにフルート、少し趣向の異なる楽器で聴かせるジャズの真髄 ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)は、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)に在籍したヴィブラフォン奏者。よく言われるのは、MJQでのミルト・ジャクソンは、同じくメンバーでMJQの中心的人物のジョン・ルイスがクラシカルな志向を持つゆえに、どちらかと言えばそれに合わせた演奏をしたということである。それに対し、ミルト・ジャクソン自身のソロ作では元来得意のブルージーな即興演奏を存分に繰り広げたと評される。 そうしたミルトのソロ作の中でも、とりわけ代表作として知られるのが、本盤『オパス・デ・ジャズ(Opus de Jazz)』である。この盤は彼のソロの代表作であると同時に、カーティス・フラーの『ブルースエット』と並んでサヴォイ・レーベルの代表的なヒット作でもあり、1950年代半ばのジャズの熱さを存分に伝える盤である。 タイトルの“オパス(Opus)”とは、ラテン語で“作品”の意味で、クラシックでよく曲の題名につかわれる。つまりは“ジャズの作品”という意味のアルバム名である。収録曲も4曲中3曲(1.、2.、4.)が“オパス”の題名をもち、いずれもブルース・ナンバー。そのうちの最初の1.「オパス・デ・ファンク」は、ホレス・シルヴァーの曲で、まさしくファンクなジャズ演奏の先駆けとも言えるものである。ミルトのヴァイブの跳ね具合が印象的で、自由に演奏しているのがよくわかる。楽しく聴くうちにあっという間に13分の演奏が過ぎ去ってしまう収録曲のうち、3.のみがバラード・ナンバーで、1938年のミュージカルから採られた曲だが、これもまたアルバム全体の流れをゆったりさせるのにちょうどいい。 アルバム全体を通じてミルトのヴィブラフォンと同じく注目すべきはフランク・ウエスの参加。2.ではサックス(テナー)も演奏しているが、何よりフルートをジャズ界に本格的に持ち込んだ人物として知られる。本盤でもフルートの比重は大きく、ヴァイブ+フルート+ファンキー・ジャズの先駆けという、他のサックスなどの管楽器中心の50年代ジャズに比べて、一風変わった組み合わせで楽しく聴かせる一枚と言える。[収録曲]1. Opus de Funk2. Opus Pocus3. You Leave Me Breathless4. Opus and Interlude[パーソネル・録音]Milt Jackson (vib)Frank Wess (fl, ts)Hank Jones (p)Eddie Jones (b)Kenny Clarke (ds)1955年10月28日録音。 【送料無料】オパス・デ・ジャズ 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年05月05日
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一風変わった代表盤 アメリカ西海岸を拠点とし、“70年代の最も完成された作詞家”と呼ばれたシンガーソングライターのジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)。先に紹介した『ザ・プリテンダー』と並ぶ彼の代表作と言えるのが、1977年リリースのこの『孤独なランナー(Running on Empty)』である。 何でも、1976年の『ザ・プリテンダー』の発表後、そのツアーを収めた2枚組ライヴ盤が企画されていたのだという。しかし、このライヴ・アルバムは実現されなかった。それが形を変えたものが、本盤『孤独のランナー』となったからである。そのようなわけで、この盤は、ツアーでのライヴ・テイクをはじめ、ツアー中の様々な場所で録音された曲が収められており、一風変わったアルバム作品に仕上がっている。全米3位となり、セールス面でも彼の作品としては最も売り上げたものとなった。 本盤のよさは、何よりもまず、楽曲の質の高さだと言える。1.「孤独のランナー」のたたみかけるような完成度の高いオープニングの1曲だけでも、このアルバムを手にしてみる価値はある。もちろん、1曲しか聴かないのももったいない。他にも好曲揃いで、これは聴き逃せないと思う筆者のお気に入りをさらにピックアップしてみたい。4.「ユー・ラヴ・ザ・サンダー」は、ライヴの録音日は別だけれども上記1.とあわせて聴きたいナンバー。曲の素晴らしさ・演奏の完成度という観点では、他に9.「ザ・ロード・アウト」、10.「ステイ」(後者はデビッド・リンドレー、ローズマリー・バトラーもヴォーカルをとっている)。ライヴ・テイク以外の曲の中では、6.「シェイキー・タウン」が外せない好ナンバー。 上に書いたように、ツアー中の録音場所がなかなか面白い。3.はコンサート・ホールのリハーサル室、5.や6.は宿泊ホテルの一室(イリノイ州エドワーズビルのホリデーイン124号室)、8.に至っては移動中のバス(ニュージャージー州内のどこかを移動中)の録音とのこと。とはいえ、アルバムで聴くと全然リハーサル・テイクっぽい感じもせず、完成度は高い。 ジャクソン・ブラウンのデビューは1970年代初頭だけれども、それ以前からイーグルスへの楽曲提供などソングライターとしての能力は知られていた。その才能が自己の歌・演奏と相まって花開いた時期が『ザ・プリテンダー』から本作『孤独なランナー』にかけての70年代後半だったということになるだろうか。70年代に数あるシンガーソングライターたちが歌うテーマや音楽的方向性を明確に定めきれず苦悩した中、彼の音楽はその行く末がしっかり見定められていた、そのことがよくわかる名作アルバムだと思う。[収録曲]1. Running on Empty2. The Road3. Rosie4. You Love the Thunder5. Cocaine6. Shaky Town7. Love Needs a Heart8. Nothing but Time9. The Load-Out10. Stay1977年リリース。 【Aポイント+メール便送料無料】 ジャクソン・ブラウン / 孤独なランナー[CD] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年09月01日
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500万アクセス記念~いま聴きたい曲(その24) 引き続きジャズの分野から、今回は帝王マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の演奏です。1980年代のものですが、曲自体はジャズ・スタンダードやジャズ・ミュージシャンによるものではなく、その当時のシンディ・ローパーによるヒット曲です。 まずは、マイルスのアルバム『ユア・アンダー・アレスト』に収録されている「タイム・アフター・タイム(Time After Time)」をお聴きください。 続いては、ライヴ演奏のビデオです。1985年、モントリオールでのライヴ演奏の模様で8分の長尺です。幻想的な雰囲気を醸し出す演奏で、ジョン・スコフィールドのギターもいいです。 1991年にマイルスは亡くなりましたが、時の流れは早いもので、来年で没後30年となります。まだまだ本ブログで取り上げたい彼の作品もたくさんありますので、少しずつ記事にしていけたらと思っていたりします。[収録アルバム]Miles Davis / You’re Under Arrest(1984~85年録音) ユア・アンダー・アレスト [ マイルス・デイビス ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年08月20日
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600万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その2) 今回の“いま聴きたい曲”は、サンタナ(Santana)とマナー(Maná)の共演による「コラソン・エスピナード(Corazón espinado)」というナンバーです。サンタナは言わずと知れたラテン・ロック、ジャズ・ロックの先駆的バンドで、ギタリストのカルロス・サンタナがメキシコ出身というのもよく知られた話です。そのカルロス・サンタナがメキシコのトップバンドであるマナーと共演しているのがこの曲です。 サンタナの作品として1999年にリリースされた『スーパーナチュラル』では、他のアーティストをゲストに招いて様々な共演を実現しました。そこに収められた1曲がこのマナーとの共演曲でした。 その後、この曲はサンタナも演奏しましたが、一方でマナーの定番曲としてライヴでも頻繁に演奏されていきました。そんなわけで、マナーの単独のライヴ演奏シーンということで、2013年のライヴ(南米チリのビニャ・デル・マール音楽祭)での映像をご覧ください。 [収録アルバム]Santana / Supernatural(1999年リリース) スーパーナチュラル/サンタナ[CD]【返品種別A】 Santana サンタナ / Supernatural 輸入盤 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2021年03月20日
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600万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その24) さて、メキシコの次はブラジルです(笑)。といっても、ブラジルのアーティストというわけではなく、表題が「ブラジル(Brazil)」というナンバーということで取り上げます。正確には、「アクアレラ・ド・ブラジル(Aquarela do Brasil)」というのがポルトガル(ブラジル)語での原題で、ブラジルの曲なのですが、英語圏(米国)で取り上げられたものをお届けします。英語圏ではわかりやすくするためか、単に「ブラジル」と呼ばれています。 ジェフ&マリア・マルダー(Geoff & Maria Muldaur)は、1960年代にジム・クェスキンのジャグ・バンドで出会って結婚したデュオです。この2人の名義での活動としては、1972年に離婚するまでの間に2枚のアルバム作品を残しています。ジェフがヴォーカルをとる「ブラジル」をどうぞ。 この曲は、とても有名なナンバーですので、いろんな人が歌ったり演奏したりしています。ブラジル出身のアントニオ・カルロス・ジョビンや、ジャズ・ギター奏者のジャンゴ・ラインハルトなどもその例なのですが、今回のもう1つの動画としては、英語圏の大物ということで、フランク・シナトラのものをお聴きいただこうと思います。シナトラによる「ブラジル」をどうぞ。 [収録アルバム]Geoff & Maria Muldaur / Pottery Pie(1970年リリース)Frank Sinatra / Come Fly With Me(1958年リリース) 【輸入盤CD】Geoff Muldaur/Maria Muldaur / Pottery Pie 【K2018/3/30発売】(ジェフ・マルダー&マリア・マルダー) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2021年04月14日
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800万アクセス記念~いま聴きたいこの1曲(其の7) ジャズ・ナンバーが続きます。ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)は、テキサス州出身のトランペッター(1924-1972年)で、個人的にたいへんお気に入りの演奏者です。 筆者は、“静も動もカッコいい”などと言いながら、すっかり虜にされているのですが、どちらかと言えば“静”の代表作である『静かなるケニー』に所収の「蓮の花(Lotus Blossom)」というのが、今回取り上げるナンバーです。 “静”と言ってしまうとしんみりとかしっとりしたものを想像される方が多いでしょうが、この曲、全然そうじゃないんですよね。おとなしめながら“熱い”トランペット演奏なのです。ともあれ、元の曲演奏をお聴きください。 ちなみに、“蓮の花”という意味の、少々紛らわしい曲(「ロータス・フラワー」)が、これ以前に録音の『アフロ・キューバン』に収められています。この盤の方は、“動”の代表作と言われたりしますが、この曲だけ少し浮いていて、バラードです。 「ロータス・ブロッサム」(こちらは「エイジアティック・レエズ(Asiatic Raes)」の名称でソニー・ロリンズが吹き込んでもいます)と「ロータス・フラワー」。いったいどういう関係にあるのか、はたまた単に“蓮好き”だったのか、筆者が知らないだけなのかもしれませんが、どなたかご存じならぜひ教えていただきたいところです。ともあれ、その「ロータス・ブロッサム」の方をお聴きください。 静かなるケニー +1 [ ケニー・ドーハム ] アフロ・キューバン +2 [ ケニー・ドーハム ] ケニー・ドーハム|フォー・クラシック・アルバムズ [ ケニー・ドーハム ][収録アルバム]Kenny Dorham / Quiet Kenny(静かなるケニー)(1959年録音)Kenny Dorham / Afro-Cuban(1955年録音) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2022年09月25日
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過去の幻影の呪縛から逃れることができた、"ツェッペリンのようであり、ツェッペリンのようでない"アルバム レッド・ツェッペリンの元メンバー、ジミー・ペイジ(ギター)とロバート・プラント(ヴォーカル)が再び手を組んで活動していた時期の一枚。今さら説明不要だろうが、レッド・ツェッペリンは1969年のファースト・アルバム以降、確固たる地位と名声を築き上げた伝説のハード・ロック・バンドである。1970年代を駆け抜け、1980年のメンバーの死(ドラムのジョン・ボーナム、32歳で窒息による事故死)で解散を迎えるまでに、偉大なバンドとしての立場を確立した。 "伝説的になってしまった"ことにより、残されたメンバーのその後の活動は、この"ツェッペリンの呪縛"にかなり強く縛られることになったように筆者には思われる。これまで時に"再結成"して演奏し(記憶に新しいところでは2007年の、チャリティー・ペアチケットに2000万円近い値がついた再結成ライブ)、その都度、ファンの熱狂の渦の中に晒される…。伝説的な過去がどこまでも付いて回るというのは、過去の華やかな栄光であると同時に、本人たちの"現在"にとってはある種の不幸なのかもしれない。 この時のペイジとプラントの合体もそうであった。1994年に二人が合流し、アルバム制作とMTVアンプラグドのツアーを行ったが、ツェッペリン時代の曲こそが、多くの聴衆の求めるものであった。その意味では、「ツェッペリンに戻るのは嫌だ」と述べていたロバート・プラントの発言を考えると、このまま消え去っても不思議のないプロジェクトだったと思う。ところが、1998年、本作『ウォーキング・イントゥ・クラークスデイル(Walking into Clarkesdale)』が届けられた。米インディーズ・シーンからプロデューサーにスティーヴ・アルビニを迎えて完成したこのアルバムは、"ツェッペリンのようであり、ツェッペリンのようでない"ものであった。 二人ともツェッペリンのようなものは作りたくなかったはずだ。というのも、そうしたものは70年代の偉大な伝説の焼き直しに過ぎず、あの伝説的な偉業を超えるのは不可能に近いからだ。しかし、無理に非ツェッペリン的なものを作ろうとしても、聴衆や評論家の評価に結びつかないし、何よりセールスも上がらないというジレンマが一方にはある。プロデューサーが当たりだったのか、それとも本アルバム制作に至る過程がたまたまそういう環境を整えることになったのかはわからない。けれども、二人がツェッペリン的なものを目指さず、かといって非ツェッペリン的なものも目指さなかった結果が、本盤のような気がする。両極端を意識しなかったがゆえに、結果として出てきたのは、"ツェッペリン的であり、なおかつツェッペリン的でない"音楽だったというわけだ。1曲目からスリリングでわくわくする興奮は、ツェッペリンのいくつかのアルバムと同様である。それでいて、音は明らかに90年代のサウンドなのである。 残念ながら、このアルバムの後、二人のプロジェクトはすっかり中断されてしまった。本盤が制作された時の緊張感と物事のバランスはそう永く続くような類のものではなかったということか。本作からおよそ10年後、北京五輪の閉会式の舞台に姿を現したジミー・ページはすっかり年をとったように筆者は感じた。ツェッペリン解散から19年後に起こった奇跡は、はたしてもう一度、繰り返されるであろうか。本盤のような奇跡の再現がもう一度くらい起こって欲しいというのは、多くのファンの願いだと思うのだが…。[収録曲]1. Shining in the Light2. When the World Was Young3. Upon a Golden Horse4. Blue Train5. Please Read the Letter6. Most High7. Heart in Your Hand8. Walking into Clarksdale9. Burning Up10. When I Was a Child11. House of Love12. Sons of Freedom13. Whiskey from the Glass(日本盤ボーナス・トラック)1998年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ウォーキング・イントゥ・クラークスデイル [ ジミー・ペイジ&ロバート・プラント ]
2009年10月10日
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ファンクさを感じるクロスオーバー盤 フュージョンやクロスオーバーといった流れは、1960年代後半から1970年代にかけて展開していった。少なくともジャズの側から見れば、電気楽器が導入され、他ジャンルの音楽が取り入れられていくことで、新たな音楽が生み出された一方、“耳障りがよい”あるいは“大衆迎合的な”音楽として批判も受ける。 確かに、猫も杓子もクロスオーバーみたいな時代があった。けれども、その中には、それに飛びついたアーティストもいればそうではないアーティストもいた。1960年代から80年代にかけてとりわけ数多くの吹込みを残しているラムゼイ・ルイス(Ramsey Lewis)は、後者の部類で、彼がやろうとしていたことに時代が追い付いていったタイプだったのではないかと思う。 分類するならば“ジャズ・ピアニスト”ということになるのだろうけれど、当初からR&B色あるいはファンク色の強いピアノ奏者だった。1960年代後半、モーリス・ホワイト(後のアース・ウィンド・アンド・ファイアーのリーダー)をドラマーとして活動しており、1970年代に入ると今度はモーリス・ホワイトがラムゼイ・ルイスのアルバムをプロデュースしたりということがあった。こうしたことからも、ジャンルで切り分けがたい行き来があったことがよくわかる。 本盤のプロデュースは、EW&Fのメンバーだったラリー・ダンが担当している。耳障りがよく、お洒落なBGMにも最適な1枚といった仕上がりになっているが、随所でなるほどファンクにきまっている。そのファンクな部分というのは、上述の通り、“付け焼刃”ではなくて、ラムゼイ・ルイス自身がずっと維持してきたノリでありグルーヴなのだろう。言い換えると、彼が時代に適合していったというよりは、時代が彼に追いついてこういう作品が生まれることになったのだろうという気がする。筆者はこういう傾向の音楽はあまり得意ではなく、たまにしか聴かないし、ラムゼイ・ルイスの多作な作品群もその一部しか知らない。でも、この人の作品を聴くにつけ、うわべだけではないプロフェッショナルぶりと、それがプロデュースも含めうまく作品に昇華されたことの絶妙さを感じる。筆者の中では、本盤はそうした感覚を与えてくれる1枚だったりする。[収録曲]1. Tequila Mockingbird2. Wandering Rose3. Skippin'4. My Angel's Smile5. Camino El Bueno6. Caring For You7. Intimacy8. That Ole Bach Magic1977年リリース。[パーソネル]Ramsey Lewis (p, elp, harpsichord, syn)Ron Harris (b, 2, 4, 5, 6, 7)Verdin White (b, 1, 3, 8)Keith Howard (ds, 2, 4, 5, 6, 7)Leon Ndugu Chancler (ds, timbales, 1; ds, perc, 8)Fred White (ds, 3)Byron Gregory (g, 2, 4, 5, 6, 7)Al McKay (g, 1, 3, 8)Johnny Graham (g, 8)Derf Reklaw Raheem (perc, 2, 4, 5, 6, 7)Philip Bailey (perc, 1; conga, 3, 8)Victor Feldman (elp, perc, 3)Eddie Del Barrio (elp, 8)Larry Dunn (syn prog, key, 1, 8)Ronnie Laws (ss, 1)Ernie Watts, George Bohannon, Oscar Brashear (horns, 1, 3, 8) Eddie Del Barrio, Larry Dunn (horn arr,1, 3, 8)Bert DeCoteaux, Ramsey Lewis (rhythm arr, 2, 4, 5, 6, 7)Bert DeCoteaux (strings & horn arr, 2, 4, 5, 6, 7)George Del Barrio (strings arr, conductor, 1, 3, 8) [期間限定][限定盤]テキーラ・モッキンバード/ラムゼイ・ルイス[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方は、“ぽちっと”応援お願いいたします! ↓ ↓
2019年07月26日
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気まぐれ80s~Chapter 13(その4) アメリカン・ロックのナンバーが続きます。トム・ペティに続いて、今回はブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)です。今回の曲も、ずっと昔に動画なし(楽天ブログでYou Tubeが貼り付けられなかった頃)の過去記事があるものですが、1980年代を代表する大ヒット作『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』の中に収められた「ノー・サレンダー(No Surrender)」という曲です。 まずは、懐かしいジャケット(映像は動きません)とともに、アルバムに収められた演奏をお聴きください。 この曲には、当時からライヴで披露されていた“アコースティック・ヴァージョン”があります。1984年、トロントでのライヴ演奏をお聴きください。 ところで、この“アコースティック・ヴァージョン”には、後々テンポを早めたものもあって、やはりライヴで披露されています。その一方、元の“ロック・ヴァージョン”に該当する演奏もライヴで披露し続けています。最後に、その両方をご覧ください。一つめは、何年のものか不明ですが、このアレンジのライヴ・パフォーマンスは1990年代辺りからやっているようです。二つめは、2013年、ロンドンでのライヴの映像です。 [収録アルバム]Bruce Springsteen / Born in the U.S.A.(1984年)Bruce Springsteen & the E Street Band / Live: 1975-85(1986年) ←アコースティック・ヴァージョンを収録 ボーン・イン・ザ・U.S.A/ブルース・スプリングスティーン[CD]【返品種別A】 ボーン・イン・ザ・U.S.A. [ ブルース・スプリングスティーン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年07月19日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 8(その10) 今回の名曲選、最後は1970年代末のスティクス(Styx)のヒット・ナンバーです。1970年代後半に人気を獲得していき、1979年にシングル1位を獲得したのが、この「ベイブ(Babe)」という曲でした。 まずは、1970年代から80年代への橋を渡す役割を果たした(と個人的には思っています)この名バラードのスタジオ・ヴァージョンをお聴きください。 続いては、往時のスティクスの雄姿をご覧ください。トミー・ショウもデニス・デ・ヤングも、みんな若いです。1980年当時の映像とのことです。 最後にもう一本。2014年のロサンゼルスでのステージの様子です。35年の時の経過を感じさせない「ベイブ」をお聴きください。 [収録アルバム]Styx / Cornerstone(1979年) STYX スティックス / Cornerstone 【SHM-CD】 【輸入盤CD】Styx / Greatest Hits (スティクス) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年09月22日
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コルトレーン初期の名作に私たちが求めているものは何なのか ジョン・コルトレーン初期の名作『ソウルトレーン(Soultrane)』。今さら説明不要ではあろうが、1958年に当時在籍していたプレスティッジ・レーベルからリリースされたアルバムである。名盤として名高いものの、その半年前に制作された『ブルー・トレイン』がブルーノートの1500番台(Blue Note 1577)ということもあり、どちらかと言えば、その陰に隠れてしまっている感がある。とはいえ、リー・モーガン(トランペット)やカーティス・フラー(トロンボーン)を擁して録音された『ブルー・トレイン』に比べ、本作『ソウルトレーン』の方は、ワン・ホーン・カルテットで吹き込まれたもので、コルトレーンのテナー演奏をじっくり聴きたいという人には向いていると思う。 さて、本盤『ソウルトレーン』は、ミドルテンポの 1.「グッド・ベイト」で幕を開ける。シンプルなテーマから始まりそのままアドリブになだれ込む。このソロは、細かいフレーズを含みつつも、緊迫感はさほど高くなく、リラックスした演奏という印象を与える。 2.「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」は、少し甘めのバラードで、数年後のアルバム『バラード』(1962年)での演奏を髣髴とさせる(ただし『バラード』では各曲が短いのに対して、本盤のこの曲は長尺で、10分を超える演奏である)。 3.「ユー・セイ・ユー・ケア」では、今度はテンポアップして、明るく躍動的になる。全体的に本アルバムでは抑え気味に聴こえるレッド・ガーランド(ピアノ)も、この曲に関しては、得意のプレイで鍵盤上を弾み転がるようなソロを見せている。コルトレーンはといえば、やはりリラックスした楽しげな雰囲気の演奏だ。続く 4.「テーマ・フォー・アーニー」は再びスローバラード。コルトレーンのテナーは文字通りこの曲を"歌い上げ"ている。 そして、アルバムを締めくくるのは、 5.「ロシアの子守唄」であるが。この曲が問題だ。筆者は、この曲が本アルバムに収められたことが必ずしもよくなかったのではないかと思っている。無論、この曲が嫌だということではないし、曲そのものや演奏自体が悪いと言っているわけでもない。ハイ・テンポで技巧をつくし、コルトレーンが吹きまくる。音を敷き詰めたかのような、いわゆる"シーツ・オブ・サウンド"の典型だ。けれども、どう考えてもこの演奏だけが本盤全体を通しての流れの中で浮いてしまっている。作ったコルトレーンの側からすれば、後の諸作品に通ずることになる実験的試みの1曲だったのかもしれない。けれども、この曲の代わりに、1曲目のような調子の名演があと1曲含まれていたならば、本作『ソウルトレーン』は、『ブルー・トレイン』すら押しのけて、誰もが認めるダントツの「コルトレーンの初期傑作」、もしくは、「これぞコルトレーンの入門盤」になっていたかもしれないという気がする。 オリジナルライナーにも5.の形容としてシーツ・オブ・サウンドという表現への言及があるという(オリジナルライナーを書いたのは、この表現を最初に使った音楽評論家アイラ・ギトラーによる)。手元にはオリジナルライナーがないので確認はできなかったが、手持ちの日本盤CDのライナー(最初にCD化された頃の、LPと共用だったライナー文)でも同じように、シーツ・オブ・サウンドの典型としてこの曲が紹介されている。その他、名盤ガイド類の紹介などでも、何かとこの「ロシアの子守唄」への言及が必須になっているようだ。 しかし、それはよくないんじゃないかと思う。5.のイメージを求めて本盤を聴いた人は、そのイメージとは異なる他の4曲にきっとがっかりしてしまう。けれども、そうした先入観なしに本盤を聴いてみると、1.~4.がメインであって、5.が特殊な感じがする。つまり、シーツ・オブ・サウンドが爆発する以前の、オーソドックスに演奏するコルトレーンを素直に楽しむという発想を最初から与えてくれた方がいいのではないだろうか。音楽的革新度は高くないが、独自のサウンドを目指そうとしながらも(実際、前年にはセロニアス・モンクやポール・クイニシェットとの共演など精力的にこなしている)、ハード・バップの語法を消化し、正統派の演奏をしていたコルトレーンの一瞬間を捉えたアルバム。そのようなアルバムと見なせば、1.~4.はいずれも文句のない超名演。暖かく、優しく、時に静かで、時に躍動的な、"正統派"なコルトレーンを楽しめばいいと思う。その上で、5.に興味が湧いたならば、シーツ・オブ・サウンドなり、コルトレーンの進化なりを、続く他のアルバム群で楽しむという道が開けるということではなかろうか。[収録曲]1. Good Bait2. I Want To Talk About You3. You Say You Care4. Theme For Ernie5. Russian Lullaby[パーソネル、録音]John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)録音:1958.2. 7Prestige 7142 [枚数限定][限定盤]ソウルトレーン/ジョン・コルトレーン[CD]【返品種別A】
2009年08月16日
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時代をつなぐ架け橋としてのCCRを振り返る CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)は、米国西海岸出身ながら南部的なサウンドで人気を集めたロック・バンド。その前身は1950年代末に遡るが、彼らが有名になったのは、1968年にバンド名をクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルと改め、「スージーQ」をヒットさせてからである。その後は1969年から70年にかけて次々とヒットを飛ばすが、1972年に解散した。1993年にはロックの殿堂入りを果たしている。 本作は1980年のリリースだが、内容としては1970年の音源を蔵出ししたもの。当初は『ロイヤル・アルバート・ホール・コンサート(The Royal Albert Hall Concert)』というタイトルだったが、実際にはカリフォルニアのオークランド・コロシアム(現オー・ドットコー・コロシアム)の内容だということが判明したため、タイトルがリイシューの際、ただ単に『ザ・コンサート(The Concert)』に変わったという、笑えない何とも間抜けな経緯がある。 1.「ボーン・オン・ザ・バイヨー」(5分強)と12.「ザ・ナイト・タイム・イズ・ザ・ライト・タイム」(9分)の2曲はやや長めだが、残りは基本的に3分以下、もしくは長くても3分台に収まっている。LP時代の曲配分でも、全体としては1枚ものにもかかわらず、A面8曲、B面6曲の計14曲という多めの収録曲数である。このコンパクトさはCCRのよさのひとつでもあった。簡潔に分かりやすく、しかし単純ではないロックを聴かせるバンドという、彼らの特徴は、このライブ音源でも非常によく出ている。 アメリカン・ロックという括りでその歴史を振り返る時、CCRというのは実に重要なバンドだったのだと感じる。CCRの音楽的影響については、サザン・ロックの源流としての評価がいちばんよくささやかれる。もちろん、その点はものすごく重要で、レーナード・スキナード、オールマン・ブラザーズといった南部系ロックとのつながりは無視することができない。けれども、それと同時に、70年代以降に台頭してくるアメリカン・ロックの本流を考える上でもCCRが大きなカギになっている気がする。 CCRの世代から見てロックの先駆けはプレスリーへと流れてくるいわゆる“ロックンロール”だった。その“ロックンロール”が70年代以降の“ロック”に変貌していく架け橋こそが、短い期間ではあるが一気にヒットを飛ばしたCCRだったように思う。3分完結的な分かりやすい演奏(過去記事「雨を見たかい(ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン)」を参照)を中心にしながらも、一本調子とは縁遠いロック。彼らがいなかったら、サザン・ロックが台頭しなかったばかりか、トム・ぺティ(たとえば『破壊』)も、ブルース・スプリングスティーン(たとえば『明日なき暴走』・同後編)も、つまりは70年代途中以降、80~90年代へと連なっていくアメリカン・ロックの“本流”とでも呼ぶべき流れすら、出てくることはなかったかもしれない。そう思うと、CCRは、プロトタイプのロックと、現代的な意味でのロックとの間に、とてつもなく重要な橋渡しの役割を担ったのだということがよくわかる気がする。[収録曲]1. Born on the Bayou2. Green River3. Tombstone Shadow4. Don't Look Now (It Ain't You or Me)5. Travelin’ Band6. Who'll Stop the Rain?7. Bad Moon Rising8. Proud Mary9. Fortunate Son10. Commotion11. The Midnight Special12. The Night Time Is the Right Time13. Down on the Corner14. Keep on Chooglin1980年リリース。 Creedence Clearwater Revival (CCR) クリーデンスクリアウォーターリバイバル / Concert: 40th Anniversary Edition 輸入盤 【CD】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年04月23日
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500万アクセス記念~いま聴きたい曲(その7) 梅雨明けとともに夏到来ということで、夏に関連したナンバーをもう一つ。前回とはうって変わって、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)による「サマータイム(Summertime)」です。ジャニスの解釈によるこのナンバーが世に出たのは、1968年のビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのアルバム『チープ・スリルズ』でした。 「サマータイム」は、ジョージ・ガーシュウィン作曲のオペラ曲で、ジャズ・スタンダードとして定着したこともあり、1100件を超えるジャズの録音がなされているとか、はたまた、この曲のカバーは、この世に25000以上存在するとか言われたりします。そうした数あるヴァージョンの中でも、ジャニスによるものは、その歌唱力と迫力で他を圧倒しています。 まずは、上記『チープ・スリルズ』に収録のものをお聴きください。 続いてもう一つ。動いているジャニスのパフォーマンスもご覧いただこうかと思います。1969年、ドイツはフランクフルトでの様子とのことです。 周知のように、ジャニスは1970年の急死により、27歳という短い人生を閉じることになってしまいました。とはいえ、上記のような姿を見るにつけ、きっとこの人の人生の濃度は、ふつうの人の何倍も濃かったのだろうとも想像してしまいます。[収録アルバム]Big Brother & the Holding Company / Cheap Thrills(1968年) グレイテスト・ヒッツ [ ジャニス・ジョプリン ] チープ・スリル/ジャニス・ジョプリン[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2020年08月02日
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600万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その9) 1970年代にプログレッシヴ・ロックの名作(例えばこちらやこちら)をいくつも残したイエス(Yes)は、1980年代に入った頃、数年間活動を停止していた。そうした中で“再結成”として注目を浴び、イエス復活を告げるヒットとなったのが、1983年のアルバム『ロンリー・ハート(原題:90125)』でした。 そこに収録されたシングル・ヒット曲、「ロンリー・ハート (Owner of a Lonely Heart)」をお聴きください。 かつてのプログレ色とは異なり、ポップ色の強いナンバーです。賛否両論あるでしょうが、イエスとしてビルボードのシングル・チャートで1位に達した唯一の曲となりました。日本でもCMなどで繰り返し使われたので、記憶に残っている人も多い曲かと思います。 さてそれから35年ほどが経過した時点でのライヴ映像もご覧いただこうと思います。2017年、ロックの殿堂でのライヴ・パフォーマンスです。 [収録アルバム]Yes / 90125(1983年リリース) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2021年03月28日
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サビーナ曲選(その4) ホアキン・サビーナ(Joaquín Sabina)は、スペインの首都マドリードについての感情を語ったナンバーを書いています。以前に取り上げた「ジョ・メ・バホ・エン・アトーチャ」はその一つです。今回は、それとは別の、「ポンガモス・ケ・アブロ・デ・マドリー(Pongamos que hablo de Madrid)」という曲を取り上げたいと思います。“マドリードの話をしてみようか”といった意味合いの表題です。 なんだか観光協会の映像みたいな雰囲気に仕上がっている映像ではあるのですが、まずは、実際のマドリード市内各地の場所や人の様子とともに、この曲をお聴きください。上下にスペイン語の詞とその英訳も表示されています。 サビーナはスペイン南部、アンダルシア州の出身です。首都であるマドリードに寄せる想いは、日本に置き換えると、東北などの地方から出てきた人が東京についての想いを歌ったり、詞に表現したりする(東京に限らず、九州から来た人が大阪について歌う、なんてパターンもあるかと思います)というのに似た感じなのかなと思ったりします。 続いての映像は、1986年のライヴ盤に収められた「ポンガモス・ケ・アブロ・デ・マドリー」の映像です。サビーナが30歳代後半だったころの姿です。 [収録アルバム]Joaquín Sabina / Malas compañías(1980年)Joaquín Sabina / Joaquín Sabina y Viceversa en directo(1986年) ホアキンサビーナ Joaquin Sabina - En Directo (Colored Vinyl) LP レコード 【輸入盤】 ホアキンサビーナ Joaquin Sabina - Malas Companias - Picture Disc LP レコード 【輸入盤】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年06月21日
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形式も録音も異色の名盤 ジョー・ジャクソン(Joe Jackson)という名の“奇才”は、音楽の方向性も多様なだけに、“これぞ代表盤”というのが決めづらく、したがって彼の作品でどれがベスト作かという評価も聴き手によっていろいろということになってしまいがちである。なので、あくまで筆者個人の好みや感想をもとに、ということになるのだが、ジョー・ジャクソンの作品群でベストのものを順位付けして挙げるとすれば、間違いなく上位に位置するのが、この『ビッグ・ワールド(Big World)』である。 本盤は、ニューヨークのラウンドアバウト劇場という400人収容の小ぶりな劇場で実際の聴衆を迎えて録音された。ただし、ふつうのライブ録音とは違う。拍手も声援もなしの(ジョー・ジャクソンがそのように要求した)、静かな聴衆という異例のシチュエーションで生録りされた。 発売時の仕様も異色であった。当時のLPは2枚組で発売されたものの、音楽が入っているのは、いわゆるA面・B面・C面だけ。つまり、2枚目の裏(D面)は音楽なしというもので、レコード1.5枚分の内容ということになっていた。そもそもは10曲ほどのアルバムを考えていたが、結果的に内容が充実し、1.5枚分というヴォリュームに収まったらしい。ちなみに、総収録時間は60分ほどなので、現在はCD1枚に収まっていいて、CDでは、“パート1”が収録曲の1.~5.、“パート2”が6.~9.、“パート3”が10.~15.となっている。 作品ごとにがらりと作風を変えたりするジョー・ジャクソンだが、本盤ではタイトルの通り“世界”がキーワードになっている(アルバムのジャケットには“Big World”の語が世界各地の言語で記されており、日本語か中国語か不明なものの“大世界”の文字も見える)。ストレートなロックンロール調の曲もあれば、中近東的なメロディ、はたまたアルゼンチンのタンゴ風のものなどがあり、15曲聴きながらちょっとした世界旅行のようでもある。 私的な好みで何曲か聴きどころを挙げておきたい。1.「ワイルド・ウェスト」と10.「サヴァイヴァル」は録音方法から来る緊張感がひしひしと伝わってきて、いい意味でスリリングな演奏に仕上がったナンバー。特に後者では、ライブ録音で納得いかずにやり直す場面もあったとのことだが、このテンションは個人的には大好き。2.「ライト・アンド・ロング」は渋さがウリで、本盤の中でも特に気に入っている曲のひとつ。9.「フィフティ・ダラー・ラヴ・アフェアー」は、暗い曲調とアコーデオン(ジョー・ジャクソン自身が演奏)が印象的な、完成度の高い曲。14.「ホームタウン」はこの頃の他のアルバムにも共通するジョー・ジャクソン節全開の名曲である。 上で書いたように、ライブ一発録り形式なために、全体を通して緊張感にみなぎっている。ライブ録音と言っても通常のライブでの良くも悪くも生中継的な要素が入るのではない。むしろ、スタジオでの一発録音に近い雰囲気と演奏の質で、上にある名曲たちを聴くのももちろんながら、その雰囲気と演奏の出来を堪能するだけでも一聴の価値ありのアルバムである。[収録曲]1. Wild West2. Right and Wrong3. (It's A) Big World4. Precious Time5. Tonight and Forever6. Shanghai Sky7. Fifty Dollar Love Affair8. We Can't Live Together9. Forty Years10. Survival11. Soul Kiss12. The Jet Set13. Tango Atlantico14. Home Town15. Man in the Street1986年リリース。 【送料無料選択可!】ビッグ・ワールド / ジョー・ジャクソン 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2012年02月23日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の5)~ジョン・コルトレーン編 第5回となる今回は、超有名盤からこの曲をいってみたいと思います。ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の『ソウルトレーン(Soultrane)』に収録の「グッド・ベイト(Good Bait)」です。 時々近隣から練習中のサックスでこれが聞こえてくるというのもあるのですが、この曲を取り上げたくなった理由は、今回は他にあって、実は“トンカツ”なのです(笑)。たまに行くトンカツ屋さんでなぜがジャズが流れています。店主の趣味なのか何なのか不明ですが、最近は焼き肉を食べにいってもジャズが流れていたりするわけですから、そんなに珍しいことでもないのかもしれません。 ともあれ、先回このお店へ行った際、トンカツの定食を注文して待っている間に流れてきたのが、コルトレーンのこれだったわけです。有名な演奏ですし、“やっぱりトンカツとは合わないか…”と思いながら定食の到着を待っていたのですが、すっかり食べ終わる頃には、「グッド・ベイト」の気分でおいしくいただきました。ちなみに、店を出た時に流れていた曲は記憶にありません。そう、トンカツを食べながら、頭の中ではこのコルトレーンの演奏がひたすら駆け巡っていたのでした…。 【輸入盤】JOHN COLTRANE ジョン・コルトレーン/SOULTRANE(CD)下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月13日
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今も色褪せないジェフ・ベックの代表作 音楽というか“音”の表現の仕方には、二通りのアプローチがあるように思う。頭の中の“音”から出発するタイプと、楽器から出発するタイプとでも言えばいいだろうか。結果、行きつく先は似ているのかもしれないけれど、前者の代表がジミ・ヘンドリックス、後者の代表がジェフ・ベック(Jeff Beck)ではないかと思って見たりもする。 つまりは何が言いたいかというと、ジェフ・ベックの場合、自身が演奏するエレクトリック・ギターという楽器にどんな音が出せるかというチャレンジからスタートしているのではないだろうか、ということである。“表現したい音”ありきでその音の出し方を考えるのではなく、ここにあるギターにどんな音が出せるのだろうか、と考えていそう。結果としては、どちらも革新的な音が生まれてくることになるのだけれど、ギタリストとしてのテクニックに秀でたジェフ・ベックらしい思考方法が、この作品の背後にあったように思える。 ヤードバーズ、ジェフ・ベック・グループ(第1期、第2期)、ベック・ボガート・アピスと活動の場を変えてきて、この1975年発表ののアルバム『ブロウ・バイ・ブロウ(Blow By Blow)』にプロデューサーとして迎えられたのはジョージ・マーティン。これまでとは違い思い切ったイントゥルメンタル・アルバムという企画だったが、インスト盤としては異例のヒット(ビルボード4位)を記録した。これまでのロック畑のバックグラウンドのみならず、ジャズやフュージョンの要素も取り込まれ、エレキギターの可能性を存分に広げられることを示す作品となった。 収録曲の中で注目なのは、ヴォーカルラインのメロディをギターで見事に聴かせるビートルズの2.「シーズ・ア・ウーマン」、さらにじっくり聴かせるタイプのスティーヴィー・ワンダーの曲の6.「哀しみの恋人達」、軽快さが心地よい1.「分かってくれるかい」、ジョージ・マーティンのオーケストラ・アレンジとベックのギターがうまく調和した長編ナンバーの9.「ダイヤモンド・ダスト」、といった辺りが筆者のお気に入り。既に発表から40年近く経つとはいえ、あらためて聴けば“ギターにこんなことができるのか”、“ああ、こういう風にギターを操ってみたい”と思わされるフレーズが詰まっていて、その意味では、決して過去の時代の産物ではなくて、これからも聴き継がれたい名盤なのだと思う。 余談ながら、かつての邦盤タイトルは『ギター殺人者の凱旋』。多少引いてしまいそうなタイトルの付け方だけれど、これから始めて聴く人は、“殺されそうな怖いサウンド”では全然ないので、ご安心を(笑)。[収録曲]1. You Know What I Mean 2. She's a Woman 3. Constipated Duck4. Air Blower 5. Scatterbrain 6. Cause We've Ended as Lovers7. Thelonius 8. Freeway Jam 9. Diamond Dust 1975年リリース。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】【送料無料】ブロウ・バイ・ブロウ/ジェフ・ベック[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年04月22日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 7(その3) 続いては、ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ、Electric Light Orchestra)の1977年のヒット曲、「テレフォン・ライン(Telephone Line)」です。前年に発表されたアルバム『オーロラの救世主(ア・ニュー・ワールド・レコード)』に収録されたナンバーです。アルバムでの発表の翌年にシングル・カットされ、全米7位、全英8位(さらにはNZやカナダでは1位)を記録しました。 ELOの中心はジェフ・リンで、彼がほとんどの曲を作っているわけですが、中でもこの曲は最高の出来のポップ・バラードです。いつの頃からかロック・バンドがオーケストラと共演するなんてことも増えてきましたが、この曲での重厚なオーケストラの使い方は、いま聴いても格別の仕上がりだと思います。 さて、後年のライヴ演奏もお聴きいただこうと思います。2017年、ロンドンのウェンブリー・スタジアムでのライヴの模様です。 [収録アルバム]ELO / A New World Record(オーロラの救世主)(1976年)Jeff Lynne's ELO / Wembley or Bust(2017年) [枚数限定][限定盤]オーロラの救世主/エレクトリック・ライト・オーケストラ[CD][紙ジャケット]【返品種別A】 【輸入盤CD】Electric Light Orchestra / A New World Record (Expanded Version) (エレクトリック・ライト・オーケストラ) 【輸入盤CD】Jeff Lynne's ELO / Wembley Or Bust (Digipak)【K2017/11/17発売】(ジェフ・リンズ・ELO) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2021年09月09日
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気まぐれ80s~12thシーズン(その5) 今回は、ヴァン・ヘイレン(Van Halen)の曲を取り上げたいと思います。1988年の「ホエン・イッツ・ラヴ(When It's Love)」というナンバーで、アルバム『OU812』(読み方は、“オー・ユー・エイト・ワン・トゥー”)からのシングル曲でした。 1988年のナンバーですので、デイヴィッド・リー・ロスがバンドを脱退し、その危機を乗り越えてバンドが成長し続けた時期、サミー・ヘイガーがヴォーカルを務めたいた時代の曲です。全米チャートで最高位5位とヒットし、ハード・ロック・バンドによるいかにもバラード系の曲だったわけですが、そういう商業主義的(?)な批判を横に置けば、やっぱり名曲に数えられんじゃないかと未だに思う次第です。 往時のライヴでのステージの雄姿もご覧ください。1990年代初頭のものです。サミー・ヘイガー色が全開で、デイヴのファンには異論があるかもしれませんが、ヴォーカリストの脱退を経たバンドが途切れることなくトップに居続けられたのは、紛れもなくこの人の功績と言っていいように思います。今ではもう見ることのできない、エディの姿と共にご覧ください。 [収録アルバム]Van Halen / OU812(1988年) 【輸入盤】Ou812 [ Van Halen ] 【売り尽くし】OU 812【CD、音楽 中古 CD】メール便可 ケース無:: レンタル落ち 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2022年04月30日
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マイルス/ギルの最高傑作の真価 マイルス・デイヴィス(Miles Davis)はアレンジャーとして名高いギル・エヴァンスと何度かにわたってコラボしている。その中で、最高傑作と謳われるのが、本盤『スケッチ・オブ・スペイン(Sketches of Spain)』である。『マイルス・アヘッド』(1957年)の美しいサウンド、苦心の末に生み出された『ポーギーとベス』(1958年)を経て、1959~60年にかけてレコーディングされたのがこの作品だった。 そもそも、この作品の制作が始まったのは、マイルスが“頭から離れなくなってしまった”という、J・ロドリーゴ作の「アランフエス協奏曲」を聴いたことに始まる。同じレコードを聴いたギル・エヴァンスもこれを気に入り、ギルのアレンジで本レコーディングを行う流れになったとのことである。 一般的なイメージとしては、“考えるギル”に“感性で臨むマイルス”ということになるのかもしれない。けれども、実際には、ギル・エヴァンスがイメージ通りに様々な編曲やパーツの組み合わせを入念に考えていたのに対し、マイルス・デイヴィスの方も相当に考え抜いての演奏ということになったのではないだろうか。マイルスが言ったとされる“あのメロディはとても強いから、柔らかく演奏すればするほど強くなるし、強く演奏すればするほど弱くなる”という言葉は、そのことを如実に反映しているように思う。結果的に、マイルスはこのスペイン音楽を力で乗り切る(というか押し切る)ことはしなかった。だからこそ、“モダン・ジャズ風スペイン音楽”になることもなければ、“スペイン音楽そのまんま”にもならなかったのだろう。 そのようなわけで、本盤に“マイルスらしさ”を求めるのはあまり正しくないかもしれないし、もちろんのことながら、“スペイン音楽そのもの”を求めるのも正当ではない。マイルスは思索の末にスペイン音楽に歩み寄り(もちろんそこにはギル・エヴァンスという編曲家の尽力が大きい)、結果として、元の音楽とも異なっていて、マイルスの歩みそのものとも違っているという、新種の音楽が作品としてでき上がった。 スペインへの憧憬など、21世紀の今(スペインが国際的観光地で、EUの一員となって、変な意味での幻想の地ではなくなったという意味において)となっては、笑い種かもしれない。でも、その“理想化されたスペイン”と、それをそのまま演じるのではなく、かといって自分流に引きつけるだけでもない演奏を見事に成し遂げたのがこの作品だと思う。当然のことながら、その立役者がギル・エヴァンスその人に他ならない。一般には1.「アランフエス協奏曲」と4.「サエタ」が名演とされる。確かに、これら2曲は文句のつけようもない感動ものだけれど、個人的には2.も5.も、というわけでほとんど全編が、上で述べたように、スペイン音楽そのままでもなければ、マイルスそのまんまでもない、という特徴の上に、見事に完成された演奏としてでき上がっているのだと思う。[収録曲]1. Concierto de Aranjuez2. Will O’The Wisp3. The Pan Piper4. Saeta5. Solea[パーソネル、録音]Miles Davies (flh, tp)Gil Evans (arr)ほか 【楽天ブックスならいつでも送料無料】スケッチ・オブ・スペイン +3 [ マイルス・デイビス ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年04月28日
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日本語に定着していなかった頃の“リヴェンジ” “リヴェンジ(リベンジ)”(本来は“復讐・報復する”だけれど、日本ではもっぱらスポーツなどの“雪辱する”に使われる)という語を日本語で使い始めたのは、どこかの総合格闘技だったような気がするが、一般に広くというと松坂大輔だろう。1999年の流行語になったが、それをさかのぼること10数年の“リヴェンジ”が今回のテーマである。 さて、ユーリズミックス(Eurythmics)は、主に1980年代に大きな人気を獲得したイギリスの2人組。バンド名の由来はシュタイナー教育で提唱されたパフォーミング・アーツ(総合芸術)のオイリュトミー(英語読みではユーリズミー)だとのこと。アニー・レノックス(Annie Lennox)とデイヴ・スチュワート(Dave Stewart)からなるデュオで、いわゆる“第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン”の波に乗って全米に進出した。彼らの6枚目(サントラ盤を4枚目に含む)となり、彼らにとって世界で最も売れたとされる作品が、1986年リリースの『リヴェンジ(Revenge)』という盤である。 さて、何に対する“リヴェンジ”なのか、結論から言うとはっきりしない。確かに、本盤の直前にアニーが離婚した。しかもその相手は“宣教師”で、ヒット曲となった1.「ミッショナリー・マン」が宣教師を歌ってはいるものの、別れた夫へのリヴェンジみたいな単純な話ではないようだ。他の曲の詞の中にも“悲しみ”や“痛み”といった表現が見られるものの、一方で、アルバム表題の『リヴェンジ』はファースト作(1981年)に収録されていた曲の表題で、しかもその曲の詞の一部が本盤の曲(8.「リトル・オブ・ユー」)にも出てくるというから、もっと複雑な理由があるのだと思われる。 音楽面では、ユーリズミックスの作品のうち、とりわけ“生の音”を重視していて、曲調もロック寄りのナンバーが耳につく。そのため、これを代表的な作品と呼んでいいかどうか、賛否両論がある。ただし、個人的にはこちらに寄った方が好みであるのは事実だったりする。そんな私的観点も含め、お薦めを何曲か挙げると、1.「ミッショナリー・マン」、3.「ホエン・トゥモロー・カムズ」、5.「ミラクル・オブ・ラヴ」、8.「ア・リトル・オブ・ユー」といったところ。これらのうち、最初の3曲(さらには収録曲2.も)はシングルカットされた。余談ながら、時代背景もあるが、ユーリズミックスのシングルのビデオはインパクトの強いものが多いので、機会があればそれらもお試しあれ。[収録曲]1. Missionary Man2. Thorn in My Side3. When Tomorrow Comes4. The Last Time5. The Miracle of Love6. Let's Go!7. Take Your Pain Away8. A Little of You9. In This Town10. I Remember You*2000年のスペシャル・エディションでは6曲追加収録(筆者は未聴)。1986年リリース。 【中古】ユーリズミックス/リヴェンジ Eurythmics ユーリズミックス / Revenge 【LP】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2018年02月10日
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200万アクセス記念 いま聴きたいあのナンバー~拡大版(15/30) 今回は1970年代のフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)のこの1曲です。ブルース・ロックのバンドとして始まり(参考過去記事(1)・(2))、やがてよりポップで聴きやすいロック・サウンドへと変化していったバンドですが、1979年の2枚組アルバム『牙(タスク)(原題:Tusk)』の表題曲です。 初めて聴いた方は、“なんだこれは?”という印象を持つかもしれませんが、何とも大掛かりで、マーチングバンドを借りてきてドジャースタジアムで撮ったのがこの映像だったりします。 『牙(タスク)』はリンジー・バッキンガム色の強い作品と言われますが、時代が変わりゆく中での試行錯誤として出てきたのがこのナンバーだったということになるでしょうか。今回はもう1本、後のライヴの様子をご覧ください。1990年代後半、全盛メンバーが揃ったライヴ『ザ・ダンス』からの映像です。 [収録アルバム]Fleetwood Mac / Tusk(牙)(1979年)Fleetwood Mac / The Dance(1997年) 牙(タスク)(2015リマスター・エディション)/フリートウッド・マック[SHM-CD]【返品種別A】 【輸入盤】FLEETWOOD MAC フリートウッド・マック/DANCE(CD) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2017年11月07日
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二つのヴァージョン違いはどちらも名唱 先回のホイットニー・ヒューストンのデビュー作『そよ風の贈りもの』(1985年リリース)からは複数のシングル・ヒットが生まれた。とりわけ、「すべてをあなたに(Saving All My Love For You)」とこの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール(Greatest Love Of All)」は、洋楽バラード好きの人は“聴かずには絶対死ねない”と声を大にして言いたいほどの名唱である。 そのうちの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」をここで取り上げる次第なのだが、実は2種類のヴァージョン違いが存在する。オリジナル・バージョンとシングル・バージョンと呼んで区別しておけばいいように思う。オリジナルの方は、当初の米盤(当時はLPレコード)に収録されていたらしく、それはそのまま日本盤のLPならびにCDにも引き継がれた(したがって日本盤はずっとオリジナルを収録し続けた)。他方、米盤はこの曲がシングルとしてヒットした時点で、アルバム収録分もシングル・バージョンに差し替えられた。その後も米盤は長らくシングル・バージョンを収録していおり、2010年に出た記念エディションになってついにオリジナル・バージョン収録という形に戻されたらしい。 一聴して大きな違いは、オリジナルはピアノのイントロ(それも小さな音でバックから聞こえてくる)で始まるのに対し、シングルはキーボードのしっかりとしたイントロに差し替えられている点である。けれどもさらによく聴くと、演奏だけでなくヴォーカルのテイクも違っている。大雑把にいえば、オリジナルの方が丁寧にまっすぐ歌っているのに対し、シングルの方が起伏をつけて“濃い”節回しを試みているようで、なおかつ歌い方もこなれているという印象を持つ。 正直なところ、どちらが好きかと言われると結構悩む。両方聴きたいという理由で、結局のところ邦盤と米盤の両方を手元には持っているのだが、甲乙つけられないでいる。発売時から聴きなれていたのはオリジナルの方だが、実はその当時にはラジオなど違う媒体でも繰り返しシングル盤を聴いている。なので、多分に経験的だが、アルバム内で通して聴くならオリジナル、1曲だけ正座して聴くならシングル・バージョンといったところだろうか。 ちなみに、この「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」という曲は、ホイットニーのオリジナルではない。彼女よりも先に録音したのはジョージ・ベンソンで、彼のバージョンを聴いてもこの曲がそもそも名曲だというのがわかる。ホイットニーを発掘してデビューさせたクライヴ・デイヴィスは、この曲を録音するのに当初は反対し、ホイットニーが必死に説得した上で録音にこぎつけたとのこと。結果は、聴いての通り見事な仕上がりで、歴史に残る名唱が録音されて本当によかった。この詞を書いたのは、シンガーソングライターのリンダ・クリード(結婚後はリンダ・エプスタイン)で、彼女は若くして乳がんを発症し、そんな自身の境遇から若い母親の心情を詞にしたのがこの曲だそうである。結局、闘病の末、1986年4月にリンダは亡くなり、今度はこれと入れ替わるようにして数週後にホイットニーの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」がチャートの1位に上りつめた。こんな裏話を思い起こしながらこの曲を聴くと、強い“自己愛”を顕示するかのように見える歌詞も、一見したのとは違う風に響いてくるのではないだろうか。[収録アルバム]Whitney Houston / Whitney Houston (邦題:そよ風の贈りもの) (1985年) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月28日
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70年代ロックの名曲たち(Part 3):その7 ここらで少々メジャーではない曲を取り上げてみたいと思います。ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)のデビュー作(1973年初頭リリースの『アズベリー・パークからの挨拶』)に収められていた「成長するってこと(Growing Up)」です。 “ボブ・ディラン2世”の触れ込みでデビューした彼でしたが、確かにこのファースト作の時点では、それまでに積み重ねてきたバンドサウンドとレコード会社の売り込み方針との間で戸惑っていたのかもしれません。でも、以下の弾き語りヴァージョンを聴けば、確かにディラン2世の方針も頷けなくもない感じですね。 結局、彼は70年代半ばから80年代にかけてアメリカン・ロックのアイコンになっていくわけですが、この曲はライヴのレパートリーとして、いつもストーリーの語りを挟んで演奏され、見せ場の一つとなりました。今回はもう一つ、クラレンス・クレモンズ存命中の2009年のライヴの様子もどうぞ。 [収録アルバム]Bruce Springsteen / Greetings From Asbury Park, N.J.(アズベリー・パークからの挨拶)(1973年) ←オリジナルのスタジオ録音ヴァージョン収録。Bruce Springsteen / 18 Tracks(1999年) ←CBSオーディション時の弾き語りヴァージョン収録。Bruce Springsteen & The E Street Band / Live/1975-85(1986年) ←1978年のライヴ収録。 Bruce Springsteen ブルーススプリングスティーン / アズベリーパークからの挨拶 Greetings From Asbury Park Nj 【CD】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年10月10日
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いきなりの完成度で世界を驚愕させたデビュー作 ホイットニー・ヒューストンは、米国ニュージャージー生まれのR&B/ポップ歌手。母のシシー・ヒューストンもシンガーで、この母はエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンらのバックを務めた経験がある。いとこにもディー・ディー&ディオンヌ・ワーウィック姉妹がいるなど、ゴスペル、R&B、ソウル系の音楽家族の環境で育ち、幼少の頃には聖歌隊のソロイストも務めた。ニューヨークのナイト・クラブで母とともに活動していたところ、プロデューサーのクライヴ・デイヴィスによって見出され、1985年に本盤『そよ風の贈りもの(Whitney Houston)』でデビューした。 無名の新人のアルバムなので当初の売れ行きはゆったりとしたものだった。1985年の2月に発売され、半年ほど経って夏頃からセールスを伸ばし始め、翌1986年になってビルボードで14週連続No.1という記録を樹立した。もちろん、こうしてセールスが伸びていく間にはシングルのヒットがあったためなのだが、最初のシングル1.「そよ風の贈りもの(ユー・ギヴ・グッド・ラヴ)」は全米3位を記録したが、本格的に人気に火が付き始めたのは1985年夏にシングル発売された4.「すべてをあなたに(セイビング・オール・マイ・ラヴ・フォー・ユー)」が全米シングル1位に輝いてからだった。その後も6.「恋は手さぐり(ハウ・ウィル・アイ・ノウ)」、9.「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」が立て続けに1位を獲得。デビュー・アルバムでのこれだけのヒットはそれ以前も以後も例のない記録であった。 全体にわたって質が高く、捨て曲がほとんどなく、デビュー・アルバムにしてこれだけ売れたのも納得できる。中でもホイットニーのデビュー時点でのシンガーとしての完成度の高さが伺えるのは、スロウ系の歌い上げるナンバーである。上述の4.「すべてをあなたに」と9.「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」、さらには後者のシングルでB面としても収録された7.「オール・アット・ワンス」の3曲は“これらを聴かずに死ねるか!”と声を大にして言いたくなるほどの名唱。この3曲だけのためでも本アルバム1枚を買う価値は十分すぎる上、他の曲も、ジャーメイン・ジャクソンとの2つのデュエット曲(5.「夢の中の二人」と8.「やさしくマイ・ハート」)、テディ・ペンダーグラスとのデュエット(10.「ホールド・ミー」)など聴きどころが多い。 ところで、いつだったかCD(たぶん90年代半ばの輸入盤CD)を入手してからずっと不思議なことがある。当時(レコードの)A面だと思って聴いていた部分がアルバム後半に収録されているのだ。つまり、筆者の記憶では同CDの6.~10.がA面、1.~5.がB面だったはずなのである。以来しばらくはその輸入盤CDを聴いていて、多少は慣れたもののやはり違和感がある。ところが、国内盤はCDで再発され続けても、筆者がレコード時代に聴いた日本盤LPと同じ曲の順序である。ジャケットが違う(米盤は“過激すぎる”という理由で、白い水着姿のジャケットが別の写真に差し替えられた)のは知っていたが、曲順のこの違いは何がどうなってこういうふうになったのか、いまだもって不明である。ちなみに最近の記念エディションではついに日本盤も米盤と同じ曲順に変わったようだ。 1990年代後半から2000年代にかけては離婚騒動、薬物依存症、セックス中毒などいろんな問題を抱え込み、すっかりそのシンガーとしての存在がくすんでしまった。もっぱらゴシップ報道を賑わすようになってしまったホイットニーだったが、2000年代末から復活してきている。現在、47歳とまだまだ老け込む年齢ではないので、第二の全盛期が訪れることを期待したい。[収録曲]1. You Give Good Love2. Thinking About You3. Someone for Me4. Saving All My Love for You5. Nobody Loves Me Like You Do (duet with Jermaine Jackson)6. How Will I Know7. All at Once8. Take Good Care of My Heart" (duet with Jermaine Jackson)9. Greatest Love of All ←動画はこちら10. Hold Me (duet with Teddy Pendergrass)1985年リリース。なお、日本盤の曲順(&邦訳タイトル)は以下の通り。1. 恋は手さぐり2. オール・アット・ワンス3. やさしくマイ・ハート(デュエット・ウィズ・ジャーメイン・ジャクソン)4. グレイテスト・ラヴ・オブ・オール5. ホールド・ミー(デュエット・ウィズ・テディ・ペンダーグラス)6. そよ風の贈りもの7. シンキン・アバウト・ユー8. サムワン・フォー・ミー9. すべてをあなたに10. 夢の中のふたり(デュエット・ウィズ・ジャーメイン・ジャクソン) 【送料無料】そよ風の贈りもの/ホイットニー・ヒューストン[CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月27日
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It’s Christmas Time~クリスマスソング集(その1) 12月に入り、冬の足音が聞こえると同時に街でもクリスマスらしさが目立つようになりました。毎年、直前になってからクリスマス関係の曲を思い出しては大慌てでアップするというパターンが多いのですが、今年は準備周到に(?)早めにスタートしたいと思います。何曲続くかはわかりませんが、洋邦取り混ぜながら、個人的に記憶に残っているクリスマス・ソング集をお送りしたいと思います。 第1回目となる今回は、麗美(Reimy)の曲です。彼女は沖縄出身のシンガーソングライターで、80年代に松任谷夫妻の秘蔵っ子として期待されました。クラリオンガールの堀川まゆみの実妹ということでも注目されました。90年代からはREMEDIOSの名で映画音楽などを手掛けているようですね。 そんな彼女の作品の中で個人的にはベストというのが1990年の『走るそよ風たちへ』というアルバム。その表題曲「走るそよ風たちへ」をどうぞ。 のっけから重たい雰囲気の曲を選んでしまいましたが、米軍基地を抱える沖縄出身の麗美がある時に横須賀の基地での体験をもとに書いた曲だとか。戦争が起きた時には真っ先に兵士として先頭に立つであろう若者たち。街の平和とは異なる金網の向こう側で訓練される彼らが“活躍する日は来なくてもいい…”、でも“Have a Merry Christmas”という、なかなか思い切ったメッセージです。 サビ部分で外国語(ドイツ語とポルトガル語)のコーラスが追いかけてくるという作りになっていますが、多国語にすることで、個別の基地体験を超えてよりユニバーサルなメッセージ・ソングになっているように思います。実際、私自身もこの曲の誕生エピソードを知るまでは、どこの国とかいうイメージなく、クリスマスを迎える兵士たちというイメージで聴いていました。後で日本での体験が元になっていると知って、曲作りの上手さに改めて感動したものです。(追記:2016年12月、切れていた映像リンクを更新しました。)[収録アルバム]麗美/走るそよ風たちへ(1990年) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2013年12月09日
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私的好みのライヴ盤の一つ 唐突かもしれないが、実は、筆者はボブ・ディラン(Bob Dylan)のライヴ盤が好きである。通常、ライヴ盤と言えば、当たりはずれがある。オリジナル・アルバムの演奏の方がよかったとして酷評されたり、原曲をスクラップ&ビルドして新たな演奏の提示が好評を得たりと、様々な評価を受ける。といえば聞こえはいいのだけれど、要するに、ライヴ・アルバムとはこうした相反する評価のリスクを常に抱えるものでもある。 個人的な思い込みと言われればそれまでのかもしれないが、ボブ・ディランのライヴ盤はたいていどれを聴いてもハズレと感じることがなく、単なる元の曲の再現としてではない形で楽しめることが多い気がする。そんなことを思い起こしつつ、今回は1976年発表の『激しい雨(Hard Rain)』という名ライヴ盤を取り上げてみたい。 まず、表題は、“納得”でもあり、同時に“羊頭狗肉”でもある。“納得”というのは、コロラド州フォートコリンズでの野外ライヴの音源が本盤の中心となっているが、そのライヴは雨の降りしきる中で行われたという点。まさしくそのシチュエーションにぴったりの、相応しいタイトルだと言える。その一方、“羊頭狗肉”というのは、同ライヴで「はげしい雨が降る(A Hard Rain's a-Gonna Fall,旧邦題:今日も冷い雨が」が演奏されたにもかかわらず、この曲は本盤には収められなかった点である。 当時の受容はいまひとつだった(ローリング・サンダー・レヴューと題されたライヴの第2期ツアーも、本盤についても)のだが、今から見ると、ボブ・ディランのライヴ盤の中でも特に優れた作品だと思う。何よりどの曲もパフォーマンスのレベルが高い。ちょうど時期的には、前年に『欲望』をリリースし、その荒々しい感じをそのままライヴにもち込んでいると言っていいように思う。 最初に述べたように、“アルバムの再現”ではないライヴらしさがちゃんと実践されている。例えば、1.「マギーズ・ファーム」や5.「レイ・レディ・レイ」なんかは、アルバムで聴くのとは明らかに違う演奏で、本盤で聴いて別物として感動できる。なお、激しさの針が最も触れているのが、9.「愚かな風」。10分越えの長尺だが、過激にぶちまけていく感じの演奏からは、なぜか聴き終えた後に不思議な爽快感が得られる。ボブ・ディランについてはいろんな人がいろんなことを言うけれども、何と言われようが、彼のライヴ盤、とりわけこのライヴ盤は聴かねばもったいない。キャリアが長いだけに、いろんな作品があっていろんなイメージがあるだろうけれど、ボブ・ディランはこんなにまで力強いアーティストでもあるのだ。[収録曲]1. Maggie's Farm2. One Too Many Mornings3. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again4. Oh, Sister5. Lay Lady Lay6. Shelter From The Storm7. You're A Big Girl Now8. I Threw It All Away9. Idiot Wind1976年リリース。 激しい雨 [ ボブ・ディラン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年09月29日
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2022年を振り返って(1/3) さて、年の瀬も迫ってきました。この1年間に本ブログで取り上げたアルバムを振り返り、2022年が終わってしまう前に、それらの中から何曲かをピックアップしてみたいと思います。 まず、今回は、ジョニ・ミッチェルの代表作であるこちらのアルバムに収められたナンバーから。「アメリア(Amelia)」という1曲です。 表題の「アメリア」というのは、女性の名です。19世紀末に生まれ、1927年に女性として初の大西洋横断飛行を行った飛行士です。彼女は、その10年後、赤道上の世界一周飛行を試みますが、太平洋上で消息を絶ちました。そんなアメリア・イアハート女史の姿を含む映像をご覧ください。 [収録アルバム]Joni Mitchell / Hejira(逃避行)(1976年) [枚数限定]逃避行/ジョニ・ミッチェル[CD]【返品種別A】 逃避行 [ ジョニ・ミッチェル ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2022年12月27日
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気まぐれ80s~Chapter 14(その2) 続いては、ペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)の初期の代表曲「ウエスト・エンド・ガールズ」(West End Girls)」です。このユニット名はメンバーの2人の共通の友人がペット屋さんで働いていたことに由来するということが知られていますが、実は、当初のユニット名は“ウエストエンド”でした。その意味でも、この曲は、彼らの原点的な1曲と言えるのかもしれません。 この曲が収録されたのは、デビュー盤『ウエスト・エンド・ガールズ』(原題はPlease)でした。このアルバム(全英3位、全米7位)そして本シングル曲(全英・全米とも1位)も大きなヒットしましたが、その後、彼らは次々にヒットを飛ばしていくことになりました。まずはその当時のPVをご覧ください。 四半世紀以上の時を経て、2012年ロンドン・オリンピックの閉会式にも彼らは登場し、この曲を披露しました。以下はさらに後のもので、2019年、ハイド・パークでのライヴの映像です。30年以上の時を経て、本人たちの見た目もだいぶ変わりましたが、元のアレンジを忘れずに、丁寧に演じ続けている様が見てとれます。 [収録アルバム]Pet Shop Boys / West End Girls(1986年) 【中古】 ウェスト・エンド・ガールズ/ペット・ショップ・ボーイズ 【中古】 ディスコグラフィー/ザ・コンプ/ペット・ショップ・ボーイズ 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年06月06日
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秀抜なJJのスリリングな演奏とリラックスした演奏 ジェイ・ジェイ・ジョンソン(J・J・ジョンソン)は、1924年、米国インディアナ出身のトロンボーン奏者(2001年没)。スイング全盛期(トロンボーンは花形楽器だった)から活躍をはじめ、ビ・バップ以降、トロンボーンが花形の座を失い、モダン・ジャズにおける主流楽器ではなくなった後も、見事な楽器さばきでトップ・プレイヤーとしての地位を確立した。 本盤の"エミネント"とは、「高名な、秀でた、抜きん出た」といった意味。上で述べたように、トロンボーンが主流楽器ではなくなっていく過程の中で、超技巧を駆使し、見事にその地位を築き上げたという経緯を考えると、まさしく"エミネント"である。 本作『ジ・エミネント・J.J.ジョンソン Vol. 1(The Eminent Jay Jay Johnson Vol. 1)』は、1953年の初リーダー・セッションの音源を含む1枚で、そうした秀抜な演奏が1曲目からフルに堪能できる。1.「ターンパイク」からして、非常にスリリングである。スリリングでぞくぞくする演奏という意味では、3.「ゲット・ハッピー」、5.「カプリ」、10.「コーヒー・ポット」がすぐれている。スリリングといっても、技巧に頼ったスピード演奏だけが持ち味ではない。どこかしらやさしさを内包し、リラックスした部分を残した演奏だからこそ、落ち着いて心地よく聴けるのだと思う。 前半(A面、1.~5.)と後半(B面、6.~10.)でメンバーと録音日が異なっている。前半の方がややスリリングさが勝り、後半の方がややリラックス度が上がる。それは、前半のクリフォード・ブラウン(トランペット)、後半のウィントン・ケリー(ピアノ)の参加に追う部分が結構あるように思われる。 ちなみに、個人的な好みで言えば、7.「オールド・デヴィル・ムーン」がいちばんのお気に入りである。親しみやすいメロディからのびのびとしたソロ演奏、さらにはバックのコンガがさりげなく効いていて、本盤随一のリラックス曲。それでいて、緊張感は失われておらず、4分足らずの短い時間(本盤の他の収録曲も概ね4分前後)にその魅力が見事に凝縮された1曲だと思う。[収録曲]1. Turnpike2. Lover Man3. Get Happy4. Sketch 15. Capri6. Jay7. Old Devil Moon8. It's You Or No One9. Too Marvelous For Words10. Coffee Pot録音:1953.6.20(1~5): Clifford Brown (tp), Jay Jay Johnson (tb), Jimmy Heath (ts, bs), John Lewis (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)1954.9.24(6~10): Jay Jay Johnson (tb), Wynton Kelly (p), Charlie Mingus (b), Kenny Clarke (ds), Sabu (conga)Blue Note1505 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ジ・エミネント・J.J.ジョンソン VOL.1 [ J.J.ジョンソン ]
2009年09月15日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 5(その3) 続いては、元気と勢いのある1曲を選んでみたいと思います。テキサスの3人組バンド、ZZトップ(ZZ Top)の「タッシュ(Tush)」です。今では“長い髭”がお馴染みの彼ら(フロントのビリーとダスティ)ですが、まだ長い髭にはなっていなかった頃のナンバーです。1975年のアルバム『ファンダンゴ』からのシングル曲(ちなみに同作からのシングルカットはこれが唯一)として、全米20位にチャートインしたナンバーです。まずは同盤収録の元のバージョンをどうぞ。 1980年代にはサウンドが変化し、コミカルなビデオなども大衆受けしましたが、その後は再び真面目な(?)方向に回帰しながら、現在までバンド活動を続けています。 そんなわけで、最近というわけではありませんが、21世紀に入ってからのライヴ映像をということで、もう1本ご覧ください。カッコよさ満載のギター(特にスライドギター)は健在です。 3人ともが60歳代後半になって、まもなく70歳が見えてきたところですが、まだまだ元気な姿を披露し続けてもらいたいものです。[収録アルバム]ZZ Top / Fandango!(1975年) Forever YOUNG::ファンダンゴ!(リマスター&エクスパンデッド) [ ZZ・トップ ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2017年08月30日
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気まぐれ80s~第9シーズン(その7) 第7回目は、1980年代末に発表された極上バラードです。1987年にきら星のごとくシーンに登場したリチャード・マークス(Richard Marx)の1989年のセカンド作からの大ヒット・シングル、「ライト・ヒア・ウェイティング(Right Here Waiting)」です。 リチャード・マークスは当時20歳代半ばだったわけですが、なんとも若々しいですね。続いてはライヴ演奏の模様をということで、後世の円熟味溢れるアコースティックなライヴの様子をご覧ください。 ちなみに、この曲は当時、英では2位だったものの、全米1位をはじめ世界各国で1位のヒットでした(カナダでは年間2位の大ヒットだったとのことです)。とはいえ、過去のヒット曲という”懐メロ”的な位置づけではなく、今でも街中やいろんな場面で耳にするスタンダードになっています。加えて、後にいろんなアーティストによってもカバーされています。 そこで、今回は1999年のモニカと112(Monica featuring 112)によるカバーをお聴きください。モニカは、1980年生まれで、1990年代後半以降に活躍しているグラミー受賞歴もあるR&B女性シンガーです。なるほど、女性が歌うとこうなる、そしてさすがはR&Bのシンガーといった節回しと感心させられるカバー・ヴァージョンです。 [収録アルバム]Richard Marx / Repeat Offender(1989年)Monica / The Boy Is Mine(1999年) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 “ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2018年04月29日
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フィンランド発のバンド、デビュー作 北欧はフィンランド発のハノイ・ロックス(Hanoi Rocks)。1980年にマイケル・モンローのバンドにアンディ・マッコイ(この人は既にスウェーデンで別のバンドでデビューしていた)が加入して結成されたパンクおよびグラム・ロックのバンドであった。結成の翌年、彼らは本盤『白夜のバイオレンス(原題:Bangkok Shocks, Saigon Shakes)』でデビューを果たした。 全米に売り込むのは、これよりもさらに3年後のことだったので、本盤を制作した時点ではまだまだローカルなバンドであったことも確かだろう。なので、演奏に粗削りな部分があるのも事実なのだけれど、そうした垢抜けない部分も含めてハノイ・ロックスの魅力という風に思うのは、筆者だけではないように想像する。つまりは、決して悪い意味ではなくて、“ちゃちさ”や“雑さ”もぜんぶひっくるめて彼らの魅力だったと言えるんじゃないだろうか。 収録曲の中でやはり目立っているのは1.「白夜のトラジディ」。北欧だからって、とりあえずアルバム名もシングル曲も “白夜”っていう日本語タイトルの案直さはいかがなものかと思うけれど、粗削りで、必ずしも完成度が高いわけではないことがかえって勢いがあることにつながっている。 このナンバー以外に、個人的好みで何曲か注目したいものを挙げておきたい。カッコいいワウが印象的な2.「ヴィレッジ・ガール」は、このバンドの将来性が窺えたナンバーだと思う。4.「ネバー・リーブ・ミー(ドント・ネヴァー・リーヴ・ミー)」は、後にリメイクされるのだが(正直、出来は後のヴァージョンの方がよい)、アンディ・マッコイの曲作りのセンスの良さが見てとられる。ハノイ・ロックスらしさが典型的に表れたロック・ナンバーとしては、5.「ロスト・イン・ザ・シティ」や7.「涙のサンシャイン」が特にいいと思う。 周知の通り、何よりも残念なのは、ドラマーのラズルの急死(1984年、自動車事故による)によってバンド活動が止まり、その翌年には解散して、文字通り“伝説のバンド”と化してしまったことであった(ただし、本盤制作時はまだドラムはラズルではなく、前任のジップ・カジノだった)。ちなみに、後の2001年、バンドは再結成し、『トゥエルヴ・ショッツ・オン・ザ・ロックス』など数作を残したものの、結局は2009年に解散してしまっている。[収録曲]1. Tragedy 2. Village Girl3. Stop Cryin’4. Don't Never Leave Me5. Lost in the City6. First Timer7. Cheyenne8. 11th Street Kidzz9. Walking With My Angel10. Pretender1981年リリース。 【中古】 白夜のヴァイオレンス /ハノイ・ロックス 【中古】afb 【輸入盤CD】【ネコポス送料無料】Hanoi Rocks / Bangkok Shocks Saigon Shakes 【K2016/10/28発売】(ハノイ・ロックス) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2020年04月19日
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600万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その3) 続いては、リンゴ・スター(Ringo Starr)の1990年代のナンバーです。周知のとおり、元ビートルズの一員であった彼はソロとして活動を続け、1980年代には停滞したものの、1990年代に“オール・スター・バンド”を結成してツアーを行うなど復活を遂げました。 今回のナンバーはちょうどそんな時期の1曲です。10年近い空白の後に1992年発表された10作目のソロ作『タイム・テイクス・タイム』に収められている「ウェイト・オブ・ザ・ワールド(Weight of the World)」です。 まずはアルバムに収録されているヴァージョンをお聴きください。 続いては、上でも触れたオール・スター・バンド(リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド)での演奏です。豪華メンバーを取りそろえたこのバンドは、ツアー時期によってメンバーが入れ替わっていったのですが、下の映像のものでは、トッド・ラングレン、ジョー・ウォルシュ、ニルス・ロフグレン、デイヴ・エドモンズなどの面々が参加しています。 [収録アルバム]Ringo Starr / Time Takes Time(1992年リリース) 【輸入盤CD】Ringo Starr / Time Takes Time (リンゴ・スター) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2021年03月21日
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名脇役的ドラマーが実は主役であることを示す盤 アート・テイラー(Art Taylor)もしくはアーサー・テイラー(Arthur S. Taylor Jr.)は、1929年生まれのジャズ・ドラム奏者で、1995年に65歳で没している。モダン・ジャズの“名脇役”として数多くのセッションに参加しているが、決してリーダー作は多くない。そんな中で、代表的な盤の一つと言えそうなのが、1960年にブルーノートへの吹き込みとしては唯一のリーダー作となった『A.T.ズ・デライト(A.T.’s Delight)』である。 トランペットのデイヴ・バーンズ、テナー・サックスのスタンリー・タレンタインがフロントを務め、コンガのカルロス・“パタート”・バルデスも複数の曲で参加している。実際に本盤を聴いてみれば、これらの楽器の存在感が大きい。そのことは、言い換えると、リーダーたるドラム奏者の存在感はどうなのかということにもなる。正直なところ、本盤ではドラムスが他の楽器に比べて特段目立った存在感を示しているという感じがしない。 とはいえ、本盤のリーダーは、ドラムスのアート・テイラーである。全体としてみれば、アート・テイラーの存在感はドラムスではないところにより感じられると言っていいように思う。演奏全体のバランスをとり、メンバーの演奏を下支えするといった意味でのリーダーだったのではないだろうか。DJやライターもしていたというアート・テイラーだが、自らが目を引く演奏の主役としてリーダーを務めるのではなく、“下支え的リーダー”という役割を見事に全うした作品と言えるようにも思う。 個人的な好みとしては、1.「シーダス・ソング・フルート」や2.「エピストロフィ―」がまず挙げられる。トランペットやテナーの存在感が大きくて、上述の通り、ドラムスの演奏自体は脇役的であるものの、これこそが、アート・テイラーの目指した姿という風に感じられる。他には、4.「ハイ・シーズ」や6.「ブルー・インタールード」のようないかにもモダン・ジャズですといった趣は本盤の重要な特徴なのだけれど、敢えて別の曲に着目しておきたい。 5.「クークー・アンド・フンジ」は、とりわけコンガの存在感が大きく、面白いナンバーだと思う。普通に考えれば、コンガの存在感を増せばドラムスの存在感が低くなる可能性もあり躊躇しかねない。けれども、ドラムスの演奏でリーダーの存在感を出そうとするわけではなく、作品全体のコーディネーターとしてやっぱり彼がリーダーというまとめ方の結果が本盤だったということは、こんなところにも反映されているのかなと思うとなかなか興味深いように思う。[収録曲]1. Syeeda's Song Flute2. Epistrophy3. Move4. High Seas5. Cookoo and Fungi6. Blue Interlude[パーソネル、録音]Art Taylor (ds)Dave Burns (tp: 5.を除く)Stanley Turrentine (ts)Wynton Kelly (p: 5.を除く)Paul Chambers (b)Carlos "Patato" Valdes (conga: 2., 3., 5.)1960年8月6日録音。 【中古】 Art Taylor (Arthur) アートテイラー / At's Delight 【CD】 ↓LP盤です↓ Art Taylor (Arthur) アートテイラー / At's Delight (180グラム重量盤レコード / Drummer Leader VINYLS) 【LP】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2021年10月09日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 8(その2) ハート(Heart)は、1975年にデビュー盤『ドッグ&バタフライ』を発表した。同作には「マジック・マン」というヒット曲も含まれていましたが、同じくこのアルバム収録のシングル曲として発売されたのが、この「クレイジー・オン・ユー(Crazy On You)」でした。まずは、アルバム所収の元の演奏をお聴きください。 もともとよくできた曲で演奏もいいのですが、往時のライヴでの演奏も実に素晴らしいものでした。その素晴らしさがよく分かる1977年の演奏シーンをご覧ください(個人的には、この映像、なんともスリリングで、何度も見ているものです)。 時は流れ、2013年にハートはロックの殿堂入りを果たしています。年月を経てもナンシーのギターとアンのヴォーカル、いずれの魅力も色褪せていません。そのロックの殿堂入りの際のライヴ演奏をご堪能ください。 [収録アルバム]Heart / Dreamboat Annie(1975年) ドリームボート・アニー [ ハート ] ドリームボート・アニー/ハート[SHM-CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年09月10日
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80万アクセス記念~いま聴きたい曲(その10) さて、80万アクセス記念の締めくくりは、半世紀を超える長寿バンド、ステイタス・クォー(Status Quo)のお気に入りナンバーをお届けしたいと思います。日本では全く認知されていないバンドといってもいいかもしれませんが、地元のイギリスでは長年にわたって人気を集めているブギー・ロックを基調とするバンドです。 1989年のアルバム『パーフェクト・レメディ』に収録されていますが、テレキャス2本のイラストジャケットに魅かれて聴いてみて以来、思い出しては聴くというのを繰り返しているアルバムでもあります。 次回より通常の更新に戻ります。引き続きお楽しみいただけると嬉しいです。[収録アルバム]Status Quo / Perfect Remedy(1989年) 【送料無料】 Status Quo ステイタスクオー / Perfect Remedy 輸入盤 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年09月16日
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レインボーの最高作は決めかねるが、個人的に最も聴いているのはこれ レインボー(Rainbow)の最高作はどれか? 実に難しい問いである。ファンの間でもこの点は意見が分かれ、まとまりにくいところのようだ。一般向けには後期のキャッチーなのもいいが、熱心なファンの好みという点からすると、初期のバロック様式美志向の諸作を推す人も多いだろうか。 単純に作風が変わっただけというのも難しい。というのも、レインボーは、実質的には、ギタリストであるリッチー・ブラックモアのソロ・バンド・プロジェクト的な性格があり、バンドのメンバー変遷が激しい。それゆえ、メンバー変更による演奏や志向の変遷も聴き手の好みに大きく影響する。これぞ1枚というのを選ぶ際、コージー・パウエル(ドラム、1975~80年)の参加盤か否かは大きな要素になり得る。さらにボーカルが誰なのかも問題で、主にロニー・ジェームス・ディオ(1975~78年)派と、ジョー・リン・ターナー(1980~84年)派にファンは二分される(ちなみにボーカルだけで言えば、筆者の好みは明らかにジョー・リン・ターナーである)。 ともあれ、そんなことを考え始めると、結局のところ、筆者もどのアルバムをレインボーの“この1枚”に選んでいいか分からない。けれども、自分の中ではっきりしているのは、この『バビロンの城門(Long Live Rock’n’Roll)』を回数としてはいちばんよく聴いてきたということだ(ちなみに本盤の次によく聴くのは『ダウン・トゥ・アース』である)。つまり、回数だけで単純に決めてしまうのならば、筆者にとってのベストはこの『バビロンの城門(Long Live Rock’n’Roll)』ということになるだろうか。 1.「ロング・リヴ・ロックン・ロール」がノリノリの名曲で、勢いで聴かせるナンバー。けれども、アルバム全体としては、決してノリと勢いで押しまくると言えるほど単純な作りなわけではない。途中(といっても、もともとのLPではA面最後なので一区切りな配置なのだけれど)、4.「バビロンの城門(ゲーツ・オブ・バビロン)」という大作志向の曲もある。しかも最後の8.「レインボー・アイズ」が何とも抒情的な長尺。そう考えると実に起伏に富んでよくできたアルバム構成だと思う。[収録曲]1. Long Live Rock 'n' Roll2. Lady of the Lake3. L.A. Connection4. Gates of Babylon5. Kill the King6. The Shed (Subtle)7. Sensitive to Light8. Rainbow Eyes1978年リリース。 Rainbow レインボー / Long Live Rock N Roll: バビロンの城門 【SHM-CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年08月01日
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200万アクセス記念 いま聴きたいあのナンバー~拡大版(20/30) ビリー・ヒューズ(Billie Hughes)は1948年生まれのアメリカ人アーティスト。ラザラス(Lazarus)というグループで活動した後、ソロ活動をしました。死因はよくわからないのですが、1998年に50歳にという若さで残念ながら亡くなっています。 ヒットしたドラマ『もう誰も愛さない』で使われた(ちなみにそのドラマでは、この名曲も挿入歌に使われていました)ということで、日本限定で火がついて大ヒットしたナンバー、「とどかぬ想い(Welcome to the Edge)」です。 いまあらためて聴いてみて、結構よく出来たAOR曲ではないかという気もします。ドラマのイメージが強いという人が多いかもしれませんが、それと関係なくラヴソングとして魅力的なナンバーだと思います。 そんなわけで、続いては、別のアーティストによるこの曲のカバーをお聴きいただこうと思います。カバーはビル・チャンプリン(Bill Champlin)によるものです。1980~90年代のシカゴで活躍した彼は、2009年に同バンドを抜け、その後は再びソロの活動に戻っているようです。 [収録アルバム]Billie Hughes / Welcome To The Edge(1991年) 【中古】 とどかぬ想い /ビリー・ヒューズ 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2017年11月14日
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