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2023年07月05日
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テーマ: ニュース(95880)
カテゴリ: ニュース


 ニュージーランドでは先住民族の権利がどのようにして回復されたか、社会人類学者の深山直子氏が6月15日の朝日新聞に、次のように書いている;




 しかし、共通項はある。まずは、 他の民族に意思に反する形で土地を取られたり、支配されたり、同化政策があったりという植民地化の経験 です。その結果、今もマイノリティーの立場にあります。

 日本では19年施行のアイヌ施策推進法で、やっと「先住民族」と明記されました。時間を要したのは、入植国家ほど植民地化か明瞭ではなかったからでしょう。しかし、先住民の視点で過去を振り返ると、やはり他の先住民の経験と共通項が多い。先住民という概念が拡張しながら国際社会に理解されるようになったことも、重要な背景です。

 先住民という概念は、国家あるいはマジョリティーと対比されるものです。本来、一地域の問題ではなく、「この国に先住民がいる」と言った瞬間、全ての国民が関係する問題になる。でも日本の現実は、そうなっていません。

 他方、私が研究するニュージーランドは、先住民運動が盛り上がった75年ごろを境に、急速に国の形を変えていきました。先住民マオリと欧州系住民による2民族・2文化・1国家という、近年の多文化主義のはしりとなる2文化主義の方針を、すでに70年代に決めました。半世紀を経て、最近のニュージーランドでは、国名もマオリ語の呼び方と組み合わせて「アオテアロア・ニュージーランド」と称することが多いです。

 自治区はありませんが、国から土地が返還されたり、特定の自然資源の優先的利用が認められたりしており、多岐にわたる権利が認められています。その過程では、補償や権利以前に、負の歴史、すなわち植民地化の過去が徹底的に調査され、検証されます。誰が、何を、どれだけ、どういう形でやったのかを白日の下にさらすわけです。

 先住民問題はしばしば「3F」、すなわちファッション、フード、フェスティバルなどといった、わかりやすい文化の振興という形に落とし込まれます。しかし、権利の話でもあり、裁判や政治、資源や金銭の話でもある。国家観や歴史観も問われます。

 過去に向き合う時、感情的な抵抗も伴います。現在の私たち自身が植民地化をしているわけではないのに……と。しかし、今ここにある私たちの社会は、過去の上になり立っています。そして負の歴史に向き合うと同時に、その過去を経た現在、一つの国に複数の民族がいて、複数の文化がある。その豊かさ、すばらしさもかみしめたいと思います。
(聞き手・岡田玄)


<ふかやま・なおこ> 1976年生まれ。東京都立大学准教授。専門は先住民研究。著書に「現代マオリと『先住民の運動』 土地・海・都市そして環境」。


2023年6月15日 朝日新聞朝刊 13版S 13ページ 「オピニオン-過去見つめた先の豊かさ」から引用

 ニュージーランドは先住民族政策の先進国で、国名にも一部先住民の言語が入っているのは素晴らしいと思います。私がサラリーマンだった一時期、職場に北海道出身の人がいて、その人の祖先は明治の政府が屯田兵として本土から送り込んだ兵隊の一員として北海道に渡り住民となったのだとのことで、その人も小学校時代にはクラスに数人のアイヌの子弟がいて、学校の中は当然、日本語を話すことが当たり前になっており、アイヌの小さい子がうっかりアイヌ語を口にするとその子の兄が厳しく叱責する場面に何度か遭遇し「可哀相だな」と思ったものだった、と聞いたことがあります。ところが、数年前には、札幌市で現職の市議会議員が「アイヌ民族なんて、今はもういない」と暴言を吐く事件がありました。マイノリティの人権という点では日本は明らかに後進国であるという事実に失望するほかありません。





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最終更新日  2023年07月05日 01時00分07秒
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