PR
Freepage List
Comments
Calendar
Keyword Search
『へいへいほー』
ある高級料亭。頭の光る、おやじが一人。うなずくだけの、若造二人。頭の光る、偉そうなおやじは、店に文句を言って作らせたつくねの串を三本一人で平らげて、彼は満足そうに語り始める。
「へいへいほー。いいか。この世にはな、出来ないことなんてのはないんだよ。いいか、あそこにつぼがあるだろう。そう、あのつぼね。あれをだな、がちゃんと割ったとしようじゃないか。なあに、割るくらい分けはないさ、持ち上げて、それから落とせばいいんだから。オットセイってな。そうやって割ったつぼをだな、元に戻すことってのは、可能か? 可能じゃないよな? しかしだな、よく考えるとだな、割ったつぼっていうのは元に戻すことが出来るんだよ。『元に戻す』という定義を変えてだな、破片を集めて、『元の場所に戻す』ことだって可能だろう? いいか、お前らはまだ若いからな、この世界でのしていくには屁理屈、へそ曲がり、そんなものを上手に使う力をだな、伸ばしていかなきゃならないんだ。いや、何も曲げたへそを伸ばせといってるんじゃなくてだな、へそはどんどんまげていけってことだ。いいか、出来ないことなんてこの世の中にはないんだよ。あるのは出来なかったことか、出来ないと決めてしまったことだけなんだ。よく胸に刻んでおけよ」
「へい、だんな」
「へい、だんな」
「へいへいほー。いいか、お前ら。この世の中にだな、オリジナリティーなんてものはないんだよ。いいか、本当の自分なんてものはないんだよ。お前ら二人を見たときにだな、お前と、お前では、何が違うか、明確に説明できるものがあるか? 目の下には鼻があって、鼻の下には口があって、いいか、そういうことをいっているんじゃないんだ。人間なんてのはな、どれだけ自分自身特別な存在でいると思っていたってだな、他人から見たらちっとも特別な存在なんかじゃないんだ。俺か? 俺は偉いからな、普通の人間じゃないからな、少しくらいは特別かもしれないが、だけど普通の人間なんてのはだな、そもそも客観的に見たときにだな、全部一緒なわけだよ。だからだな、お前達。特別な人間になんてならなくてもいいんだ。いいな、お前らは何にも特別なことなんてない。不満そうな顔だな? 不満だろう? そうか、俺みたいな特別な人間になりたいか。じゃあな、お前らは、俺の言うことをしっかり聞いて、長い時間かけて、俺の域に到達できるようにしてやるから、しっかり見習って、出すぎたまねはするんじゃないぞ? 出すぎたやつは子供と同じで、俺は好かんからな?」
「へい、だんな」
「へい、だんな」
「へいへいほー。いいか、……。」
若造二人は頭の光るおやじの話なんか聞いちゃいなかった。だけどそれでも頭の光るおやじは偉いから、怖いから、今日もしっかり、みをつくしてはたらいて、それから、うなずくのだった。へい、だんな。へいへいほー。
うたたねこまちの夢のあとには Apr 2, 2008 コメント(3)
ルトゥルヴァイユは、うたかた。 Mar 5, 2008 コメント(3)