《櫻井ジャーナル》

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2015.07.31
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 トルコが揺れている。NATOの一員で、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すための拠点を提供、IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を含む反シリア政府軍の兵站も守ってきた国だが、そうした隣国のシリアを破壊するという政策も影響して国内では経済状況が悪化し、今年6月の総選挙で与党は大きく後退した。

 トルコとアル・カイダ系武装集団やIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILなどとも表記)との関係は有名で、アメリカの ニューズウィーク誌 でさえトルコ軍がISを支援していると報じている。

 昨年10月2日にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学でISとアメリカの「同盟国」との関係に触れた。ISの「問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦だ」と述べ、その「同盟国」はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために多額の資金を供給、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISを強大化させたと後悔していたと語っている。

 今年6月に行われた選挙で与党の公正発展党(AKP)は第1党を維持したものの、獲得したのは550議席のうち258議席にとどまり、憲法改正を問う国民投票を行うために必要な330議席(全体の5分の3)どころか過半数の276議席にも届かなかった。組閣もできない状況で、クルド人の武装集団とISを空爆したのも、再選挙を睨んでの宣伝だと言われている。

 この空爆はISの殲滅を目指したものでなく、クルド人の部隊を叩くことにあった可能性が高い。イラク、シリア、トルコに広がるクルド人の影響力が拡大、新たな国が作られることを恐れている。レジェップ・レルドアン大統領は新オスマン帝国を築くという野望があるようで、そのためにシリアを攻撃しているのだが、予定通りには進んでいない。

 トルコはNATOの一員だが、そのNATOにもシリアを攻撃する目的がある。アメリカの好戦派、つまり戦争ビジネスやネオコン/シオニストが自分たちの軍隊として使っているのがNATO。その好戦派は現在、 1992年にアメリカ国防総省で作成されたDPGの草案 、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいて動いている。何度も書いているように、これはアメリカを「唯一の超大国」と認識、潜在的なライバルを潰して覇権を確たるものにしようとしている。

 このドクトリンが作られた当時、アメリカの大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はリチャード・チェイニー、そして国防次官はポール・ウォルフォウィッツが務めていた。 ウォルフォウィッツはソ連が消滅した1991年、イラク、イラン、シリアを殲滅すると語っていた

 マーシャルはソ連脅威論の発信源で、親イスラエル派。ソ連消滅後は中国脅威論を宣伝していた。このマーシャルが今年1月に退任、後任は空軍の退役大佐、ジェームズ・ベーカーが新室長に選ばれた。その翌月に国防長官が戦争に消極的なチャック・ヘーゲルから 好戦的なアシュトン・カーター へ交代、5月には次の統合参謀本部議長としてバラク・オバマ大統領は海兵隊のジョセフ・ダンフォード大将を指名した。マーシャルの退任をふたりの好戦派を据えることで埋め合わせているように見えるが、それでも「ヨーダ」と世慣れていたマーシャルの退任はアメリカの政策に影響を及ぼしている可能性がある。

 例えば、昨年の終わりからイランの核開発問題に関する協議が進展、7月にP5+1(国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツ)は最終合意に達している。イランが大幅に譲歩した内容で、アメリカはイランを取り込むつもりだともされているが、世界的に信頼を失っているアメリカへイランがすり寄る可能性は小さい。こうしたアメリカ政府の動きをイスラエルやネオコンは激しく非難、アメリカのカーター国防長官は同国に対する軍事攻撃は排除されていないと語っている。

 その間、5月12日にジョン・ケリー国務長官はロシアを訪問する途中でキエフに立ち寄り、ペトロ・ポロシェンコ大統領と会い、クリミアやドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)の奪還を目指す作戦を実行してはならないと言明したとされている。

 その直後、5月14日から16日にかけてビクトリア・ヌランド国務次官補もキエフを訪問してポロシェンコ大統領のほか、アルセニー・ヤツェニュク首相、アルセン・アバコフ内務相、ボロディミール・グロイスマン最高会議議長らと会談、アメリカはウクライナの政府、主権、領土の統合を完全に確固として支持すると語っている。つまり、ケリー長官の発言を無視しろというわけだ。

 ホワイトハウスの内部で政策の対立が生じているわけだが、こうした現象は西側全体で見られる。その象徴的な出来事がフランスの国会議員10名のクリミア訪問。イタリアでも同じような動きがあるようで、鳩山由紀夫元首相はその先鞭をつけた形だ。

 こうした流れはトルコへも影響を及ぼしているだろう。

 2011年3月にシリアで体制転覆プロジェクトが始動した直後から、アメリカ/NATOはトルコにある米空軍インシルリク基地で反政府軍を編成、訓練している。その教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員。それ以降、現在に至るまでトルコは反シリア政府軍の拠点であり、ISへの兵站線はトルコ軍が守ってきた。

イラクの首相だった当時、ヌーリ・アル・マリキはペルシャ湾岸産油国がISを支援していると批判 していたが、ドイツのメディア DWも昨年11月、トルコからシリアへ食糧、衣類、武器、戦闘員などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はISだと見られていると伝えている



 ISの司令部ではMITのエージェントふたりが指揮していると見られているほか、旧ソ連圏からも入っているという。 タジキスタン内務省特殊任務民警支隊のグルムロド・ハリモフ司令官がISに加わった ことが今年5月に判明した。5月27日にハリモフ司令官のメッセージ動画がインターネット上に投稿され、仲間数人と一緒にISへ参加したことを認めている。

 また、ISが密輸している石油はエルドアン大統領の息子が所有するBMZ社が扱い、ISの負傷兵はMITが治療に協力していると伝えられている。秘密裏に治療が行われている病院はエルドアン大統領の娘が監督しているようだ。負傷兵の治療はイスラエルも行っている。こうしたISとの関係だけでなく、トルコとロシアとの天然ガスをめぐるプロジェクトもオバマ大統領は怒っている。トルコ政府は新オスマン帝国を夢見、シリア攻撃に熱中しているが、アメリカはロシアを意識している。

 エルドアンやアメリカの好戦派はシリアの北部に飛行禁止空域を設定しようとしているが、言うまでもなく、そのターゲットが航空機を持たないISのはずはない。シリアがISの兵站や戦闘部隊を空から叩けないようにすることが目的だと考えるのが自然。ISが押されている現状を打開したいのだろう。NATOを軍事介入させようとも目論んでいるはずだ。

 ただ、そうした強硬策を実現できるかどうかは微妙。ロシアや中国の存在もあるが、ロシアとの核戦争も厭わないネオコンは西側支配層でも孤立しつつある。カネと恫喝で離反を押さえているのだろうが、限界にきている。「新たな真珠湾攻撃」を実行して強行突破するという可能性もあるが、簡単ではない。支配的な立場にいながら、この期に及んでネオコンに心の底から忠誠を誓っている、つまり思考力がないのは安倍晋三政権の周辺くらいだろう。





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最終更新日  2015.08.01 01:15:24


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