2019/03/21
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核保有国としての北朝鮮、いかに向き合うか
= The Wall Street Journal_Column_By Scott D. Sagan and Benjamin A. Valentino 2019 年 3 月 12 日 (スタンフォード大学教授で同大国際安全保障協力センター(CISAC)のシニアフェロー。ベンジャミン・A・バレンティノ博士はダートマス大学准教授)


ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による2月末の首脳会談は、核軍縮に向けて小さな一歩ですら合意できなかった。このことは、われわれが近い将来、核保有国としての北朝鮮と向き合うであろうことを意味する。

 北朝鮮が最初に核兵器の実験を行った2006年以降、歴代の米大統領は北朝鮮に完全な非核化を要求してきた。トランプ政権内では、その可能性について見解の相違が生じている。ダン・コーツ国家情報長官は1月、北朝鮮が「核兵器や生産能力を完全に放棄する可能性は低い」と議会で証言した。これに対し、トランプ氏は「非核化のチャンスはかなりある」とツイッターで反論した。
正恩氏は2018年を通じて核実験とミサイル発射実験を控えていたが、いつ方針転換してもおかしくない。北朝鮮は依然としてミサイル生産とウラン濃縮を続けており、昨年6月の1回目の米朝首脳会談後に一部廃棄された主要ミサイル実験施設には復旧の兆候が見られるようになった。

 米国民は北朝鮮の核の脅威とともに生きていくことを選ぶのか? 国民はいかなる条件であれば、経済制裁や外交協議で果たせなかったことを軍事力で解決するやり方を支持するのだろうか?

 われわれは先月、北朝鮮の核開発に対する米国民の見方を知るため、オンライン世論調査会社ユーガブに依頼して3000人のサンプル調査を行った。その結果、いくつかの注目すべき葛藤や事実誤認が明らかになった。米国民は北朝鮮が核兵器を持ち続けることを望まないが、それを排除するために戦争することも望まない。また大規模な戦争に突入した場合、米国が北朝鮮のミサイルを撃墜できるという過度の自信を持っている。

 この調査では強い懸念も浮き彫りになった。「必要ならば、米国は核武装した北朝鮮を受け入れられる」という考えに同意した人はわずか33%。今後10年間に「北朝鮮は核兵器の事故もしくは不正使用を経験するだろう」との回答は70%を超えた。もし武力行使という事態になれば、北朝鮮指導者の正恩氏が「理性的判断」をすると信頼する人は12%にとどまった。トランプ氏を信頼する人はまだ多かったが、それでも45%だ。



 さらに曖昧なのは、この問題にどう対処したいのかという点だ。たとえ正恩氏が核弾頭を搭載可能な長距離ミサイルの実験を再開しても、米国が軍事行動を起こすのを認めたくないという回答者が大半を占めた。われわれは回答者全員にこの基本的な危機シナリオについて尋ねる一方で、両国の講じる措置や北朝鮮の対米攻撃能力、予想死者数などの条件を少しずつ変えた質問も行った。

 いずれのシナリオでも、北朝鮮に対する通常兵器による大規模攻撃または核攻撃を支持する人は過半に満たなかった。同様に、限定的な軍事作戦によって米国の決意を示すやり方(例えば、昨年一部で検討された「ブラッディ・ノーズ(鼻血)作戦」)も支持を得られなかった。危険を防ぐための「予防戦争」は大半の米国民にとって選択肢から外れているようだ。「米国が壊滅的な報復措置に出るという脅威」だけで北朝鮮の核兵器使用の抑止力になるかという問いに対しては、65%がイエスと答えた。

 それと同時に、北朝鮮の核兵器が米国民をおびえさせている様子も見受けられない。米国民が予防戦争を否定したからといって、正恩氏は核兵器を保有することで攻撃行動が見過ごされると勘違いしてはならない。北朝鮮が長距離ミサイル発射実験を再開した場合に交渉中断を望む回答者は3分の2を超えた。北朝鮮が韓国に侵攻した場合に米国は北朝鮮を攻撃すべかという質問には65%が賛成した。

 1つのサブグループにはこんなシナリオを提示した。米艦船が公海をパトロール中、北朝鮮の攻撃を受けて沈没し、航海士46人が死亡するというものだ(2010年に起きた韓国の哨戒艦「天安」沈没事件に類する設定)。この場合、通常兵器による北朝鮮への大規模攻撃を52%が容認した。北朝鮮が核兵器で報復する可能性があり、そうなれば数十万人の米国民が犠牲になると説明されたにもかかわらずだ。



 以上の答えが示すのは、米朝が核問題で対峙(たいじ)した場合の両国の能力について根深い誤解があることだ。米国の軍事・技術専門家の多くは、現在配備されている米ミサイル防衛システムが長距離ミサイルを撃墜できるのかあまり確信を持てずにいる。それとは対照的に、調査回答者の77%は「現在の米ミサイル防衛システムは、北朝鮮のミサイルが標的に到達する前に全て破壊する」可能性が、非常に高い、もしくはやや高いと考えていた。

 また、米国が通常兵器で先制攻撃することで「北朝鮮の核兵器を全部破壊するのに成功し、北朝鮮が米国や韓国に核兵器で報復する能力を奪えるか」という質問に対し、「75%以上の確率でそうなる」との答えが3分の1を占めた。これもやはり楽観的な見方だろう。統合参謀本部副議長のマイク・デュモン海軍中尉は2017年の議会証言でこう述べている。「北朝鮮の核兵器プログラムの全ての要素を――完全な確実性をもって――見つけ出し、破壊するためには地上侵攻しか手はない」

 以上のような誤解が大きな問題だ。米国の北朝鮮に対する予防的攻撃を支持する人の割合は、米ミサイル防衛システムが非常に有能だと考える回答者では40%に上り、有能だとは考えていない人の2倍となった。また、米国の先制攻撃によって北朝鮮の報復能力を奪える可能性が非常に高いと考える回答者は、そう考えない回答者に比べ、攻撃を支持する割合が3倍高かった。

 いま北朝鮮が突きつける問題は、いわゆる「抑止と封じ込め」の一例だ。われわれはかつて核武装したソ連と向き合うすべを学んだが、冷戦時代のプレーブックを再び開く時が来たのかもしれない。例えば、緊急時に両首脳が直接対話する米朝ホットラインを設置し、危険な軍事衝突の際に事態のエスカレートを回避するための合意案を取りまとめ、ミサイル実験や軍事演習に関する相互制限で合意するといったことだ。

 しかし今回の調査結果でもう一つ明らかになったのは、米国の軍事力の限界について、また軍備管理外交と核抑止策を組み合わせる価値について、米国民の理解をもっと深める努力が必要であることだ。
(The Wall Street Journal/Scott D. Sagan and Benjamin A. Valentino)



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Last updated  2019/03/21 05:50:06 AM
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