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2019年03月30日
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最後は『Jaegers Grenze』だ。この記事で #Claas Relotius のジャーナリスト⼈⽣は終わった。前後の出来事については⻑くも短くも説明することができるが、重要なのはその結末である。今皆さんがお読みのこの記事を執筆し、それが SPIEGEL に掲載されるまでの間に、それまでずっと #Relotius が誰にも邪魔されずにやってきた悪事が終わったのだ。Juan Moreno はどんな抵抗にも負けず、決して諦めず、調査を続け、前進し、そして⾃⾝で収集した事実関係を信じた。それは簡単なことではなかったはずだ。都合の悪い真実を⾒つけた内部告発者がなかなか信じてもらえないように、Moreno も初めは壁にぶつかった。告発された側には、疑惑や⾮難の余地があるようには思われなかったからだ。

『Jaegers Grenze』が記事になるまでの出来事は、それ⾃体が⼩さな物語だ。Relotius がアメリカで、Moreno が⽶墨国境の南側で取材をしていた期間中、すでに⼆⼈の⾜並みは⼤きく乱れていた。この乱れは、その後の Moreno の告発が真剣に受け⽌めらず、事件が速やかに明るみに出なかった原因でもあった。11 ⽉になっても Relotius が懸命だったのは、⾃⾝の悪事を全⼒で覆い隠そうとしていたからであった。彼はメールで Facebook上で撮ったスクリーンショットを送り、⼈を騙そうとした。しかし最終的には、彼は Moreno が集めた証拠を握りつぶすことはできなかった。

まず単純なことだが、『Jaegers Grenze』に登場する⼈物名、経歴、⾝元について問題があった。次に、もはや単純とは呼べない問題、つまり、Relotius が⾃警団のひとりと過ごした⽇々について説明した⼤部分が、調査報道記者 Shane Bauer が Mother-Jones 誌に寄稿した⻑編ルポに酷似していることである。もちろん、まったく異なる部分も多い。 しかし、SPIEGEL に登場する Jaeger、Pain、Ghost、Spartan という⼈物名は、Mother-Jones 誌に登場する中⼼⼈物の名前と同じである。これは全くの偶然なのだろうか。さらに、SPIEGEL に載った迷彩服の男が Chris Jaeger と名乗っているのはなぜか。彼は Chris Maloof という名で、2016 年末に同じ写真が New York Times に載った男性ではないのか。⼀体なにが起こっているのか。

Relotius は原稿を完成させ『Showdown』という仮のタイトルを付けたが、Moreno は全く気に⼊らなかった。出稿の⽇の晩、Moreno はレイアウトが終わった記事に使われている写真をみてすぐに気が付いた。記事中のある写真に Tim Foley が映っている。アリゾナの⾃警団のリーダーである彼の名前は、この記事の⽂⾯には登場していないのに。何よりも Moreno が驚いたのは、潜⼊取材をした⾃警団が写真やビデオに撮られることを拒否したと Relotius が強く⾔い張ったからだ。しかしこの Foley という男は有名⼈である。賞を獲得したドキュメンタリー映画『Cartel Land』に登場しているし、さらに⽣活のために記者や旅⾏者から⼿数料をとり国境沿いを案内し、⾃警団の世界を体験させたりもしている。いったい何なんだ。

Moreno は 1 通のメールを校閲部に送り 、以上の件について問い合わせた。同僚にも捏造の疑いについてそれとなく話してみたが、Moreno にはまだ確証がなかった。彼はインターネットで⼿掛かりを探した。翌⽇の 11⽉15 ⽇⽊曜⽇は印刷の⽇だった。彼は校閲者のひとりと電話で話した。ふたりが記事について意⾒を交わしたとき、Moreno は⾃分が疑っていることを話した。記事の登場⼈物が以前にも他のメディアに登場している事実について話したが、意図的な捏造を認めるには⾄らず、記事掲載中⽌の可能性を正当化することはできなかった。

⾦曜⽇の晩、記事は翌⽇出荷される最新号の SPIEGEL に印刷されていた。Moreno は彼の上⻑であり社会部⻑の Matthias Geyer に会い、捏造を疑っていると彼に打ち明けた。Geyer は Moreno に、告発の内容を⽂⾯にするよう指⽰した。⽇曜⽇、まず Moreno は Foley の写真と記事の他の部分に関し質問を三つにまとめて提出した。そして質問は Relotius に突き付けられた。彼は⾒事に、⼿抜かりなく⾃⾝を弁護した。Relotius は告発に対しては堂々と対応し、また⾃分の記事中には不完全な箇所もあると認めつつ巧妙に対応すると、Moreno こそがトラブルメーカーではないかと思われるようになってしまった。その時の Moreno は、⾃らに落ち度はないのに、深い⾕間を歩かされていたようなものだ。
Moreno はアメリカに調査の旅にでて、Relotius に反論するためにもっと多くの資料を集めようとした。それは⾃分の⽴場を守るためであった。彼を⾏動に移させたのは、⾃分⾃⾝が多くの部分で確証が持てないような記事に⾃分の名前が載っていることを考えると、我慢できなかったからだ。Moreno の最初の仕事は、SPIEGEL のスポーツ⾯に寄稿した記事だった。現在世界で最も稼いでいるスポーツ選⼿であるボクサー Floyd Mayweather に関するものだった。この取材に同⾏したのはミュンヘン出⾝のカメラマン Mirco Taliercioだ。彼は Mayweather の取材のアレンジも⾏っており、Moreno と Taliercio は良い仲間であった。
そのようなこともあり、Moreno は彼に 2 回⽬の秘密の取材旅⾏ に同⾏してもらった。Moreno は Arizona Border Recon ⾃警団のリーダー Tim Foley に会いたかった。さらに、SPEGELで Jaeger と呼ばれた迷彩服の男 Chris Maloof を⾒つけ出したかった。この⼆⼈は SPEGEL の記事に登場しているのだから、正しいことが⾏われていれば、Relotius は両名と連絡を取っていたはずである。Relotius は Jaeger もしくは Maloof と呼ばれる男と数⽇間⼀緒に、昼夜を砂漠で過ごしたという。そのアメリカ⼈に会った記憶がないとしたら、あまりにも不⾃然だ。Moreno は Foley へのコンタクトに成功した。Foley を通じて Maloof に会うことも可能となった。

Moreno とカメラマンの Taliercio は Las Vegas から 770 キロ先にある Arizona 州の Arivaca へ⾃動⾞で向かった。そこでは、⾃警団員の Foley (本名 Nailer) が 200 ドルと交換で彼らと会うために待っていた。Moreno は Foley に Relotius の写真を⾒せた。その様⼦を撮影したビデオがある。ずっとRelotius のことを信頼できるフレンドリーな奴だと思ってたかもしれない⼈々にとってはショッキングな映像だ。Foley は、これまでにこのドイツ⼈に会ったことはないと明⾔した。


Relotius の写真を⾒せられた彼は、Foley 以上に確信をもって⾔った。

「これまでこの男に会ったことはない」

それなのに Relotius は断⽚的にも彼のことを書いたのだ。例えば、彼は両⼿の甲に 「Strength」 や「Pride」という⾔葉の⼊れ墨をしていたと。しかし、Maloof の両⼿に⼊れ墨はなかった。Maloof は Jaeger でもなかった。Jaeger という⼈物は存在しないのだ。Relotius は、Foley にも Maloof にも会ってはいないのだ。Relotius は何の関係もない素材を並べてみただけだ。まさしくこれが Relotius のやり⽅なのだ。
数々の写真、Facebook の投稿や YouTube の利⽤、昔の新聞記事や無名の Blog からの借⽤、そして断⽚、破⽚、⼩⽚、クズを使って、Relotius は遊び好きな⼩物の神様のように彼の創造物をこしらえたのだ。Chris Jaeger、Gayle Gladdis、Fergus Falls の Neil Becke、Kirkuk の Nadim と Khalid、アレッポの Ahmed と Alin、グアンタナモの Mohammed Bwasir 、彼らはみな実在せず、Claas Relotius という⼈物が紙の上にだけ⽣み出したのだ。Relotius はこの登場⼈物たちを歌わせたり、泣かせたり、祈らせたりした。そして彼が望めば、『Jaegers Grenze』で書いたように、主⼈公に⾃動⼩銃を持たせ、闇夜に向けて鋭い弾丸をためらいなく撃たせた。それは Relotius のお伽噺に終⽌符を打つにはピッタリの結末だった。

出典: SPIEGEL ONLINE





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最終更新日  2019年04月07日 00時37分19秒
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