ドナルド・トランプ米大統領とイランの マスード・ペゼシュキアン 大統領が6月17日に署名した合意文書(MoU)には軍事攻撃の停止、ホルムズ海峡の商業船舶に対する60日間の通行料無料での航行再開、イランの港湾に対するアメリカ海軍の封鎖解除、停戦の60日間の延長などが規定されているが、イランは別名目で船舶から料金を徴収している。最終合意に到達すれば、アメリカによって凍結されたイラン資産の返還に加え、イランへの投資を促進することを目的とした少なくとも3000億ドルの民間基金も盛り込まれるというが、これをアメリカが呑むとは思えない。
MoU調印後もホルムズ海峡はイランが管理してきたが、国連の専門機関である国際海事機関(IMO)はUAE(アラブ首長国連邦)やムサンダム半島の海岸線に沿って進む代替ルートについてオマーンと調整してきた。これはイランが管理する航路を迂回するものだ。イランの革命防衛隊(IRGC)は6月25日、この新ルートについて警告を発した。
イランのIRNA通信によると、イランの海軍関係者はこのルートがイランへの事前通知や調整なしに設定されたと指摘、「容認できず、極めて危険である」と主張した。
ホルムズ海峡を通過するために認可された唯一のルートは自分たちが宣言したルートだとイランは主張、違反者に対しては厳正に対処すると宣言。そして6月25日、台湾の長栄海運(エバーグリーン・マリン)が運航するシンガポール船籍のエバー・ラブリーがオマーン沿岸近くの水路を航行中、IRGCのドローンに攻撃され、1機が甲板に命中。エバー・ラブリーはIMOが組織した船団を利用せず、単独でペルシャ湾を抜け出そうとしていた。
6月26日にアメリカ中央軍(CENTCOM)はアメリカ軍機がイランのミサイル/ドローンの貯蔵施設や沿岸レーダー拠点を攻撃したと発表した。ただアメリカ軍による攻撃はアメリカの大手メディアの主張とは違い、イラン側の被害は軽微で、イラン軍による報復攻撃もパフォーマンスにすぎなかったと伝えられている。
国際海事機関の試みはオマーンの協力があってのこと。同国はIMOと連携してペルシャ湾内から船舶を避難させるための回廊を開設した。オマーンの領海でイランが航行を妨害するわけにはいかないため、その回廊を常態化させた後に双方向の航行へ拡大、イランがホルムズ海峡を支配できないようにしようとしたわけだ。イラン政府はこうした展開を避けるため、オマーンの抱き込みを図っていたが、失敗したようだ。
イランとの戦争に敗れたアメリカだが、停戦期間を利用し、なし崩し的にホルムズ海峡の航行を復活させようとしたのだろう。この海峡をイランに管理させておくと、アメリカはペルシャ湾周辺の同国軍基地を再建することができない。逆にイランはアメリカからの軍事的な脅威を減らすため、ホルムズ海峡を管理する必要がある。
また、両国の間にはイスラエルという大問題が存在している。イスラエルはレバノンやパレスチナでの殺戮と破壊を継続、イランとアメリカが最終合意にたどり着ける可能性は大きくない。つまりアメリカとイランの軍事衝突は不可避だと見る人もいる。その時のためにもイランは海峡を管理し続けようとするはずだ。
このところ、イスラエルとアメリカが対立しているかのような話が伝えられている。そうしたことが起こっている可能性はあるが、深いところでイスラエルはアメリカやイギリスと結びついている。イスラエルはアメリカやイギリスの私的権力が作った「不沈空母」で、最終目標は西アジア全域の支配だろう。アメリカやオーストラリアと同じように、先住民を皆殺しにして全域を支配するつもりかもしれない。ちなみに、米英両国がユーラシア大陸の東側に作った「不沈空母」が日本にほかならない。ウクライナも似た状況だ。
そのウクライナにおける対ロシア戦争でアメリカやイギリスを含むNATO諸国は窮地に陥っている。ロシアが長期戦を仕掛けているため、生産能力の低いNATO諸国は軍事的にも経済的にも追い詰められているのだ。しかもアメリカとイスラエルが始めたイランとの戦争の余波で苦しみが強まっている。
西側の帝国主義国が対立しているロシア、中国、イランはいずれも資源があり、生産能力があり、技術力もある。そのベースになっているのは教育。アメリカの公教育は崩壊、有名大学もカネとコネで汚染されている。そのアメリカを追いかけているのが日本だ。
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【 櫻井ジャーナル(note) 】