米将軍の米中戦争発言
アメリカ空軍航空機動軍団のマイク・ミニハン司令官は1月27日、アメリカと中国が2025年に軍事衝突する可能性があるとする見通しを描いたメモを将校へ送った という。
航空機動軍団は輸送機や空中給油機を運用、兵站の輸送を担当している。つまり直接、戦闘に参加するわけではなく、スタンリー・キューブリックが監督した映画「博士の異常な愛情」に登場するSAC(戦略航空軍団)のジャック・リッパー准将とは違い、勝手に核戦争を始めることはできそうにない。
SACは1992年の再編成で爆撃機部隊と空中給油部隊に分かれ、空中給油部隊は航空輸送を担当していたMAC(軍事給油軍団)と一緒になり、航空機動軍団になった。
ちなみにリッパーにはモデルが存在すると考えられている。1948年から57年までSAC司令官、61年から65年まで空軍参謀長を務めたカーティス・ルメイだ。
ルメイは好戦派として有名で、ソ連に対する先制核攻撃を目論んでいた軍や情報機関のグループに含まれ、ジョン・F・ケネディ大統領と対立していたことでも知られている。「博士の異常な愛情」の公開はケネディ大統領が暗殺された翌年の1月、つまり2カ月後だ。
キューブリックの作品が公開された翌月、つまり1964年2月にはクーデター計画を描いたジョン・フランケンハイマーが監督した「5月の7日間」が公開されている。
フランケンハイマーの作品の原作を書いたのはフレッチャー・ニーベルとチャールズ・ベイリーだが、その小説をケネディ大統領も読み、友人にありえる話だと語っていた。フランケンハイマーに映画化を進めたのはケネディ自身だとも言われている。ニーベルたちが小説のプロットを思いつた切っ掛けはルメイへのインタビューだったという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)
広島と長崎に原爆を投下し、日本の都市に住む市民を焼夷弾で焼き殺したルメイだが、日本政府はケネディ大統領暗殺の翌年、「勲一等旭日章」をこの人物に授与している。
東アジアの軍事的緊張
ミニハンの発言「希望的観測」なのだろうが、アメリカ支配層の内部に東アジアで軍事的な緊張を高めようとしているグループは存在している。それを象徴する出来事が昨年8月2日にあった。アメリカの下院議長だったナンシー・ペロシが突如台湾を訪問したのだ。
アメリカでは大統領が何らかの理由で職務を執行できなくなった場合の継承順位が決められている。第1位は副大統領(上院議長)だが、第2位は下院議長である。その下院議長が「ひとつの中国」を否定したわけだ。
アメリカと中国との国交が正常化したのは1972年2月。その際、当時のアメリカ大統領、リチャード・ニクソンが北京を訪問して中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明している。つまりペロシの行動はアメリカと中国との友好関係を終わらせるという意思表示だと理解されても仕方がない。ニクソン政権が中国との国交を正常化させた目的のひとつは中国をアメリカ側へ引き寄せ、ソ連と分断することにあったと見られている。
中国と日本が接近することもアメリカの支配層は嫌っていたのだが、1972年9月に田中角栄が中国を訪問した。その際、日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来は尖閣諸島の問題を「棚上げ」にすることで合意している。
この合意を壊したのが菅直人政権にほかならない。2010年6月に発足した菅内閣は尖閣諸島に関する質問主意書への答弁で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張したのだ。そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。
その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。これ以降、東アジアの軍事的な緊張は急速に高まっていく。
ネオコンの世界制覇計画
こうした軍事的な緊張を高める政策を推進していたのはアメリカで大きな影響力を持つネオコンだ。ソ連が消滅した直後の1992年2月にネオコンが支配していた国防総省において、DPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画が作成された。
その時の国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。ふたりともネオコンだ。ウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから、そのDPGは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
そのドクトリンへ日本を組み込んだのが1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」。そこには在日米軍基地の機能を強化、その使用制限の緩和/撤廃が謳われていた。この時、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。
1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになる。1999年には「周辺事態法」が成立、2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」も作成された。
2001年の「9/11」をはさみ、2002年に小泉純一郎政権は「武力攻撃事態法案」を国会に提出、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明。2005年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄された。そして2012年にアーミテージとナイが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表している。
安倍晋三は総理大臣時代の2015年6月、赤坂にある赤坂飯店で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で 「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」 と口にしたというが、これはアメリカの戦略を明確に示しているとも言える。そうした流れに岸田も乗っているわけだ。
アメリカは2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとしたが、インドネシアやインドはアメリカの軍事戦略と距離を置こうとしている。
現在、アメリカは日本や台湾に続いて韓国やフィリピンを中国やロシアとの戦争で手先として使おうと準備している。ウクライナで自分たちの敗北が不可避の状態になっているネオコンは東アジアで火をつけたいのかもしれないが、すでにアメリカ/NATOが保有する兵器は枯渇状態にある。軍事的な能力を別にしても、工業生産力で欧米はロシアに対抗できないのだ。兵器をアメリカから買い込んでいる日本が前に出ざるをえない。本ブログでも繰り返し書いてきたが、日本はアメリカの一部勢力から支援を受け、核兵器の開発を進めてきた。
冷静に考えれば、ネオコンの計画に巻き込まれると日本の滅亡は不可避だということがわかるが、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の問題を見ても、日本の「エリート」が正気だとは思えない。