幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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Jan 25, 2010
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カテゴリ: シェフの雑記帳

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 この2種類が、さかもとこーひーから届いた。どちらも、とてもおいしいコーヒーです。詳しくは後ほど、、、。

 まずは土曜日の夜のすごいワイン会の話。

 15年以上のおつきあいの外科医のO先生は、ワインと美味しいものが大好き。今回も素晴らしいワイン会で、まずは88年のシャンパーニュ・ブラン・ドブランのサロン!これには、アミューズに三陸産生牡蠣とフォアグラのテリーヌの薄切りをたっぷりのせた自家菜園の有機野菜のサラダ。薄切りのフォアグラテリーヌは口解けがよいから、シャンパーニュの泡によく合う。しかも飲みごろのサロン!最初からみなさののテンションは一気に高まった。

 続く白ワインは、90年のコルトン・シャルルマーニュ!もちろん、ブルゴーニュ・グランクリュ。料理は、オマールのヴァプールと帆立のソテーの海藻バターソース。殻つきのオマールの尻尾の身を蒸し器で2分45秒蒸し、三陸産の帆立貝柱は半生程度に軽くソテーして、沖縄のアオサと四国の青海苔に三陸の磯海苔と佐渡の若布などを合わせた海の香りたっぷりのバターがソース。

 ブルゴーニュの白ワインを作るシャルドネ種のブドウは、石灰質の土壌を好む。その石灰質のもとになったのが、数千万年前から2億年前くらいの間の貝類や甲殻類の死骸が堆積したものだ。エベレストの頂上付近から貝の化石が出るくらいで、かつてはヨーロッパもほとんど海の底だった時代の名残が、石灰質土壌というわけ。

 つまり何が言いたいかというと、数千万年とか2億年という時の流れが、石灰質の土壌を作り、その土壌が素晴らしい白ワインを育み、その土壌の大元となった甲殻類と貝類の料理が海藻という海の香りのソースで出会い、マリアージュするということだ。壮大なロマンでしょ?

 続く皿は、ビーフのコンソメ・ドゥーブルのトリュフ風味。10リットルのコンソメを作るために肉類や鶏ガラや牛骨など合わせて20キロ以上の材料が、すべて出しを取るためだけに使われるというとてもぜいたくな料理。それにトリュフの薄切りがたっぷり入っている。実にゴージャスなスープ。みなさん、無言です。でも、お皿を下げるときに拍手いただきました。

 赤ワインはこれまた凄い!90年のシャンベルタンと70年のシャトーモンローズ。ロマネコンティという化け物を別にすれば、間違いなくブルゴーニュで最高の赤ワインの一つと五大シャトーという大ブランドを別にすれば、やはり間違いなくボルドーの最高のワインの一つが開けられた。

 合わせるメインは、エゾシカの背肉のローストにスペイン産のポルチーニ茸のソテーとフォアグラのソテーを添え、トリュフで真っ黒なソース・ペリグーを合わせる。シャンベルタンは、鹿や鳩などの鉄分を感じる肉によく合う数少ないブルゴーニュワインの一つだ。つまり、血の香りに反応するワインだ。とてもよい年の90年でまさに華やかに開き始めた段階でとても魅力的。

 一方、モンローズは土系の香りを持つサンテステフ村のワインの中でも最も男性的で最も長熟なタイプ。70年ではまだ開ききっていない程の印象。ワイン自体の美味しさは、シャンベルタンなのだが、モンローズと料理のマリアージュがまた素晴らしい!みなさん、結構なボリュームを完食でした。

 食後のコーヒーにグァテマラ・エルインフェルトを出したところ、皆さん絶賛!やはりこれだけのワインを楽しむような方はわかりますね!さかもとこーひーの魅力が、、、。どこで売っているんだという話になり、さかもとこーひーのホームページを教えておきました。

福島県いわき市のイタリアンレストラン、ニンニク屋

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 左から蜂須賀氏、私サンク・オ・ピエchef中村、そしてたまたま休みで手伝いに来てくれたソムリエ高山氏。

 自家製サーモンやハム。マグロのタルタル仕立て、目鯛と帆立のソテー、デュロック豚とフォアグラのロースト、そして、子羊のもも肉のローストなどなど、、、。

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 これが子羊の骨付きもも肉。参考のための胡椒挽きは、長さが20センチほどだからけっこう大きな肉なのが分かるだろう。これを下処理してから糸をかけて形を整えてから焼きに入る。

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 骨盤の一部と尾骨の一部がついているのでそれを外し、すね肉も外して骨を出し、出した骨をホイルで巻き、糸をかけて形を整えたところ。

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 外した骨や屑肉を鍋に入れニンニクやハーブなども入れてこの上に肉を乗せ250度という比較的高温のオーブンに入れる。5分オーブンに入れては、温かいところで10分ほど休ませるということを繰り返してゆっくり焼き上げる。

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 これからオーブンに入れるところ。そして、2時間余りたって、、、

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 焼きあがったところ。この後さらに1時間ほど休ませると、素晴らしいロゼに仕上がる。

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 切り分けるとこんな感じ。どうです?美味そうでしょう?よくアメリカンコミックに出てくる骨付きの肉の塊がありますね。あれはこの子羊のもも肉のことなのだ。欧米人にとっての大人数のご馳走といえば、子羊のもも肉のローストということになっている。もも肉なのでヒレ肉やロース肉ほどは柔らかくないのだが、上手に焼き上げるとうまみがあって実に美味しく、とくによいボルドーやコート・デュ・ローヌのグランヴァンには最高の料理といえるだろう。但し、どうやったらこんなに上手に焼けるんだろうというくらいに仕上げなきゃ駄目ですけどね!

 さて、嵐が去った後(笑)ソムリエの高山氏とさかもとこーひーをテイスティング。グァテマラ・エルインフェルトは、しばし沈黙の後、香りの複雑さ、繊細なニュアンスなどを語り合い、最後に高山が一言。「しかし、シェフの認めるコーヒー屋さんだけあって、褒め言葉という意味で、気違いじみたコーヒーですよね。これは今までのコーヒーというカテゴリーからは完全に違う次元の飲み物ですよ。こういうものをわかる顧客を持っているなんて凄いですね!」とのこと。確かにそう思います。

 豆が届いたときにすぐに入れて味を見た私が思わずつぶやいたのは、「さかもとさん、またこんなの作っちゃっていったいどこまで行くつもりなんだろう、、、。」この豆を電話で注文した時に、坂本さん自身も久しぶりにしびれる素材にであって、ちょっと感動しましたよと言っていたのがよくわかる。私がフォアグラなんぞを食べても何とも思わないように、さかもとさんも仕事柄かなりのコーヒーを飲んでももう麻痺していると言ってました。もちろん分析能力は完璧なんですが、今さら感動するほどのことは少ないというわけです。

 私もフォアグラを焼く香りだけで産地や品種が分かるくらいですが、食べても今さら感動はしません。慣れすぎちゃっているんです。とびきり新鮮な魚を触っているほうがよほど興奮します。フレンチが好きで料理人になり、コーヒーが好きでコーヒー屋になったのですが、知りすぎると悲しいことに商売の種からは距離を置くようになってしまいます。

 でもいくら長年やっていても、常に向上心を失わずにやっているとたまにこういうとびきりの素材が手に入るんですよね。同じような世界観があるさかもとさんの気持ちがよくわかります。

 さて、もう一方の豆、ハート・バレンタインはさすがチョコレートに特化したブレンドというだけあって、本当によくチョコレートに合います。チョコのポリフェノールに対応するしっかりしたボディーがあって、香りにもかすかにチョコレートフレーバーもあり、ちょうどポルト酒やマデラ酒などのフォーティファイドワインを合わせたように、スーーっとチョコの後味と調和しました。 






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Last updated  Jan 25, 2010 04:05:41 PM


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madame-H@ キッシュに入れてます。 相かわらず、手間のかかるスープを楽しん…
ゆり777 @ こんにちは。 美味しそうですね~。 チキンがジュージ…
おかめ@ Re:食べる姿(10/31) なるほど!私も無粋な行為をしていた一人…
mermerada @ はじめまして! エスカルゴは好きで、メニューに有ると頼…
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