読書日記blog

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2007.09.04
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カテゴリ: その他



蒋介石を讃える画伝。多数の写真と語録を収録。


台湾の国立故宮博物院の所蔵品が初来日したとのことで、大阪市立美術館に「特別展 上海 -近代の美術-」に行ってきた。故宮博物館に行ったときには玉や工芸品にばかり目がいってしまい、書や絵画は見飛ばしていたが、今回はじっくりと書や篆刻を拝見してきた。

大阪市立美術館のショップで、おそらくこの特別展に因んでか『蒋介石総統偉績画伝』が売られているのを発見した。古書で、カバーには破れ等の傷みがあり、値段は800円。衝動買いで購入した。美術関連の古書がメインの古書店のようで、店員さんからも「めずらしく…」といわれてしまった。
この手のプロパガンダ臭が漂ういかにもな本は、あまり美術館では売れないのだろう。しかも、台湾では民主化・本土化がますます進み、本省人は蒋介石への嫌悪をますます露骨にあらわにするようになっている。東ドイツあたりではかつての独裁時代の文物を懐古趣味的にキッチュとして楽しむのが流行ったりしているそうだが、台湾の政治的ごたごたは複雑かつ現在進行形なのでそういうノリのトレンドになりそうにはない。

肝心の内容だが、出版当時の台湾国民政府の国威発揚がメインとなっているようなだ。もちろん、蒋介石の大陸での功績についてもしっかり宣伝されているが、台湾に来てからのことのほうが目立っていた。第二次大戦後の大陸での国共内戦についてはほんの少ししか扱っていないこと、台湾を中国を代表する正統な政府である国民党の大陸反攻のための基地としてとらえているということなど、出版当時(1969年)の台湾国民政府の主張が伝わってきて興味深い。
国民党は台湾を実効支配しているに過ぎないにもかかわらず、長年にわたって全中国を統治しているかのような政治体制を維持し続けようとしてきた。そんな台湾国民政府の政策は、現代の日本人にとって理屈はわかってもその雰囲気はなかなか理解し難いところがある。勿論この本は、蒋介石の主張に沿った一方的なものであり、動員戡乱時期臨時條款で締め付けられていた台湾住民の本音が聞こえてくるわけではない。しかし、台湾の一面、当時の表の顔を知り、台湾の理解していく上で、本書は貴重な一冊であろう。

ちなみに、私はこの本は800円で入手したが、改めてアマゾンで調べたところ、ユーズドで一万五千円近くの値が付いていた。これは、思っていた以上の掘り出し物だったのかもしれない。





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Last updated  2007.09.06 23:50:21
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