《櫻井ジャーナル》

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2012.02.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 東日本が巨大な地震に襲われ、東京電力の福島第1原発で「過酷事故」が引き起こされたのは昨年3月11日のことだった。もうすぐ1年になる。情報が隠され、事故の状況は明らかになっていないものの、その25年前の4月26日にあったウクライナのチェルノブイリ原発のケースと同じレベルの事故だったと考えられている。

 福島第一原発では複数の炉で燃料棒がメルトダウンし、溶融物がどこにあるかは今でも不明の状態であり、当然、事故が収束したなどとは言えない。事故直後に放射性物質がどれだけ環境に放出されたかは、政府も東電も発表していない。実際にわかっていないのか、データを隠しているのかは不明だが。

外国人研究者による調査 では、福島第一原発が放出したセシウム137はチェルノブイリ原発の約42%に達し、圧力容器の中からだけでなく、使用済み燃料棒プールからも放出されている可能性が高いという。しかも膨大な量の放射性物質が海へ流れ出ている。漏れ出ているだけでなく、意図的に放出されている。今後、余震などで施設が新たにダメージを受けたなら、日本の存続を危うくさせるような事態になる可能性もある。

 しかし、それでも今回の事故は運が良かったのだという。福島第一原発の近くには別の原子力発電所が並んでいるが、それらが同じ状態にならなかったのは幸運だったというのだ。事故直後、風が西から東へ吹いていたことも日本人にとっては幸いした。つまり、運が悪ければ関東より北の地域は人が住むには適さない地域になっていた可能性がある。

 事故の直後、 ドイツ や フランス などは関東より北に住む自国民に対して避難するように勧告したようだが、この判断は正しかった。あのアメリカでさえ50マイル(80キロメートル)圏内からの避難を勧告している。ところが、日本では政府も東京電力もマスコミも「安全」を強調するばかりで、欧米の対応を嘲笑していた。特攻隊や集団自決を思い出してしまう。今、世界で嘲笑され、あるいは薄気味悪がられているのは、こうした日本人である。

 日本の「エリート」たちは事故の深刻さを理解する能力がなかった・・・というわけではない。早い段階で首都圏に住む人々も避難させなければならない事態がありえることを十分に理解していた。

オーストラリアの放送局ABCに語っている 。汚染がひどく、10年から20年の間、原発近くの住民が自宅に戻ることはできなとも菅首相は語っていたという。

 実は、4月の段階でこの話は流れていた。ところが、この話は「風評被害」をもたらすとして封印しようとする動きがあり、松本参与は発言を撤回してしまったのである。菅首相も発言を否定したという。この撤回や否定こそが虚偽発言にほかならなかったことをオーストラリアのテレビ局に対し、松本元参与は明言したのである。

 そして 昨年12月、毎日新聞はより詳しい話を伝えた 。「東京電力福島第1原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が『最悪シナリオ』を作成し、菅氏に提出」、「さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料溶融が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルにな」り、「東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同(半径=引用者注)250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定」していたというのである。年明け後、この報道は 細野豪志原発担当相によって確認 され、 菅前首相も同じ話をロイターの取材で話している 。

 炉心がメルトダウンしている可能性が高いことは事故の翌日にはわかっていた。原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官は12日の記者会見でそのことに触れている。その日の深夜に中村審議官が更迭された理由が炉心溶融の可能性を外部に漏らしたことにあると疑われて当然。近藤委員長が『最悪シナリオ』を作成したのも、そうした背景があるからだろう。

 そして昨年4月の松本参与の発言。民主党の渡部恒三最高顧問は菅首相に対し、松本参与「はクビにすればいい」と記者団に語り、枝野幸男官房長官は松本参与の更迭も検討していると記者会見で発言している。渡部顧問は事実関係を確認せず、口から出任せを言ったのだとしても、枝野官房長官は原子力委員長のシナリオを知っていた可能性が高い。事実を知った上で嘘を広めようとしたのならば、その責任は重い。

 事故は深刻な事態になっていると警鐘を鳴らし、避難を含め、迅速に対応する必要があると発言していた学者や元エンジニアを大手メディアは黙殺していた。少なくとも当初、そうした発言を取り上げていたのはインターネットや衛星チャンネルなどだけだが、そうした発言を紹介する際、「最悪のシナリオ」を知る必要があるという前置きをする司会者もいた。こうした前置きに違和感を感じていた人もいるだろう。

 有力メディアで「安全デマ」を繰り返していた「専門家」のストーリーは論外だが、外国での報道や分析に比べると原発の深刻な事態を語る日本の専門家は「楽観的」だった。少ない情報の中、科学的に合理的な分析ではあるのだが、決して「最悪のシナリオ」を語っていたわけではない。そんなシナリオを語らせない雰囲気が社会に蔓延していたのだろう。そうした意味でもマスコミの責任は重い。





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最終更新日  2012.02.19 13:30:30


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